日本消化器外科学会雑誌
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41 巻, 9 号
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  • 比企 直樹, 福永 哲, 三木 明, 徳永 正則, 大山 繁和, 瀬戸 泰之, 大矢 雅敏, 山本 順司, 斎浦 明夫, 山口 俊晴
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1661-1668
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下切除は積極的に行われているが, 胃内発育型腫瘍の切除では, 過剰な胃粘膜が切除され, 術後の変形を来すこともある. さらに, 胃食道移行部, 幽門輪近傍の病変では, 噴門側, 幽門側胃切除といった術式が選択されることもある. 方法: 2006年7月より2007年7月に胃内発育型胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除 (laparoscopy endoscopy cooperative surgery; 以下, LECS)を行った12例の手術成績を従来の腹腔鏡下胃局所切除17例と比較した. 結果: LECSは, 内視鏡的粘膜下層切開剥離術を用いて, 胃内腔から切除線を決定し, 腹腔鏡下で漿膜・筋層切開を行い, 腫瘍摘出を行う方法である.手術時間, 術中出血量, 自動縫合器使用数, 開腹移行率, 術後の胃拡張, 食事摂取開始時期, 在院日数を調べた. 結果: LECSは胃食道移行部, 幽門輪近傍の病変を含む12例で, 開腹への移行や合併症なく施行され, 術後成績も従来法と同等であった. LECSの平均手術時間は約30分従来法より長く, 術中出血は約12ml多かった. 自動吻合器使用数 (2.1±0.8回)は, 対照 (3.2±0.5回)より有意に少なかった. 考察: LECSは最小限の胃壁切除で胃粘膜下腫瘍切除が可能であり, 胃食道移行部, 幽門輪近傍の病変にも応用可能である.
  • 安田 武生, 上田 隆, 竹山 宜典, 新関 亮, 沢 秀博, 中島 高広, 松本 逸平, 味木 徹夫, 具 英成, 黒田 嘉和
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1669-1676
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに:性別によって侵襲に対する反応性や臨床転帰が異なることが注目されている. 今回, 重症急性膵炎における性差を検討し, 男女別に入院時予後判定因子を解析した. 方法: 厚生労働省重症度判定基準による重症急性膵炎自験例146例 (男108, 女38) を男女間で比較検討し, 男女別に入院時検査成績において生存群と死亡群の間で有意差のある因子を検索した. 結果: 年齢は女性が有意に高く, 成因は男性でアルコール性, 女性で胆石性と特発性が有意に多かった. 男女間で入院治療経過に差はなかった. 男性における入院時予後判定因子はBE, BUN, Cr, Ca, BS, LDH, AST, PT, T-Bil, PaO2であり, 女性における入院時予後判定因子はリンパ球数, BUN, Cr であった. 特に, BE (mEq/L) は男性では生存群の-0.8±0.8mEq/Lに対し死亡群で-7.1±1.2mEq/Lと有意に低かったが (P<0.001), 女性では差は認めなかった. リンパ球数 (/mm3) は男性では差は認めなかったが, 女性では生存群の1,101±211/mm3に対し死亡群で539±74/mm3と有意に低かった (P=0.03). 考察: 重症急性膵炎において性別により入院時予後判定因子が異なることが明らかとなり, BUN, Crは性差のない予後判定因子, BEは男性特有の予後判定因子, リンパ球数は女性特有の予後判定因子である可能性が示唆された.
  • 砂川 宏樹, 川上 浩司, 稲嶺 進, 當山 鉄男, 座波 久光, 大城 直人, 西巻 正
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1677-1681
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で, 鼻出血を主訴に当院を受診. 内視鏡検査にて胸部上部食道に0-Ip+0-IIc型の病変を認め生検にて中分化型食道腺癌, また胃体部大彎に0-IIa+IIc病変あり低分化型胃癌を認めた. 胸部CTにて106recLにリンパ節の転移が疑われるも他に転移性病変なく, 食道亜全摘3領域郭清術, 胃全摘2群郭清術を施行した. 切除標本ではバレット食道や異所性胃粘膜を伴わず, 粘膜下腫瘍様形態を伴わない食道腺癌が確認された. 食道腺癌の辺縁に腺癌への分化を伴う上皮内癌成分を認め, 食道上皮由来の食道腺癌が考えられた. 食道と胃はどちらとも腺癌であったが分化度が違い, また食道腺癌にのみ扁平上皮癌成分を認めた. 胸部上部に発生する食道腺癌はまれであり, その病像を報告するとともに, その組織発生を考察した.
