日本消化器外科学会雑誌
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41 巻, 2 号
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  • 坂本 英至, 長谷川 洋, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬, 松本 直基
    2008 年 41 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 胃切除後の胆管結石症の治療に際しては, 消化管再建のため経乳頭的アプローチが困難な例も多く, 手術的治療のウエイトが大きくなる. 方法: 腹腔鏡下手術を試みた胃切除の既往を有する胆管結石症19例の成績を検討した. 成績: 15例で腹腔鏡下切石に成功した. 既往胃手術の内容は幽門側胃切除B-I再建7例, B-II再建7例, 胃全摘Roux-Y再建5例であった. 開腹移行率はおのおの14%, 29%, 20%で術式との間に有意な関連は見られなかった. 胃疾患は良性11例, 悪性8例で開腹移行率は良性27%, 悪性13%でこれも有意差はなかった.胃手術から胆管結石手術までの期間の長さと開腹移行率の間にも関連は見られなかった. 術前にERCを施行しえたのは19例中6例で施行率はB-Iでは57%, B-IIでは29%, 胃全摘では0%であった. 腹腔鏡下に完遂できた症例での胆管結石の切石方法は経胆嚢管法が5例と胆管切開が10例であり, 術後在院日数はおのおの4.6日と12.7日であった. 結語: 胃切除後症例では癒着剥離に時間がかかるものの, 多くの症例で腹腔鏡下手術が可能であり, 試みるべき術式と考えられた.
  • 吉田 貢一, 前田 一也, 菅原 浩之, 佐々木 正寿, 松井 一裕
    2008 年 41 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腫瘍径約10mmの上皮内病変から腫瘍最大径42mmの隆起型病変に19か月をかけて発育したことが確認された食道原発悪性黒色腫の1例を経験した. 食道悪性黒色腫の自然史を考えるうえでは非常に貴重な症例であると考え報告する. 症例は69歳の男性で, 胸部食道に径約10mmの褐色の色素斑を認め, 生検で食道メラノーシスと診断されていた. 19か月後の内視鏡検査で前回に指摘されていた色素斑の部位に一致して42×32×11mmの隆起性病変を認めた. 生検で悪性黒色腫と診断された. 以前の生検標本が再鏡検された結果, melanoma in siteと診断が訂正された. 切除術を施行したが術後7か月目に肝転移と肺転移を来し, 術後10か月目に死亡した.
  • 間宮 俊太, 神宮 和彦, 夏目 俊之
    2008 年 41 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性で, 19歳時にアカラシアにてgastric patch術を施行されていた. 2002年9月に通過障害が出現し, 2003年1月噴門部癌の診断で当科受診となった. 精査の結果long-segment Barrett's esophagusに発生したBarrett食道癌と診断し, 同2月横隔膜合併切除を伴う右開胸開腹胸部食道亜全摘噴門側胃切除, 胸腔内食道胃管吻合術を施行した. 切除標本では, 著明に拡張した食道胃接合部に周囲をBarrett上皮に囲まれた径5×4cmの2型腫瘍を認めた. 病理組織学的検査の結果は低分化型管状腺癌, pStageIVa (深達度T3, リンパ節転移N4), 根治度Bであった. 術後TS-1を服用し1年6か月間無再発で経過されたが, 肝再発を来し術後1年10か月で原病死された. アカラシアに扁平上皮癌が合併することは報告されているが, 腺癌の報告はまれである. 本症例も含めアカラシアに合併した腺癌について文献的考察を加え報告する.
