日本消化器外科学会雑誌
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42 巻, 6 号
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原著
  • 阿久津 泰典, 松原 久裕, 岡住 慎一, 島田 英昭, 首藤 潔彦, 白鳥 享, 落合 武徳
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 6 号 p. 617-621
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:食道癌症例において,術後肺炎はしばしば経験する術後合併症である.食道癌手術後は誤嚥しやすい状況にあり,口腔内において歯垢は細菌のリザーバーとしての役割をもち,また,上気道に不顕性に吸引されやすい.我々は食道癌患者において,術前の歯垢培養の結果と術後肺炎との関係を検討した.方法:39名の胸部食道癌手術予定の患者を対象とし,術前に歯垢の培養を行った.術後肺炎が発生した場合は喀痰培養を行った.結果:術後肺炎は14名(35.9%)にみられた.術前歯垢培養にて病原菌が検出された7名中5名(71.4%)に術後肺炎が発生した.一方,病原菌陰性の32名では9名(28.1%)のみであった.術前歯垢培養にて病原菌陽性かつ術後肺炎を起こした5名のうち2名(40.0%)で術後喀痰からも術前歯垢からと同一の病原菌を検出した.考察:術前歯垢中の病原菌の存在は胸部食道癌開胸手術後肺炎のリスクファクターであると考えられた.
  • 京兼 隆典, 弥政 晋輔, 澤崎 直規, 東島 由一郎, 後藤 秀成, 大城 泰平, 渡邉 博行, 田中 征洋, 高木 健裕, 松田 眞佐男
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 6 号 p. 622-631
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:消化管穿孔症例の初診時CT所見につき検討し,穿孔部位の診断,治療法の選択において参考となる所見の抽出を試みたので報告する.方法:2000年1月から2008年1月までに当院で経験した消化管穿孔症例180例を対象とし,CT所見と穿孔部位,治療法をretrospectiveに検討した.CT所見は客観性と普遍性を重視し,評価しやすい所見として腸管外free air(以下,FA)と腹水貯留に着目した.結果:FAの検出率は上部,小腸,大腸それぞれ97.0,56.0,78.6%であった.十二指腸水平部下縁より頭側のFAは,上部,小腸,大腸それぞれ97.0,52.0,66.1%で,上部で有意に検出率が高く,尾側のFAは18.2,24.0,58.9%で,大腸で有意に検出率が高かった.尾側で前腹壁腹膜から離れた深部に存在するFAは,上部,小腸,大腸それぞれ1.0,16.0,51.8%で,尾側深部FA所見で大腸穿孔と診断した場合の感度と特異度はそれぞれ51.8%,96.0%であった.腹水の所見は,貯留の程度,部位ともに穿孔部位を判定する手がかりとはならなかったが,上部穿孔の保存的治療成功群では,肝表面腹水5 mm以下かつ尾側腹水少量以下で,24時間後のCTで腹水の増量はなかった.考察:CTにおけるFAの存在部位は穿孔部位の予測に,腹水の量と経時的変化は上部消化管穿孔の保存的治療の適応を決定するうえで有用であり,CTは消化管穿孔の治療戦略を立てるうえで有用であると考えられた.
  • 小杉 千弘, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 樋口 亮太, 平野 敦史, 植村 修一郎, 土屋 博紀
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 6 号 p. 632-639
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:鼠径ヘルニア根治手術は若い外科医が基本手技を鍛錬する場であり,外科手術の入門編として位置していた.現在,初期研修医制度が実施され,外科系診療科志望でない研修医も外科をローテーションするカリキュラムが組まれている.今回,我々は鼠径ヘルニア根治術を初期研修医に執刀させる是非を検討する.方法:2005年4月から2007年12月に根治手術を施行した139例を対象とした.134例にmesh plug法が,5例にPROLENE hernia system法が行われた.初期研修医執刀例は72例(R群),外科医執刀例は67例(S群)だった.R群とS群において,患者背景,術中,術後因子を検討した.結果:患者背景においてR群とS群で有意差はなかった.術中因子として手術時間においてR群:S群に有意差を認めた(88.0分:64.2分,p<0.001).術後因子は,入院期間(3.8±2.1日:4.9±8.3日,p=0.14),合併症(9.8%:6.6%,p=0.64)に統計学的に有意差はなかったが,再発はR群7例(9.7%),S群1例(1.5%)で有意にR群において高かった(p=0.04).考察:入院期間,合併症には有意差はなく,再発率は初期研修医術者が外科医と比較し有意に高かったが,助手として外科専門医が指導することで,再発率が抑えられる.よって,現在の研修医制度において外科系研修カリキュラムの手術執刀についての指導指診作成が望まれる.
