日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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41 巻, 8 号
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  • 見前 隆洋, 二宮 基樹, 西崎 正彦, 原野 雅生, 青木 秀樹, 小野田 正, 塩崎 滋弘, 大野 聡, 桧垣 健二, 高倉 範尚
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1551-1556
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 幽門側胃切除術後にRoux-en-Y (以下, R-Y) 再建を選択した時に, 術後にRouxstasis syndrome (以下, RSS) の発症が問題となる. 方法: 1995年1月から2004年12月までの10年間に当院で胃癌に対して幽門側胃切除術後にR-Y再建法を施行した109症例を対象として, RSSに関して検討した. 結果: 109例中13例 (11.9%) にRSSが発症しており, 端側吻合では37例中7例 (18.9%) 端端吻合では72例中6例 (8.3%) と頻度が減少した. 有意差は認めなかった (p=0.1257). しかし, 重症例に限れば端端より端側が生じやすかった (p=0.0434). なお, 郭清度が増せば発症率も増加したが, 年齢, 性別, 出血量, 手術時間, 自律神経温存との関係は認めなかった. 考察: RSSの成因として残胃の機能的通過障害の存在が考えられた. RSS防止のためには吻合は端側より端端が有利と考えられた.
  • 辻本 広紀, 小野 聡, 望月 英隆
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1557-1564
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    生体は細菌などの外敵の侵入や自身の組織損傷などを迅速に察知し, それらの排除や修復に見合った反応を惹起する. 生体内には侵襲時に組織損傷の存在を生体に知らしめるとともに, それ自体に組織障害性を有するmediators (以下, alarmins) が産生されるが, Alarminsはtolllike receptors (以下, TLRs) を介してそのシグナルが伝達されるものが存在することが示されている. 細菌侵入時には, 生体の免疫細胞はTLRsを介して病原関連分子パターン (pathogenassociated molecular pattern; 以下, PAMPs) によって活性化され, 炎症性サイトカインやalarminsを産生する. 一方, 非感染性侵襲時には直接的にalarminsが産生される. このように, 感染性・非感染性を問わず, 侵襲時に産生されるalarmins は組織・臓器障害を惹起し, 同時にTLRsなどを介してさらなるalarminsの産生を促進する. このようなサイクルが, 外科侵襲時の臓器障害の発生・増悪のメカニズムとして考えられる. しかし, TLRsは病原体侵入の最初の段階でセンサーとして働くため, いかなる時期にTLRsシグナルを制御すべきか現時点では不明である. 今後, TLRやPAMPs, alarminsとのinteractionに立脚した侵襲への対応策が確立されれば, 外科侵襲時の組織・臓器障害に対する有用な治療法として期待されよう.
  • 岡田 禎人, 安部 哲也, 新井 利幸, 佐伯 悟三, 広松 孝, 會津 恵司, 中川 陽史, 檜垣 栄治, 山内 康平, 横井 俊平
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1565-1570
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 検診で行った上部消化管内視鏡検査で中部食道にメラニン沈着を伴う1型腫瘍を指摘され, 生検で食道悪性黒色腫と診断された. Positron emission tomography/CTでは, 縦隔内の小リンパ節は複数指摘可能であったが, それらへのtracerの集積は認めず, 原発巣以外の病変は指摘できなかった. 以上の検査所見より, リンパ節転移のない食道原発悪性黒色腫と診断した. 切除手術の意義はあると判断し, 右開胸開腹, 食道亜全摘, 3領域郭清, 胸骨後再建術を施行した. 切除標本の病理組織学的検査所見は, T1b (SM), N0であり, 術前の診断どおりリンパ節転移は認めなかった. 術後補助化学療法は行わなかった. 術後1年の現在, 再発は認めていない. 食道原発悪性黒色腫はまれな疾患であり, 確立した治療法はなく予後不良といわれているが, 早期例では予後が期待できるとの報告もあり, 術前の病期診断は非常に重要である.
