日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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42 巻, 1 号
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原著
  • 柴崎 正幸, 万代 恭嗣, 日下 浩二, 伊地知 正賢, 北村 成大
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:クローン病において胃十二指腸病変は高率に認められるが,手術を要する進行病変はまれである.今回,当科での手術成績を検討したので報告する.対象・方法:1996年1月から2006年12月まで当科でクローン病胃十二指腸病変に対して手術を施行した症例について検討した.結果:同時期のクローン病全開腹手術件数893件のなかで胃十二指腸病変手術数は17例で,全体の1.9%であった.症状は嘔吐13例,腹痛3例,嘔吐+腹痛1例であった.術前に上部消化管造影検査を施行した15例全例で幽門狭窄を認め,そのうち10例では狭窄は十二指腸第2部まで及んでいた.手術術式は幽門洞切除+選択的迷走神経切離11例,広範囲胃切除3例,胃空腸吻合1例,十二指腸狭窄形成1例,穿孔例に対する大網充填1例であった.平均手術時間4時間17分,平均出血量331 mlであった.合併症は2例に絶食を必要とする吻合部狭窄,2例にイレウス,1例に開腹止血術を要する消化管出血を認めた.病理標本を有する14例のうち非乾酪性類上皮肉芽腫を12例に,瘻孔形成を10例に認めた.平均観察期間43か月中に上部消化管再建部位にびらんを1例に認めたが,狭窄は認めていない.考察:クローン病胃十二指腸病変に対する幽門洞切除+選択的迷走神経切離術は高率に合併する瘻孔を切除でき,残胃も大きく残せる術式で短期成績も良好であり,合理的な手術術式と考えられた.
  • 木村 豊, 矢野 浩司, 岩澤 卓, 宮崎 進, 塩崎 憲, 加納 寿之, 大西 直, 東野 健, 中野 芳明, 門田 卓士
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(以下,CTCAE)を用いて胃癌手術に関する合併症の評価を試み,その有用性と問題点について検討した.方法:2004年12月から2006年12月に行った胃癌手術症例154例を対象として,胃癌手術合併症を術中合併症,術後早期合併症(外科的合併症,非外科的合併症),術後晩期合併症に分類して前向きに評価した.手術内容は幽門側胃切除術93例,胃全摘術38例,吻合術10例,その他13例であった.結果:胃癌手術における周術期の合併症は全体として125例(81.2%),Grade 3以上は27例(17.5%)に認められた.術中合併症は3例(1.3%),術後早期合併症のうち外科的合併症は,30例(19.5%),非外科的合併症は121例(78.6%),術後晩期合併症は18例(11.7%)にみられた.手術死亡例,在院死亡例はなく,術後在院日数の中央値は21日であった.術後早期のGrade 1以上の外科的合併症またはGrade 2以上の非外科的合併症を生じた症例で術後在院日数が延長していた.まとめ:胃癌手術の合併症について,CTCAEを用いて詳細な評価が可能であった.Grade 1以上の外科的合併症またはGrade 2以上の非外科的合併症を手術合併症として評価するのが妥当と考えられた.
