日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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42 巻, 9 号
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原著
  • 間遠 一成, 増田 英樹, 間崎 武郎, 石井 敬基, 青木 信彦, 大亀 浩久, 万本 潤, 吉田 直, 高山 忠利
    原稿種別: 原著
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1455-1459
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     はじめに:大腸穿孔患者に対して,術前の重症度に応じた適切医療機関を選択できる指標があれば,効率的な治療が遂行できると考えられる.方法:SOFA score(以下,SS),APACHE-II score(以下,AS),POSSUM scoreの術前評価であるPhysiological score(以下,PS)から,ROC曲線を用いて最適な術前重症度評価法を検討する.また,ロジット回帰分析から逆推定した予測値を用いて,施設ごとの治療水準を比較評価できる客観的方法を提案する.対象:当施設で手術を施行した医原性穿孔を除く47例(男性24例,女性23例,平均65.9歳).転帰は生存40例(85.1%),在院死亡7例(術死5例)であった.成績:転帰との関連は各スコアともP<0.001と有意差を認めた.ROC曲線ではAS,PSとも曲線下面積0.95と同等かつ優れた評価能を有した.SSの曲線下面積は0.90であった.生存の確率を50%として逆推定した予測値はAS 21,PS 43であり,当施設ではこれら以上の値では極めて予後不良であった.考察:ASとPSはいずれも術前重症度評価法として適切と考えられた.施設ごとの治療水準を量る客観的方法として,AS, PSと転帰のROC曲線から算出した予測値は理解しやすい.予測値の設定は,各施設での治療遂行あるいはより優れた治療水準を有する医療機関への転院の是非を検討する判断材料となり,患者の重症度に応じた治療水準を有する医療機関を選択できるようになれば,救命率の向上に寄与できると考えられる.
症例報告
  • 梅邑 晃, 北村 道彦, 澤田 正志, 加藤 拓見, 梅邑 明子, 渋谷 香織, 渋谷 俊介, 楠田 和幸, 鈴木 雄, 遠藤 義洋
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1460-1465
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     食道胃接合部(esophagogastric junction;以下,EGJ)は扁平円柱上皮境界を有するため重複癌が発生しやすいが,衝突癌の報告はまれである.今回,EGJに発生した食道扁平上皮癌と胃管状腺癌の衝突癌の1例を経験したので報告する.症例は85歳の男性で,嚥下困難を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査で下部食道から噴門部にかけて3型腫瘍を指摘された.当初は食道癌の噴門部浸潤を疑ったが,細胞診で扁平上皮癌と管状腺癌を認めた.噴門部重複癌の診断で下部食道切除,胃全摘,Roux-en Y再建を施行した.病理組織学的には,扁平上皮癌と管状腺癌が組織学的移行を伴わず,明瞭な境界を持って接しており衝突癌と考えられ,また一部のリンパ節には両成分の転移を認めた.衝突癌は病理組織学的検索なくして術前に診断することは困難であり,EGJに発生する悪性腫瘍では常に衝突癌を念頭に入れる必要があると考えられた.
  • 蒔田 勝見, 緑川 武正, 八木 秀文, 藤原 康朗, 相田 邦俊, 坂本 道男, 横山 輝和, 大久保 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1466-1471
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は61歳の男性で,平成19年3月,腹部全体の痛みと腹部膨満を主訴に当院受診.血液検査でHb 9.5 g/dlと貧血を認め,腹部超音波検査および腹部CTで腹腔内貯留液を認め,腹腔内出血を疑った.腹部造影CT(CT angio)を行ったところ,左上腹部大網上に腫瘤性病変と動脈相にて左胃大網動脈と連続する血管から造影剤の漏出がみられ,左側大網出血と診断した.全身状態が安定していたため経過を見ていたが,その2時間後,血圧の低下傾向,Hb 8.7 g/dlと低下,腹部超音波検査で腹腔内貯留液が増量していたため,緊急手術を施行した.術前診断同様,左側大網動脈からの動脈性出血を確認,大網部分切除術を行い止血した.本邦での特発性大網出血,大網血腫の論文報告は17例,うち術前診断がなされた症例は5例,疑診2例であり,本例のごとく術前CT angioにより出血部位を確認しえた症例はこれまで報告されていない.