  • 山口 淳平, 片井 均, 佐野 武, 深川 剛生, 阪 眞, 井上 昌也, 笹子 三津留, 谷口 浩和
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1682-1685
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫に対し化学放射線治療施行後に胃癌が発見された2症例を経験したので報告する. 症例は75歳の男性および65歳の男性で, 胃原発悪性リンパ腫 (diffuse large B cell lymphomaz, stage II1) に対し化学放射線治療を施行し完全寛解を得た. 寛解後フォローアップ胃内視鏡検査で胃癌を発見し, それぞれ幽門温存胃切除術および胃全摘術を施行した. 病期はそれぞれpT1 (SM2) N0 M0 (Stage IA pT3 (SS) N2 M0 CY1 (Stage IV) であった. 両患者とも術後短期間内に遠隔転移を来した. 化学療法や放射線療法は2次癌発生の危険を含むため, 胃悪性リンパ腫の化学放射線療法後は胃癌に対するフォローアップが重要である.
  • 伊藤 貴明, 平松 聖史, 待木 雄一, 赤川 高志, 宮田 大士, 平田 明裕, 原 朋広, 吉田 カツ江, 加藤 健司
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1686-1691
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 2003年5月検診目的の腹部超音波検査にて肝内に0.8cmの腫瘍を指摘された. 肝生検で, mucosa-associated lymphoid tissue (以下, MALT) リンパ腫と診断. 患者の希望で, 無治療で経過していた. 2006年2月腫瘍の増大あり, 当院紹介. 血液検査では, 貧血, 肝機能障害などの異常を認めなかった. 腹部超音波検査では, 肝S6に74×45mmの低エコー領域, 腹部CT所見では, 肝S6に造影効果のない, 低吸収域の占居性病変を認めた. 遠隔転移を認めず, 肝臓に限局した肝原発MALT リンパ腫と診断し, 2006年3月肝S6部分切除術を施行した. 切除標本の肉眼検査所見は境界明瞭な充実性腫瘍で, 病理組織学的診断でMALTリンパ腫と診断された. 肝原発MALTリンパ腫はまれな疾患であり, これまで2年10か月にわたり無治療で経過した報告はない. このまれな1切除例を若干の文献的考察を加え報告する.
  • 柴崎 晋, 横尾 英樹, 神山 俊哉, 中西 一彰, 田原 宗徳, 福森 大介, 臼井 章浩, 松下 通明, 藤堂 省
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1692-1697
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    限局性結節性過形成 (focal nodular hyperplasia; 以下, FNH) は, 時に肝細胞癌 (hepatocel-lular carcinoma; 以下, HCC) と鑑別困難な症例がある. 今回, 我々は非典型的な画像所見を呈した1例を経験したので報告する. 症例は41歳の女性で, 心窩部痛を自覚し前医で肝腫瘍を指摘されるも確定診断がつかず, 当科紹介. B型肝炎の既感染があったが, 肝機能, 腫瘍マーカーはすべて基準値内であった. 造影CTでは肝S1に3cm大のFNHに典型的な中心部に低吸収域を伴う高吸収域を認めた. Sonazoid造影USの早期相では車軸様血管を認めたがKupffer im-ageでは欠損を認め, SPIO-MRIでも同部の取込低下を認めた. 以上より, HCCの可能性も否定できず, 手術 (高位背方尾状葉切除) を施行した. 術中迅速診断で悪性所見はなく, 病理組織学的検査にてFNHと診断された. FNHではKupffer細胞が画像的に証明されない症例があり, HCCとの鑑別のためには切除などによる組織診断が重要である.