  • 角南 栄二, 黒崎 功, 小向 慎太郎, 畠山 勝義
    2008 年 41 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は健常で精神疾患のない50歳の男性で, 平成18年6月下旬右季肋部痛にて近医を受診された. 上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部の対側に発赤を伴う隆起が認められた.また, 腹部単純X線検査写真および腹部単純CTにて, 実測2.5cm長の細い針状の異物が十二指腸から膵頭部に認められた. 腹腔内に遊離ガスや後腹膜膿瘍は見られなかった. そのため, 異物除去目的に同日緊急手術を施行した. 開腹検査所見では腹水あるいは腹腔内出血はなく, 十二指腸を授動し膵頭部を剥離すると, 2.5cm長の金属針が十二指腸を穿通して膵頭部に刺さるように認められた. 周囲臓器や血管の損傷は見られなかった. 手術は金属針を除去し, 胆嚢摘出術およびCチューブドレナージを施行した. 術後経過は良好であった. 健常な成人が金属針を誤飲し, さらにそれが十二指腸から穿通し膵頭部に達するのは, 報告例が少なくまれな1例と考えられた. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 間下 直樹, 横山 裕之, 越川 克己, 谷口 健次, 末永 裕之
    2008 年 41 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸球部原発hepatoid adenocarcinomaの1切除例を経験したので報告する. 症例は76歳の男性で, 健診目的の胃内視鏡検査にて十二指腸球部に2/3周性の隆起性腫瘍を指摘され当院受診となった. 内視鏡検査の生検で未分化癌または低分化腺癌が疑われた. 腹部造影CTでは主病変の他に明らかな転移は認められなかった. 十二指腸球部原発悪性腫瘍の診断で十二指腸球部を含む幽門側胃切除術を施行した. 病理組織学的検査でhepatoid adenocarcinomaと診断され, 免疫染色でAFPが強陽性であった. 術後第17病日の血清AFP値は1,133ng/mlと異常高値を示していたがその後基準値以下であった. 十二指腸原発のhepatoid adenocarcinomaを含むAFP産生腫瘍の報告例は本症例を含めて16例と極めてまれであり, 局所浸潤や肝転移を高率に伴い予後不良とされている. 治療法に関する一定の見解は定まっていないが, 文献的考察を加えて報告する.
  • 中村 登, 菰方 輝夫, 濱田 信男, 岩下 龍史, 九玉 輝明, 福倉 良彦, 北島 信一, 坂田 隆造
    2008 年 41 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 平成13年2月心窩部痛が出現し近医を受診. 腹部超音波検査, CTで肝外側区域を中心とした多発肝腫瘤を認めた. 生検で悪性腫瘍が疑われたため, 3月当科へ紹介された. CT, MRI, 血管造影検査では肝外側区域に約10cmの淡く濃染される腫瘍を認め, 内側区域と右葉にも腫瘍が散在していた. 肝内転移を伴う胆管細胞癌を疑い肝左葉切除および右葉の転移巣に対する部分切除とラジオ波焼灼 (以下, RFA) 術を施行した. 病理組織学的には索状, リボン状に配列する腫瘍細胞からなり, SynaptophysinとNSEにびまん性に陽性でChromograninAとGrimeliusはfocalに陽性なカルチノイドと診断された. 術前後に消化管を含めた全身検索を行っているが, 肝外病変を確認できなかった. 6年経過したが, 肝外病変を認めず肝原発カルチノイドと考えられた. RFA部を含め, 現在, 無再発生存中である. 肝原発カルチノイドはまれであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 鈴木 淳司, 鈴木 昌八, 坂口 孝宣, 福本 和彦, 太田 茂安, 稲葉 圭介, 竹原 康雄, 馬場 聡, 菊山 正隆, 今野 弘之
    2008 年 41 巻 2 号 p. 206-211
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性で, 平成17年10月, 腹痛のため前医を受診した. 腹部CTで肝内胆管と総胆管の拡張および胆嚢腫大を認めた. ERCPでは右肝管は造影されず, 総胆管内に透亮像がみられた. 経口胆道鏡検査にて総胆管内に多量の粘液貯留と右肝管粘膜面にイクラ状隆起を確認した. 以上の所見から, 右肝管原発の粘液産生胆管腫瘍と診断した. PTPEによる残肝側の代償性肥大を図った後, 平成18年1月, 肝拡大右葉切除, 肝外胆管切除・胆道再建術, リンパ節郭清を施行した. 右肝管を主座とする乳頭状隆起を有する腫瘍は, 杯細胞を多く含有し胆管内腔に突出する深達度fmの乳頭管状型腺癌であり, 病理組織学的にintraductal papillary mucinous carcinomaと診断された. 術後1年6か月の現在, 再発なく社会復帰している. 粘液産生胆管癌は比較的まれな疾患であり, 本疾患に関する文献的考察を加え報告する.