  • 勝野 剛太郎, 福永 正氣, 永仮 邦彦, 菅野 雅彦, 須田 健, 吉川 征一郎, 伊藤 嘉智, 平崎 憲範
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:現在,腹腔鏡下虫垂切除術は徐々に導入する施設が増えてきている.しかし,壊疽性,穿孔性,膿瘍形成といった高度炎症例に対しては,まだ一定の評価はなされていない.方法:対象は当院にて1995年5月より2007年5月まで虫垂炎手術を行った755症例のうち高度炎症例230症例を対象とした.内訳は腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic appendectomy;以下,LA)は141例,開腹虫垂切除術(open appendectomy;以下,OA)は84例,開腹移行群(converted appendectomy;以下,CA)は5例であった.結果:手術時間はOA群:95.8±46.7分に対しLA群118.7±44分であり,術中出血量はOA群:90.4±108 mlに対しLA群27.8±23 mlであった(P<0.001).術後合併症総発生率はOA群:32.1%に対しLA群13.7%(P<0.001)で,そのうち創感染発生率はOA群:23.8%に対しLA群7.5%(P<0.001),術後腹腔内膿瘍発生率はOA群4.8%に対しLA群4.1%(N.S)であった.術後入院日数はOA群:16.6±11.8日に対しLA群8.9±3.7日(P<0.001)であった.総診療報酬点数に関しては,LAの手術点数が高いのにも関わらず両群に有意な差は認めなかった.結語:穿孔性,膿瘍形成虫垂炎といった高度炎症例に対する腹腔鏡下虫垂切除術は術後合併症の軽減・術後在院日数の短縮,総診療報酬点数などから考えて有用な術式と考えられた
症例報告
  • 森脇 義弘, 豊田 洋, 小菅 宇之, 杉山 貢
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     心肺停止蘇生後に姑息的胃切除を行い神経学的異常を残さず救命しえた胃癌穿孔を経験した.81歳の男性で,食欲低下と体重減少,右側腹部痛,嘔気から経口摂取不能,意識障害となり緊急搬送された.病院到着12分後に心肺停止となり6分後に蘇生した.造影CTなどで腹腔内遊離ガス,胃幽門付近の壁不整像を認め消化管穿孔,腹膜炎,腹部コンパートメント症候群によるショックと判断した.初期輸液などの敗血症性ショックに対する治療と平行して,開腹減圧と感染源制御を目的に緊急手術とした.胃体下部前壁に胃癌漿膜浸潤と穿孔,腹膜全域に播種性小病変を認め,姑息的に幽門側胃切除,Roux-en-Y吻合を行った.腫瘍は,LCirc,type 3,pT3(SE),sN3,sH0,sP1,fStage IV,ly3,v2,INFβ,tub2>por2であった.術後は比較的容易に敗血症性ショックから離脱でき,神経学的異常の遺残はなかった.術後8か月の造影CTで腹腔内リンパ節,肝臓,肺転移を認め,術後14か月(第407病日)で死亡した.
  • 中川 朋, 水島 恒和, 位藤 俊一, 水野 均, 宇田津 有子, 杉村 啓二郎, 友國 晃, 今北 正美, 岩瀬 和裕, 伊豆蔵 正明
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は69歳の男性で,2004年1月十二指腸癌に対し,膵頭十二指腸切除術を施行した.2006年1月頃より腹満を自覚した.下部消化管内視鏡検査にて,肝彎曲部,横行結腸,S状結腸に全周性の狭窄を認め,バルーン拡張を行った.粘膜面に異常所見を認めず,粘膜下層の生検で悪性所見を認めず.再度腹満が出現し,4月には腸閉塞となった.腹部CTにて上行結腸,S状結腸,回盲部の壁肥厚を,18fluoro-deoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)にて横行結腸に異常集積像を認めた.画像検査から十二指腸癌の腹腔内播種も疑われたが,良性狭窄の可能性も否定しえなかった.同年5月に右半結腸切除術,横行結腸切除術,S状結腸切除術を施行した.病理組織学的検査で,いずれの狭窄部も筋層または粘膜下層に腺管形成を示す異型細胞の浸潤を認め,十二指腸癌の脈管性の大腸転移と診断した.十二指腸を原発とする脈管性の大腸転移は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 柴田 亮輔, 川元 俊二, 稲田 一雄, 金丸 隆幸, 児玉 亘弘, 廣田 一隆, 吉田 尊久
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は55歳の女性で,腹部CTにて肝臓と脾臓に限局する腫瘤を認めたため,当院を受診した.表在リンパ節を触知せず,血液検査所見でLDH 711 IU/l,HBsAg陽性,IL-2R抗体748 U/mlと高値を示した.肝生検と免疫特殊染色でB細胞性悪性リンパ腫と診断された.他検査で他臓器に病変を認めなかった.肝臓,脾臓ともに腫瘍破裂の危険性があり,切除を先行させ術後化学療法を施行する方針とし,肝外側区域切除術,脾臓摘出術を施行した.術後,tetrahydropyranyl adriamycin-cyclophosphamide,vincristine and prednisolone therapy(THP-COP療法)を3コース行い,現在無再発生存中である.また,HBV carrierであったため術後ラミブジンを投与している.肝脾悪性リンパ腫は非常にまれな疾患であり,我々が検索しえたかぎりでは切除例は自験例のみであった.若干の文献的検索を含め報告する.
