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久保 秀文, 西山 光郎, 多田 耕輔, 宮原 誠, 長谷川 博康
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1362-1370
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
症例は78歳の男性で,中部食道癌を診断され,食道亜全摘術施行した.術後3週間後に嘔吐・腹部膨満感を認め,腹部CTにて小腸重積を指摘されたため手術を施行した.回腸末端より約70cm口側の位置に径2cm大の腫瘤があり,また約2m口側の位置に小腸重積および先進部に4×3cm大の腫瘤を認め,腫瘤を中心とした回腸部分切除をおのおのに施行した.病理診断はいずれも転移性小腸腫瘍であった.食道癌小腸転移はまれであり,特に食道癌小腸転移の小腸重積は検索したかぎり本症例が本邦初であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
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日野 佑美, 向田 秀則, 多幾山 渉
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1371-1379
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
症例は69歳男性で,嚥下障害を自覚し,近医での上部消化管内視鏡検査で胸部食道に粘膜下腫瘍を疑わせる1型腫瘍を認めた.当院に紹介され,3回目の生検でリンパ上皮腫様癌(lymphoepithelioma-like carcinoma;以下,LELCと略記)が疑われた.上部消化管造影,CT,PET-CTでは胸部下部食道に4cm大の1型腫瘍で,リンパ節転移が胃噴門部(No.1),胃小彎(No.3),胸部中部傍食道(No.108)に疑われ,T3N2M0 Stage IIIの食道原発LELCと診断した.化学療法を施行し腫瘍縮小効果(PR)を認め,食道亜全摘,3領域リンパ節郭清術を施行した.摘出標本では2個(No.1,3)のリンパ節に転移を認めたが,原発巣は著明に縮小しており病理組織学的治療効果はGrade2と判定した.術後に補助化学療法を施行し,外来で経過観察中であるが現時点では再発所見は認めていない.
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鈴木 紳祐, 亀田 久仁郎, 後藤 晃紀, 藤井 一博, 吉田 謙一, 遠藤 和伸, 杉浦 浩朗, 長嶺 弘太郎, 久保 章, 竹川 義則
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1380-1388
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は69歳の女性で,逆流性食道炎でかかりつけの近医で上部消化管内視鏡検査にて食道癌を指摘され,当科を紹介受診となった.生検で食道腺癌の診断とし,開腹下において腹部食道・胃部分切除,大彎側胃管再建,胆嚢摘出術を施行した.病理組織学検査でBarrett食道内に小型から中型の異型細胞が胞巣状に増生しており,免疫染色検査ではcromogranin A,CD56,synaptophysin陽性で,神経内分泌細胞癌と診断した.壁深達度はT1aで,食道裂孔部リンパ節に転移を認めstage Iと診断した.術後経過良好で術後14日目に退院となった.現在,術後2か月が経過しているが,再発兆候は認めていない.食道に発生する神経内分泌細胞癌はまれな疾患で,その中でもBarrett食道内に発生した報告は本邦ではない.文献的考察を加え,これを報告する.
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森 幹人, 阿久津 泰典, 林 秀樹, 川平 洋, 首藤 潔彦, 羽成 直行, 池田 憲政, 貞廣 智仁, 織田 成人, 松原 久裕
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1389-1396
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は100歳の女性で,主訴は吐血.誤嚥性肺炎の重症化に伴い当院救急部集中治療部へ入院,入院時胸腹部CTにてupside down stomachを呈した食道裂孔ヘルニアの診断となった.誤嚥性肺炎重症化による急性呼吸窮迫症候群の治療を行い,全身状態の改善を得た後に手術施行した.腹腔鏡下に腹腔内を検索すると,ヘルニア内容は胃と大網であった.脱出した胃および大網を腹腔内へ牽引・還納した後,食道裂孔を縫縮,Toupet法による噴門形成術を施行し胃を固定した.経過良好にて術後13日で退院した.本症例は100歳という超高齢者かつ急性呼吸窮迫症候群を併発していたが,全身状態の改善が得られ,upside down stomachを呈した食道裂孔ヘルニアに対し腹腔鏡下手術を施行し,良好な結果を得られた非常にまれな症例であったため,若干の文献的考察を含めて報告する.