  • 松本 壮平, 高 済峯, 上野 正闘, 若月 幸平, 榎本 浩士, 樋野 光生, 西和田 敬, 上野 正義, 鶴井 裕和, 中島 祥介
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1571-1577
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌同時性肝転移は腹膜播種などを伴うことが多く予後不良で, 確立された有効な治療法はない. 今回, degradable starch microspheres (以下, DSM) を用いた肝動注化学塞栓療法と5-FU, CDDPによる肝動注化学療法を行い切除可能となった胃癌同時性肝転移の1例を経験した. 症例は67歳の男性で, 全身倦怠感を主訴に近医を受診し, 精査の結果, 胃癌および同時性肝転移と診断された. 17cm大の巨大な肝転移巣を切除不能と判断し, 肝動注化学塞栓療法と肝動注化学療法を行った. これらの治療が奏効し手術可能となったため, 幽門側胃切除術および肝左3区域切除術を施行した. 患者は術後18か月現在生存中である. DSM併用肝動注化学塞栓療法と肝動注化学療法は切除不能な胃癌肝転移に対して有効な治療法となる可能性が示唆された.
  • 永橋 昌幸, 土屋 嘉昭, 野村 達也, 梨本 篤, 藪崎 裕, 瀧井 康公, 中川 悟, 田中 乙雄, 加藤 俊幸, 太田 玉紀
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1578-1583
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 家族歴として, 一卵性双生児の兄が家族性大腸腺腫症で加療中である. 1974年, 家族性大腸腺腫症と診断され, 結腸全摘術, 回腸直腸吻合術を施行された. 1991年, 残存直腸の多発ポリープに対し残存直腸切除, 回腸. 肛門吻合術を施行された. 2000年, 多発胃癌に対し, 幽門側胃切除術を施行, 2002年, 残胃癌に対し内視鏡的粘膜切除術, 2006年, 局所切除術を施行された. 2007年3月, 上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部直下に0-IIa病変を認め, また十二指腸に密生する多発ポリープを認めた. いずれも生検で高分化腺癌と診断された. 5月下旬, 胃局所切除術, 膵頭温存十二指腸全摘術を施行した. 病理組織学的診断は, 胃は高分化腺癌, 十二指腸は高分化腺癌および腺腫の混在する病変で, いずれも粘膜内癌であった. 術後, 縫合不全, 膵液瘻, 胆汁瘻などの合併症なく順調に経過し, 第11病日に退院した.
  • 川原 隆一, 酒井 丈典, 古川 哲, 石川 博人, 木下 壽文, 青柳 成明, 白水 和雄
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1584-1587
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝外胆管走行異常は術中胆管損傷の原因として注意が必要である. 左右肝管合流部の位置より十二指腸乳頭側に位置する低位合流尾状葉胆管枝を伴う十二指腸乳頭部癌の1切除例を経験したので報告する. 症例は64歳の男性で, 黄疸にて近医受診CT, 上部消化管内視鏡検査にて乳頭部癌と診断され, 手術目的に当院入院となった. 入院時胆道造影検査にて, 総胆管より左肝管近傍へ流入する分枝を認め低位合流尾状葉胆管枝と診断. 手術は膵頭十二指腸切除を施行した. 手術所見は総胆管の左側より肝内に伸びる径2mmの尾状葉枝を認めた. 術後のCTでも尾状葉枝の拡張認めず退院となった. 異所肝管は術中損傷の原因の一つとして重要である. 2重支配を持たない異所肝管は結紮してはならないという報告や, 径2mm以上の胆管は再建の必要があると報告されている. 術前画像の詳細な検討とともに, 低位合流尾状葉胆管枝の存在にも注意が必要と考えられた.
