日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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41 巻, 4 号
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  • 岩槻 政晃, 芳賀 克夫, 片渕 茂, 池井 聰, 馬場 秀夫
    2008 年 41 巻 4 号 p. 373-379
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: イギリスで開発された外科技術評価法であるPhysiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity(以下, POSSUM)およびP-POSSUMの精度を, 消化器外科緊急手術で検討する. 方法: 当科で行った消化器外科緊急手術症例295例を対象に, POSSUMおよびP-POSSUMの予測死亡率を算出した. Endpointは原論文に従い, POSSUMでは30日死亡, P-POSSUMでは在院死亡とした. 実際の死亡率と予測死亡率の比(OE ratio)を各モデルの精度の指標とした. 結果: 全対象症例の術後合併症発生率は20.7%, 30日死亡率は6.5%, 在院死亡率7.1%であった. POSSUMは予測死亡率が0-49%の低リスク群で実死亡率が0.80%(2/249)であったにもかかわらず, 予測死亡率は13.3%(33/249)となり, 過大に死亡率を予測した (OE ratio 0.061, 95%信頼区間0.015-0.25). しかし, 予測死亡率が50-100%の高リスク患者では, 実死亡率37.7%(17/45), 予測死亡率51.1%(23/45)と比較的正確に死亡率を予測した(OE ratio 0.74, 95%信頼区間0.46-1.12). P-POSSUMでは, 予測死亡率が0-59%の低リスク群では実死亡率が2.2%(6/267) であるにもかかわらず, 予測死亡率は9.0%(24/267) であった (OE ratio 0.23, 95%信頼区間0.094-0.58).予測死亡率が60-100%の高リスク群では, 実死亡率55.6%(15/27), 予測死亡率81.5%(22/27) であった (OE ratio 0.68, 95%信頼区間0.47-1.00). 考察: POSSUMおよびP-POSSUMでは, 低リスク患者の死亡率を過大に予測する傾向があり, 我が国で使用する場合には注意を要する.
  • 竹内 英司, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 湯浅 典博, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 長澤 圭一, 安江 敦, 高橋 崇真, 三宅 隆史
    2008 年 41 巻 4 号 p. 380-387
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 大腸癌に対してmoving window法を用いた小開腹大腸癌根治術を施行した症例について検討を行った. 対象と方法: 2002年11月から2007年3月までに当院で大腸癌の診断で7cmの皮膚切開によるmoving window法により切除術が施行された175例を対象とした.これは同期間での当院の大腸癌手術症例数606例の29%に該当した. 吻合はfunctional end to end anastomosisもしくはdouble stapling techniqueによる器械吻合を用いた. 結果: 21名の外科医によって施行され, うち69例 (39%) が, 卒後3年目から9年目の12名の外科医であった. 39例 (22%) で創が10cmに延長された. 平均手術時間は127分, 平均出血量97mLで, 術中合併症としては, 縫合器による腸管損傷を1例 (0.6%) に認め, 翌日再手術を行った. 術後合併症を27例 (15%)(イレウス: 11例 (6%), SSI: 4例 (2%), ドレーンの逆行性感染: 3例 (2%) など) に認めたが, 縫合不全はなかった. 癌性腹膜炎の増悪, 認知症がきっかけの肺炎の悪化による在院死をそれぞれ1例に認めたが, 手術関連死亡はなかった. 82例 (47%) にクリニカルパスを使用し, 75例 (91%) がパスを完遂した. 全症例の平均術後在院日数は14日であった. 考察: 本法は通常の開腹手術と同様の直視下の3次元の手術であるため, 一般の外科医でも安全に施行できる低侵襲手術である.
  • 高橋 崇真, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 長澤 圭一, 安江 敦, 大森 健治, 小林 陽一郎
    2008 年 41 巻 4 号 p. 388-392
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で, 胃癌 (pT1, pN0) にて胃全摘, Roux-en-Y再建を施行した. 術直後より強い胸やけのため経口摂取が不良となり, 術後4か月で12kgの体重減少を認めた. 上部消化管内視鏡検査にてGrade D (ロサンゼルス分類) の逆流性食道炎を認め, 24時間食道内ビリルビンモニタリングにて測定時間の33.4%に仰臥位優位の胆汁逆流を認めた. 上部消化管造影検査にて食道空腸吻合部と空腸空腸吻合部との距離が約30cmと短く, これが十二指腸液逆流の原因と考え再手術を施行した. 開腹し空腸空腸吻合部を切離し, これの1m肛門側の空腸に空腸を再吻合した. 術後, 胸やけは消失し, 24時間食道内ビリルビンモニタリングでも胆汁逆流は認めなかった. 再手術後3か月目に行った上部消化管内視鏡検査でも逆流性食道炎は治癒していた. 食道内ビリルビンモニタリングは十二指腸液逆流の客観的評価を可能にし, 手術適応の決定, 治療効果の判定に有用であった.