  • 柴崎 正幸, 万代 恭嗣, 日下 浩二, 伊地知 正賢
    2008 年 41 巻 2 号 p. 212-217
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は27歳の女性で, 男性から胸腹部を殴打された. 腹部CTにて膵頭部の腫大とリング状低濃度域を認め, 外傷性膵損傷と診断した. 当初, 保存的治療を行ったが右下腹部に膵仮性嚢胞を形成した. 経皮ドレナージを施行し瘻孔化したが, ドレーン造影にて膵体尾部の主膵管が明瞭に造影された. 保存的治療での治癒は望めないと判断し, 膵液瘻管空腸吻合術を施行した. しかし, 術後1年以降に膵炎を頻発し, MRCPにて同吻合部が狭窄し, 膵体尾部主膵管の拡張を認めた. 膵炎予防と膵内外分泌能の保持を目的に, 再手術 (膵管空腸吻合術) を施行した. 膵液瘻に対する膵液瘻管空腸吻合術は低侵襲で有用な術式であるが, 瘻孔がもともと瘢痕組織で独自の栄養血管を持たないため, 血流不全による狭窄や壊死を起こしやすいことも指摘されている. 今回, 膵液瘻管空腸吻合術では長期の開存が得られず, 膵管空腸吻合術が有効であった1例を経験した.
  • 竹内 聖, 柏木 裕貴, 藤田 博崇, 近藤 昭宏, 岡田 節雄
    2008 年 41 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は38歳の女性で, 発熱と左肩痛を主訴に近医を受診し, CTで脾腫瘍を指摘され当院紹介となった. 血液検査でCRPと可溶性IL-2レセプター値が上昇していた. 腹部CTで脾臓に82mmの造影されない辺縁明瞭な腫瘤を認めた. FDG-PETで腫瘤に一致してFDGの強い集積を認めた. 脾腫瘍の診断で脾臓摘出術を施行した. 肉眼的には78×76mmの境界明瞭, 充実性腫瘤で赤褐色と白色調の部分が混在していた. 病理組織学検査で脾原発の炎症性偽腫瘍と診断された. 脾原発炎症性偽腫瘍のFDG-PET所見についての本邦報告例はなく, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 釘宮 成二, 須藤 隆一郎, 金田 好和, 宮本 俊吾, 善甫 宣哉, 倉田 悟, 中安 清, 亀井 敏昭
    2008 年 41 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で, 61歳時に卵巣癌の診断のもと当院産婦人科にて手術および化学療法が施行されている. 経過観察中であったが, 腫瘍マーカー (CA125: 108.6U/ml) の上昇を認めたため, 腹部の精査が施行された. 腹部CTにて脾臓に直径2.0cmで境界明瞭, 内部は均一, 血流に富む腫瘍性病変を認めたため, 卵巣癌の脾転移を疑われ, 手術目的で当科に紹介された. 手術は全身麻酔下に右半側臥位で, 4ポート法にて腹腔鏡下脾部分切除術を施行した. 脾実質の切離には水流滴下式単極焼灼器 (シーリングフック; TissueLink SH2.0TM) を使用した. 摘出標本は大きさ3.5×2.2×2.5cm, 黄白色調, 境界明瞭, 弾性硬で病理組織学的診断にて卵巣癌の脾転移と診断された. 術後経過は良好で術後第4病日に軽快退院となった. 産婦人科にて化学療法が施行され, 術後10か月を経過したが無再発生存中である.
  • 内藤 嘉紀, 久米 徹, 内藤 雅康, 橋口 道俊, 岡村 孝, 江里口 直文, 内藤 壽則, 大島 孝一, 矢野 博久
    2008 年 41 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性で, 熱発, 左腰痛を主訴に受診. 4年前よりB型慢性肝炎の指摘あり. 腹部CTで脾内腫瘍を指摘され, PETでは脾臓に異常集積を認めた. 以上より, 脾臓原発悪性リンパ腫を疑い組織診断および腫瘍減量目的に膵尾部合併脾臓摘出術が施行された. 脾臓は19×15cmと著明な腫大を認め, 割面では多発性に白色結節状の腫瘍性病変を認めた. 組織学的には, 円形から類円形の核を有する中型異型細胞が結節様構造を呈しながら浸潤増殖し, 免疫染色では, CD20が陽性であった. 以上より, 脾辺縁帯リンパ腫 (B cell type) と最終診断した.術後早期に全身リンパ節腫脹が出現し, 血液内科に緊急入院. 入院当日よりTHP-COP療法を開始, 全身症状は改善傾向を認め自宅退院となり, 手術後13か月現在, 外来定期通院中である. 本症例は, 手術後の急性増悪に対して肝炎の増悪なく化学療法導入に成功した症例である.