  • 最上 希一郎, 市原 利晃, 佐藤 勤, 柴田 聡, 高橋 智和, 阿部 ゆき, 山本 雄造
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1588-1593
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 十二指腸乳頭部癌と診断され, 術前検査で正中弓状靭帯による腹腔動脈起始部の狭窄を認めた. 手術の各時点において総肝動脈, 胃十二指腸動脈, 固有肝動脈の血流量を測定した. 正中弓状靭帯の切離前は胃十二指腸動脈から固有肝動脈へは求肝性に, 総肝動脈へは遠肝性に流れ, 固有肝動脈の血流量は332ml/minであった. 正中弓状靭帯を切離後に胃十二指腸動脈を試験遮断したところ, 総肝動脈の血流は求肝性となり固有肝動脈血流量は332ml/minと十分な血流を確認できた. この後, 胃十二指腸動脈を切離し, 膵頭十二指腸切除術を行った. 正中弓状靱帯による腹腔動脈幹狭窄を伴う患者に膵頭十二指腸切除術を行うにあたって術中に狭窄部開放に伴う血流動態の変化を測定することにより安全な手術が可能であった.
  • 座波 久光, 砂川 宏樹, 嘉数 修, 渡邊 未来子, 比嘉 幹子, 川上 浩司, 稲嶺 進, 當山 鉄男, 大城 直人, 仲間 健
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1594-1598
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の女性で, 人間ドックの腹部超音波検査で肝右葉に16×12cm大の嚢胞性病変を指摘された. 内部には隔壁と充実性成分を認めたため, 陳旧性出血を伴った単純性肝嚢胞と胆管嚢胞腺腫・腺癌との鑑別目的で嚢胞内溶液の穿刺を行った. その結果, 嚢胞液中のCA19-9は280,000U/mlと異常高値であった. 画像および穿刺液の腫瘍マーカー値より, 胆管嚢胞腺腫・腺癌は否定できないと判断し, 手術を施行した. 術中所見では厚い皮膜に包まれた嚢胞性腫瘤を認め, 腫瘤の核出術を行った. 組織学的検査では陳旧性出血を伴う単純性肝嚢胞であり, 腫瘍性病変は認めなかった. 肝嚢胞性疾患の鑑別診断に, 嚢胞液内の腫瘍マーカーを用いる場合には注意が必要である.
  • 福本 和彦, 鈴木 昌八, 森田 剛文, 大石 康介, 鈴木 淳司, 稲葉 圭介, 坂口 孝宣, 竹原 康雄, 馬場 聡, 今野 弘之
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1599-1603
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 心窩部痛を主訴とし, 当科入院後の検査で肝内直接浸潤と大網浸潤を有する胆嚢癌と診断された. また, B型肝炎ウイルスによる肝硬変を合併していた. 癌浸潤のある大網とともに肝S4a+S5部分切除術を行い, 肝外胆管切除・胆道再建術を併施した. 少量の腹水貯留を認め, リンパ節郭清はD1郭清に留めた. 病理組織学的には高~中分化管状腺癌から成るpT4, pN0, pM (-), fStage IV aの胆嚢癌であり, pHM2のため非治癒切除となった. 再発を危ぐし, 補助化学療法として低用量Gemcitabine (以下, GEM) 療法を施行した. 術後1年目はGEM 400mg/回/週, 3週投与1週休薬を継続し, 以後は隔週投与とした (総投与量48,800mg). 5年経過した現在, 再発なく社会復帰している. 胆道癌切除例に対する低用量GEM化学療法は, quality of lifeを損なうことなく継続可能な補助療法の一つとして期待できる.
