日本消化器外科学会雑誌
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44 巻, 12 号
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原著
  • 山口 佳之, 弘中 克治, 岡脇 誠, 山村 真弘
    原稿種別: 原著
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1513-1519
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     はじめに : 消化器癌入院患者を対象に癌性疼痛治療としてフェンタニル注射剤を用いたタイトレーションを実施し,その有効性と安全性および忍容性について解析した.方法 : フェンタニル注射剤を6μg/mLに調整し,シリンジポンプを用いて1mL/hrで投与を開始し,疼痛の訴えに従って増量した.除痛が得られた時点でその投与速度に匹敵する貼付剤を貼付した.結果 : 胃癌6例,大腸癌4例,膵癌3例,食道癌3例,計16例が登録された.平均年齢は64.1±11.9歳(40~82歳)であった.14例(88%)においてタイトレーション可能であった.タイトレーションに要した日数は5.7±4.5日で,疼痛スコアは前後でそれぞれ3.8±2.1,1.1±1.1と有意に低下した(p<0.05).悪心・嘔吐,便秘の副作用および実施上の問題点は認めなかった.考察 : フェンタニル注射剤を用いたタイトレーションの有効性が示された.消化器系副作用は最小限であり,安全性,忍容性に問題なく,消化器癌の疼痛管理として有用である可能性が示唆された.
  • 西和田 敏, 渡辺 明彦, 國重 智裕, 井上 隆, 向川 智英, 高 済峯, 石川 博文
    原稿種別: 原著
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1520-1527
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     目的 : 胃癌取扱い規約13版ではStage IBは比較的予後良好であるとされているが,時に術後再発がみられる.そのため術後再発危険因子に関して臨床病理学的に検討した.方法 : 1989年4月より2008年3月までに当科で手術を施行した初発胃癌1,110例のうち,Stage IBは123例であった.このうち14例(11.4%)に術後再発を認めた.Coxの比例ハザードモデルを用いて,再発危険因子を検討した.結果 : 手術時年齢,性別,pT1N1かpT2N0か,肉眼型,組織型,病変占居部位,リンパ節郭清範囲,リンパ節転移個数,術後補助化学療法の有無,新規約における分類について検討した.多変量解析では,肉眼型:進行型(p=0.009),リンパ節郭清範囲:<D2(p=0.0012),リンパ節転移個数:≧2個(p=0.0004)が独立した再発危険因子であった.これらの因子を2個以上有する症例を高リスク群とし,1個以下の低リスク群と比較すると,累積無再発生存率は低リスク群91.9%,高リスク群41.7%と両群間に有意差を認めた(p<0.0001).考察 : 高リスク群では再発により注意すべきと考えるが,術後補助化学療法の適応についてはさらなる検討が必要である.
症例報告
  • 伊藤 勝彦, 石井 隆之, 大多和 哲, 清水 善明, 近藤 英介, 西谷 慶, 横山 航也, 清水 公雄, 岸 宏久, 小川 清
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1528-1534
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の男性で,上腹部不快感を主訴に近医で胃内視鏡検査を施行,胃体下部後壁に潰瘍が認められ生検で印環細胞癌と診断され当院紹介となった.CT,超音波にて肺・肝転移,リンパ節腫大認めず,早期胃癌の診断にて腹腔鏡下胃切除(D1+β)を施行した.病理組織学的診断はpT1(m)pN0であった.術後CEA上昇を認め,腹部CTにて指摘された傍脊椎(Th1~L1)腫瘍に対する針生検にて転移性腺癌の診断となったため,化学療法を施行した.抗癌剤開始後1年5か月後にふらつき,感情鈍麻が出現,髄液検査にて髄膜癌腫症と診断され,その後急速に病状が悪化して死亡した.胃粘膜癌でも,腫瘍マーカーの上昇や脳神経症状を認めた場合には髄膜癌腫症を考慮して精査が必要であると考えられた.