  • 楠本 英則, 水島 恒和, 位藤 俊一, 水野 均, 宇田津 有子, 宮嵜 安晃, 中川 朋, 今北 正美, 岩瀬 和裕, 伊豆蔵 正明
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は76歳の男性で,平成17年10月,肝機能異常にて受診した.血中ビリルビン値の上昇が認められ,腹部CT上,総胆管腫瘤,総胆管および肝内胆管の拡張を指摘された.胆汁細胞診より悪性所見は得られなかったが,画像上腫瘍性病変による閉塞性黄疸が強く疑われたため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.肉眼的には中部胆管から一部下部胆管にかけて約2×2×3.5 cm大の白色充実性腫瘤を認めた.摘出標本の病理組織学的診断では,炎症細胞浸潤を伴う線維性組織の増生を認め炎症性偽腫瘍と診断された.総胆管原発の炎症性偽腫瘍は過去に14例が報告されているに過ぎない.また,本疾患は最近,真性の腫瘍性疾患である炎症性筋線維芽細胞性腫瘍として再認識されつつあり,症例の蓄積により今後の術前診断法の確立が待たれる.
  • 吉田 雅, 高橋 昌宏, 中野 詩朗, 赤羽 弘充, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 今井 浩二, 萩原 正弘, 丸谷 巖, 小橋 重親
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は37歳の男性で,左側腹部痛と背部痛を主訴に当科入院となった.精査の結果,膵体尾部動静脈奇形に伴う急性膵炎と診断した.保存的加療を開始したが制御困難な腹痛が持続したため,外科的切除を施行した.膵体尾部の炎症に伴い,周囲臓器との癒着や新生血管の増生が高度であり,膵体尾部切除・脾臓摘出・胃部分切除・横行結腸部分切除を必要とした.術後,膵液漏に伴う腹腔内膿瘍を発症し,第17・37病日にCTガイド下ドレナージを施行した.現在,術後2年を経過したが,症状は完全に消失している.膵動静脈奇形に伴う急性膵炎は非常にまれな疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 永吉 絹子, 西原 一善, 空閑 啓高, 松永 浩明, 阿部 祐治, 中野 徹, 光山 昌珠, 小野 稔, 豊島 里志, 岩本 昭三
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は68歳の女性で,嚥下困難を主訴に前医を受診し,膵体尾部に嚢胞性腫瘍を認め当科紹介となった.腹部超音波検査で膵体尾部に径8 cm大の内部に石灰化を有する多房性嚢胞性腫瘤を認め,腹部CTでは脾動脈,胃壁への浸潤が示唆された.ERCPでは主膵管は膵体尾部で途絶し,腫瘤との明らかな交通は認めなかった.膵嚢胞性腫瘍に対し膵体尾部切除,噴門部胃切除・脾臓合併切除術を施行した.摘出標本は径9 cm大の充実部を伴う多房性嚢胞性腫瘍であった.病理組織学的検査では粘液産生を伴う腺癌で胃浸潤,脾梗塞を認めた.Ovarian-type stromaの発現がなく,膵切離断端の主膵管と分枝膵管上皮に乳頭腺腫様病変がみられたことより分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍の浸潤癌である可能性が示唆されたが,病理組織学的にも明らかな膵管との交通がなかったため,最終的にはindeterminate mucin-producing cystic neoplasmと診断した.