症例報告
  • 的野 吾, 田中 寿明, 田中 優一, 末吉 晋, 津福 達二, 西村 光平, 村田 一貴, 笹原 弘子, 白水 和雄, 藤田 博正
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 640-644
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は45歳の女性で,1年前に腹部食道癌に対し,左開胸開腹下部食道噴門側胃切除術を施行.術後診断はpT3N0M0 Stage IIで根治度Aであった.経過観察中,CTで気管前リンパ節の腫大を認めた.確定診断のため,胸腔鏡補助下リンパ節摘出術を施行した.組織学的には,強い中心乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫とLanghans型巨細胞を認め,リンパ節結核の所見であった.結核菌の検出は確認できなかったが,術後に施行したツベルクリン反応は強陽性であり,病理組織学的検査よりリンパ節結核と診断した.抗結核薬を6か月間内服し,その後の経過は良好であった.現在,食道癌手術後3年,結核の診断後2年経過しているが,ともに再発・再燃は認めていない.腹部食道癌術後の上縦隔リンパ節再発,特に“気管前リンパ節再発”はまれであり,術後経過中に,この部位のリンパ節腫大を認めた場合は,癌以外の疾患,特に縦隔リンパ節結核も鑑別の一つとして考慮すべきである.
  • 横山 貴司, 渡辺 明彦, 右田 和寛, 中川 顕志, 井上 隆, 向川 智英, 大山 孝雄, 石川 博文
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 645-650
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は46歳の女性で,41歳時(2002年5月)に脾損傷に対して脾動脈塞栓術を受けた.2007年7月より全身倦怠感出現,近医にて著明な貧血(Hb 2.9 g/dl)を指摘された.内視鏡検査で胃穹窿部後壁に血管増生の著明な粘膜下腫瘍を認めた.CTで粘膜下腫瘍はなく,穹窿部後壁に壁肥厚と豊富な血流を認め,脾臓が接していた.胃全摘術,脾臓摘出術が必要と説明され,セカンドオピニオン目的に当科を受診した.血管造影検査では脾動脈は下部脾臓を栄養するのみで,上中部脾臓は左下横隔動脈噴門枝から胃壁を介する側副血行路により栄養されていた.以上より,側副血行路とそれにより発生した静脈瘤の破綻による胃出血と診断し,左下横隔動脈結紮術,脾臓摘出術を施行した.術後1か月および6か月目の胃内視鏡検査で病変部は消失していた.脾損傷に対する脾動脈塞栓術後の左下横隔動脈による胃出血は非常にまれな病態であるが,血管造影検査が診断に有用であったので報告する.
  • 伊藤 忠雄, 野口 明則, 齊藤 朋人, 中島 慎吾, 生駒 大登, 清水 健, 谷 直樹, 山口 正秀, 岡野 晋司, 山根 哲郎
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 651-656
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は59歳の女性で,2年半前に他院で肝嚢胞と診断され経過観察されていた.腹部膨隆症状が出現してきたため当院内科を受診され,CT,MRIで肝右葉に最大径22 cmの嚢胞性病変を認めた.嚢胞内腔はほぼ平滑で1か所に壁在結節が疑われたが造影効果は認められなかった.肝嚢胞腺癌の疑いにて肝右葉切除術を行ったが,切除標本の肉眼検査所見では,嚢胞壁は平滑で明らかな壁在結節を認めず肝嚢胞と診断した.病理組織学的検査で高分化型腺癌が嚢胞壁全体にほぼ単層性に広がり,一部に乳頭状増生を認めたため肝嚢胞腺癌と診断された.腺腫からの移行部も確認され,嚢胞腺腫からの癌化と推察された.検診などで無症状の肝嚢胞性病変が見つかる機会が増えているが,画像上は肝嚢胞と鑑別困難な肝嚢胞腺癌もあり,注意深い経過観察が必要であると思われる.
