日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
40 巻, 9 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 藤木 真人, 高田 泰次, 伊藤 孝司, 上本 伸二
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1549-1556
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: PIVKA-IIは高い特異度を特徴とする腫瘍マーカーであり, 肝硬変における肝細胞癌発生の早期診断や, 肝細胞癌における治療効果の判定, 予後予測において活用されてきた.しかし, 末期肝硬変または肝細胞癌を合併した肝移植レシピエントにおけるPIVKA-IIの意義についてはいまだ明らかにされていない. 対象と方法: 1999年から2005年までに当院で肝移植を行った肝細胞癌を合併しない肝硬変24例と肝細胞癌合併123例を対象とし, PIVKA-IIの測定値分布, PIVKA-IIと肝細胞癌病理組織学的検査所見ならびに予後との関連について検討した. 結果: 肝細胞癌を合併しない肝硬変症例の58%でPIVKA-IIが陽性となった. PIVKA-II陽性群のChild-Pugh score, MELD scoreの平均値はそれぞれ10.8点, 20.9点で, 陰性群よりも有意に高かった (p<0.05). 肝細胞癌症例においては, PIVKA-II>400mAU/ml群における5年累積再発率は, PIVKA-II≦400mAU/ml群と比較して有意に不良であり (60% vs. 13%, p<0.01), 多変量解析でも独立した再発予測因子となった (相対危険率5.984, p<0.01). 組織学的門脈浸潤陽性群は陰性群よりもPIVKA-IIの中央値が有意に高かった (p<0.01). 考察: 肝硬変症例のPIVKA-II陽性率が高い原因として, 対象群の肝機能障害が重度であることが考えられる. PIVKA-IIは肝細胞癌の病理組織学的特徴と密接に関連し, 肝移植後の再発予測因子として非常に有用な腫瘍マーカーである.
  • 塩澤 学, 土田 知史, 菅野 伸洋, 森永 聡一郎, 赤池 信, 杉政 征夫
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1557-1564
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 近年, 大腸癌症例の増加や治療成績の向上により他臓器重複癌症例を経験することが多くなってきている. そこで, 重複癌症例の臨床的意義と対策について検討した. 方法: 1982年1月から2005年12月までの当センターにて大腸癌手術を施行した2,141例を対象として予後因子と死因を検討し, さらに重複癌症例の臨床病理学的特徴, 臓器特異性, 頻度, 発症時期について検討した. 結果: 大腸癌根治切除例において重複癌ありは独立予後因子となっていた (p=0.001). また, 術後異時性重複癌ありの群では, なしの群に比べ重複癌死が有意に多くなっていた (p=0.000). 大腸癌手術症例における重複癌は387例 (108.1%) で, 同時性108例 (5.0%), 異時性288例 (13.5%) であった. 重複臓器は, 男性は胃癌 (43.8%), 肺癌 (15.3%), 女性は乳癌 (32.4%), 子宮癌 (25.5%) の順で多かった. 重複癌を併発しやすい症例としては多発大腸癌症例が独立因子となっていた (p=0.000). 大腸癌術後異時性重複癌症例は96例で重複臓器は胃癌 (28.1%), 肺癌17例 (17.7%) の順で多かった. 重複癌発症時期は術後平均5.3年 (中間値4.3年) で, 胃癌は7.0年 (中間値7.2年), 肺癌は3.5年 (中間値6年) であった. 考察: 大腸癌症例における重複癌の併発は予後の悪化および重複癌死の増加をもたらし, これらを早期発見し対処すべきである. 特に, 多発大腸癌症例は注意が必要で重複臓器としては胃癌, 肺癌である.