  • 佐々木 直也, 白潟 義晴, 篠原 尚, 糸井 和美, 牧 淳彦, 水野 惠文, 三村 六郎, 鷹巣 晃昌
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1535-1542
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は78歳女性で,検診で胃上部に低分化腺癌を指摘された.上部消化管造影検査,上部消化管内視鏡検査,腹部CTで胃上部小彎に広範な腫瘍を認めた.術前血清AFP値が166ng/mlと高値を示した.胃全摘術,膵体尾・脾合併切除術を施行した.病理組織学的診断ではpT2N2M0,Stage IIIA,絨毛癌と卵黄嚢腫瘍様AFP産生胃癌の両組織を認めた.術後易感染状態を来し,感染性心内膜炎により術後48日目に永眠された.剖検診断では肝内門脈内に微小腫瘍塞栓を認めたが,そのほかには癌の転移再発所見を認めなかった.縫合不全や腹腔内膿瘍の所見も認めなかった.胃原発絨毛癌はきわめてまれで悪性度の高い疾患であるが,AFP産生胃癌との合併例はさらに稀少である.また,画像上検出されなかった微小門脈腫瘍栓が剖検で認められたことから,今後の治療計画を立てるうえでの示唆に富む症例と考えられたので報告を行った.
  • 千々岩 芳朗, 一宮 仁, 栗原 秀一, 山方 伸茂, 松本 耕太郎, 許斐 裕之, 大城戸 政行, 加藤 雅人
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1543-1549
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     十二指腸乳頭部癌術後肝再発に対して肝切除術を施行し長期生存を得た1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は55歳の男性で,1998年8月に十二指腸乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的診断は高分化型管状腺癌(Pat Acb Bi,Panc0,Du0,od,ly0,v0,pn0,em0:stage I)であった.術後約6年経過した2004年7月の腹部CTにて肝右葉(S8)に単発で7cm大の転移を認めS8亜区域切除術を施行,病理組織学的に十二指腸乳頭部癌転移と診断した.初回切除後12年,肝転移再発切除後6年経過した現在無再発生存中である.文献検索の結果,乳頭腺癌か高分化型管状腺癌で単発肝転移,肝転移再発までの期間が3年以上の場合は,肝切除で長期生存が期待できることが示唆された.
  • 塙 秀暁, 山本 一仁, 寺西 宣央, 柏原 元, 二見 良平, 木内 博之, 鈴木 英之
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1550-1557
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は52歳の男性で,発熱,腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.血液検査で著明な炎症反応の上昇と胆道系酵素の上昇を認め,腹部超音波検査にて胆嚢の腫大と壁肥厚を認めた.腹部単純CTにて胆嚢頸部に約2.0cm大の嚢胞性病変を認めた.炎症が高度であったため緊急経皮経肝胆嚢ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage以下,PTGBDと略記)を行った.PTGBD造影で,腫瘤は表面平滑で有茎性,MRIでは壁の厚さが均一な多房性病変であることが示唆された.以上より,腫瘤は多房性嚢胞性を呈する良性疾患と診断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.切除標本において腫瘤は表面平滑で淡赤色の有茎性病変であり,病理組織学的検査の結果では化生上皮型の過形成ポリープと診断された.過形成ポリープ嵌頓による急性胆嚢炎はまれな症例であり,本邦で他に報告例はないため報告した.
  • 鈴木 修司, 伴 慎一, 梶 理史, 小池 伸定, 原田 信比古, 鈴木 衛, 今泉 俊秀
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1558-1564
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     多彩な病理組織像を示した粘液産生性胆管腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は78歳の男性で,1日前からの下腹部痛,腹満症状にて当院受診となった.CT,超音波検査で虫垂炎と肝S4に内部隆起を有する30mm大の嚢胞性腫瘤を認め,入院となった.MRI,造影超音波検査ではmultilocularな嚢胞性腫瘤を認め,内部隆起性病変に一部造影効果を認めた.DIC-CTでは左肝管に狭小化を認めたが,内部に粘液は認めなかった.肝嚢胞性腫瘍の診断で左葉切除を施行した.病理組織学的検査所見ではさまざまな程度に乳頭状増殖した粘液産生性腫瘍上皮からなる多嚢胞性病変で,胆管との交通を認めた.腫瘍上皮は,carcinomaからadenomaまで多彩な異型を呈した.粘液形質は,MUC1,MUC5AC,MUC6は一部陽性で,MUC2は陰性だった.分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍に類似した粘液産生性胆管腫瘍と考えられた.