  • 石上 俊一, 馬場 信雄, 雑賀 興慶, 北口 和彦, 崎久保 守人, 浦 克明, 平良 薫, 大江 秀明, 吉川 明, 田村 淳
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 657-662
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例はB型肝炎の既往がある59歳の男性で,肝S7-8に増大する径5 cmの腫瘍を指摘された.CTや血管造影検査では,腫瘍辺縁が早期に濃染したが中心部は造影されなかった.Cholangiocellular carcinoma(以下,CCC)の診断で肝右葉切除術が施行された.被膜形成のない白色充実性の硬い腫瘍で,cholangiolocellular carcinoma(以下,CoCC)以外にCCCやhepatocellular carcinoma(以下,HCC)の成分が混在していた.PAS(−),Alcian blue(±),サイトケラチン(以下,CK)-7(+),CK-19(+),CK-8(+),Hep-Par1(−)であった.Epithelial membrane antigen(以下,EMA)の染色性から,CCCへの分化を伴うCoCCと診断された.術後に一旦正常化した腫瘍マーカーは,2年後に縦隔リンパ節転移や多発肺転移,癌性胸膜炎の出現とともに再上昇し,患者は術後3年3か月で死亡した.CoCCや混合型肝癌はいずれもhepatic progenitor cells由来と考えられており,同一の病態である可能性がある.
  • 恩田 真二, 岡本 友好, 二川 康郎, 藤岡 秀一, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 663-668
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は60歳の男性で,膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行した.補助化学療法を施行したが膵体部背側に再発腫瘤を認めた.その後,吐血による出血性ショックで緊急入院した.腹部CTにて脾動脈途絶と仮性動脈瘤を認め,胃に穿破していた.再発巣の浸潤と閉塞性膵炎により脾仮性動脈瘤が形成され,胃壁への圧迫により胃穿破したと考えられた.緊急動脈塞栓にて止血し軽快退院した.癌腫再発による脾動脈瘤の胃穿破はまれであり報告した.
  • 日比 康太, 小方 二郎, 三室 晶弘, 伊藤 一成, 袴田 安彦
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 669-673
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     腸アニサキス症による腸重積症はまれであり,腸重積症を伴った空腸アニサキス症の1例を経験したので報告する.症例は35歳の男性で,夕食にイカの刺身を摂取し,深夜より心窩部痛および嘔吐が出現した.当初は急性胃腸炎と診断し保存的治療を行っていたが,翌日の腹部computed tomography(以下,CT)にて空腸に同心円状の層状構造を認め腸重積と診断し緊急手術を施行した.手術所見ではトライツ靱帯から約15 cmの空腸に順行性に腸重積を認めた.用手的に整復を試みたが,腸管の浮腫が高度であったため約30 cmの空腸切除を施行した.肉眼検査所見では嵌頓部粘膜は著しく浮腫性で壁全体が肥厚し一部に発赤した浮腫状粘膜を認めたのみで,病理組織学的には著しい好酸球浸潤とアニサキスの虫体の迷入を認め小腸アニサキス症と診断した.小腸にアニサキスが迷入し,その部位が先進部として腸重積を惹起したと考えられた.