  • 服部 正興, 鈴木 秀昭, 柴原 弘明, 久世 真悟, 高見澤 潤一
    2008 年 41 巻 2 号 p. 235-240
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で, 下腹部痛を主訴に当院を受診した. 腹部CT・超音波検査で限局性の小腸炎, 膿瘍を疑ったが, 炎症所見が強く手術を行った. 最大5cmの憩室を小腸腸間膜側に多数認め, うち回腸末端より80cmの憩室が間膜に穿通し膿瘍を形成していた. 小腸部分切除術 (25cm) を施行し順調に退院したが, 術後3か月目に下肢知覚鈍麻と失調性歩行が出現した. ビタミンB12が68pg/mlと低値で, MRI, T2で胸椎後索に高信号域を認めたため亜急性連合性脊髄変性症 (subacute combined degeneration; 以下, SCD) と診断し, ビタミンB12投与で歩行障害は改善した. 小範囲の小腸切除術後早期にSCDを発症したことより, 多数の大きな小腸憩室によるビタミンB12欠乏が術前よりあったと推察された. 多発小腸憩室を有する患者に絶食を必要とする開腹手術をする際は, ビタミンB12の評価をすべきと思われた.
  • 渡邉 克隆, 神谷 順一, 塩見 正哉, 東島 由一郎, 神谷 諭
    2008 年 41 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸管嚢腫様気腫症は腸閉塞, 腸管壊死や呼吸器疾患などに合併するまれな疾患である. 腸管嚢腫様気腫症が原因で腸重積を来した症例は国内, 海外の報告を合わせて16例と非常にまれである. 症例は22歳の男性で, 主訴は腹痛で受診した. 腹部単純CTで腸管壁に沿って多発する気腫様変化とmultiple concentric ring signを伴う腸重積を認めた. 大腸内視鏡検査では陥入した腸管の先進部にぶどうの房状に気腫を認めた. 以上の所見より, 腸管嚢腫様気腫症による腸重積と診断し, 内視鏡で整復した. 整復後から31日目に腸重積を再発した. 繰り返し発症するため外科的治療を選択し, 右結腸切除を施行した. 摘出標本は全体に浮腫を来しており, 上行結腸を中心にぶどうの房状に気腫を認めた. 気腫の原因は不明であった. 術後経過は良好で第8病日に退院した.
  • 原田 直樹, 塚本 好彦, 佐溝 政広, 宮下 勝
    2008 年 41 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で, 11年前より真性多血症 (polycythemia vera; 以下, PV) と診断され内科的治療を施されていた. また, IgA腎症による腎不全にて人工透析, ステロイド療法を施行されていた. 強い腹痛を主訴に外来受診. 大腸穿孔による汎発生腹膜炎と診断された. 緊急手術を施行し, 直腸S状結腸移行部に楕円形の穿孔を確認, S状結腸切除, 人工肛門造設術を施行した. 宿便性大腸穿孔と診断された. 術後集学的治療を行い術後40日目に軽快退院となった. PVを合併した患者の手術成績は不良で, 緊急手術例もまれである. 文献的考察とともに報告する.
  • 宮本 英典, 西岡 将規, 栗田 信浩, 吉川 幸造, 東島 潤, 宮谷 知彦, 本田 純子, 島田 光生
    2008 年 41 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    近年, MRI拡散強調画像 (以下, DWI-MRI) が腹部疾患の診断にも応用されている. 今回, S状結腸に全周性の狭窄を伴った多発大腸癌の口側の病変の評価としてDWI-MRIが有用であった症例を経験したので報告する. 症例は26歳の女性で, 家族歴は父方の祖母, 父が47歳に大腸癌で死亡. 平成17年6月頃より食欲不振と下痢が出現し近医を受診. 下部消化管内視鏡検査で直腸からS状結腸に多発する無数のポリープとS状結腸に全周性狭窄を認め精査加療目的で紹介された. 狭窄部位より口側に内視鏡は通過しなかったが, 術前のDWI-MRIで5か所の同時性多発癌と診断した. 平成17年8月, 大腸全摘術を施行. 病理組織学的診断で全大腸に計8か所の大腸癌を認めた. 遺伝子検索では, エクソン15のコドン1309から1311で欠失が認められFAPと診断された. DWI-MRIは狭窄病変により内視鏡が通過しない場合, 狭窄部位より口側の病変の検索に有用である可能性が示唆された.