  • 岡 義雄, 西嶌 準一, 伊豆蔵 正明, 宮崎 知, 中野 博史, 西田 幸弘, 奥山 正樹, 曹 英樹, 酒田 和也, 玉井 正光
    2008 年 41 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, めまい, タール便を主訴に来院した. 血液検査で貧血と高CEA血症を認め, 上部内視鏡検査, CTで多発肝転移とリンパ節転移を伴う胃癌と診断され, まずlowdose 5-fluorouracil (以下, 5-FU)/CDDP療法を行った. その結果, PRの効果を得たので幽門側胃切除術, D2郭清, 肝部分切除術を施行した. 5-FU肝動注を8か月行ったが, 術後1年8か月, 肝転移を生じ, 5-FU肝動注を再開. 効果NCで, 単発のため再度肝部分切除術を行った. 初回手術より7年半経過した現在, 再発なく, CEAも正常で健在である. 胃癌肝転移症例の中には本例のように, 積極的な集学的治療を行い, 長期生存を得るものもあり, 胃癌の肝転移だからといって諦めるべきではない.
  • 木村 準, 加治 正英, 山本 精一, 前田 基一, 薮下 和久, 小西 孝司, 阿保 斉, 内山 明央, 三輪 淳夫
    2008 年 41 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の女性で, 主訴は心窩部痛であった. 上部消化管造影X線, 胃内視鏡検査にて幽門輪の狭窄が認められ, 生検を施行したが悪性細胞は認められなかった. 腫瘍マーカーはCA19-9 660U/ml, CA125 40.8U/mlと高値であり, CEAは0.5ng/mlと正常であった. CTにて幽門輪の壁肥厚, 中等量の腹水が認められ, 診断・治療目的で開腹術を施行した. 開腹すると幽門輪に5.0×2.0cm大で, 全周性の粘膜下腫瘍が存在しており, 腹膜播種を多数認めた. 幽門輪の狭窄を解除するため, 姑息的に幽門側胃切除術を施行した. 組織学的にHeinlich II型の胃原発異所性膵癌の診断が得られた. 術後, MRIを見直してみると膵管と思われる構造物が幽門輪に認められており, 異所性膵の診断にMRIが有用な検査である可能性が示唆された.
  • 吉田 信, 樫山 基矢, 高梨 節二, 高木 拓実, 真崎 茂法, 河島 秀昭
    2008 年 41 巻 4 号 p. 406-411
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝内胆管嚢胞腺腫はまれな肝嚢胞性腫瘍であり, 中でも卵巣様間質を伴うものはCystade-noma with mesenchymal stromaとして報告されており, 全例が女性である. また, 右肝円索は肝内門脈枝分岐異常を伴うことが多く, 肝切除の際に注意を要する. 症例は72歳の女性で, 腹部CTでは, 肝S5-8に最大径6.0cmの多房性嚢胞性病変を認め, 壁の一部に石灰化を伴うが, 嚢胞内の結節は認めなかった. 血清CA19-9は高値を示した. 肝嚢胞性腫瘍と診断し肝右葉切除を施行. 肝円索は腫瘍近傍から肝内へ連続し, その左側に胆嚢を認めた. 術中超音波検査所見では門脈左枝に臍部の形成は認めず, 肝円索は門脈前区域本幹と連続していた. 嚢胞内は隔壁を有し無色透明な粘液が貯留していたが, 明らかな結節は認めなかった. 病理組織学的検査所見より卵巣様間質を伴う肝内胆管嚢胞腺腫と診断. 術後CA19-9値は正常化し, 現在まで無再発生存中である.
