日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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43 巻, 12 号
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原著
  • 廣川 文鋭, 林 道廣, 宮本 好晴, 岩本 充彦, 朝隈 光弘, 米田 浩二, 清水 徹之介, 井上 善博, 谷川 允彦
    原稿種別: 原著
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1197-1204
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     はじめに:肝切除術後の予防的ドレナージの有用性を否定している論文が多いにもかかわらず,依然多数の施設で挿入されている.今回,自験例をもとにドレーン挿入の是非と必要例について検討した.対象と方法:2001年5月から2009年10月までの胆道・消化管吻合のない肝切除術でドレーンを挿入した259例をDrainage群(以下,D群),ドレーンを挿入しなかった118例をNon drainage群(以下,ND群)とし,術後合併症頻度をretrospectiveに比較した.さらに,術後胆汁漏症例とND群の術後ドレーン挿入例から,ドレーン挿入必要例を検討した.結果:術後合併症は,創感染のみND群で5.9%とD群の13.5%に比べ有意に低く,術後入院日数もND群が12日と,D群18日に比べ短かった.ND群の術後早期ドレーン挿入例は,肝不全を併発した3例であった.また,術後胆汁漏発生の危険因子は,再肝切除,主要Glisson鞘の露出術式(中央2区域・前区域切除)と術中胆汁漏が同定されたが,胆汁漏発生日が術後19.5日と遅かった.まとめ:胆道再建などを伴わない肝切除後は,全例にドレーンを留置する必要はなく,肝不全発症予知の点からは門脈腫瘍栓を伴う大量肝切除症例や,術後胆汁漏の点からは中央2区域・前区域切除あるいは再肝切除で術中胆汁漏を認めた症例に予防的なドレーン挿入が有用である可能性が示唆された.
症例報告
  • 中村 勇人, 平松 和洋, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 吉原 基, 池山 隆
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1205-1211
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,つかえ感を主訴に当院受診した.上部消化管内視鏡検査で胃噴門直下に粘膜下腫瘍性病変を認めた.CTで中縦隔を主座とし,上方は右肺門に至り,下方では胃噴門部内腔へ突出する巨大な腫瘍を認めた.生検でgastrointestinal stormal tumorと診断.過大な手術侵襲を避けるため,腫瘍縮小目的に術前化学療法としてイマチニブ400 mg/日で治療を開始.投与2週後,画像上腫瘍の縮小を認めた.投与8週後,CTで腫瘍内にair像がみられ,精査で食道腫瘍瘻と診断した.保存的治療で4週間経過をみたが,瘻孔は治癒せず,手術に至った.右開胸開腹で下部食道胃噴門側切除,胸腔内食道胃管吻合術を施行,腫瘍は完全切除された.摘出標本は腫瘍径12×10×8 cmの腫瘍で,後壁に瘻孔部,腫瘍内には空洞を認めた.病理組織学的に腫瘍細胞は退縮し,線維変性していた.術後16か月の現在,再発兆候はない.
  • 諏訪 宏和, 長堀 優, 高橋 徹也, 山本 晴美, 長田 俊一, 窪田 徹, 小尾 芳郎, 阿部 哲夫, 遠藤 格, 嶋田 紘
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1212-1217
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の男性で,精神疾患にて他院に入院中であったが,腹部激痛,ショック状態のため当院に搬送された.胸部単純X線検査,胸腹部CTにて横隔膜ヘルニアに伴う消化管穿孔,汎発性胸・腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.左横隔膜後縁に約5 cmのヘルニア門を認め,胃体上部大彎に約2 cmの穿孔を認めた.胃部分切除,ヘルニア門の直接縫合閉鎖・ドレナージ術を行った.術後も敗血症性ショックの状態が持続したが徐々に回復し,術後第104病日に前医に転院となった.Bochdalek孔ヘルニアの成人例は比較的まれとされている.予後は一般に良好とされているが,脱出臓器の嵌頓・穿孔例では重篤化することがあるため,症状の有無にかかわらず早期に手術を行う必要があると考えられた.
  • 松津 賢一, 山崎 安信, 長谷川 聡, 池 秀之, 中村 宣子, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1218-1222
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     胃癌術後10年以降の再発やSister Mary Joseph's nodule(以下,SMJNと略記)として知られる臍転移は,いずれも非常にまれである.今回,我々は胃癌術後10年2か月で臍転移再発を来した症例を経験したので報告する.症例は50歳の女性で,平成8年6月,胃全摘術.低分化腺癌(por2),T3(SE), N1, H0, P0, M(−), Stage IIIA,根治度Bであった.術後補助療法としてUFTを5年間内服し,以後経過観察.平成18年8月に左腰背部痛と臍の腫瘤を自覚.CTで,左水腎症と臍部に直径1.2 cmの腫瘤を認めた.胃癌の腹膜播種と臍転移の診断で,TS-1/CDDP療法を施行.1コース終了後,左水腎症は消失.治療を継続したが,徐々に臍腫瘤が増大.平成20年9月に原病死した.
