はじめに: 上部胃癌の手術術式の選択にあたり, 噴門側胃切除が至適術式として採用できるか否かをリンパ節郭清の程度も含め, 壁深達度とリンパ節転移の状況に基づき検討した.
方法: 1973年から2005年に行われたH0P0M0のU領域, 初発単発胃癌切除例401例を対象とし, No.4d, 5, 6, 10, 11のリンパ節の転移の特徴, 臨床病理組織学的因子につき検討した.
結果: 深達度SSまでのNo.10転移例は郭清例126例中5例 (4.0%) であり, 全例病変の占居部位は胃上部左半にあった. 4例は腫瘍径が40mm以上であり, 1群リンパ節転移を伴っていた. No.11転移例は郭清例126例中8例 (6.3%) で, そのうちNo.11dの転移例は3例のみであり, 全例病変の占居部位は胃上部左半にあり, 1群リンパ節転移を伴っていた. そのうち, 2例は腫瘍径が40mm以上であった. No.4d転移例は郭清例189例中3例 (1.6%) で, 全例腫瘍径は40mm以上, 病変の占居部位は胃上部左半にあった. No.5, 6リンパ節転移例は認めなかった. 深達度SE, SIではそれぞれのリンパ節転移率は高率となる傾向であった.
結語: 深達度SSまでで占居部位が小彎に限局, あるいは腫瘍径が40mm未満もしくは1群リンパ節転移を認めない場合, No.4d, 5, 6, 10, 11dのリンパ節転移例はごくまれであった. したがって, 上部胃癌では上記の条件を満たす場合, 噴門側胃切除術, D1+No.7, 8a, 9, 11pのリンパ節郭清は至適術式と考えてよいと思われた.
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