  • 山井 礼道, 吉田 卓弘, 清家 純一, 本田 純子, 三好 孝典, 武知 浩和, 湯浅 康弘, 梅本 淳, 丹黒 章, 島田 光生
    2008 年 41 巻 4 号 p. 412-417
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の孤立性大動脈周囲リンパ節転移に対し, 切除を行い良好な経過を得た症例を経験したので報告する. 症例は60歳代の男性で, C型肝炎を経過観察中の2005年に腹部超音波検査で肝内腫瘤を指摘され当院紹介となった. CTで肝内に4cmと4.5cmの肝細胞癌を2個認め, 大動脈周囲に2.8cmの孤立性腫瘤を認めた. 大動脈周囲の孤立性腫瘤はリンパ節転移を疑ったが, 鑑別診断に難渋したため, 肝内病変の治療を先行し, 経皮的局所療法を施行した. 2月の経過観察中に大動脈周囲の腫瘤は著明に増大傾向を示した. リンパ節転移としても孤立性であり, また, 下大静脈と接することより, 今後増大すれば予後因子と成りうると判断し, 切除を行った. 術後経過は良好で, 術前2,685ng/mlと高値を示したAFPは3月後には3ng/mlと著明に低下した. 現在2年を経過するがAFPの上昇, 再発は認めていない. 肝細胞癌大動脈周囲孤立性リンパ節転移の報告はまれであり報告する.
  • 森田 和豊, 武冨 紹信, 山下 洋市, 福原 崇介, 萱島 寛人, 黒田 陽介, 伊藤 心二, 小西 晃造, 川中 博文, 前原 喜彦
    2008 年 41 巻 4 号 p. 418-423
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性で, 平成2年にC型慢性肝炎を指摘され, 平成16年5月にS8径2.5cm, S6径1cmの2個の肝細胞癌に対し, 他院で肝動脈化学塞栓療法 (transcatheter arterial chemoembolization; 以下, TACE) を施行した. 平成17年11月にS6に局所再発し, 再びTACEを施行したが, 効果なくS6局所再発部位が径2.5cmに増大, 当科紹介となった. 入院時の肝機能はChild-Pugh分類Grade B (8点), 肝障害度Cで肝切除術適応外と考えられた. しかし, 本症例は著明な胃腎シャントがあり, シャント閉塞による肝機能改善を期待してバルーン下逆行性経静脈的塞栓術を施行した結果, Child-Pugh分類Grade A (6点), 肝障害度Bに改善したため, 肝S6部分切除術を施行しえた. 門脈-大循環シャントを認める高度肝機能障害合併肝細胞癌症例では, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術により肝機能が改善し肝切除術の適応となる症例があり, TACE抵抗性の症例では特に有用な治療戦略になりうる.
  • 妻鹿 成治, 川崎 亮輔, 岩井 和浩, 浅野 賢道, 狭間 一明
    2008 年 41 巻 4 号 p. 424-429
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は生来健康な24歳の男性で, 急性腹症にて当院へ救急搬送となった. 初診時腹部CTにて肝外側より肝下面を中心に腹水貯留を認め, 腹部所見, 血液検査結果などを踏まえ, 同日緊急手術を施行した. 開腹時所見として, 胆汁性腹水の貯留を認め, Hartmann's pouch近傍の胆嚢体部に径約3mmの穿孔部を確認した. その他, 腹腔内臓器に明らかな異常所見は認めず, 胆嚢摘出および腹腔内洗浄ドレナージ術を施行した. 摘出胆嚢には胆石や慢性炎症所見などは認められず, 特発性胆嚢穿孔と考えられた. 病理組織学的に穿孔部近傍の微小血管に血栓を認めた. 術後経過は良好で第10病日に退院となった. 上腹部痛を主訴とし, free airを伴わない腹水貯留を認める急性汎発性腹膜炎症例では, 若年者においても本疾患を念頭におくべきであると考えられた.
  • 服部 正興, 鈴木 秀昭, 柴原 弘明, 久世 真悟, 高見澤 潤一
    2008 年 41 巻 4 号 p. 430-434
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で, 右下腹部痛を主訴に当院を受診した. 腹部手術の既往はない. 入院後イレウスと診断しイレウス管で減圧した. イレウス管で造影をしたのち多列検出CT (Multidetector-row CT; 以下, MDCT) を行ったところ, 盲腸の腹尾側にclosed loop状の回腸があり盲腸周囲ヘルニアと診断した. 腹腔鏡下に盲腸外側のヘルニア門を開放して手術を終了した. 術後経過良好で術後5日目に退院した. 自験例の盲腸周囲ヘルニアは, 本邦でよく引用される, 上回盲窩, 下回盲窩, 虫垂後窩, 盲腸後窩型の四つの分類に当てはまらない型の外側型盲腸周囲ヘルニアであった. イレウス管造影後のMDCTが術前診断に有用で, 低侵襲な腹腔鏡下手術が可能であった.