  • 中山 雄介, 石上 俊一, 北口 和彦, 浦 克明, 平良 薫, 大江 秀明, 吉川 明, 田村 淳, 光吉 明, 土井 隆一郎
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1565-1572
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は59歳の男性で,糖尿病のコントロールが悪化したことから,膵疾患の有無を精査するために行われた造影CTの際に,血圧の急激な上昇を認め,褐色細胞腫が疑われた.精査にて両側に多発した褐色細胞腫と多発性の非機能性膵内分泌腫瘍と診断した.右副腎摘出術・左副腎部分切除術を施行し,その後二期的に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断は,副腎褐色細胞腫および非機能性膵内分泌腫瘍であり,疾患の組み合わせから臨床病理学的にvon Hippel-Lindau病(以下,VHL病と略記)が疑われ,遺伝子検査の結果,診断が確定した.VHL病は非常にまれな疾患であるが,遺伝性疾患であり慎重な対応を要する.また散発性の場合,疾患の組み合わせによっては診断が困難な場合もある.疾患の組み合わせから,多発腫瘍症候群を疑えば,本疾患を考え遺伝子検査を行うことが必要であると考える.
  • 荒木 孝明, 江川 新一, 吉田 寛, 元井 冬彦, 内藤 剛, 力山 敏樹, 片寄 友, 下瀬川 徹, 石田 和之, 海野 倫明
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1573-1580
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は57歳の男性で,腹痛を主訴に近医を受診した.肝胆道系酵素の上昇があり総胆管結石症の疑いで乳頭切開術を施行された.その後胆道出血による貧血が進行し,緊急血管造影で膵動脈瘤破裂と診断され,後上膵十二指腸動脈を塞栓後,当院へ紹介された.当院での腹部血管造影で門脈の早期描出と膵頭部・尾部に網状の血管増生を認め,膵動静脈奇形(AVM)と診断した.再出血予防のため膵頭部と膵尾部を切除し,膵中央部を温存する術式を選択した.術後膵瘻を合併したが保存的に軽快し,術後約2年の経過で糖尿病はなく腹痛や出血の再燃も認めていない.複数の流入血管を有する膵動静脈奇形は先天的な病変とされ,切除が根治的で有効性が高い.膵AVMのような複数の良性膵病変に対し,病変の範囲が及んでいない実質を温存することで,膵全摘を避け術後の糖尿病発症・消化機能不全を予防することができる.
  • 柴崎 正幸, 万代 恭嗣, 日下 浩二, 伊地知 正賢, 冨樫 順一, 原田 庸寛, 北村 成大
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1581-1590
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は34歳のミャンマー人の男性で黒色便と高度の貧血(Hb 3.6)にて入院した.上部消化管内視鏡検査を施行し,胃体上部から穹りゅう部の後壁に静脈瘤を認めred color(RC)サインと小潰瘍あり,同部位よりの出血が強く疑われた.腹部CTでは脾臓に多発腫瘤,脾門部に腫瘤,肝門部に多発リンパ節腫大を認めた.肝臓に形態的な異常はみられなかった.以上の所見から消化管出血は脾臓および脾門部の腫瘤により脾静脈の環流が障害され,局所性門脈圧亢進症を呈し,胃静脈瘤が形成され破裂したものと考えられた.出血予防のために手術が必要と判断し,腹腔鏡補助下膵尾部切除術,脾臓切除術,下部食道胃上部血行遮断をおこなった.摘出標本では脾臓の多発腫瘤と脾門部腫瘤は共に結核の乾酪壊死による膿瘍だった.結核性脾膿瘍により局所性門脈圧亢進症を来し,孤立性胃静脈瘤を形成することはまれであり,文献的考察をふくめ報告する.