  • 鹿野 敏雄, 打田 和治, 冨永 芳博, 片山 昭男, 松岡 慎, 杉本 博行, 金住 直人, 野本 周嗣, 竹田 伸, 中尾 昭公
    2008 年 41 巻 2 号 p. 258-263
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脳死肝移植後に発症した横行結腸癌の1例を報告する. 症例は58歳の女性で, 1989年原発性胆汁性肝硬変による肝不全のためアメリカで脳死肝移植を施行, その後本邦で副腎皮質ホルモンおよび免疫抑制剤を投与されていた. 2005年, 定期フォローアップのCTで横行結腸肝彎曲近傍に腫瘍を指摘され, 注腸造影X線検査, 大腸内視鏡検査により1型大腸癌と診断された. 腫瘍は移植肝に強固に癒着, 肝浸潤が疑われたため, 肝部分切除合併結腸右半切除術を施行した. 病理組織学的診断はwell differentiated adenocarcinoma, ss, n0, stage IIであった. 術後経過は良好で術後第12病日に退院となった. 腎移植後および肝移植後に免疫抑制剤が使用された場合, 悪性腫瘍発生頻度が高くなると言われており, 今後臓器移植の成績が改善するにつれ, 移植後患者の悪性腫瘍症例は増加していくと考えられる. 我々が検索しえた範囲では, 肝移植後の大腸癌手術症例は本症例が本邦初の報告である.
  • 大石 晋, 館岡 博, 池永 照史郎一期, 松谷 英樹, 吉崎 孝明, 黒滝 日出一, 武内 俊
    2008 年 41 巻 2 号 p. 264-268
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    尿路感染症症状を契機に発見されたS状結腸憩室炎による炎症性偽腫瘍の1例を経験した. 症例は62歳の女性で, 頻尿, 血尿を主訴に当院泌尿器科を受診. 抗生剤を投与されたが症状は改善せず入院となる. 症状改善後の膀胱鏡では膀胱三角部の粘膜の浮腫を認めた. 骨盤CT, MRIでは骨盤腔に約5cmの充実性腫瘍を認め, 注腸造影X線検査にて同部に一致してS状結腸の狭窄と憩室を認めた. 腫瘍はS状結腸憩室炎に起因するもので膀胱と強固に癒着していたが結腸膀胱瘻は認められなかった. 腫瘍を含めたS状結腸切除術を施行した. 腫瘍は壊死と出血を伴った線維性の腫瘤で, 漿膜下から結腸周囲脂肪組織内に認められ炎症性偽腫瘍と診断された. 術後は良好に経過し第21病日退院した.
  • 畑尾 史彦, 和田 郁雄, 山口 浩和, 野村 幸世, 山田 和彦, 吉川 朱実, 森 和彦, 藤田 英雄, 森田 敏宏, 上西 紀夫
    2008 年 41 巻 2 号 p. 269-274
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    近年, 虚血性心疾患に対して行われる冠動脈ステント治療において免疫抑制剤や抗癌剤を表面に塗布し徐放化させる薬剤溶出性ステント (drug-eluting coronary stent; 以下, DES) が多用されている. DESは従来の金属露出型ステントより再狭窄率が低いという重要な長所を持つが, 留置後1か月以降に遅発性血栓症が起こるリスクを有しており, 使用患者はアスピリンの終生投与およびチクロピジンの最低3か月以上の投与が必須とされている. DES留置後に消化器癌が指摘されると, 出血リスクを避けるために周術期に抗血小板薬の休止が必要となるが, ヘパリン点滴持続静脈投与への変更などによる抗凝固療法による代替の安全性に関するエビデンスは乏しい. 我々はDES留置後に胃癌が発見された3症例を経験したため文献的考察を含めて検討し, 指針を考案した.
  • 杉本 真樹, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 樋口 亮太, 矢川 陽介, 土屋 博紀
    2008 年 41 巻 2 号 p. 275
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
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