  • 窪田 晃治, 原田 道彦, 久米田 茂喜, 大谷 方子
    2008 年 41 巻 4 号 p. 435-440
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の女性で, 腹部膨満感が出現し, 近医を受診. 左上腹部に腫瘤を触知され当院紹介となった. 腹部CT所見およびMRI所見では, 横行結腸と腎臓の間に14.5×14×6.5cmの腫瘍性病変を認めた. 上部消化管内視鏡および造影検査所見では, 胃体部, 大彎側に粘膜下腫瘍を認めた. 以上より, 胃または横行結腸原発壁外発育型gastrointestinal stromal tumor (以下, GIST), または原発不明の腹腔内間葉系腫瘍と診断し, 手術施行した. 腫瘍は結腸間膜に存在し, 結腸および膵尾部と癒着していた. 腫瘍摘出および結腸脾彎曲部, 脾臓, 膵尾部合併切除術を施行し, 腫瘍を一塊として摘出した. 病理組織学的検査所見は, GISTと同様の所見で, 他臓器との連続は認められなかった. 以上より, 腸間膜原発GISTと診断した. 腸間膜原発GISTは非常にまれであるため若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 高橋 亮, 金子 猛, 中山 昇, 片岡 佳樹, 鷲田 昌信, 山崎 誠二, 梶原 建熈
    2008 年 41 巻 4 号 p. 441-445
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で, 下腹部痛を主訴として受診した. 腹部CTにて回盲部尾側にブドウ房状の造影効果を伴う.胞様構造物を認め, 急性虫垂炎または虫垂腫瘍が疑われたため, 虫垂切除術を施行した. 摘出標本に硬結を認め, 同部位に憩室が存在した. 病理組織学的検査では虫垂先端部のみに急性炎症所見を認め, 憩室部は慢性炎症を伴う真性憩室であった. 無症候性虫垂真性憩室を伴った急性虫垂炎と最終診断した. 虫垂真性憩室はまれな疾患で, 本邦報告は自験例が6例目となる. 一般に, 虫垂憩室症は炎症を伴うと穿孔率が27~66%に達するとされ, 無症状で発見された場合に予防的虫垂切除を推奨する主張がみられる. しかし, その根拠は不正確な文献引用に拠っており, また65歳以上の高齢者では急性虫垂炎の穿孔率も41~77.8%と高く, 虫垂憩室症のみ一律に予防的虫垂切除を勧める根拠は薄いと考えられた.
  • 廣川 高久, 山本 稔, 坂本 雅樹, 沢井 博純, 竹山 廣光, 真辺 忠夫, 高橋 智
    2008 年 41 巻 4 号 p. 446-451
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Inflammatory myofibroblastic tumor (以下, IMT) は肺を好発部位とする腫瘤であるが, 下部消化管に発生することは非常にまれである. 今回, 急速に増大し, 悪性腫瘤との鑑別が困難であった虫垂原発のIMTを経験したので報告する. 症例は58歳の男性で, アルコール性肝硬変にて当院内科通院中, 右下腹部の腫瘤を触知, その後腫瘍の増大傾向が認められ入院精査となった. CTにて盲腸から背側に虫垂と一塊になった造影効果を伴う腫瘤を認めたが, 下部消化管内視鏡検査にて盲腸が下方から壁外性に圧排されているのみで腫瘍性病変は認めなかった.また, 注腸造影X線検査にて上行結腸から盲腸にかけ多発する憩室を認め, 盲腸は変形していた. 以上より, 盲腸周囲の炎症性変化を疑うが, 増大傾向があり悪性腫瘍も否定できず, 腹腔鏡下回盲部切除術を施行, 病理組織学的検査にてIMTと診断された.