  • 田崎 健太郎, 大島 郁也, 有我 隆光, 吉村 清司, 篠藤 浩一, 岡崎 靖史, 森岡 伸浩, 佐塚 哲太郎, 尾崎 正彦, 角田 幸雄
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は36歳の男性で,嘔気および腹満感を主訴に受診.腹部超音波検査で低エコー,腹部造影CTで低吸収域となる多発結節性病変を脾臓に認めた.血液生化学検査では異常値を認めず,s-IL2は324 U/mlと正常範囲内であった.上部および下部消化管内視鏡検査を施行したが異常所見を認めず,また症状経過したこともあり経過観察となったが,fluorine-18 fluorodeoxyglucose-Positron emission tomographyでStandardized Uptake Value 4.8と異常値を示したため,脾臓原発性悪性腫瘍疑いの診断にて開腹下の脾臓摘出術を施行した.摘出した脾臓は11×9×4 cm,200 gで黄白色調の多発結節を認めた.病理組織学的にはランゲルハンス型多核巨細胞と類上皮細胞,膠原線維で形成される肉芽腫を多数認め,また乾酪壊死巣は認められず,抗酸菌蛍光およびZiehl-Neelsen染色は陰性でホジキン細胞も認めなかったことから,脾サルコイドーシスと診断した.術後経過は良好で,第13病日退院した.術後1年8か月現在で,肺,皮膚,眼などに病変を認めていない.
  • 赤堀 宇広, 庄 雅之, 鶴井 裕和, 大住 周司, 田村 智美, 堤 雅弘, 野々村 昭孝, 中島 祥介
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     脾臓原発血管肉腫はしばしば急速な発育傾向を示し,転移を来しやすく,極めて予後不良な疾患とされている.今回,我々は脾血管腫として約3年半の経過観察の後に切除術を施行し,血管肉腫と病理組織学的診断された1例を経験したので報告する.症例は77歳の男性で,解離性大動脈瘤を指摘された際,径6 cmの脾腫瘍を指摘され,血管腫と診断されていた.その後,経過観察中に腫瘍径の増大と腫瘍内部の形態変化を認めたため,手術を施行し,血管肉腫と診断された.術後経過良好であり,現在まで55か月経過し無再発生存中である.本症例のように経過観察された後に切除された脾臓血管肉腫は,本邦にて検索しうるかぎり,初めての報告である.脾臓原発血管肉腫の自然史を考えるうえで貴重な症例と思われた.
  • 三浦 世樹, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 永田 松夫, 山本 宏, 浅野 武秀
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は76歳の男性で,手術既往はなかったが,腹痛,食欲低下,体重減少を主訴に発症した.イレウスの診断にて保存的治療を行い軽快退院したが,以後4回イレウス症状により,入退院を繰り返した.腫瘍性病変および狭窄病変の確定ができず4年間経過した.その結果,著明な低栄養状態となり,当院へ紹介された.精査の結果,回腸に狭窄像を認め虚血性小腸炎疑いで手術を施行した.手術所見では回腸末端近傍に3か所の狭窄部を認め,狭窄部を含む90 cmの小腸切除術を施行した.組織学的検査所見より特発性虚血性小腸炎と診断された.術後経過は良好で,栄養状態も改善し術前の体重43.2 kgは60 kgと増加した.原因不明のイレウス症状をくりかえし,心血管系疾患,糖尿病などの基礎疾患や肝硬変など腸管循環に影響を及ぼす要因を有する場合,本疾患の存在も念頭に入れ,診断にあたりいたずらに時を過ごさず手術に踏み切ることが望ましいと考えられた.
  • 愛新 啓志, 坂下 吉弘, 小倉 良夫, 近藤 成, 繁本 憲文, 上田 祐華
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     回腸子宮内膜症により回盲部腸重積を形成した1手術例を経験した.症例は40歳の女性で,心窩部痛を主訴に,2004年10月当院救急外来を受診するも,点滴治療にて症状軽快し帰宅.翌朝より嘔気,嘔吐を認め,腹痛増強し,当院救急外来を再度受診した.右下腹部に圧痛を認め,Blumberg徴候陽性.腹部エコーにて右下腹部の腸蠕動の低下および腸管の拡張,回盲部にmultiple concentric signを認めた.さらに,緊急造影CTにて腹水貯留,回腸の腫脹を認め,腸重積による絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行.腹腔内には血性腹水を認めた.回腸末端に粘膜下腫瘍を認め,これがBauhin弁に重積していた.腸重積を用手的に圧出,整復後,悪性腫瘍の可能性も考慮し,回盲部切除術+D2を施行した.切除標本では3 cm大の粘膜下腫瘍で,術後病理組織学的検査にて腸管子宮内膜症と診断された.