  • 細田 桂, 門多 由恵, 青木 真彦, 城戸 啓, 夏 錦言, 田村 光, 小島 正夫, 雨宮 哲, 本間 浩一
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 674-679
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は24歳の女性で,右季肋部痛と下痢があり近医を受診した.下腹部に腫瘤を触知し,CTにて卵巣腫瘍が疑われたため,当院婦人科に紹介となった.血液検査所見ではCA125が348.9 U/mlと高値であり,MRI検査では臍上部に達する骨盤内腫瘤性病変を認めたが,両側卵巣は別に同定可能であった.卵巣腫瘍よりは,腸間膜由来の腫瘍が疑われ,手術を施行した.開腹すると,両側卵巣は正常であった.骨盤内腫瘍は腸間膜由来であり,小腸に浸潤していた.また,大網に小結節があり,迅速病理組織学的診断では未分化な悪性腫瘍と診断された.腸間膜由来の腫瘍を含めた小腸部分切除術を施行し手術を終了した.術後は良好に経過し,第15病日に退院した.病理組織学的検査結果でperipheral primitive neuroectodermal tumor(以下,pPNET)と診断され,大網結節も同様の組織像であったため,補助化学療法を施行した.腸間膜原発pPNETはまれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 田中 宏幸, 堀江 久永, 栗田 真紀子, 濱田 徹, 熊野 秀俊, 鯉沼 広治, 宮倉 安幸, 冨樫 一智, 安田 是和, 弘中 貢
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 680-684
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は27歳の女性で,月経不順にて近医産婦人科受診した.右卵巣腫瘍と診断されたが,妊娠したため妊娠中期(妊娠18週0日)に,開腹手術が施行された.開腹所見で右卵巣に腫瘍は認められず,虫垂に長径13 cm大の紡錘形の腫瘍が認められた.前医では切除適応に関する判断がつかず,ハイリスク妊娠症例として当院へ紹介となった.虫垂腫瘍は虫垂粘液嚢腫と考えられたが,破裂のリスクがあること,妊娠中期であったことから虫垂と盲腸の一部の切除術が施行された.病理組織学的検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.母子ともに術後経過は良好で,その後近医にて正常分娩にて出産した.虫垂粘液嚢腫は,比較的まれな疾患であるが特徴的な症状はなく,偶然見つかることが多く,良悪性の術前診断も困難である.今回,我々は妊娠中に切除した虫垂粘液嚢腫の1例を経験したので,妊娠中の虫垂粘液嚢腫の取扱いについて文献的考察を加え報告する.
  • 徳永 真和, 池田 聡, 沖山 二郎, 檜井 孝夫, 吉満 政義, 吉田 誠, 住谷 大輔, 高倉 有二, 岡島 正純, 大段 秀樹
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 685-690
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は60代の男性で,2001年6月より粘血便が出現した.大腸内視鏡検査で直腸を中心に横行結腸にかけて多発性扁平隆起病変を認め,endoscopic mucosal resection(以下,EMR)標本の病理組織像でCap polyposisと診断された.内科的治療が継続されたが症状は増悪し,2004年5月に腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術を行った.以後,粘血便など愁訴は改善され患者のquality of life(以下,QOL)は高く保たれている.Cap polyposisは原因不明の疾患で,治療法はいまだ確立されていない.内科的治療抵抗性の難治性Cap polyposis治療法の選択肢の一つとして手術があげられるが,初回手術の有効率は約55%であり,手術適応を十分に検討したうえで行う必要がある.その中で,今回施行した腹腔鏡下手術は開腹手術と比較し低侵襲であり,有用であると考えられた.