  • 井上 隆, 青松 幸雄, 小林 経宏, 田仲 徹行, 桑田 博文, 中島 祥介
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1604-1609
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で, 近医にて腹部エコー検査, CTを施行され, 肝外側区域の嚢胞性腫瘤病変と診断された. 精査加療目的に当科紹介受診した. CT, MRIにて膵体部より頭側腹側に突出する2房性嚢胞性腫瘤を認めた. 膵粘液性嚢胞腫瘍の術前診断にて開腹した. 術中所見, 術中超音波検査にて悪性所見を認めず, 膵腫瘍摘出術・周囲のリンパ節pick upを施行した. 病理組織学的検査所見にて繊維化を伴った膵実質より連続する嚢胞を認めた. 嚢胞上皮下に乾酪壊死を伴った類上皮細胞からなる肉芽腫およびラングハンス巨細胞を認め, 孤立性膵結核と診断した. 摘出したリンパ節も同様の所見であった. 術後に抗結核剤の4剤併用療法を2か月間施行後, 2剤併用療法を1年間施行し, 現在再発は認めていない. 今回, 孤立性膵結核の1切除例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.
  • 中村 典明, 中島 和美, 五関 謹秀, 有井 滋樹
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1610-1614
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性で, 閉塞性黄疸を契機に膵癌と診断され, 2002年8月膵頭十二指腸切除を施行した. 2005年3月, CA19-9の上昇が認められ, 腹部CTにて上腸間膜付近の局所再発と診断. 外科的切除は困難と判断し, ゲムシタビン (以下, GEM) を用いた化学放射線療法 (GEM 400mg/m2/week (5週連続投与), および2.0Gy×25回 (50Gy)) を施行. 有害事象は見られなかった. CA19-9は速やかに低下, CT上腫瘍の縮小が認められた. 以降, 外来にてGEM (1,000mg/m2) を隔週で投与しているが, 初回治療より5年が経過した現在, 再燃の兆候は認めていない. 膵癌術後補助療法の報告は多いが, 再発巣に対する積極的な治療報告は少ない. 今回, 報告した化学放射線療法は, 再発巣に対しても有効な治療法と考えられた.
  • 日高 英二, 石田 文生, 久保 かずえ, 辰川 貴志子, 遠藤 俊吾, 田中 淳一, 工藤 進英
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1615-1618
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下虫垂切除後, 遺残虫垂が索状になって回腸と癒着し絞扼性イレウスに至った1例を経験したので報告する. 症例は45歳の女性で, 他院で腹腔鏡下虫垂切除術を受けていた. 上腹部痛にて当院外来を受診. 腸閉塞の診断で保存的に経過をみるも改善せず, 筋性防御も出現したため手術を施行した. 約10mmの遺残虫垂が, 終末回から約40cm口側の回腸と癒着し, その間の回腸が癒着部を軸に捻転し, 約36cmの回腸が絞扼されていた. 癒着を剥離し, 捻転解除後, 血行障害を来した回腸を含めた回盲部切除術を施行した. 腹腔鏡下虫垂切除後に, 遺残虫垂が癒着して絞扼性イレウスを来した報告は, 1例のみであった. 虫垂断端を埋没しない腹腔鏡手術では断端を十分な視野で確認し, 虫垂を遺残させないように注意すべきである. また, 腹腔鏡下虫垂切除術後の腸閉塞の場合, 遺残虫垂による癒着も原因の一つとして考慮すべきであろう.
  • 秋山 芳伸, 尾曲 健司, 松原 健太郎, 北郷 実, 服部 裕昭, 鈴木 文雄, 大高 均
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1619-1624
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性で, 尿管結石経過観察目的のCTにて上腸間膜動脈 (superior mesenteric artery; 以下, SMA) の解離が診断され当科紹介となった. 小腸虚血を疑わせる腹部症状なく, CT上解離動脈の拡張なく解離腔より分枝する空腸動脈も認められなかったため, 抗血小板剤の内服および血圧コントロールにて経過観察とした. 1年目のCTにて解離腔の完全な血栓閉塞が認められた. この時点でSMAに解離腔による真腔の圧迫や解離腔の拡張所見なく, 小腸虚血, 腹部症状も認められなかった. 大動脈解離を伴わない孤立性のSMAの解離は比較的まれであり, 小腸虚血症状を呈し緊急大量腸切除を必要とすることもあるが, 解離腔による真腔の圧迫や血栓塞栓を原因とする虚血症状, 動脈瘤化を呈さない場合は, 保存的に治療し良好な成績が得られることもあるため, 症状および検査所見を十分に検討し, 治療方針を決めることが肝要であると考えられる.
