日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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41 巻, 11 号
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  • 木村 拓也, Augusto Lauro, Matteo Cescon, Chiara Zanfi, Antonio Daniele Pin ...
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1883-1891
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: イタリアのボローニア大学S'Orsola-Malpighi附属病院で過去7年間に脳死ドナーから成人の小腸単独移植を28例 (29移植) に行ったので報告する. 方法: 原疾患は短腸症候群と小腸機能不全が29移植中27移植 (93%) で, 移植の適応としては中心静脈アクセスの確保不能, 中心静脈栄養に関連した合併症 (繰り返す感染症, 肝機能障害) が20例 (69%) を占めた. 免疫抑制剤はdaclizumab, alemtuzumab, antithymocyte globulinのいずれかをinductionに用い, tacrolimusを維持に用いた. Daclizumab投与例ではプレドニゾロンも併用した. 結果: 患者/グラフトの5年生存率は74%/71% であった. 拒絶反応は13例に認め, 全例にステロイドパルス療法を, 2例にはOKT3を追加投与したが, 1例は回復せず, graftの摘出を要した. 6例死亡したが (中央値: 400日) 敗血症3例, アスペルギルス肺炎2例, CMV腸炎による多発穿孔1例とすべて感染症関連であった. 生存例22例中19例は中心静脈栄養を必要とせず, 経口摂取で生活し, 生活の質が保たれていた. 考察: 成人の小腸単独移植は, induction therapyの導入や適応の選択などで他の臓器移植とほぼ同じ生存率を得ることが可能となってきた. 小腸移植は小腸機能不全や短腸症候群患者における有用な選択枝となりえるが, 拒絶反応, 感染症で失う症例も多く, さらなる工夫が必要である.
  • 的野 吾, 田中 寿明, 末吉 晋, 田中 優一, 津福 達二, 西村 光平, 白水 和雄, 藤田 博正
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1892-1897
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 1997年9月頃より嚥下困難出現し, 近医で食道潰瘍の診断を受け, H2-blockerおよびproton pump inhibitor内服で約6年ほど保存的加療を行っていたが軽快せず, 狭窄症状が出現したため, 2003年7月当院紹介となった. 当院にて精査したが, 逆流性食道炎は存在せず, また24時間pH測定検査でも酸の逆流はなく, 食道潰瘍の原因は判明しなかった. 潰瘍は次第に悪化し, 狭窄が強くなっていることから手術を勧めたが, 患者は手術を拒否し, 以来内視鏡下バルーン拡張術にて経過観察していた. 2007年8月, 背部痛が出現し, 精査にて, 食道潰瘍穿通による縦隔炎と診断し, 右開胸による食道切除術を施行した. 潰瘍周囲は強固に癒着しており, 潰瘍底は大動脈であった. 術後経過は良好で, 第27病日に退院した. 難治性食道潰瘍が穿通し縦隔炎を併発した症例に対し食道切除を行い良好な経過を得たので報告する.
  • 佐野 淳, 菊池 順子, 小林 義輝, 田口 洋, 横山 宗伯
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1898-1903
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道内分泌細胞癌はまれな疾患で悪性度が高く予後は不良である. 今回, その切除例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性で, 約1か月前より出現した食後の心窩部痛にて当科を受診した. 食道造影および内視鏡検査で胸部中下部食道に4cmにわたって中心陥凹を伴う隆起性病変を認め, 生検により未分化癌と診断された. 遠隔転移, 明らかなリンパ節転移, 周囲組織への浸潤を認めず, 胸腹部食道切除, 3領域郭清, 胸骨後胃管再建を施行した. 腫瘍細胞は免疫染色でシナプトフィジン, クロモグラニンA, NSEに陽性であり, 食道内分泌細胞癌, 非小細胞型と診断され, pT2pN2M0, pStage IIIであった. 術後, シスプラチンとエトポシドによる化学療法を4クール施行して37か月の無再発生存が得られた. 手術は侵襲が大きいため慎重に選択しなければならないが, 予後の向上には手術に加えて化学療法を中心とした集学的治療が有効と思われた.