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須納瀬 豊, 宮永 朋実, 吉成 大介, 戸塚 統, 戸谷 裕之, 小川 博臣, 平井 圭太郎, 高橋 憲史, 田中 和美, 竹吉 泉
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1397-1403
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は29歳の男性で,既往歴は結節性硬化症と腎血管筋脂肪腫であった.発熱があり近医を受診し,抗生剤と解熱剤を投与されるも改善せず当院を紹介された.全身検索で明らかな感染源を認めなかったが,38度以上の発熱が続いていた.血液検査は炎症反応以外に特異的所見がなかった.CTでは肝S8に7cm,S6に1cmの腫瘤を認め,半年前より増大していた.MRIではT1低信号T2高信号で,肝細胞相で欠損を認めた.生検で血管筋脂肪腫と診断された.PET-CTで高度集積を示し,大きさが増大しているため,悪性化が否定できず肝右葉切除を施行した.切除標本では被膜のない充実性腫瘍で,2つの腫瘍とも同様の性状であった.病理組織学的には紡錘形胞体を有する腫瘍細胞が線維束を形成し,リンパ球や形質細胞浸潤を伴っていた.免疫染色でhuman melanoma black-45,CD31,vimentin,α-smooth muscle actinが陽性で,炎症細胞浸潤を伴う血管筋脂肪腫と診断した.
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川久保 英介, 副島 雄二, 山内 栄五郎, 二宮 瑞樹, 萱島 寛人, 内山 秀昭, 吉住 朋晴, 武冨 紹信, 調 憲, 前原 喜彦
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1404-1410
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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今回,我々は生体肝移植術後胆管吻合部閉塞に対して磁石圧迫吻合術を行い,再手術することなく治癒せしめた1例を経験したので報告する.症例は56歳の男性で,C型肝硬変および肝細胞癌に対して,右葉グラフトを用いた生体肝移植術(胆管空腸吻合)を施行した.術後9か月目に胆管空腸吻合部狭窄を発症し,経皮経肝胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage;以下,PTBDと略記)を行ったが経過中に完全閉塞を来した.発症6か月目(生体肝移植術後1年3か月目)に,PTBDチューブおよびダブルバルーン内視鏡を用いて,閉塞した吻合部を2つの磁石で挟み込み開通させる磁石圧迫吻合術(山内法)を施行し,閉塞の解除および胆管空腸吻合部の内瘻化に成功した.本法は,保存的治療・外科手術いずれも適応とならない吻合部完全閉塞に対する有効な治療法であることが示唆された.
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倉田 昌直, 本田 五郎, 奥田 雄紀浩, 只野 惣介, 鶴田 耕二
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1411-1418
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例1は,62歳女性で,総胆管結石を内視鏡的に切石した後,胆嚢摘出術のため当科へ紹介された.術前画像で,胆嚢管へ合流する後区域肝管を検出し,これを温存して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.症例2は,63歳女性で,重症胆管炎の診断で入院し,内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブ造影検査で後区域肝管が漏斗部に合流する走向異常を認め,結石は三管合流部近くの胆嚢管に嵌頓していた.開腹による胆嚢摘出術,後区域肝管切除再建を施行した.胆嚢管や胆嚢に合流する副肝管の多くが南周りの後区域枝であり,南周りの後区域枝に注目することによって術前診断は可能と思われる.胆嚢管に合流するタイプでは適切な手技により腹腔鏡下胆嚢摘出術も可能であり,胆嚢本体(漏斗部~底部)へ合流するタイプでは胆嚢を摘出して肝管腸吻合を行うべきであると考えられる.
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三重野 浩朗, 中郡 聡夫, 小西 大, 高橋 進一郎, 後藤田 直人, 小林 達伺, 久野 博文, 小嶋 基寛, 木下 平
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1419-1425
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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後腹膜原発のfollicular dendritic cell sarcomaの1例を経験した.症例は72歳の女性で,検診の腹部エコーで後腹膜腫瘍を指摘され紹介となった.腹部CTでは膵背側に57mm大の境界明瞭な腫瘤が認められ後腹膜腫瘍の診断で手術を行い,6cm大の腫瘍を摘出した.病理組織学的に腫瘍細胞は紡錐形細胞を主体とし,束状配列や360度渦巻き配列を認めた.免疫組織化学的には,CD21(++),CD45(+),S-100(-),Vimentin(++)であった.被膜浸潤とリンパ節転移を認め,follicular dendritic cell sarcomaと診断した.本症例は術後3か月後に同部位に再発を来したが,再切除不能であり化学療法も奏効せず,術後1年4か月後に永眠された.本疾患は極めてまれであるが,軟部腫瘍の診断において認識すべき疾患と考え若干の文献的考察を加えて報告した.
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矢崎 伸樹, 内藤 剛, 三浦 康, 小川 仁, 木内 誠, 田中 直樹, 大沼 忍, 山村 明寛, 柴田 近, 佐々木 巌
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1426-1433
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は41歳の男性で,前医にて甲状腺癌,多発肺転移の診断で手術を行い,最終診断は濾胞癌の未分化転化であった.当院で頸部への放射線治療を行っていた.腹痛,全身倦怠感を主訴に来院した.左上腹部と臍右に鶏卵大の圧痛を伴う腫瘤を触知し,血液生化学検査では炎症反応の上昇,高度の貧血,凝固線溶系の亢進を認め精査加療目的で入院となった.腹部US,CTで小腸腫瘍による腸重積症の診断となり,腹腔鏡補助下で緊急手術を施行した.術後,経口摂取が一時期可能にはなったが,徐々に全身状態が悪化し,術後第20病日に永眠された.病理組織学的診断は甲状腺未分化癌による小腸転移であった.甲状腺未分化癌が小腸に転移することはまれで,国内外での報告は,自験例を含め5例である.若干の文献的考察を加え報告する.