  • 松山 貴俊, 吉村 哲規, 樋口 哲郎, 小林 宏寿, 石川 敏昭, 飯田 聡, 植竹 宏之, 安野 正道, 榎本 雅之, 杉原 健一
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1625-1630
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は74歳の女性で, 関節痛にてAmpiroxicam 27mg/日を5年前から内服していた. 平成17年3月黒色便が出現し, 小腸内視鏡検査にて回腸に潰瘍を認めた. Ampiroxicamの服用を中止し経過観察していたが, 間歇的な腹痛が出現した. 小腸内視鏡検査にて同部の輪状狭窄を認め, 小腸部分切除術を施行した. 症例2は82歳の女性で, 数年前の心筋梗塞発症後Aspirin 100mg/日を内服していた. 平成15年8月, 血便が出現し, 平成16年1月, 間歇的腹痛が出現した. 小腸造影検査にて小腸に多発狭窄を認め, 腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した. NSAIDsには消化管粘膜障害の作用がある. 胃, 十二指腸以外では小腸に多発することが多く, 多くは潰瘍性病変であるが, 隔膜様狭窄により腸閉塞を示すことがある. 腸閉塞の鑑別診断にはこの病変を念頭におくことが必要である.
  • 村岡 曉憲, 鈴木 夏生, 勅使河原 修, 小松 義直, 田上 鑛一郎
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1631-1636
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で, 下腹部不快感を主訴に当院内科を紹介受診した. 検尿で潜血反応が陽性であったので泌尿器科に紹介され, 膀胱鏡を施行したところ, 腫瘍を認めた. 瘻孔造影上, 腫瘍を介して, 小腸-膀胱瘻を形成していた. 組織検査結果は腺癌であった. 組織型より小腸癌, あるいは卵巣癌の小腸膀胱浸潤と診断し, 手術を施行した. 回腸終末より約1m口側の回腸が複雑に癒着し, 腫瘍は一塊となって膀胱へ浸潤していた. 子宮, 両卵巣は正常であった. 原発性小腸癌の膀胱浸潤と診断し, 小腸部分切除, 膀胱全摘術, 回腸導管造設術を施行した. 切除標本にて小腸膀胱瘻とともに小腸-小腸間にも腫瘍を介した瘻孔を認めた. 病理組織学的検査結果は原発性小腸粘液腺癌であった. 原発性小腸癌は消化管悪性腫瘍の中では発生頻度が低く, さらに本例のごとく膀胱小腸瘻にて発症したものは過去に報告を認めずまれであることから, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 森 周介, 笹原 孝太郎, 田内 克典, 樋口 佳代子
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1637-1642
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性で, 下腹部の不快感を主訴に近医を受診し, CTで腹腔内に腫瘍性病変を認めたため当科紹介となった. CTでは臍部の左側方, 前腹壁下に26×22mm大の辺縁明瞭な造影効果の高い軟部腫瘤を認め, 18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDGPET) では腫瘤に一致してstandardized uptake value (SUV) 4.0の中等度の集積を認めた. 開腹所見では, 横行結腸間膜に母指頭大の腫瘤性病変を認め, この部分を含めて結腸部分切除術を施行した. 病変の肉眼検査所見では, 白色の被膜に覆われた径30×20mm, 境界明瞭, 割面が淡褐色充実性の球形腫瘤であった. 病理組織学的検査では, 腫瘤は腫大したリンパ節で, 高度のリンパ濾胞増生, 形質細胞浸潤, 血管壁の硝子化を認めたが, 免疫染色の結果明らかな腫瘍性増生はみられず, 結腸間膜に発生した限局型Castleman病と診断した.