  • 笹田 伸介, 檜原 淳, 水入 寛純, 上野 秀晃, 川渕 義治, 浜井 洋一, 恵美 学, 吉田 和弘, 山口 佳之
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1565-1569
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌切除術後6か月目に再建胃管壊死を来した1症例を経験したので報告する. 症例は62歳の男性で, 食道癌 (Lt, 3型), 胃癌 (体上部小彎, 0-IIc) に対し, 右開胸食道亜全摘, 胃小彎部分切除, 後縦隔経路半切胃管再建を施行した. 術中所見にて原発巣の大動脈への直接浸潤を認め, 同部位の癌遺残に対し, 術後化学放射線療法を施行した. 退院後は外来で経過観察していたが, 発熱と全身倦怠にて当科入院. CT, 上部消化管内視鏡検査にて, 再建胃管壊死と診断し保存的治療を行っていたが, 経過中に胃管気管瘻を併発した. 縦隔ドレナージ術, さらには再手術にて上半胃管部分切除術, 瘻孔閉鎖術, 食道外瘻造設術を施行したが, 多臓器不全に陥り救命しえなかった. 非常にまれではあるが, 食道癌術後数か月を経た時点でも, 縦隔炎症状を呈した場合は, 再建胃管壊死も念頭において早期治療にあたるべきであると思われた.
  • 久倉 勝治, 寺島 秀夫, 永井 健太郎, 野崎 礼史, 明石 義正, 只野 惣介, 大河内 信弘
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1570-1575
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 胸部中部食道扁平上皮癌に対し, 放射線化学療法 (原発巣に対する総線量は70Gy) を施行した. 42か月後, 縦郭リンパ節転移を認めたため30Gyの照射を追加した. その後, 放射線性心嚢炎による心タンポナーデ症状を呈したため, 繰り返し経皮的心嚢穿刺・ドレナージを施行した (4回/5か月). 初回放射線化学療法から54か月後, 胸腔鏡下心膜開窓術を施行した. 切除された心膜は線維の増生が著明で癌の再発は認めず, 放射線性の心膜炎と考えられた. 術後の経過は良好で, 術後1か月間, 心嚢液貯留なく心不全症状を認めていない. 心嚢液貯留に対する外科治療を文献的に考察し, 放射線性心膜炎に対する胸腔鏡下心膜切開術が低侵襲であるだけでなく, 長期的な効果が期待できる手技であることを論じた.
  • 吉田 卓弘, 梅本 淳, 山井 礼道, 清家 純一, 本田 純子, 丹黒 章, 島田 光生, 米田 亜樹子
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1576-1581
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    非常にまれな胃異所性膵から発生した腺癌の1例を報告する. 症例は64歳の男性で, 胸膜炎の経過観察中に, 胸部CTにて胃幽門部大彎側に径3.0cmの腫瘤を偶然に指摘された. 上部消化管内視鏡検査, 超音波内視鏡検査を施行したところ, 幽門前庭部になだらかな隆起性病変を認め, 筋層を主座とする粘膜下腫瘍を認めた. Retrospectiveには2年前のCTでも存在しており, 腫瘍径にほとんど変化を認めなかった. しかし, 幽門狭窄症状を来したため, 胃gastrointestinal stromal tumorの術前診断のもと腹腔鏡下幽門部分切除術を施行した. 腫瘍の一部を術中迅速診断に提出したところ, 胃異所性膵と考えられた. 永久標本では粘膜下層から漿膜下にかけて腫瘍が存在し, 一部に腺癌への移行像を認め, 異所性膵から発生した高分化型腺癌と診断された. 粘膜下腫瘍の治療においては, 悪性腫瘍が併存する可能性も念頭におく必要がある.
  • 神山 篤史, 柴田 近, 舟山 裕士, 福島 浩平, 高橋 賢一, 上野 達也, 小林 照忠, 木内 誠, 佐々木 巖, 森谷 卓也
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1582-1586
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ガストリノーマの多くはいわゆる'gastrinoma triangle'に存在し, 異所性ガストリノーマはまれである. 今回, 我々は小網原発と考えられたガストリノーマの症例を経験した. 症例は74歳の女性で, 2度にわたって十二指腸潰瘍穿孔を繰り返し, 幽門側胃切除術を施行された. 術後に血清ガストリンの高値を認め, さらにグルカゴン負荷試験で血清ガストリン値の奇異性上昇を認めたためガストリノーマの診断となった. 腹部CT, 腹部MRIにて残胃小網内に腫瘤を認め, 動脈内グルカゴン負荷試験で小網内の腫瘤は左胃動脈を栄養動脈とするガストリノーマと判断し, 小網内の腫瘤とともに残胃全摘術を行った. 組織学的検討でも腫瘤はガストリン産生腫瘍であった. 術中・術後に施行したグルカゴン負荷試験はいずれも陰性であり, 術後2年を経過した現在も再発の兆候を認めていない. 小網原発と考えられたガストリノーマの診断・治療にグルカゴン負荷試験は有用であった.