  • 南部 弘太郎, 田中 洋一, 坂本 裕彦, 川島 吉之, 網倉 克己, 西村 洋治, 黒住 昌史, 渋谷 哲男, 徳永 昭
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1904-1909
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は同一領域に類基底細胞癌と腺扁平上皮癌の病巣を認めた極めてまれな食道癌の1例を経験したので報告する. 症例は71歳の男性で, 3か月前から嚥下困難が生じ, 近医を受診, 食道癌の診断で当院紹介となる. 内視鏡検査では門歯から34cmの部位に全周性の3型病変を認めた. 生検で扁平上皮癌と診断し, 胸腹部食道全摘術を行った. 切除標本の病理組織学的検査所見では, 広範囲の上皮内伸展を認め, 上皮内癌巣の直下に類基底細胞癌成分が粘膜下層まで, 腺扁平上皮癌成分が外膜まで別々に浸潤しており, 上皮内では扁平上皮癌として連続しているものの, 浸潤部分では移行像はなく衝突癌様の像を示していた. 進行度は, pT3pN0M0 pStageII1)であった. 本症例は, 共通の上皮内伸展巣の直下に二つの特殊な組織型の浸潤巣を有する極めてまれな症例であり, 病理発生としては, それぞれの浸潤巣は移行像がなく, 同じ上皮内扁平上皮癌から別々に発生したものと推測された.
  • 吉田 直矢, 佐藤 伸隆, 山本 謙一郎, 田中 真一郎, 大堂 雅晴, 栗崎 貴, 片渕 茂, 芳賀 克夫, 山下 眞一, 池井 聰
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1910-1915
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性で, 嚥下困難感を主訴に近医を受診され, 上部消化管内視鏡検査で胸部食道癌 (LtMt, 2型) と診断された. 当院での精査により左前頭葉と右肩甲骨に転移を認め, 進行度はstage IVbであった. 原発巣と肩甲骨に対して化学放射線療法を, 脳転移巣には定位放射線治療 (Novalis®) を施行した. 治療終了後1か月目の精査で原発巣, 転移巣ともに縮小し, 新病変の出現を認めなかったため, 胸腔鏡補助下食道亜全摘, 2領域リンパ節郭清, 胸骨後胃管再建を施行した. 術後docetaxelによる化学療法を1クール追加した. 治療開始から1年9か月経った現在, 新病変の出現なく経過中である. 初診時に遠隔転移を伴うstage IVb食道癌の予後は極めて不良であり, 集学的治療を行っても本症例のように1年半以上無増悪で経過することはまれである. 長期生存が見込めるstage IVb食道癌について, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐野 浩一郎, 新名 一郎, 日高 秀樹, 前原 直樹, 長池 幸樹, 内山 周一郎, 佛坂 正幸, 丸塚 浩助, 秋山 裕, 千々岩 一男
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1916-1920
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    極めてまれな胃原発顆粒細胞腫の2切除例を経験したので報告する. 症例1は40歳の男性で, 主訴は胃検診での異常. 内視鏡検査で胃底部大彎側に直径約1.5cm大の大臼歯様の粘膜下腫瘍を認め, 生検で顆粒細胞腫と診断された. 悪性が否定できないため腹腔鏡下胃楔状切除術を施行した. 症例2は42歳の女性で, 主訴は心窩部痛. 内視鏡検査で胃体下部小彎側に直径約1.5cm大の粘膜下腫瘍を認めた. カルチノイドを否定できなかったため小開腹下胃楔状切除術を施行した. 切除標本の病理組織学的検査所見では2症例とも腫瘍は粘膜下層に存在し, 細胞質内に小胞巣や束状構造を伴う明瞭な顆粒を有し, これらの細胞質内顆粒はPAS陽性, 免疫組織染色でS-100蛋白陽性で, 顆粒細胞腫と診断した. 本邦報告例は自験2例を含め34例とまれな疾患であり, 文献的考察を加え報告する.