  • 仲本 嘉彦, 木川 雄一郎, 湯浅 一郎, 原田 武尚, 竹尾 正彦, 小縣 正明, 山本 満雄
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は33歳の女性で,多発肝転移を伴う下行結腸癌の診断で腹腔鏡補助下結腸切除術を施行し,stapler 4回法による機能的端々吻合を行った.手術後21日より化学療法5-fluorouracil,leucovorin,oxaliplatin(FOLFOX)を開始し,手術後60日と74日にベバシズマブを投与した.手術後78日に腹痛が出現し,筋性防御とCTで腹腔内遊離ガス像を認めた.消化管穿孔による腹膜炎の診断で緊急手術を施行したところ,結腸吻合部に穿孔が存在し,便汁の漏出を認めた.吻合部を含めた結腸部分切除を行い,横行結腸人工肛門を造設した.その後は創感染や消化管の再穿孔を疑う腹腔内感染を併発し,さらに肝転移も増悪し,初回手術後107日に死亡した.ベバシズマブ投与後の消化管穿孔に起因した死亡例の報告は本邦では初めてであり,ベバシズマブ投与に際しての重大な有害事象として注意を喚起するものである.
  • 平田 敬治, 田上 貴之, 荒瀬 光一, 柴尾 和徳, 日暮 愛一郎, 中山 善文, 永田 直幹, 山口 幸二
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は53歳の男性で,直腸癌・同時性肝転移に対してMiles手術および全身化学療法(Folinic acid,Fluorouracil,Irinotecan;FOLFIRI)施行された後,2007年10月よりbevacizumabをFolinic acid,Fluorouracil,Oxaliplatin(FOLFOX)と併用で開始した.2008年1月,6コース目のbevacizumab投与2日後より発熱出現,その2日後右側腹部痛が出現し,CTで回盲部脂肪織濃度上昇とfree airを認め,腸管穿孔の診断で同日回盲部切除,1期的吻合を行った.肉眼的に盲腸憩室穿孔を認め,病理組織学的検査では憩室炎の所見を認めた.術後吻合不全なく経過したが,術創の皮下脂肪壊死を伴う創傷治癒遅延を合併した.血管新生阻害剤bevacizumabは抗癌剤との併用により治療効果を発揮するが,腸管穿孔,出血,血栓症など特異的な毒性も海外で報告されている.自験例での盲腸憩室穿孔とbevacizumabの因果関係を確定することは困難であるが,憩室炎はbevacizumab療法における消化管穿孔のリスクの一つにあげられており,腸管憩室を有する症例では治療時に細心の注意が必要であると思われた.
  • 佐々木 省三, 鎌田 徹, 竹下 雅樹, 能登 正浩, 尾山 勝信, 吉本 勝博, 神野 正博
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     患者は42年前に腸骨骨髄炎にてS状結腸に人工肛門が造設され40年前に閉鎖された既往のある58歳の男性で,人工肛門閉鎖創からの膿排出を主訴に来院した.創部に便汁の排出を伴う瘻孔形成を認め,瘻孔造影検査,注腸透視検査では結腸癌による結腸皮膚瘻の形成と考えられた.内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め,生検にて腺癌と診断した.CT所見はS状結腸癌の腹壁浸潤であり,明らかな転移を認めなかった.腹壁浸潤,皮膚瘻を伴うS状結腸癌と診断し,リンパ節郭清を伴うS状結腸切除と腹壁合併切除を施行した.病理組織学的検査所見上,癌は皮下まで浸潤した中分化型腺癌であり,皮下膿瘍を介して皮膚瘻を形成していた.根治度はAであった.本症例は腹壁の筋膜欠損という脆弱な部位から癌が皮下まで浸潤し,膿瘍を介して皮膚縫合部に瘻孔を形成したものであり,皮膚瘻形成には手術創による腹壁の脆弱性が関与していると考えられた.