  • 山本 貴之, 宮内 正之, 佐藤 俊充, 三浦 進一, 久野 泰, 蜂須賀 丈博, 森 敏宏, 篠原 正彦
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1587-1592
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の男性で, 平成12年に腹部大動脈瘤 (以下, AAA) を指摘されるが, 経過観察されていた. 平成17年11月中旬より腹痛と頻回の嘔吐があり, 近医を受診. 上部消化管造影検査にて胃, 十二指腸の高度拡張, 十二指腸水平脚の狭窄像を認め, AAAの増大も認めたため当科に紹介受診, 入院となった. 同日施行された腹部CTにて胃から十二指腸下行脚にかけての拡張と左右腎動脈分岐部レベルから両総腸骨動脈にかけて最大径7.5cmのAAAを認めた. 入院後胃管を挿入するも排液が多く, 嘔気が持続するため, AAAによる十二指腸閉塞と診断し, 手術を施行した. 開腹すると増大したAAAと上腸間膜動脈の間で十二指腸水平部が狭窄していた. 術後3日目より経口摂取可能となり, 術後15日目に退院した. AAAによる十二指腸閉塞は非常にまれである. 今回, 我々は非常にまれなこのような症例を経験し, 良好な結果が得られたので報告する.
  • 錦 建宏, 千々岩 一男, 松本 耕太郎, 近藤 千博, 内山 周一郎, 長池 幸樹
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1593-1598
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性で, 気管支喘息の発作を契機に近医に入院, 肝腫瘤と脾腫・上行腰静脈・奇静脈の高度の拡張を認め, 精査加療目的で当科紹介入院となった. 腹部CT・血管造影CTで, 肝S5に5.0cm大の肝細胞癌を認めた. 胸部造影CTで横隔膜直下の下大静脈に膜様閉塞を認め, 下大静脈造影検査では同部の膜様閉塞と上行腰静脈, 奇静脈を介して上大静脈へ還流する側副血行路を認めた. 肝細胞癌を合併したBudd-Chiari症候群 (以下, BCS) と診断し, 肝S5部分切除術を施行した. BCSに対しては, 肝機能は比較的保たれており, 側副血行路の発達で膜様構造物を介した上大静脈と下大静脈の圧格差はほとんど認めず, 門脈圧も18mmHgであったため, 経過観察とした. BCSにおける肝細胞癌の合併頻度の報告はさまざまであるが, 今回, BCSにB型肝炎, C型肝炎ウィルス陰性肝細胞癌を合併した症例を経験したので, 文献的考察を含め報告した.
  • 川畑 康成, 矢野 誠司, 楠本 長正, 宮本 勝文, 稲尾 瞳子, 西 健, 平原 典幸, 板倉 正幸, 田中 恒夫
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1599-1604
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で, 突然の上腹部痛にて来院した. 緊急腹部CTでは, 肝尾状葉に原発した肝細胞癌とその破裂による腹腔内出血が疑われた. Vital signは安定していたため, 保存的治療を選択した. 他の画像検査で, 腫瘤はSpiegel's lobeと連続, 肝外性に発育し, 総肝動脈から固有肝動脈を巻き込み, 門脈を右方に圧排していた. Spiegel's lobe原発肝細胞癌の破裂と診断し待機手術を施行した. 開腹検査所見は術前診断と同様であり, 巻き込まれていた総肝動脈, 固有肝動脈を剥離し腫瘍を茎基部で切離して摘出した. 病理組織学的診断は, 8×5.5×4cm, 64g, 中分化型肝細胞癌で, 茎基部に出血巣を認めた. 肝尾状葉に原発した肝細胞癌破裂の本邦報告は12例と少なく, いずれもSpiegel's lobeであった. また, 肝外発育型肝細胞癌の茎基部が破綻し出血を来した報告もまれであった.