  • 新名 一郎, 千々岩 一男, 近藤 千博, 永野 元章, 内山 周一郎, 高橋 伸育, 片岡 寛章
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1698-1703
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    外傷性肝細胞癌破裂の報告は16例とまれであり, 経験した1例に文献的考察を加え報告する. 症例は69歳の男性で, 交通事故で腹部を打撲し近医にショック状態で搬送された. 腹部CTで肝S8の肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma; 以下, HCC) 破裂による出血性ショックと診断され, 緊急血管造影検査およびTAEを施行された. TAE後は腹膜播種やviableなHCCを認めなかったが, 7か月後の腹部CTで, TAE治療による腫瘍壊死部周囲に癌再発を認め手術を行った. 大網がHCC破裂部を覆うように横隔膜と肝臓に癒着しており, 肝S8亜区域切除と横隔膜合併切除を施行した. 術中腹腔内洗浄細胞診は陰性であった. 病理組織学的検査所見ではTAEで壊死に陥ったHCCの周囲にviable lesionを認めた. 術後問題なく14日目に退院した.骨転移を認めたが放射線治療し, 術後8か月の現在健在である.
  • 松本 直基, 長谷川 洋, 白子 隆志, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1704-1709
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 併存症に糖尿病. 発熱, 心窩部痛を主訴に当院を受診. 急性胆嚢炎の診断で経皮経肝胆嚢ドレナージ(perctaneous transhepatic gallbladder drainage; 以下, PTGBD)を施行した. CT上胆嚢は門脈臍部の左側に存在するように見え, 左側胆嚢を疑った.PTGBD造影と内視鏡的逆行性胆管造影検査で, 右肝管が胆嚢管に合流する胆管走向異常を認めた. ドレナージで炎症が消退したのち, 腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 胆嚢の炎症は高度で, 胆嚢底部は肝円索の左側に位置していた. 門脈臍部を損傷しないよう慎重に胆嚢床の切離をすすめ, また右肝管の損傷を避けるためCalot三角部は剥離せず, 胆嚢頸部をステイプラーで閉鎖した. 困難症例であったが, 腹腔鏡手術を完遂し, 第6病日に退院した. 右肝管が胆嚢管に合流する胆管走向異常と左側胆嚢が併存する極めてまれな症例であった.
  • 佐伯 隆人, 松野 剛, 井口 利仁, 藤澤 憲司, 買原 彰彦
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1710-1715
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の男性で, 繰り返す上行結腸憩室炎に対し結腸右半切除術を行い, 術後21日目に退院した. 外来通院中に創周囲の痛みを訴えていたが, 理学所見や血液検査所見に異常がなく消炎鎮痛剤の頓用で軽快していた. 退院後18日目に上腹部痛が増強したため受診した.腹部造影CTにて上腸間膜静脈の拡張と血栓による内部の透亮像を認め上腸間膜静脈血栓症と診断した. 腸管壊死の所見を認めなかったため, 絶食とヘパリンの全身持続静注投与にて経過観察した. 慢性の経過で血栓を形成したため側副血行路が発達し腸管壊死に至らなかったと考えられ, 症状は徐々に軽快し入院13日目のCTでは血栓の縮小を認めた. ヘパリンからワーファリンカリウムの経口投与に切り替え継続した. 3か月後のCTでは血栓はさらに縮小し血流の再開を認めた. 凝固線溶系異常や門脈圧亢進症などの基礎疾患はなく結腸右半切除術が誘因と考えられた.
  • 保坂 晃弘, 山崎 一樹, 青木 文夫, 正木 幸善
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1716-1722
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の女性で, 下腹部痛を主訴に近医を受診し, CTにて腹部腫瘤を指摘され, 当院紹介となった. 腹部超音波検査, CT, 下部消化管内視鏡検査などで横行結腸粘膜下腫瘍と診断し, 開腹術を施行した. 横行結腸筋層に連続する最大径4.2cmの腫瘍を認め, 病理組織学的には紡錘形の腫瘍細胞の増生からなっており, gastrointestinal stromal tumor(以下, GIST)と診断した. 術後1年8か月のCTにて同部位に径5cm大の腫瘤を指摘され, GIST再発を疑い, 再度開腹術を施行した. 前回吻合部を巻き込む腫瘍を認め, 初回手術時の標本を含めて再度検討した結果, 病理組織学的に初回, 2回目手術時ともに病変は腸間膜線維腫症と診断された. 腸間膜線維腫症は, 高分化な線維組織よりなる腫瘍で, 局所で浸潤性増殖を示し, しばしば再発する. 特に, 腸管に浸潤した場合は, 病理組織学的にもGISTと酷似し, 鑑別診断が困難なことも多い. 本症例について, 文献的考察を加えて報告する.