  • 才川 大介, 橋本 卓, 葛西 弘規, 谷 安弘, 中川 智徳, 高木 知敬
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1223-1228
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は71歳の女性で,黄疸・全身倦怠感を主訴に来院し,精査にて十二指腸乳頭部の内分泌細胞癌と診断され,膵頭十二指腸切除術・リンパ節郭清(D2)を施行した.組織所見では小型で細胞質に乏しい腫瘍細胞が均一にシート状に増殖し,免疫組織化学的検索にてCAM5.2(keratin),chromogranin A, NSEが陽性であった.微小膵浸潤および2群リンパ節転移を認め術後第52日目より肺小細胞癌に準じCDDP/CPT-11およびCDDP/VP-16を含む術後補助化学療法を半年間施行し,現在術後27か月間の無再発生存を得られている.十二指腸乳頭部原発の内分泌細胞癌はまれな疾患であるものの,急速に転移・進行し極めて予後不良とされている.本疾患の治療方針はいまだ確立されていないが,進行症例に術後補助化学療法が有効である可能性が考えられた.
  • 中平 啓子, 黒崎 功, 植木 秀功
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1229-1233
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は66歳の女性で,十二指腸乳頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査所見で2群リンパ節転移(13a, 14c, 14d, 15),膵浸潤(panc2),十二指腸浸潤(du2)を認めた.根治術5か月後に単発性肝転移に対し,肝左葉切除術を施行した.術後補助化学療法として塩酸ゲムシタビン(1,000 mg/body,隔週)を約15か月間投与した.現在まで肝切除後約5年6か月間無再発で経過観察中である.胆道癌肝転移に対する肝切除後の長期生存を報告している論文は少ない.本例は高度のリンパ節転移を認め,術後早期に肝転移再発を来したが,肝切除および術後化学療法を行い,長期生存を得たまれな症例と考え,文献的考察を加えて報告した.
  • 迫川 賢士, 大田 耕司, 棚田 稔, 大谷 真二, 小畠 誉也, 野崎 功雄, 青儀 健二郎, 久保 義郎, 栗田 啓, 高嶋 成光
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1234-1239
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の男性で,1998年6月横行結腸癌に対して右半結腸切除術,D3リンパ節郭清を施行した.最終病理学診断は中分化型腺癌,ss,n3(+),P0,H0,M(−),StageIIIbであった.原発巣切除後約3年後に肝S6に肝内胆管の拡張を伴う腫瘤を認め,大腸癌術後肝転移再発と診断し肝後区域切除術を施行した.さらに,その4年後に肝S3に新たに腫瘤を認め,前回同様肝内胆管の拡張を伴う2度目の大腸癌肝転移と診断し肝外側区域切除術を施行した.2度とも摘出標本にて肉眼的に胆管内を進展する腫瘍を認めた.病理学的には中分化型腺癌で原発巣病理所見と類似しており,最終的に肉眼的胆管内進展を伴う大腸癌肝転移と診断した.このような特徴を有する大腸癌肝転移は,腫瘍が進展した胆管を含む系統的肝切除を行い十分なsurgical marginを確保することで長期予後が期待できる症例であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐々木 滋, 高橋 進一郎, 木下 平, 小西 大, 中郡 聡夫, 後藤田 直人, 小嶋 基寛
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1240-1245
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の男性で,B型慢性肝炎のfollow up CTにて肝S8に腫瘤を指摘され,当科を紹介受診・入院となった.入院時検査にてHBs-Ag(+),HCV-Ab(−)であり,腫瘍マーカーはAFP・PIVKA-IIともに上昇を認めた.画像診断と合わせて肝細胞癌の診断にて肝前区域切除を施行した.病理所見は腫瘤の多くは異型の強い核を持つ多形性~紡錘形の細胞が混在して増殖する肉腫様の組織と,その周囲の細胆管類似の管腔形態を示す組織であり,肉腫様変化を示した細胆管癌と診断した.術後経過は良好で通常通りに退院したが,術後3か月頃より残肝再発,傍大動脈リンパ節腫大を認め,肝不全により術後4か月で死亡した.肉腫様変化を伴う胆管癌はまれであり,さらに細胆管癌もまたまれな疾患である.その両者が混在した貴重な症例を経験したので報告した.