  • 中沼 伸一, 木南 伸一, 尾山 勝信, 舟木 洋, 藤田 秀人, 二宮 致, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 萱原 正都, 太田 哲生
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1472-1477
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の女性で,多発性骨髄腫の化学療法中にCTにて胃体上部の壁肥厚と壁内に多数の嚢胞性病変を指摘された.胃透視検査では体上部から穹窿部に境界不明瞭な壁の硬化を認め,胃内視鏡検査所見は胃体上部後壁を中心とした境界不明瞭な丈の低い結節状隆起を呈していた.組織診は高分化型の腺癌であった.多発性胃粘膜下嚢腫を伴ったBorrmann IV型の進行胃癌と診断し手術を施行した.癌は体上部から穹窿部全体に浸潤し,漿膜露出と腹膜播種も認めた.病理組織学的検査所見は明瞭な腺腔形成を示す高分化型の腺癌で繊維化を伴いびまん浸潤していた.免疫染色検査ではMUC2陰性,MUC5AC・MUC6陽性で胃型であった.高分化型のBorrmann IV型胃癌はまれである.本症例では拡張した癌腺管と,境界不明瞭で丈の低い結節状隆起を示した内視鏡像が特異であり,前者は高分化型Borrmann IV型癌に,後者は胃型の分化型癌に関係した性質と考えられた.
  • 金澤 寛之, 猪飼 伊和夫, 尾池 文隆, 阪本 靖介, 波多野 悦朗, 上本 伸二, 川上 史
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1478-1483
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は72歳の男性で,術前黄疸を呈した肝外胆管腫瘍栓を伴う肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCC)に対して肝右葉切除術および胆管腫瘍栓摘出術を施行した.術後8か月を経過した頃より黄疸が出現し,ERCPでは総肝管内に陰影欠損を認め,肝細胞癌の胆管内孤立性再発の診断で総肝管部分切除および腫瘍栓摘出術を施行した.術後7か月目,再び黄疸が出現し総胆管内に腫瘤性病変を認め肝外胆管切除および胆道再建術を施行した.病理組織学的には前回手術で胆管を部分切除した部位とは離れた胆管壁からの再発で,胆汁内に浮遊した腫瘍細胞の着床が原因と推察した.術後1年3か月経過するが再発の兆候はない.肝外胆管内に2回の孤立性再発を来した症例は極めてまれであるため報告した.
  • 山田 敬教, 岩本 明美, 遠藤 財範, 廣岡 保明, 池口 正英
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1484-1489
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は60歳の男性で,7年前に原発性肝癌(肝細胞癌)に対し,当科で肝外側区域切除が施行された.術後,他院で経過観察中にPIVKA-IIの上昇を認め,当科紹介となった.CT,MRI,Gaシンチなどで全身精査を行ったが病変を指摘できず,その間も腫瘍マーカーは増加傾向を示した.18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(以下,FDG PET)/CTで脾臓近傍の横隔膜を中心にFDGの強い集積を認め,肝細胞癌の肝外再発と診断し,手術を行った.腫瘍は横隔膜内を主座としており,横隔膜部分切除,脾合併切除を行った.病理組織学的検査では横隔膜内で主に発育進展した中分化型肝細胞癌を認め,原発性肝癌切除後の横隔膜再発と診断した.現在,術後3年経過したが,明らかな再発所見を認めていない.肝細胞癌の再発診断,治療方針決定にFDG PET/CTが有用であった.肝細胞癌の肝外転移は一般に予後不良だが,加療条件を選んだ積極的な切除で肝外再発後の長期予後を望める可能性があると思われた.