  • 釜田 茂幸, 清家 和裕, 亀高 尚, 牧野 裕庸, 小山 隆史, 安野 憲一, 宮崎 勝
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 691-695
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     Stage I大腸癌根治切除4年後に孤立性仙骨転移を来したまれな症例を経験した.症例は75歳の男性で,平成13年7月に近医でS状結腸癌のためS状結腸切除術を施行され,病理組織学的検査では高分化型管状腺癌,mp,n0,ly0,v0,Stage Iと診断された.平成18年5月,肛門痛の増強のため当科外来を受診した.仙骨に孤立性腫瘍を認め,他に明らかな原発巣はなかった.生検の結果,大腸癌孤立性仙骨転移と診断した.化学放射線療法では無効であったため,腫瘍のfeeding arteryから動注化学療法(以下,TAIC)を13クール施行した.臨床的に明らかな腫瘍径の変化や腫瘍マーカーの降下はなかった.多発肺転移が出現したため全身化学療法へと変更したが,術後6年8か月目に死亡した.大腸癌骨転移に対しては手術だけでなく,化学放射線療法,TAICなども含めた集学的治療が必要となる場合がある.まれな転移を示した本症例に対し,文献的考察を加えて報告する.
  • 山永 成美, 横溝 博, 一二三 倫郎, 佐藤 敏美, 林 亨冶, 平田 稔彦
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 696-701
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の男性で,検診で直腸Rbに粘膜下腫瘍を指摘された.直腸カルチノイドの診断でendoscopic submucosal dissection(ESD)を行った.病理組織学的検索では腫瘍径は4 mmで,垂直・水平断端はともに陰性であったが微小脈管侵襲が認められた.十分なインフォームドコンセントの後,追加手術を行ったところ,251番リンパ節に転移を認めた.直腸カルチノイドでは,径10 mm以上,深達度mp以深,中心陥凹,表面の凹凸不整像,脈管侵襲陽性などの所見があれば,追加切除や厳重な経過観察が必要とされている.腫瘍径5 mm以下では,リンパ節転移のない症例がほとんどであること,手術によりquality of lifeが損なわれる可能性があることから,追加切除の是非についてはいまだにコンセンサスが得られていない.しかし,本症例のごとく微小病変であっても脈管侵襲陽性例は追加手術,あるいは厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 熊谷 洋一, 飯田 道夫, 東海林 裕, 落合 高徳, 山崎 繁, 小田島 肇, 猪狩 亨
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 6 号 p. 702-707
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は24歳の男性で,腹痛を主訴に近医を受診し腹部腫瘤,肝転移を指摘され当院紹介受診となった.腹部造影CTにて上腹部,直腸膀胱窩に最大径約90 mm大の充実性腫瘍を認め,肝両葉に多発転移巣を認めた.腫瘍マーカーはCA125:100 U/ml,NSE:83.4 ng/mlと高値であった.穿刺吸引細胞診では確定診断がつかず,開腹生検を施行した.大網はomental cakeの状態で腹腔内に多発腫瘍を認めた.切除検体の免疫染色検査の結果,desmoplastic small round cell tumor(以下,DSRCT)と診断された.P6 regimenにのっとり化学療法を5コース施行.2コース終了後には肝転移巣,腹部腫瘍とも縮小を認め,腫瘍マーカーの低下を認めた.その後,次第に腫瘍は増大し診断より7か月で原病死した.DSRCTは本邦ではまれであるが若年者の腹部腫瘍の鑑別診断として本疾患も念頭におく必要があると考えられる.
臨床経験
  • 雄谷 慎吾, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 長澤 圭一, 大森 健治, 小林 陽一郎
    原稿種別: 臨床経験
    2009 年 42 巻 6 号 p. 708-713
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     食道切除に際し,胃切除後や胃癌を合併する場合には再建臓器として結腸が用いられることが多い.これまで,結腸による食道再建に際して,再建に用いる結腸の部位・血管茎の決定のために術前の血管造影検査が行われてきた.そのため,Multidetector-row CT(MDCT)を用いた3D-CT angiographyにより結腸の血管解剖,辺縁動脈の吻合が評価可能か検討した.対象は食道切除・結腸再建を予定した3症例.全例で結腸の主幹血管の起始・走行,辺縁動脈の吻合の有無が把握でき,術式立案,superchargeの要否の予想に有用であった.また,術後の再建結腸の血流の評価も可能であった.したがって,結腸による食道再建に際し3D-CT angiographyは簡便かつ低侵襲に,これまでの血管造影検査に換わりうる情報をもたらす.
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