  • 玉川 洋, 林 勉, 蓮尾 公篤, 鈴木 弘治, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は61歳の男性で,腹部の違和感と下血を主訴に来院した.腹部超音波検査および腹部CTで上行結腸に腸重積に特徴的な所見を認めた.注腸X線検査,下部消化管内視鏡検査で盲腸に約3 cmの表面にびらんを伴う硬い隆起性病変を認めた.腹腔鏡下回盲部切除術を施行し,切除標本の病理組織,および免疫組織学的検索で盲腸のgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST),uncommitted typeと診断した.本邦において,盲腸原発GISTの報告例は2例と極めてまれであるため報告する.
  • 大澤 一郎, 勝峰 康夫, 湯浅 浩行, 野田 直哉, 上原 伸一, 赤坂 義和, 伊佐地 秀司
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     92歳の女性で,腸重積とイレウスを伴い肛門外に脱出した大腸癌に対し,経肛門的イレウスチューブを用い腸管の減圧と腸重積の解除を連続的に行った後,待機的にS状結腸切除術を施行しえた.腸重積合併S状結腸癌本邦報告81例を対象に,先進部が直腸内に位置した42例(以下,S-R型)と肛門外に脱出した30例(以下,S-P型)を比較した.男女比はS-P型で女性が8割を占めた.イレウス合併率はS-P型で10%と有意に低かった.術前・術中を通して重積整復後に病変を切除した割合はS-R型83%,S-P型53%であり有意差を認めた.整復不能な割合はS-R型で12%,S-P型で23%であった.経過中に人工肛門造設を要した割合は両群とも約30%であった.腸重積を伴った結腸癌は可能であれば1期的切除再建が望ましいが,経肛門的イレウスチューブを用いることで1期的切除再建を行った報告は本症例が最初と考えられた.
  • 伊丹 淳, 井口 公太, 長山 聡, 野村 明成, 川村 純一郎, 森 由希子, 坂井 義治
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は52歳の女性で,他院にて2005年5月に右乳癌に対し手術され,術後放射線治療とホルモン療法を受けたが,8月に上腹部不快感が出現.CTの結果,門脈腫瘍栓を指摘された.肝内には他に病変を認めず,CEA,CA19-9がともに高値であったため,消化管の精査を行ったところ,上行結腸癌が見つかり,10月に当科紹介となった.まず,全身化学療法としてイリノテカン/フルオロウラシル/レボホリナート療法を開始.門脈腫瘍栓の縮小と同時に,腫瘍マーカーも減少した.しかし,2006年6月にCEAが再上昇.門脈腫瘍栓の軽度増大と原発巣の増大を認めたため,10月上旬に腹腔鏡補助下結腸右半切除術にて原発巣の切除を行った.術後,オキサリプラチン/フルオロウラシル/レボホリナート療法,TS-1/イリノテカンを投与した.現在はTS-1内服のみであるが,門脈腫瘍栓の増大傾向はなく,他の部位の再発も認めず経過観察中である.
  • 国末 浩範, 市原 周治, 野村 修一, 野上 智弘, 森 秀暁, 大谷 裕, 石堂 展宏, 太田 徹哉, 臼井 由行, 田中 信一郎
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は96歳の女性で,既往歴として平成19年2月に心嚢液貯留に対し,心嚢—腹腔開窓術を施行されていた.平成19年7月初旬,急に激しい腹痛が出現し,当院を紹介され受診した.腹部は軟らかいが,腹部全体に圧痛を認めた.腹部CTにて心嚢内に腸管が嵌頓するように入り込んでおり,心嚢—腹腔開窓孔による心嚢内ヘルニア嵌頓を疑い開腹術を施行した.開腹所見ではトライツから370 cmの小腸が約30 cm心嚢—腹腔開窓孔から心嚢内に入り込み絞扼され腸管が壊死していた.開窓孔を広げ腸管を腹腔に戻し,小腸部分切除を施行した.また,開窓孔は肝円索にて緩めに覆い閉鎖した.術後の経過は良好で第24病日に退院した.心嚢—腹腔開窓孔による心嚢内ヘルニア嵌屯はまれであるので報告する.