  • 鈴木 秀樹, 和田 渉, 新木 健一郎, 小林 力, 佐野 彰彦, 櫻井 信司, 桑野 博行
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1490-1495
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の男性で,腹部膨満感を主訴に近医受診した.腹部CTを施行し,左肝内胆管の異常が認められ精査目的に入院となった.血液検査上ではICG15分値の上昇がみられたが,腫瘍マーカーは正常範囲内であった.DIC-CTおよびERCPでは肝左葉外側区の肝内胆管の壁不整および左肝内胆管からB2,B3分岐部にかけて狭窄が認められたが,この部位の胆管ブラッシング細胞診ではClass IIであった.しかし,肝内胆管癌の可能性も完全には否定できず,本人および家族の同意のもとに肝左葉切除術を施行.病理組織学的検査では,左肝内胆管からB2,B3の胆管周囲に大小不同の嚢胞状に拡張した胆管が認められた.また,肝内胆管近傍の正常肝にも細胆管の増生をところどころ認められ,von Meyenburg complex(以下,VMC)から発生した拡張胆管と考えられた.VMCの中枢型の肝内胆管癌に類似した症例はまれであり若干の文献的考察を加え報告する.
  • 井上 賢之, 小泉 大, 佐久間 康成, 佐田 尚宏, 安田 是和
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1496-1500
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,便秘精査のため前医で下部消化管内視鏡検査を施行後,翌日より腹痛,腹部膨満を認めたため前医入院となった.入院経過中,右胸水貯留を認め,膿胸が疑われ,精査加療目的に当院転院となった.右上腹部に軽度圧痛を認め,肝外側および胆嚢周囲の異常ガス像から気腫性胆嚢炎による腹膜炎と診断,緊急手術を施行した.開腹すると右横隔膜下,肝外側,モリソン窩,肝左葉下面に大量の膿瘍が貯留していた.結腸を検索したが,明らかな穿孔部位は認めず,胆嚢壁の広範な壊死が認められ,これが腹腔内膿瘍の原因と診断した.気腫性胆嚢炎の形態をとるcolonoscopy cholecystitisの1例と考えられた.
  • 新地 洋之, 又木 雄弘, 蔵原 弘, 前田 真一, 久保 文武, 迫田 雅彦, 上野 真一, 前村 公成, 夏越 祥次, 高尾 尊身
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1501-1505
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は41歳の男性で,1995年4月に下部胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的診断は中分化型腺癌,ly1,v1,pn1,pPanc1,pDu2,pN1,pHM0,pEM0のstage IIIであった.術後8か月の腹部CTにて肝S6に径1.6 cm大の転移を認め,Methotrexate(以下,MTX)と5-fluorouracil(以下,5-FU)による全身化学療法を5クール施行した.径3.8 cmへ肝転移巣の増大を認めたため,1996年4月肝部分切除を施行した.術後MTXと5-FU,Cisplatin(以下,CDDP)による予防肝動注化学療法を1年間施行した.さらに,2002年2月まで全身化学療法を行った.肝転移再発切除後12年経過した現在無再発生存中である.肉眼的に完全切除の可能性のある症例に対しては,積極的に切除し,術後肝動注療法などの集学治療を行うことが長期生存につながる可能性が示唆された.