  • 重田 英隆, 平松 和洋, 水上 泰延
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1723-1728
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ソマトスタチンアナログ (サンドスタチン® somatostatin analogue; 以下, SMS)とプロトンポンプインヒビター (proton pump inhibitor; 以下, PPI)の併用が有効であった難治性消化管皮膚瘻の2例を報告する. 症例1は87歳の女性で, 上腹部痛を主訴に当院を受診した. 十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎と診断され, 充填術が施行された. 第2病日より充填部のドレーンより消化液の排液を認め, 難治性十二指腸皮膚瘻となった. SMSの投与に加え, PPIも併用すると排液量は急速に減少し, SMS投与後19日目に瘻孔は閉鎖した. 症例2は65歳の男性で, 上行結腸癌の診断で結腸右半切除術が施行されたが, 第10病日にドレーン内容が混濁し縫合不全と診断された. 第12病日よりドレーン部とは別の正中創より消化液の排液を認め, 難治性回結腸吻合部皮膚瘻となった. SMSの投与に加え, PPIも併用すると排液量は急速に減少し, SMS投与後11日目に瘻孔は閉鎖した.
  • 渡邉 卓哉, 石榑 清, 藤岡 憲, 堀場 隆雄, 平井 敦, 伊藤 洋一
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1729-1734
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で, 下痢と下血を主訴に来院した. 注腸造影X線検査では盲腸から下行結腸にかけてハウストラが消失し, 内腔は狭小化して, 一部に母指圧痕像もみられた. 下部消化管内視鏡検査では同部位に粘膜の浮腫, びらんを認め, 虚血性腸炎が疑われた. 整腸剤による保存的治療にて経過観察された. 下痢が続くため, 約5か月後に下部消化管内視鏡検査が施行されたが, 病状は変化していなかった. 初診時より腹部単純X 線検査, 腹部CTにて盲腸から下行結腸腸間膜の部位に一致して線状, 網目状の石灰化を認めており, その所見とあわせ静脈硬化性大腸炎を疑い, 病変部の生検を施行した. 粘膜内にHE 染色で染まる無構造物質の沈着を認め, アザン染色にて膠原線維と判明し, 静脈硬化性大腸炎と診断された. 症状の改善を目的に腹腔鏡補助下結腸亜全摘術が施行された. 術後は順調に経過し, 症状は軽快した. 現在, 外来にて経過観察中である.
  • 宇野 雄祐, 小林 建仁, 小木曽 清二, 岡本 好史, 石川 玲, 赤羽 和久
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1735-1740
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で, 2004年10月, S状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行した. 再発徴候なく経過していたが, 2006年10月, 下血を主訴に当院に搬送された. 腹部CTでは, 左総腸骨動脈の左側に, 28mm大の結節影を認めた. 内部は血管と同程度に造影され, 下腸間膜動脈との連続性も認められた. 大腸内視鏡検査では, 前回手術の吻合部近くに血液塊を認めたが, 明らかな出血部位は確認できなかった. 以上から, 下腸間膜動脈瘤の腸管への穿通と診断した.入院後に, 再度の下血に伴いショック状態となったため, 緊急開腹手術を施行した. 結腸吻合部近くの間膜内に, 動脈瘤を触知した. 動脈瘤表面には小腸が強固に癒着していた. 手術は吻合部を含めた結腸, 動脈瘤, 癒着小腸の合併切除術を施行した. 大腸癌術後に発症した下腸間膜動脈瘤はまれであり, 文献的考察を加えて報告する.
  • 廣田 政志, 山下 克也, 市原 透, 中村 悦子
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1741-1745
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で, 下血を主訴に当院を受診し入院となった. 精査の結果, 直腸S状部に2型病変が認められ, 直腸癌の診断にて高位前方切除術を施行した. 病理組織学的検査では, tub2相当の管状腺癌が主体で漿膜外にまで浸潤を認め, 浸潤部においてはリンパ管様の空隙内に微小乳頭状癌胞巣が存在する特徴的な組織像を認めた. リンパ管侵襲がやや目立ち, 領域リンパ節には6個のリンパ節転移を認めた. 免疫染色では, MUC1は微小乳頭状癌胞巣の外縁が陽性を示し, micropapillary carcinoma(以下, MC) 成分を伴った直腸癌と診断された. MCは高頻度にリンパ管侵襲・リンパ節転移を伴う予後不良な癌腫として最近注目されている. 大腸の報告はまだ少ないが, MC成分を伴う場合には大腸においても悪性度が高いと考えられ, 積極的なリンパ節郭清, 術後化学療法を考慮すべきである.