  • 柳澤 和彦, 山本 雅由, 谷澤 伸次, 武田 由美子, 明石 義正, 大河内 信弘
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     免疫抑制剤を含有する軟膏を用いた壊疽性膿皮症の治療経験について報告する.症例は25歳の男性で,Crohn病に伴う難治性痔瘻のため,S状結腸に人工肛門を造設されていた.内科的治療によって全身状態は良好であったが,人工肛門周囲に,急速に増大し,疼痛を伴う潰瘍が出現した.壊疽性膿皮症と診断し,ステロイドの全身投与およびタクロリムス軟膏を使用することによって速やかに改善した.人工肛門周囲の壊疽性膿皮症は難治性であり,治療に苦労することが多い.欧米では壊疽性膿皮症に対するタクロリムス軟膏の使用が行われることがあるが,本邦では報告例が少ないため,今回,タクロリムス軟膏による治療経験を文献的考察も含めて報告する.
  • 稲垣 大輔, 片山 清文, 白石 龍二, 田辺 浩悌, 谷 和行
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     リンパ節転移を伴った限局性腹膜悪性中皮腫で術後に腹腔内再発を来した1例を経験したので報告する.症例は63歳の女性で.職場でのアスベストの曝露歴があった.食思不振と体重減少を主訴に当院を受診した.腹部CTで胃壁と接する境界明瞭な腫瘤を認めた.胃原発のgastro intestinal stromal tumorと診断し,手術を施行した.胃壁と癒合する手拳大の弾性軟の腫瘍を認めた.胃部分切除と近傍のリンパ節摘出を行い腫瘍を摘出した.摘出標本は10 cm大で,中心部壊死を伴う充実性の腫瘍であった.病理組織学的には限局性腹膜悪性中皮腫の診断で,リンパ節転移を認めた.術後経過は良好であったが,術後6か月に腹腔内にびまん性に再発を来した.化学療法(Paclitaxel)を行ったが,術後13か月で死亡した.切除可能な限局性腹膜悪性中皮腫は予後良好と報告されているが,再発の場合には予後不良であると考えられた.
臨床経験
  • 河俣 真由美, 黒沢 治樹, 小松 茂治, 杉田 光隆, 浜口 洋平, 舛井 秀宣, 福島 忠男, 茂垣 雅俊, 長堀 薫, 嶋田 紘
    原稿種別: 臨床経験
    2009 年 42 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     膵頭十二指腸切除術後の膵液瘻は時に治療に難渋する合併症である.我々は膵液瘻に対し経皮的チューブ留置による非観血的内瘻化が有用であった2例を経験したので報告する.症例1は68歳の男性で,中部胆管癌に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(pylorus preserving pancreatoduodenectomy;以下,PpPD)を施行した.術後膵液瘻を認めたが,保存的に軽快し退院した.第58病日にドレーン抜去部から出血を認め,胃十二指腸動脈断端の仮性動脈瘤からの出血と診断し動脈塞栓術を施行した.その後,膵液瘻が続き,第142病日,経皮的にT字型ドレーンを挿入し内瘻化した.症例2は74歳の女性で,膵頭部癌に対しPpPDを施行した.術後膵液瘻を認めたが,保存的に軽快し第46病日に退院した.退院後ドレーン抜去部から浸出が持続し,難治性膵空腸縫合不全の診断で入院した.膵液の外瘻化を行った後,第333病日,経皮的にロストステント型チューブを留置し内瘻化した.
研究速報
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