  • 久保 雅俊, 枝園 和彦, 小西 祐輔, 脇 直久, 葉山 牧夫, 宮谷 克也, 宇高 徹総, 水田 稔, 白川 和豊
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1921-1926
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 急性骨髄性白血病のため当院血液内科で化学療法を受け, 完全寛解状態であった. 今回, 貧血の精査のため行った上部消化管内視鏡検査にて胃体上部に進行胃癌を指摘され, D2郭清を伴う胃全摘術を施行した. 術後1年5か月目に人格変化, 嘔吐がみられ, 頭部MRIを施行したところ, 大脳半球に3個の転移性脳腫瘍を認めた. 胸腹部CT, 腹部超音波検査では転移を認めず, 腫瘍マーカーも正常であった. 白血病再燃による病変も否定できず, 脳腫瘍生検を行った. 病理組織学的診断は中分化型腺癌で, 胃癌の病理組織学的検査所見とも一致しており, 胃癌脳転移と診断した. 脳転移に対し, サイバーナイフを行ったところ, 臨床症状の改善を認め, 通院治療が可能となった. 5か月後, 新たな2個の脳転移に対し, 再度サイバーナイフの施行を要したが, 脳転移発症後1年経過現在, 胸腹部を含め無再発生存中である.
  • 塩川 洋之, 船橋 公彦, 小池 淳一, 斉藤 直康, 栗原 聰元, 金子 奉暁, 白坂 健太郎, 後藤 友彦, 渋谷 和俊, 寺本 龍生
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1927-1934
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    転移性大腸癌は頻度0.1~1%とされまれな疾患である. 今回, 胃癌術後13年目に横行結腸に転移を来した異時性大腸転移を経験した. 症例は69歳の女性で, 食後の腹部違和感を主訴に来院した. 注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査から横行結腸肝彎曲部の原発性びまん性大腸癌あるいは転移性大腸癌を疑った. 拡大結腸右半切除術後, 病理組織学的検査では13年前の胃癌と形態学的に一致した低分化腺癌で, 免疫組織学的染色で粘液形質の染色パターンが一致したことから胃癌の転移と診断した. 2001年-2006年にかけての54症例73病変の文献的検討では, 胃癌による大腸転移は組織学的には印環細胞癌, 低分化腺癌に多く, 46.3%は術後5年以上経過してからの発見であった. 大腸転移巣切除後死亡例の平均生存期間は平均16.6か月で転移発見の時期に関係はなかった. 腫瘍マーカーは早期発見の指標にはならず低分化・粘液癌の胃癌のfollow upでは注意を要するものと考えられた.
  • 河岡 徹, 深光 岳, 池田 幸生, 長島 淳, 平木 桜夫, 福田 進太郎, 岡 正朗
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1935-1940
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性で, 食後の無胆汁性嘔吐・食欲不振・上腹部膨満感を訴え, 受診した. CTで十二指腸下行脚内に約1×1.5cm大の全体がhigh densityに映る異物を認めた. 上部消化管内視鏡検査で乳頭のすぐ口側で十二指腸が膜様に強く狭窄していた. 保存的療法では改善しないと判断し, 手術を施行した. まず, 触診でミルキングを試みたが困難であったため, 十二指腸下行脚Vater乳頭対側に小切開を加え, 異物を摘出した. 異物はビワの種であり, 症状の出現する1か月前にビワを食べた既往があった. 種はVater乳頭付近で嵌頓していたが, その肛門側に狭窄はなかった. 膜様狭窄部はVater乳頭近傍に位置していたために膜自体は処理せず, 胃空腸吻合術を施行した. 術後経過は良好であった. ビワの種子はCTで全体が高吸収域として認められるため, 術前診断の一助となる可能性がある.