  • 中島 亨, 小関 萬里, 富永 春海, 片山 晃子, 本下 潤一, 谷山 清己
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1746-1751
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部悪性黒色腫は比較的まれで, 予後不良な疾患である. 治療法に関して, 統一された見解はなく本邦では腹会陰式直腸切断術が多く施行されている. 今回, 局所切除および術後免疫化学療法にて術後3年半の無再発生存をしている症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は56歳の女性で, 肛門腫瘤の脱出を主訴に来院. 歯状線上に約20mm大の有茎性腫瘍を認め, 生検にて悪性黒色腫と診断された. 患者の希望にて腫瘍局所切除を施行した. 深達度はsm, 脈管浸潤はなく, 切除断端は陰性であった. 術後補助化学療法を施行し, 術後3年半経過した現在無再発生存中である. 本邦報告例の内, 局所切除施行例を検索し, 根治術としての局所切除術の適応を検討した. 潰瘍形成を認めない隆起・有茎性病変で腫瘍径が10mm以下, 深達度sm以浅, 局所切除にて完全切除可能な症例での局所切除選択の可能性が考えられた.
  • 木村 亨, 西川 和宏, 岩瀬 和裕, 青野 豊一, 中井 澄雄, 藤井 眞, 松田 宙, 木村 勇人, 三方 彰喜, 田中 康博
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1752-1757
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性で, 平成15年3月性交時の違和感を主訴に近医産婦人科を受診, 血中CA125高値と腹水を認め紹介となった. 精査にて腹膜原発表在性漿液性乳頭腺癌と診断され, 術前化学療法(CBDCA/TXL)の後, 両側付属器切除, 大網切除, 骨盤内および傍大動脈リンパ節郭清と同一レジメンでの術後化学療法が施行された. その後, 腫瘍の再発と消失, 血中CA125値の再上昇と正常化を繰り返しながら経過していた. 平成19年1月頃より胃部膨満感が出現し, 血中CA125値の再上昇を認めた. CTおよび上部消化管内視鏡検査にて幽門前庭部後壁に2cm大の腫瘍を認めた. 臨床経過から胃粘膜下腫瘍あるいは表在性漿液性乳頭腺癌の再発と診断し, 平成19年5月胃部分切除術を施行した. 肉眼検査所見では胃漿膜面に異常所見を認めず, 粘膜下腫瘍を強く疑わせる所見であり, 病理検査にて表在性漿液性乳頭腺癌の胃転移と診断された. 胃転移巣切除術後6か月を経た現在, 再発は認められていない.
  • 小松 俊一郎, 長谷川 洋, 白子 隆志, 坂本 英至, 久留宮 康浩, 法水 信治, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎
    2008 年 41 巻 9 号 p. 1758-1764
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    高度胆嚢炎症例に対する腹腔鏡下胆嚢亜全摘術(以下, LSC)の安全性を評価する. 2004年1月~2007年8月に当科で施行した腹腔鏡下胆嚢摘出術750例中, Calot三角の剥離を危険と判断してLSCを施行した25例. 底部側より胆嚢を肝床から遊離させ, endoscopic linear stapler(以下, ELS)または縫合・結紮により頸部を閉鎖・切離した. 必要に応じ頸部の壁を切開して胆嚢内腔を確認し, 経胆嚢管的に術中胆道造影を試みた. 残存した粘膜を焼却した. 開腹移行例や副損傷例を認めず. 頸部閉鎖法はELS19例, 縫合・結紮6例であった. 手術時間は平均143±43分, 出血量は20±32g, ドレーン留置期間は2.7±1.8日, 術後在院日数は5.2±2.2日であった. 遅発性胆汁漏と総胆管結石の発生を各1例に認めた. 1例で術前非疑診胆嚢癌が発見された. LSCは重篤な副損傷を避けうるという観点からは安全な手術であるが, 遺残胆嚢に関連する合併症に留意する必要がある.
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