  • 松田 諭, 田村 光, 青木 真彦, 城戸 啓, 河島 俊文, 細田 桂, 小島 正夫, 雨宮 哲
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1591-1596
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は89歳の女性で,既往歴は高血圧のみであり,開腹手術の既往はなかった.2010年,夕食摂取中に臍上部の腹痛が出現し前医に受診した.腹部CTで内ヘルニアが疑われ同日当院紹介となった.腹部CTで,左上腹部に嚢状に拡張した小腸が一塊となっている所見がみられ,同部位の腸管壁の造影効果は不良であったため,内ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で手術を行った.術中,Treiz靱帯左側の横行結腸間膜に約5cmのヘルニア門を同定し,そこに約15cmの空腸が嵌入していた.用手的に整復後,腸管を観察すると漿膜面は発赤し浮腫状で,腸間膜にもうっ血像が著明であったため,切除の方針とし同部を切除吻合した.またヘルニア嚢は,膵前面から網嚢内に向かって広がっており,反転し嚢を切除,ヘルニア門を閉鎖した.術後経過は良好で,術後15日目に退院した.横行結腸間膜裂孔ヘルニアは比較的まれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 黒川 貴則, 金井 基錫, 金子 行宏, 高橋 弘, 本原 敏司
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1597-1603
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の女性で,1か月前より上腹部痛が出現した.腹痛が持続するため近医を受診し,腹部CTで腹腔内腫瘤を指摘された.腸間膜腫瘍が疑われ,精査加療目的に当科紹介入院となった.入院時右上腹部に手拳大の腫瘤を触知し,同部位に軽度圧痛を認めた.入院第5病日に腹痛が増強するため緊急腹部CTを施行した.小腸内にtarget signを認め,腸重積症の診断で開腹手術を施行した.トライツ靭帯より約25cm肛門側の空腸に重積陥入を認め,用手整復が困難であり空腸部分切除術を施行した.重積腸管内に大きさ4.0×3.5×2.5cmの粘膜下腫瘤性病変を認めた.病変はトライツ靭帯から約55cm肛門側の部位にあり先進部となっていた.病理組織学的に空腸海綿状リンパ管腫と診断された.小腸リンパ管腫はまれな疾患であるが,腸重積症の原因の一つとして考慮する必要があると思われた.
  • 加藤 久仁之, 千葉 丈広, 大山 健一, 大塚 幸喜, 板橋 哲也, 若林 剛
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1604-1609
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は69歳の男性で,腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院時の腹部単純X線写真で小腸ガス像を認め,腹部造影CTでは拡張腸管を認めたが,絞扼所見はなく単純性腸閉塞と診断し,イレウス管挿入による保存的治療の方針とした.イレウス管造影検査では空腸に狭窄像を認めた.また,ダブルバルーン小腸内視鏡検査では全周性の輪状潰瘍を認め,生検を施行したが確定診断には至らなかった.診断および根治を目的とし,腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.トライツ靭帯から60cm肛門側に病変を触知した.切除標本中央部に31×13mmの潰瘍性病変を認め,病理組織学的検査にて小腸動静脈奇形と診断された.経過良好にて術後7病日に退院となった.小腸動静脈奇形は消化管出血を来すことが多く,腸閉塞を発症することは極めてまれである.小腸イレウスの原因疾患として,本疾患も念頭に置く必要があると考えられる.
  • 村岡 孝幸, 浅野 博昭, 佃 和憲, 澤田 芳行, 野上 智弘, 上野 剛, 牧 佑歩, 杉本 誠一郎, 豊岡 伸一, 内藤 稔
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1610-1617
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     肺移植後に発生した小腸悪性リンパ腫により穿孔を来した1例を報告する.症例は22歳の男性で,16歳時に若年性関節リウマチに対して用いたmethotrexateによる薬剤性間質性肺炎を発症した.6年後に脳死両肺移植を受け,tacrolimusによる免疫抑制を行った.6か月後に移植後リンパ増殖性疾患としての多発する回腸悪性リンパ腫(びまん性巨大B細胞リンパ腫)を発症したため,免疫抑制を軽減し,rituximabを投与したが,開始後5日目に腫瘍部から大量出血し,消化管内視鏡下に凝固止血した.直後に消化管穿孔を診断し開腹した.穿孔部は止血術をした回腸病変ではなく,Treitz靭帯から120cm肛側の空腸の悪性リンパ腫病変部であった.穿孔部と回盲部のリンパ腫病変を切除した.全身状態の回復を待ち,術後28日目にrituximabを再投与したが,悪性リンパ腫の進行より同52日目に死亡した.