  • 佐藤 裕英, 西尾 慶子, 山崎 高宏, 井上 剛志, 足立 巌, 飯田 茂穂
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1605-1610
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は86歳の女性で, 経皮的冠動脈形成術を実施された10日後に無石胆嚢炎を発症. 緊急胆嚢摘出術を実施し, 病理組織学的検索にてコレステロール塞栓 (cholesterol crystal embolization; 以下, CCE) による急性胆嚢炎と判明. いったん, 自宅退院が可能であったが, その後亜急性に腎機能の悪化と好酸球数の増多を認め, 術後6か月目に心不全の悪化から死亡に至った.経過からCCEによる腎障害の併存がうかがわれた. CCEによる胆嚢炎の報告は極めてまれであるが, 血管内治療などの増多に伴い今後も増加が見込まれる. 消化器の分野でも無石胆嚢炎の原因としてCCEがあることを認識し, 疾患は全身的なもので予後不良であることを念頭におき適切な対処を早期から行う必要性があるものと考えられた.
  • 加藤 宏之, 柏倉 由実, 飯澤 祐介, 北川 真人, 田中 穣, 長沼 達史, 藤森 健而, 中野 洋, 伊佐地 秀司
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1611-1616
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の男性で, 黄疸, 白色便を主訴として当院受診. 精査にて中下部胆管癌もしくは膵頭部癌と診断され亜全胃温存膵頭十二指腸切除+リンパ節郭清を施行. 摘出標本では中下部胆管と膵頭部に2種の腫瘍を認め, 病理組織学的検査では中下部胆管に印環細胞癌を認め膵臓に高度浸潤を認めた. また, 膵頭部には高分化型管状腺癌を認め両腫瘍間に細胞移行像は認められないことから多発腫瘍による衝突癌と考えられた. 患者はgemcitabineを用いた化学療法を施行中であり術後14か月現在, 無再発生存中である. 膵衝突癌は術前画像診断で中下部胆管癌と膵頭部癌の両者の特徴を併せ持っており術中所見においてもその診断は困難であった.
  • 千堂 宏義, 西村 透, 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏, 木崎 智彦
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1617-1622
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で, 1966年胆嚢炎で開腹胆嚢摘出術を施行され, 1998年12月上旬戸谷分類Ia型の先天性胆道拡張症で胆管切除・肝管空腸Roux-Y吻合を施行された. 2006年2月より右上腹部痛と背部痛を認め, 当科入院となった. CT, MRIで膵頭部に腫瘤を認めたが, 膵管の拡張は認めなかった. ERCPで主乳頭は隆起し, 膵管は途中までしか造影されず, 遺残胆管と交通する. 胞性病変を認めた. 腹部血管造影検査で血管増生と腫瘍辺縁部の濃染像を認めた. 以上より, 遺残膵内胆管癌と考え, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的診断は遺残膵内胆管より発生した腺扁平上皮癌および, 乳頭部癌と十二指腸癌も併発した同時性3重複癌であった. 分流手術後に遺残膵内胆管より発生した腺扁平上皮癌症例として, また膵内胆管癌, 乳頭部癌および十二指腸癌の同時性3重複癌症例としても本邦報告例はなく, 自験例が初めての報告と思われた.
  • 石田 道拡, 仁熊 健文, 湯川 拓郎, 三村 哲重, 筒井 信正
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1623-1629
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性で, 胆嚢癌疑いにて当院紹介. 不均一な胆嚢壁の肥厚と胆管の拡張を伴わない膵胆管合流異常を認めた. 非拡張型膵・胆管合流異常に伴った胆嚢癌と診断し, 手術を施行. 術後病理組織学的検査では胆嚢癌, ss, pN0, Stage II, sCurA. 術後12か月, DUPAN-2の異常値を認め, その後も上昇した. PETでは膵頭部に集積を認め, MRIでは下部胆管内に20mm大の腫瘤を認めた. 下部胆管に発生した悪性腫瘍と診断し, 18か月後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行. 腫瘍は下部胆管 (共通管内) に存在し, 病理組織学的検査所見で腫瘍周囲に異型上皮が一様に広がり, 原発腫瘍と診断した. 非拡張型膵・胆管合流異常では胆嚢癌が高率に発生し胆管癌の発生は低いという報告が多い. 本例は非拡張型合流異常で胆嚢癌手術後経過中に, 下部胆管 (共通管) に癌が発生した. 非拡張型合流異常であっても胆管癌が発生する可能性があることが示唆された.