  • 猪狩 公宏, 渡辺 雄一郎, 藍原 有弘, 落合 高徳, 熊谷 洋一, 山崎 繁
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1246-1251
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     Hemosuccus pancreaticus(以下,HP)は膵管を通りVater乳頭から出血を来すまれな疾患である.今回,我々は異なる原因により発症したhemosuccus pancreaticusの2例を経験した.症例1は77歳の男性で,繰り返す吐血より,腹部CTにて脾動脈瘤を認めたことより手術を施行したところ,主膵管との交通をもつ動脈硬化性の脾動脈瘤を認めた.症例2は58歳の男性で,腹痛を主訴に施行した上部消化管内視鏡検査にて,Vater乳頭からの出血を認め,また腹部MRIにて膵尾部に腫瘤を認め,嚢胞内出血と診断し手術を施行した.嚢胞壁は異型を認める円柱上皮に覆われており,膵管との交通を認め,また卵巣様間質を認めないことよりintraductal papillary mucinous neoplasmと診断した.原因不明の上部消化管出血には,HPを鑑別疾患に入れた診療が必要である.
  • 寺師 貴啓, 伊地知 秀樹, 丸山 晴司, 島袋 林春, 大野 芳敬, 上甲 康二, 吉岡 真二, 村田 繁利, 大城 由美, 西崎 隆
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1252-1257
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は55歳の男性で,6か月前より腹部違和感,1か月前より嘔吐出現し,当院紹介受診した.造影CT,MRIでは十二指腸下行脚~水平脚右側に10×5 cm大の嚢胞性病変を認め,膵頭部に1 cmの不整形腫瘤を認めた.胃造影X線検査,gastrointestinal fiber(GIF)では十二指腸狭窄を認めた.血液腫瘍マーカーではDUPAN-2 747 U/mlと上昇を認めた.膵頭部癌疑いと,嚢胞性病変による十二指腸狭窄の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本にて膵頭部に1 cmの白色結節,十二指腸下行脚に7×5 cmの嚢胞性病変を認めた.病理組織学的検査にて,膵頭部の結節は慢性膵炎に伴う膵頭部の局所性線維化,嚢胞性病変は十二指腸壁内に進展した膵仮性嚢胞が考えられた.最終的にgroove pancreatitisによる変化と考えられた.Groove pancreatitisは膵頭部癌との鑑別が困難である疾患であり,groove pancreatitisに十二指腸壁内膵仮性嚢胞を伴った,極めてまれな症例を経験したので報告する.
  • 松川 啓義, 塩崎 滋弘, 高倉 範尚, 渡邉 佑介, 大野 聡, 小島 康知, 原野 雅生, 西崎 正彦, 丁田 泰宏, 二宮 基樹
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1258-1263
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は75歳の女性で,糖尿病のコントロールが不良となりCTを施行され膵頭部に嚢胞性腫瘤を指摘された.MRI,EUS,ERCPにて混合型の膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断した.加えて,膵体尾部に相当する部位は脂肪組織のみで実質組織はみられず膵体尾部脂肪置換を伴っていた.膵管造影で主膵管は体部で途絶していた.膵体尾部脂肪置換を伴った膵管内乳頭粘液性腫瘍に対して膵頭十二指腸切除を施行した.肉眼的に膵体尾部に一致する部位に実質組織はなく肥厚した脂肪組織のみで残膵は再建せず空置した.術後インスリンでの血糖コントロールは良好であった.組織学的に膵管内乳頭粘液性腺腫と診断され,また脂肪置換した膵切離断端にはランゲルハンス氏島の残存が確認された.膵体尾部脂肪置換に対する膵頭十二指腸切除は,脂肪置換組織内のランゲルハンス氏島の残存により膵全摘に比べ血糖コントロールに難渋することなく安全に施行しうると考えられた.
  • 松井 芳夫, 矢野 和仁, 田村 洋一郎, 影山 隆久
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1264-1269
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,食欲不振と体重減少を訴え,精査目的で当院紹介となった.血液生化学検査では,高度の肝機能障害と黄疸を認めた.腹部超音波検査で総胆管の拡張と,胆管内に占居性病変を認めた.腹部MRIで膵頭部に約2 cm大のT1で低信号,T2で高信号の病変と,magnetic resonance cholangiopancreatography(以下,MRCP)では下部胆管に隆起性の欠損像を認めた.腹部血管造影検査で膵頭部に腫瘍濃染を認めたが,周囲血管の明らかなencasementは認めなかった.以上より,下部胆管に占居性病変を伴った膵頭部悪性腫瘍の診断で,膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本にて胆管内に腫瘍塊を認めた.病理組織学的所見は腫瘍細胞が腺房様構造を示しながら周囲膵実質組織を圧排するように膨張性に発育していた.胆管内腫瘍も膵頭部腫瘍と同様の組織型を呈していた.免疫染色検査でトリプシン強陽性,リパーゼ弱陽性との免疫性状を呈し,膵腺房細胞癌と診断された.