  • 岡田 健一, 今泉 俊秀, 松山 正浩, 堂脇 昌一, 飛田 浩輔, 幕内 博康
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1506-1511
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は55歳の男性で,胆嚢ポリープ経過観察目的に前医受診した.腹部超音波で膵頭部に低エコー性腫瘤を指摘され,腹部CTを施行.膵頭部進行膵癌と診断され当院紹介受診した.腫瘤は5 cm大,境界は比較的明瞭,形状は不整で周囲門脈を圧排し,CT,MRI検査で造影効果を認めた.開腹下に膵頭部腫瘤を小片切除して生検施行.膵腫瘤生検の術中迅速病理組織学的診断で異型リンパ球の浸潤を認め,悪性リンパ腫が疑われた.免疫染色検査を含む永久標本の病理組織学的診断は低悪性度のB細胞リンパ腫で,膵mucosa-associated lymphoid tissue(以下,MALT)リンパ腫と診断された.化学療法はR-CHOP療法が施行され,8コース後膵頭部から鉤部は著明に縮小し,ほぼ完全寛解をえた.膵原発MALTリンパ腫は非常にまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 斎藤 淳一, 小林 直之, 関 大仁, 上山 義人, 池田 俊昭, 中村 哲也, 岩田 憲治, 栗原 英二
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1512-1516
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は86歳の女性で,心房細動に対しアスピリン100 mg/日を内服していた.腹痛,下痢・嘔吐を認め受診.腹膜刺激症状と腹部単純X線検査で著明な小腸ガス像を認めた.発症3時間後のCTで肝臓のair density area,門脈内ガス像(portal venous gas;以下,PVG),腸管壁内気腫・壁浮腫像を認め,腸管壊死を疑い手術を施行した.中等量の血性腹水が存在し,Treiz靭帯より120 cmの小腸より壊死部と灰白色の虚血腸管を認めた.上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMA)閉塞症による小腸壊死と診断し,小腸大量切除・回盲部切除を行った.病理組織学的に小腸の著明な出血壊死が見られ,粘膜層の凝固壊死および出血が認められた.腹水培養で細菌は同定されず,第25病日に内科転科となった.発症後3時間でPVGを呈したSMA閉塞症の報告は他に1例のみであり,貴重である.本疾患は予後不良であり,腸管壊死を疑う場合,早期の開腹術が予後改善につながると考えられた.
  • 大塚 敏広, 河崎 秀樹, 鷹村 和人, 吉田 金広, 篠原 永光, 久山 寿子
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1517-1522
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は72歳の女性で,2007年11月CTで骨盤内腫瘤を指摘され,当院紹介された.腹部CTで骨盤内に5.0×8.0 cm大の造影される腫瘤を認めた.腫瘍の灌流静脈は上腸間膜静脈であった.回腸gastrointestinal stromal tumorの診断で開腹手術を施行した.回腸末端から約20 cm口側の回腸に腫瘍を認めた.腫瘍を含む回腸を切除した.切除標本では,腫瘍は大きさ9.0×7.0×6.0 cm大で,割面は白色から淡黄白色で一部に壊死や出血を認めた.病理組織学的検査では,腫瘍は主に回腸漿膜から壁外に増殖していた.硝子化した膠原線維バンドを伴い,粘液性間質の中に紡錘形細胞が不規則に増生していた.樹枝状に分岐する血管が認められ,血管周皮腫様構造も認められた.免疫組織化学染色検査ではvimentin,CD34,CD99,bcl-2が陽性で,c-kitは陰性でsolitary fibrous tumor(以下,SFT)と診断された.術後経過良好であった.まれな回腸原発のSFTの1例を経験したので報告する.
  • 野中 隆, 福岡 秀敏, 竹下 浩明, 澤井 照光, 林 徳眞吉, 日高 重和, 七島 篤志, 安武 亨, 永安 武
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1523-1527
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     患者は無症状の60歳の男性で,胃癌術後の経過観察中に受けた大腸内視鏡検査で盲腸の虫垂開口部より脱出する隆起性病変を指摘され,精査加療目的で当科紹介となった.注腸造影X線検査では粘膜下腫瘍様の隆起の中心に腫瘍性病変を認め,腹部CTでは造影効果を伴う腫瘍であった.虫垂腺腫の診断で腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.病変は10×8 mmの有茎性ポリープであり,組織学的には粘膜筋板の分枝が樹枝状に増生した異型のない腸粘膜を伴う腫瘍で,過誤腫と診断された.虫垂過誤腫性ポリープの症例はまれであり,色素沈着や家族歴を伴わない症例については現在まで1例が報告されているのみである.Peutz-Jeghers症候群に伴う虫垂過誤腫の本邦報告例4例と合わせて報告する.