  • 増田 崇, 内田 博喜, 岩城 堅太郎, 江口 英利, 遠藤 裕一, 奥永 良樹, 甲斐 成一郎, 柴田 浩平, 太田 正之, 北野 正剛
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1941-1945
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性で, 健診の18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomographyにて肝外側区域に異常集積を示す腫瘍性病変を指摘され精査目的に当科紹介となった. 胆嚢結石症, 総胆管結石症, 急性膵炎に対する治療歴があった. 腹部造影CTでは, 肝S3に辺縁がリング状に造影され, 内部が低吸収を呈する境界不明瞭な3cm大の腫瘍性病変を認めた. 発熱などの炎症症状なく, 臨床経過および画像検査所見より肝内胆管癌と術前診断し, 肝外側区域切除術を施行した. 切除標本では, 境界明瞭な淡黄白色の硬い腫瘤を認め, 肉眼的にも肝内胆管癌が疑われた. しかし, 組織検査所見では腫瘍細胞は認めず, 好中球浸潤の目立つ急性・慢性炎症性細胞と線維芽細胞, 線維化からなるmicroabscessの像であり, granulomatous abscessと診断した. 胆道の手術既往がある症例などには肝内胆管癌の鑑別診断に肝granulomatous abscessも考慮されるべきと思われた.
  • 川崎 浩資, 西田 司, 梅本 健司, 三好 和裕, 松木 充, 稲田 悠紀, 石橋 孝嗣
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1946-1952
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で, 心窩部痛を主訴に救急外来を受診した. 黄疸と心窩部に圧痛を認め, 血液検査では総ビリルビン (4.6mg/dl), GOT (699IU/l), GPT (477IU/l), 白血球 (10,400/μl) の上昇を認めた. 胸部X線検査で右胸心, 腹部CTで内臓逆位を認め, 完全内臓逆位に合併した胆石・総胆管結石, 胆嚢炎と診断し, 抗生剤投与を開始した. 入院後内視鏡的乳頭括約筋切開術のうえ総胆管結石を切石した. Three dimensional CT (以下, 3D-CT) では胆道系, 血管系は鏡面像を呈していたが, 合併奇形は認めず, 臨床検査所見改善後, 腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 術者は患者の右側に立ち, トロッカーの挿入は3D-CTのシミュレーションを基に右手を主としたdouble-handで操作できるよう位置決めをし, 手術は安全に完遂できた. 内臓逆位に内視鏡的乳頭括約筋切開術および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した症例は, 検索しえたかぎり本邦第1例目で, 当院での手技的工夫と文献的考察を加え報告する.
  • 安岡 康夫, 吉田 敦, 中城 徹, 山本 泰三, 阿部 康人
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1953-1959
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は69歳の男性で, 発熱を主訴に近医を受診, 腹部超音波検査上, 膵腫瘍を指摘され紹介された. 腹部CT上膵尾部に. 胞状腫瘤を認めた. ERP上は軽度の主膵管広狭不同を認めたが, Vater乳頭は正常, 好酸球性胃腸炎の所見も認めなかった. 腫瘍マーカーも正常範囲内で, 血管造影検査上も悪性所見は認めなかった. 慢性膵炎に伴う炎症性腫瘤と判断し, 保存的加療にて改善した. 6か月後, 再び同部に腫瘤が出現した. 保存的加療後も膵尾部の腫瘤性病変が残存するため, 悪性疾患を疑い, 膵尾脾合併切除術を行った. 病理組織学的検査所見上, 間質に著明な好酸球の浸潤を認め, 好酸球性膵炎が疑われた. 術後12か月, 膵体部に再び腫瘤性病変が認められたが, 抗アレルギー剤投与により改善した. 以後, 寛解状態を維持している. 好酸球性膵炎は非常にまれな疾患であり, 検索しえた範囲内では本邦報告例は存在しない. 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 金森 淳, 金井 道夫, 山口 竜三, 濱口 桂, 桐山 宗泰, 佐藤 文哉
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1960-1965
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で, 2007年1月臍部痛のため近医を受診し, 大腸閉塞の診断で当院紹介となった. 入院時腹部CTでは膵尾部から脾門部, 左腎腹側にかけて腫瘤を認め, 注腸造影X線検査では脾彎曲部の完全閉塞を認めたため, 横行結腸に双孔式人工肛門を造設した. 術後施行した大腸内視鏡下生検では腺癌細胞を認めたが, 免疫染色でサイトケラチン (以下, CK) 7陽性/CK20陰性と結腸癌の染色パターンを呈さなかった. 以上から, 下行結腸浸潤を伴う膵尾部癌と診断し, 2月に膵体尾部脾切除, 左半結腸切除, 左腎摘出, 胃・横隔膜部分切除術を施行した. 病理組織学的検査所見では腺扁平上皮癌の像を呈し, 膵および脾被膜下, 腎門部, 結腸漿筋層への浸潤を認めた. 術後13か月の現在, 無再発生存中である. 大腸閉塞で発症した膵腺扁平上皮癌は極めてまれであり, 文献的考察を加えて報告する.