  • 久保 秀文, 兼清 信介, 多田 耕輔, 長谷川 博康
    2008 年 41 巻 4 号 p. 452-457
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性で, 2007年4月右側腹部痛および右乳房腫瘤を自覚して近医を受診し右腎の異常を指摘され, 精査加療目的で当院紹介となった. 腹部CTで右腎周囲右腎中下極側に境界不明瞭な腫瘤性病変を認めた. 注腸透視検査では同腫瘤は上行結腸を一部圧排していた. マンモグラフィー, 乳腺超音波検査で右乳腺C領域に一部の辺縁不整な腫瘤を認め, 針生険ではlow grade malignant potentialのある腫瘍が疑われた. 術前に確定診断は得られず, 間葉系腫瘍として摘出することとし, 2007年5月経腹的後腹膜腫瘍, 右腎摘出, 上行結腸部分合併切除術, 右乳房腫瘤を含めた右乳房部分切除術を施行した. 病理組織学的には多形型脂肪肉腫であり, 結腸壁への浸潤を認め, 乳腺腫瘤も同様の腫瘍細胞が増生しており乳腺転移が疑われた. 術後経過は良好で退院となった. 乳腺転移と結腸浸潤を伴った脂肪肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 松谷 毅, 笹島 耕二, 丸山 弘, 二見 良平, 土屋 喜一, 柏原 元, 松田 明久, 鈴木 成治, 田尻 孝
    2008 年 41 巻 4 号 p. 458-463
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    切除不能・再発食道扁平上皮癌に対する5-fluorouracil (以下, 5-FU)/cisplatin (以下, CDDP) 併用療法 (以下, FP療法) 後のsecond-line chemotherapyとしてのdocetaxel (以下, TXT)/5-FU/CDDP併用療法の有効性を検討した. FP療法施行後の食道癌術後再発例 (10例), 切除不能例 (3例) を対象とした. 化学療法レジメンは, TXT 40mg/m2(day 1, 3時間), CDDP 10mg/body (day 1~5, 2時間), 5-FU 500mg/body (day 1~5, 24時間) の点滴静注を1コーとし, 2週間の休薬期間をおいた. 2コース終了の2週間後に治療効果判定を行った. 平均2.6コース施行できた. RECISTによる効果判定では, PR 6例, SD 6例, PD 1例で奏効率は46%であった. 本治療開始後の生存期間中央値は222日であった. 有害事象は, grade 3, 4の白血球減少を13例中5例 (38%) に認めた. 本化学療法は, 進行・再発食道扁平上皮癌に対するsecond-line chemotherapyとして安全で高い有効性を示した.
  • 宮木 祐一郎, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 鷲津 潤爾, 相川 潔, 小林 利彦
    2008 年 41 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    小腸絞扼性イレウス診断における拡張腸管内貯留液CT値の有用性について検討した. 2004年3月~12月までに当院にて小腸イレウスと診断し, 拡張腸管内貯留液と腹水のCT値が測定可能であった34例を対象とした. 方法は, 拡張した腸管内貯留液のCT値を異なった3点で測定し, 腹水のCT値は2点で測定した. 経過と手術所見から絞扼群11例と非絞扼群23例とに分類し, 2群間のCT値を比較した. 拡張腸管内貯留液のCT値は絞扼群が28.5±8.5HU, 非絞扼群が18.3±6.5HUで両群間に有意差を認めた (p<0.01). receiver operating characteristic curve曲線による検討から絞扼性イレウスのcut off値は22HUと考えられた. 腹水CT値では有意差はなかった. 拡張腸管内貯留液CT値測定が絞扼性イレウスの診断に有用であると考えられた.
  • 田嶋 ルミ子, 横山 幸生, 有馬 信之, 馬場 憲一郎, 松田 正和
    2008 年 41 巻 4 号 p. 469-473
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1989年から2005年までの17年間に当科にて経験した痔瘻癌7例の臨床病理組織学的特徴と治療成績の検討を行った. 男性5例, 女性2例, 平均年齢67歳. 痔瘻から癌発見までの平均期間は26.4年. 全例に肛門部痛を認め, 痔瘻分類はII Ls症例4例, 他は不明であった. 平均腫瘍最大径は55mm, 組織型は粘液癌が5例, stage II以上の進行例が6例で, 仙・尾骨, 肛門挙筋などへの浸潤のためradial marginが不十分となったものは3例に及んだ. 全症例に腹会陰式直腸切断術を施行し, 術後化学療法3例, 術後放射線治療も3例に行われた. 無再発生存例はわずか2例で, 肺転移のみの1例に化学療法を施行中である. 局所再発例の4例は全例死亡し, 平均生存期間は2.3年であった. 局所再発は予後不良因子であり, 治療成績向上のためには早期発見と十分な断端確保を目指した治療方法の選択が肝要である. 断端確保が困難な症例には術前放射線化学療法の展開が望まれる.
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