  • 小畠 誉也, 久保 義郎, 仁科 智裕, 高畑 浩之, 大田 耕司, 野崎 功雄, 棚田 稔, 栗田 啓, 高嶋 成光
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1528-1533
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     患者は51歳の男性で,2年前に大動脈周囲リンパ節転移を伴う下行結腸癌に対し,結腸部分切除術(根治度C)を施行した.FOLFIRI(5-fluorouracil, leucovorin and irinotecan)療法を8か月間施行後,13か月前よりFOLFOX(5-fluorouracil, leucovorin and oxaliplatin)+ベバシズマブ療法中であった.突然の右下腹部痛と発熱を主訴に外来を受診,右下腹部から右季肋部にかけて圧痛と腹膜刺激症状を認めた.腹部CTで上行結腸壁の肥厚と上行結腸間膜内のガスを認めた.結腸の穿通と診断し右結腸切除術を施行した.病理組織学的に結腸憩室での穿通と診断した.ベバシズマブ療法中,腹痛や発熱を認める際は,投与から1年以上経過していても,消化管穿孔に注意し,早期診断・治療をするべきである.創傷治癒遅延に留意し人工肛門造設が無難とされるが,自験例は早期診断され,全身状態も良好で,炎症も限局していたため1期的吻合を施行したが,合併症なく退院できた.
  • 高見澤 潤一, 久世 真悟, 京兼 隆典, 柴原 弘明, 檜垣 栄治
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1534-1538
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は74歳の男性で,2006年1月にS状結腸癌に伴う穿孔性腹膜炎に対してハルトマン手術が施行された.2007年10月よりCA19-9の上昇を認めたため,US,CTを施行したが明らかな再発巣を指摘できなかった.18-F fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)を施行したところ,膀胱右腹側,右鼠径ヘルニア嚢内それぞれに異常集積を認めたため,腹部CTを再検討したところ,同部位に結節影を認め大腸癌の腹膜転移再発と診断した.開腹すると拇指頭大の結節が腹膜を巻き込み,鼠径ヘルニアの門を閉塞していた.また,鼠径管を開放すると拇指頭大の硬い結節を内容とするヘルニア嚢が確認された.腹腔内,鼠径管より腹膜転移巣を腹膜とともに一塊として切除した.病理組織学的に腫瘤はともに中分化腺癌であり,大腸癌の腹膜転移と診断した.経口による補助化学療法を施行し,術後8か月が経過したが,再発なく外来通院中である.
  • 杉本 博行, 山田 豪, 粕谷 英樹, 金住 直人, 野本 周嗣, 竹田 伸, 中尾 昭公
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1539-1544
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の男性で,糖尿病にて通院中,血液検査異常あり,CTを施行し肝内胆管拡張および肝腫瘍を指摘された.結腸癌の既往があり,転移性肝癌も疑われ内視鏡検査が施行され胃癌を指摘された.胃癌合併の肝内胆管癌を疑い幽門側胃切除,肝右葉切除を施行した.切除標本では大腸癌の肝転移の所見であった.本症例は胆管内腫瘍栓を伴う大腸癌肝転移の特徴を有した貴重な症例であり,原発巣切除から肝再発の診断まで最長期間例であった.
  • 木村 豊, 星野 宏光, 矢野 浩司, 岩澤 卓, 團野 克樹, 加納 寿之, 大西 直, 中村 隆, 門田 卓士, 今岡 真義
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 42 巻 9 号 p. 1545-1549
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/12/23
    ジャーナル フリー
     症例は63歳の男性で,スクリーニングのための上部消化管内視鏡検査で胃角部小彎のType 0 IIcの早期胃癌と診断された.腹部造影CTで2 cm大の腹腔動脈瘤を認めた.腹部血管造影検査では腹腔動脈に2 cm大の嚢状の動脈瘤を認め,動脈瘤から総肝動脈,左胃動脈,脾動脈が分枝していた.胃癌を合併した腹腔動脈瘤の診断で幽門側胃切除術,動脈瘤切除,総肝動脈—脾動脈吻合による血行再建を行った.腹腔動脈瘤は内弾性板の断裂した嚢状動脈瘤で,胃癌は管状腺癌:高分化型でType 0 IIc,T1(M),N0,H0,P0,CY0,M0,Stage IAの診断であった.腹腔動脈瘤は比較的まれな疾患で,胃癌を合併した腹腔動脈瘤に対して瘤切除および幽門側胃切除術を同時に行った報告例は本症例のみであるので文献的考察を加えて報告する.
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