  • 小林 慎一朗, 坂部 龍太郎, 平林 直樹, 佐藤 幸雄, 佐伯 修二, 向田 秀則, 山下 芳典, 多幾山 渉, 金子 真弓
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1966-1971
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は特発性血小板減少性紫斑病の治療中に発見されたEpstein-Barr Virus (以下, EBV) 感染による脾原発inflammatory pseudotumor (以下, IPT) の1例を経験したので報告する. 症例は67歳の男性で, 特発性血小板減少性紫斑病の治療中にUS, CT, MRIにて脾臓に腫瘤を指摘された. 血管腫などの良性腫瘍が疑われ6か月間経過観察したが, 腫瘍径が増大し, fluorine-18-fluorodeoxyglucose and positron emission tomography (FDG-PET) にて高集積を認めた. 以上の所見より, 悪性腫瘍を疑い, 腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した. 病理組織学的検査ではIPTと診断され, 増生する紡錘形細胞にはin situ hybridization法にてEBウイルスが検出された. 脾臓摘出術後, 血小板減少やIPTの再発は認めていない. 自験例はEBV感染が血小板減少と脾原発IPTの発症に関与している可能性が考えられた.
  • 林 勉, 鈴木 弘治, 蓮尾 公篤, 神 康之, 玉川 洋, 利野 靖, 益田 宗孝
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1972-1977
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 心窩部痛を主訴に来院した. 腹部は軽度膨満し腹部単純X線検査で小腸ガスの貯留と鏡面形成を認め, 腹部CTでは右上腹部にtarget signを呈する腫瘤像を認め, 回腸上行結腸型の腸重積症と診断した. また, 胃壁の肥厚を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行, 粘膜不整像と巨大皺壁を認めた. 病理組織学的検査 (胃) で悪性リンパ腫が疑われたが, 確定診断は得られなかった. 組織型の診断確定と腸重積解除目的に開腹手術を行った. 開腹時腸重積は解除されていたが, Bauhin弁から10cm口側の回腸粘膜下にポリープ様腫瘤が多発しており, 粘膜下腫瘍を切除し, 病理組織学的検査でマントル細胞リンパ腫の診断であった.胃と回腸に多発病変を有し, 回腸末端のポリポーシスを先進部として回腸上行結腸型腸重積を来していた. マントル細胞リンパ腫による成人腸重積の報告は自験例を含めて国内, 国外合計7例のみと極めてまれであり, 文献的考察を加え報告する.