  • 高野 可赴, 黒崎 功, 皆川 昌広, 北見 智恵, 伊達 和俊, 畠山 勝義
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1270-1275
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     膵癌の3大再発様式は肝転移,局所再発,腹膜播種であるが,肺転移の臨床的特徴や治療については明らかではない.免疫組織学的に証明された孤立性肺転移4例の臨床病理学的特徴とgemcitabine+TS-1併用療法(以下,GS療法)の意義について検討を加えた.4例とも初回膵切除後にgemcitabineが投与されていた.術後無再発生存期間は26~78か月であった.単発病変の2例は原発性肺癌,多発性の2例は転移が疑われ肺切除が施行された.全例において病理組織学的,免疫組織学的に肺転移と診断された.術後1例を除きGS療法が行われた.肺切除後の転帰は2例がおのおの36,14か月生存中で,2例がおのおの32,14か月に再発にて死亡した.膵癌治癒切除後の孤立性肺転移は比較的遅発性であり,肺切除後の化学療法により比較的長い生存期間が得られた.他の腹腔内再発様式と比較して生物学的悪性度が低い可能性が示唆された.
  • 田中 雅之, 松尾 達也, 森 大輔, 原田 貞美, 宮崎 耕治
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1276-1281
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は59歳の男性で,右下腹部痛を主訴に来院した.右下腹部に筋性防御,反跳痛を認め,WBC 18,870/mm3,CRP 12.3 mg/dlと炎症所見も上昇していた.CTでは辺縁が強く造影される腫大した虫垂が確認されたことより急性虫垂炎と診断し,虫垂切除術を施行した.病理組織学的検査で,虫垂根部を中心に印環細胞癌を認めたため,第21病日,回盲部切除術(D3郭清)を施行した.術後に化学療法を6か月行い,その後外来にて経過観察中であるが,初回術後18か月経過した現在も無再発生存中である.原発性虫垂癌は比較的まれな疾患であり,特に印環細胞癌の報告例は極めて少ない.本症例のように術後の病理組織学的診断で初めて診断されることが多いため,急性虫垂炎においては切除標本の積極的な病理組織学的診断が重要であり,癌の診断がなされた場合には,その組織学的病期に応じて適切な追加切除や化学療法が考慮されるべきである.
  • 大目 祐介, 河本 和幸, 桐野 泉, 岡部 道雄, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1282-1287
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     鈍的腹部外傷後1年後に,遅発性結腸狭窄,結腸回腸瘻を来した1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で,交通事故による腸間膜損傷疑いに対して,保存的加療を行った.1年後イレウス症状が出現し,当院紹介となった.保存的加療を行うも改善を認めなかった.下部消化管内視鏡,注腸造影検査を施行し,S状結腸小腸瘻と診断した.S状結腸および回腸部分切除術,S状結腸人工肛門造設術を施行した.腹部外傷では腸管損傷,腸間膜損傷がしばしば認められるが,腹部外傷後の遅発性結腸狭窄は非常にまれであり,また結腸小腸瘻については,これまで本邦における報告はない.腹部外傷の既往がある患者に,イレウス症状を認めた場合,遅発性腸管狭窄を念頭において精査を進める必要がある.また,本症例のように瘻孔を形成していることもあり,診断には小腸・注腸造影検査が有用と考えられる.
  • 金城 洋介, 吉冨 摩美, 韓 秀〓, 山本 秀和
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 43 巻 12 号 p. 1288-1292
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の男性で,食後の腹痛を主訴に来院した.腹部造影CTにてsuperior mesenteric artery(以下,SMA)根部から2 cmに及ぶ閉塞を認めた.腹部血管造影にてSMAの根部は閉塞し,末梢側は総肝動脈・胃十二指腸動脈・背側膵動脈からの発達した側副血行路が血流を供給しており慢性SMA閉塞と診断した.絶飲食で症状は改善したが食事を再開すると腹痛を繰り返すため治療の適応があると判断し,血管内治療より長期開存率に優るバイパス手術を選択した.過去の報告でSMAバイパス術は腹部大動脈や腸骨動脈との吻合が多いが,本症例ではどちらも石灰化や狭窄が著しく吻合のリスクが高いと判断した.超音波ドプラを用いて脾動脈の術前評価を行い,脾動脈・SMAバイパス術を施行し,臨床症状の改善を得た.SMAバイパスのinflowとして大動脈や腸骨動脈の条件が悪い場合,脾動脈を選択することも可能である.
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