  • 服部 正嗣, 大河内 治, 川瀬 義久, 宇野 泰朗, 佐藤 雄介, 武田 重臣, 水野 亮, 高見 悠子, 坪井 賢治
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1618-1623
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は71歳の男性で,発熱を主訴に近医を受診し,C-ANCA関連血管炎と診断されて当院に紹介入院となった.腎生検,皮膚生検からWegener肉芽腫症と診断された.ステロイドパルス療法,エンドキサンパルス療法を行い軽快したが,第32病日に突然の腹痛が出現し,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.下行結腸に径2cmの穿孔部を認めて結腸部分切除・人工肛門造設術を施行した.穿孔部位の病理所見は非特異的な炎症性潰瘍であった.術後,Wegener肉芽腫症が再燃し治療に難渋したが救命した.Wegener肉芽腫症は近年予後が改善したとされているが,罹患中の消化管穿孔の報告は少なくまた予後不良である.Wegener肉芽腫症治療中には消化管病変にも留意し,発症時は速やかな手術と術後の集中治療が肝要である.
  • 三賀森 学, 池永 雅一, 安井 昌義, 辻江 正徳, 宮本 敦史, 宮崎 道彦, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 三嶋 秀行, 辻仲 利政
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1624-1631
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の女性で,C型肝炎で当院内科通院中に血便を来し,精査でS状結腸癌と診断した.31歳時の出産時に肺梗塞の既往があり,また血液検査で抗カルジオリピン・β2-GPI複合体が陽性であり,2004年より抗リン脂質抗体症候群と診断されているため抗凝固療法を行うこととした.僧帽弁置換術後(機械弁)であり,ワルファリンカリウムを内服していたため,未分画ヘパリンに変更した.術前に未分画ヘパリンを中止し,S状結腸切除術を施行した.術直後より抗凝固療法を再開したが,術後に出血を認め腹腔内に血腫を形成した.また抗凝固薬の調整中に,吻合部出血を来し輸血が必要であった.その後に血腫の感染が疑われ,術後63日目に血腫除去術を施行した.術後は経過良好で致命的な血栓症を来さず退院した.抗リン脂質抗体症候群の周術期の抗凝固療法に難渋した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 小泉 範明, 國場 幸均, 村山 康利, 栗生 宜明, 中西 正芳, 阪倉 長平, 大辻 英吾
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1632-1638
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     症例は52歳の男性で,他院でStage IIの直腸癌に対して低位前方切除術を施行されている.術後1年4か月で血清CEA値の上昇を認め,腹部CTおよびMRIで吻合部周囲に多発する嚢胞性腫瘤を指摘された.大腸内視鏡検査では吻合部の口側に粘膜下腫瘍様の隆起性病変として認められた.FDG-PETでは同部に一致してFDGの集積を伴っていたため局所再発と診断され,当科に紹介となり手術を施行した.病理組織学的検査では悪性所見を認めず,最終的にimplantation cystと診断した.本症は消化管吻合に伴って生じるまれな合併症であるが,いまだ広く認識されておらず,確定診断に苦慮することも多い.器械吻合の普及に伴って増加しており,再発との鑑別に際して念頭に置くべきである.血清CEA値の上昇やFDG-PETで集積を認めた報告は過去になく,本例はまれな1例であると考えられたので,文献的考察を交えて報告する.
  • 藤城 健, 大島 郁也, 有我 隆光, 吉村 清司, 篠藤 浩一, 岡崎 靖史, 田崎 健太郎, 尾崎 正彦, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 12 号 p. 1639-1646
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     術後早期の経腸栄養に関連する致死的合併症の一つとして,腸管壊死の報告が散見されていることはあまり知られていない.今回,我々は腹部手術後の経腸栄養使用中に腸管壊死を発症した2例を経験したので報告する.症例1は乳頭部癌の77歳女性で膵頭十二指腸切除術を施行し,14病日に門脈出血に対し緊急止血術を施行した.緊急手術から8日目より半消化態製剤による経腸栄養投与を開始した.経腸栄養を開始してから14日目に腸管壊死を発症し大量腸切除を行った.症例2は再発胃癌の79歳女性で残胃全摘後に4病日より半消化態製剤による経腸栄養投与を開始したところ,6病日に腸管壊死を発症し大量腸切除を行った.2例とも手術により救命しえた.経腸栄養が関与したと推測される腸管壊死は,欧米を中心に症例報告が散見されており,自験2例を含めた文献的考察を交えて報告する.
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