  • 原田 幹彦, 大原 正己
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1630-1635
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸閉塞, 虫垂炎で発症した虫垂・回腸子宮内膜症の1例を経験したので報告する. 症例は42歳の女性で, 右下腹部痛, 嘔吐を主訴に当院受診した. 右下腹部に圧痛, 反跳痛を認めた. 腹部X線検査で立位鏡面像を認め, 腸閉塞, 虫垂炎の診断で開腹した. 虫垂は回腸間膜と癒着し, 回腸壁の肥厚および出血斑の点在を認めた. 癒着剥離し, 虫垂は盲腸に重積して2cm程度であった. 盲腸部分切除, 虫垂切除を施行した. 病理組織学的検査では虫垂粘膜直下より筋層にかけて子宮内膜類似の腺管が内膜間質様組織を伴って島状散在性に増生し, 虫垂子宮内膜症と診断された. 術後ホルモン療法を施行したが, 腹痛, 食欲不振が出現し, MRIで卵巣内膜性. 胞を認めたため初回手術の2か月後, 回盲部切除および子宮全摘, 両付属器切除を施行した. 病理組織学的検査では子宮筋腫・腺筋症, 両側卵巣, 回腸子宮内膜症と診断された. 術後3年9か月現在, 無症状, 無再発である.
  • 竹島 薫, 山藤 和夫, 朝見 淳規, 林 憲孝, 馬場 秀雄, 岡本 信彦, 及川 太, 松井 淳一
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1636-1640
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で, S状結腸癌と診断され精査・手術目的にて入院した. 術前の胸部CTにて, 右肺動脈本幹および左肺底動脈に浮遊血栓を認め, 肺血流シンチおよび下肢静脈造影検査にて下肢深部静脈血栓症および無症候性肺塞栓症と診断し, ヘパリンによる抗凝固療法を開始した. ヘパリン投与開始14日目に施行した肺動脈造影検査にて左右肺動脈内に血栓を認めなかったため, 術前日に下大静脈フィルターを留置し手術を施行した. 術式はS状結腸切除術で, 術中はヘパリン低用量投与 (200単位/時間) および弾性ストッキングを使用した. 術後2日目よりヘパリンを400単位/時間にて投与しワーファリンを術後8日目より開始しINRが2.0を超えた時点でヘパリンを中止し維持療法を続行した. 消化器外科領域では手術を必要とする患者は肺塞栓症の高リスク群であり無症候性肺塞栓症の可能性も念頭にいれ周術期の管理を行うことが求められる.
  • 武藤 頼彦, 山本 義一, 高石 聡, 舟波 裕, 当間 智子, 工藤 秀寛, 関 幸雄
    2007 年 40 巻 9 号 p. 1641-1646
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    急激な腹痛にて発症した後腹膜原発yolk-sactumor (以下, YST) を経験したので報告する. 症例は25歳の男性で, 腹痛・発熱を主訴に来院. 腹部超音波検査・造影CTにて下腸間膜動脈を巻き込み, 辺縁のみ造影効果のある直径5cm大の腫瘍を認めた. 後腹膜膿瘍の診断にて腫瘍全摘出術を施行した. 術後病理組織学的検査にてYSTの診断となった. また, 入院時凍結血清AFPは2,338ng/mlと高値であった. 術後経過は良好であり, AFPは著明に低下, 症状消失し退院となった. 外来経過観察中AFPが上昇し, 再発を認めたためシスプラチンを中心とした化学療法を施行した. 化学療法が著効し, 術後6か月, AFPは正常値, 画像上も腫瘍は著明に縮小した. 発見困難である後腹膜腫瘍を早期に発見し, 治療開始したことで, 著明な腫瘍縮小をした. 早期の化学療法開始が治療の鍵となる.
feedback
Top