  • 千堂 宏義, 出射 秀樹, 白川 幸代, 西村 透, 金田 邦彦, 和田 隆宏, 木崎 智彦
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1643-1648
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    化学放射線療法で腫瘍縮小が得られ, 根治術後に長期生存が得られた直腸内分泌細胞癌を経験したので報告する. 症例は61歳の男性で, 術前の生検で内分泌細胞癌と診断され, 初回手術で人工肛門造設術のみ施行した切除不能下部進行直腸癌に対し, CPT-11+5-FU+1-LVによる全身化学療法 (IFL療法) と骨盤内に放射線照射を行った. 腫瘍の縮小と腫瘍マーカーが正常値になったことから, 腹会陰式直腸切断術を施行した. 病理組織学的診断は内分泌細胞癌で, わずかに癌細胞を認めるのみで組織学的効果判定はGrade2であった. 術後, UFT-Eを経口投与し, 根治手術後46か月現在無再発生存中である. 大腸内分泌細胞癌は極めて予後不良で外科的切除だけでは限界があり, 術前に化学療法や放射線療法を含めた集学的治療を行うことで治療成績を向上させる可能性があると思われた.
  • 加藤 公一, 竹田 伸, 野本 周嗣, 金住 直人, 杉本 博行, 中尾 昭公
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1649-1654
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    嚢胞状病変を呈した後腹膜平滑筋腫の1例を報告する. 症例は47歳の女性で, 心窩部痛, 腹部膨満感を主訴に当院を受診. 腹部CTにて右上中腹部後腹膜に最大径10cm前後の境界明瞭な嚢胞状腫瘤を認めた. 嚢胞壁には不整な肥厚がみられ, 一部に動脈相から強い造影効果を認めた. MRIでは嚢胞状腫瘤の内容液はT1WIで高信号, T2WIで著明な高信号を呈した. 超音波内視鏡検査所見にて内部は細顆粒状エコーを呈し, 腫瘍辺縁は充実性で, 著しい血流シグナルを認めた. 変性壊死の著明な後腹膜腫瘍として開腹下に右下腎動脈合併腫瘍摘出術を施行した. 腫瘤は9.0×7.0×6.5cm, 252gで, 嚢胞内容液は混濁した褐色調を呈する漿液だった. 病理組織学的に嚢胞壁は紡錘形腫瘍細胞からなり, 免疫染色にてα-SMA, desmin, caldesmonが陽性, c-kit, S-100蛋白, CD34, CD99, EMA, bcl-2, AE1/3は陰性, MIB-1は1%以下だった. 以上より, 嚢胞状変性を来した平滑筋腫と診断された.
  • 海堀 昌樹, 松井 康輔, 斎藤 隆道, 岩本 慈能, 吉岡 和彦, 上山 泰男
    2008 年 41 巻 8 号 p. 1655-1660
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性で, 2006年3月大腸癌術後両葉多発性転移性肝癌にて当科入院となった. 患者はエホバの証人であり, 教義上の理由により同種血輸血やアルブミン製剤使用は拒否された. 転移性肝癌5か所に対して肝切除術を行った. 手術時は術前希釈式自己血輸血650ml, 術中回収式自己血輸血500ml行った. 手術時間8時間43分, 出血量は1,015mlであった. ヘモグロビン濃度, 血清アルブミン値はそれぞれ術前12.2g/dl, 4.1mg/dlであったが, 手術直後8.9g/dl, 2.0mg/dlまで低下した. 術後13日目に軽快退院となった. エホバの証人患者に対する術前インフォームド・コンセントにおいては担当外科医, 麻酔科医が患者と無輸血手術の契約を行い免責証明を交わさなければならない. その際, 医師は安全な手術を行うため, 患者またはその家族へ手術での推定される出血量を述べ, 術前希釈式や術中回収式自己血輸血, またアルブミン製剤の必要性を説得し, その使用の許可をとる必要があるものと考えられた.
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