  • 崎村 千香, 岩本 明美, 山根 成之, 木村 修, 濱副 隆一, 村田 陽子
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1978-1982
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Nonsteroidal anti-inflammatory drugs (以下, NSAIDs) による大腸多発潰瘍穿孔の1例を報告する. 症例は59歳の男性で, 脊椎管狭窄症の診断でdiclofenac sodium 75mg/日を服用後6日目に食欲不振, 腹満感, 右季肋部痛を訴えた. 腹部検査所見で強い圧痛, blumberg兆候, 筋性防御を認め, ショックとなったため汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. 術中所見では横行結腸に直径1cm未満の小さな潰瘍が3個認められ, うち2個に潰瘍の穿孔が認められた. 病理組織学的検査所見では穿孔潰瘍はU1-IV, 非穿孔潰瘍はU1-IIであり, 潰瘍辺縁の粘膜上皮には異型性は認めなかった. NSAIDsによる大腸穿孔例の報告例は極めて少ないが, NSAIDs投与時には大腸病変の合併も念頭において診療することが重要と考えられる.
  • 山口 直哉, 塩見 正哉, 東島 由一郎, 神谷 諭, 渡邊 克隆, 尾辻 英彦, 柴田 耕治, 神谷 順一
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1983-1987
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性で, 急性虫垂炎を合併した上行結腸癌の診断に対して右半結腸切除術を施行した. 腫瘍径は9cmであった. 病理組織学的にgastrointestinal stromal tumor (以下, GIST) と診断した. 回結腸リンパ節1個に転移を認めた. 右腎下極との剥離面が断端陽性であったため, 術後イマチニブを投与した. 術後9か月に残存腫瘍の増大を認め, 術後10か月に死亡した.大腸に発生するGISTは全消化管GISTの10%以下である. 小腸・大腸のGISTの平均生存期間は29か月と報告され, 胃GISTに比べ短い. 本例ではリンパ節転移を伴っていたが, リンパ節転移を伴った上行結腸GISTの症例報告はない. 手術治療においては完全切除が大切であるが本例では不可能であった. リンパ節転移を認めたものの, 原発部位の完全切除が不可能であったためその郭清の意義は低かった.
  • 窪田 健, 神山 順, 糸井 啓純, 大辻 英吾
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1988-1993
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 下部直腸の2型腫瘍, および単発性肝転移に対し, 直腸切断術, 肝S5亜区域切除術を施行した. 術後, ホリナート・テガフール・ウラシル療法中に小脳転移を認め, 摘出術を施行した. その後, 脳脊髄転移が出現してきたため, 脳転移に対してはガンマナイフを, 脊髄転移に対しては摘出術を施行した. MRIで脊髄腫瘍の残存, 同時に脳転移の再増殖を認めたため, oxaliplatin/fluorouracil/leucovorin (以下, mFOLFOX-6) を開始した. 開始1年後の奏効度をResponse Evaluation Criteria in Solid Tumorsにより評価したところ, 腫瘍減少率は75%, 新病変の出現も認められず, 部分奏効が得られた. 転移性脳腫瘍に対する化学療法は一般に無効であることが多い. 今回, 我々はmFOLFOX-6療法が奏効した直腸癌術後脳脊髄転移症例を経験したので報告する.
  • 松崎 弘志, 清水 英一郎, 鈴木 孝雄, 五十嵐 辰男
    2008 年 41 巻 11 号 p. 1994-1999
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は52歳の男性で, 下腹部痛・下血を主訴に当院受診した. 大腸内視鏡検査で直腸前壁を主座とする2型の腫瘍を認め, CTとMRIでは前立腺・精嚢に接していた. 術中所見で前方浸潤を疑い, 膀胱の一部・前立腺・精嚢を一塊に合併切除し, 腹会陰式直腸切断術を行った. 膀胱壁を修復し, 尿道の断端と吻合した. 術後約6か月尿漏れに対する内服を要したが, 自排尿可能で, 通常の直腸切断術と何ら変わりないquality of life (以下, QOL) を保っている. 術後4年2か月で肝転移が出現して肝切除を行い, 5年2か月現在, 健在である. 本術式は根治性とQOLの維持が両立し, 前立腺・精嚢のみへの浸潤を疑う直腸癌に対し, 考慮すべきであると考えられたので若干の文献的考察を加え報告した.
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