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池田 義之, 松木 淳, 石川 卓, 渡辺 玄, 畠山 勝義
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1434-1440
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は44歳の女性で,右下腹部痛と発熱を主訴に来院した.CTでは下腹部正中に液面形成を伴う35mm大の憩室状の構造物を認め,糞石を伴っていた.腹腔内遊離ガスと骨盤内の腹水を認め,血液検査上高度の炎症所見を伴い,小腸の憩室炎穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を施行した.Bauhin弁より50cmの回腸の腸間膜付着側に,10cmの管状,交通型の重複腸管があり,盲端が穿孔していた.重複腸管を含む回腸楔状切除術を行った.病理組織学的所見では回腸と連続した粘膜および筋層構造を認めた.盲端に高度の活動性炎症を認め,糞石の嵌頓による穿孔と考えられた.本邦における成人の回腸重複腸管の穿孔例を報告した文献は,自験例を加えて6例と極めてまれであるが,成人における急性腹症の鑑別疾患のひとつとして回腸重複腸管症を考慮する必要がある.
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宮本 健志, 福長 徹, 木村 正幸, 菅本 祐司, 久保嶋 麻里, 今西 俊介, 松原 久裕
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1441-1447
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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患者は29歳の男性で,保存的治療にて軽快した急性虫垂炎に対して待機的手術を腹腔鏡下に行った.虫垂断端はエンドループで結紮後にバイクリル糸で埋没処置した.第1病日に退院したが,第4病日に腹痛を主訴に外来受診し,CTにて盲腸上行結腸の腸重積症と診断された.悪性疾患の所見は認めず,血流も維持されていたのでガストログラフィン注腸による整復を実施した.手術時に埋没した虫垂断端部が腫瘍状になったため,これが直接的あるいは間接的な原因となり生じた腸重積と考えられた.その後,腸重積の再発を認めていない.虫垂断端の埋没処理は確立した手技として,日常何の迷いもなく行われていることであると思われるが,腹腔鏡下虫垂切除術では,埋没縫合は必須とされない.開腹・腹腔鏡手術に限らず,虫垂断端の適切な処理法についての再検討が必要である.
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吉田 直裕, 衣笠 哲史, 赤木 由人, 石橋 生哉, 田中 克明, 鹿毛 政義, 白水 和雄
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1448-1454
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は24歳の女性で,潰瘍性大腸炎(UC)の診断で近医にて白血球除去療法・内服加療など内科的治療を受けていた.経過観察中の下部消化管検査で,盲腸から上行結腸に巨大な隆起性病変を認めたため当科紹介となった.入院時血液検査ではCRPとCEAの軽度の上昇を認めた.相対的手術適応と判断し腹腔鏡補助下大腸全摘術,回腸肛門管吻合を施行した.術後経過は順調で術後14日目に退院となった.摘出標本では,盲腸から上行結腸に巨大な脳回状の腫瘤性病変を認め,横行結腸から下行結腸には粘膜の炎症・びらん・ポリープを散見した.病理組織学的診断でも,erosion,crypt abscessやcryptitis,cryptの変形などUCに矛盾しない所見であった.右側結腸に脳回状巨大腫瘤性病変を合併した形態的にも病変部位的にも極めてまれなUC患者の1切除例を経験したので文献的考察を加え報告する.
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若山 顕治, 澤谷 令兒, 吉川 紀雄
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1455-1461
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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成人腸重積症は比較的まれな疾患であり,なかでも逆行性の腸重積はまれである.今回,我々はS状結腸腺腫による逆行性腸重積を生じた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は89歳の女性で,腹痛,腹部膨満を主訴に当院を受診した.腹部CTの冠状断像でS状結腸が横行結腸に逆行性に重積する像を認め,S状結腸逆行性腸重積症と診断し,緊急手術を施行した.開腹すると,S状結腸が横行結腸まで逆行性に陥入しており,徒手整復が困難であったため,重積部を含め結腸左半切除を施行した.切除標本ではS状結腸に5.5cm大の亜有茎性ポリープを認め,組織学的にはtubulovillous adenomaであった.大腸逆行性腸重積症の診断にはCTが有用であり,その原因病変が悪性腫瘍である可能性もあることから,手術にあたってはリンパ節郭清を含めた腸管切除を行うことが必要である.
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岩上 佳史, 水島 恒和, 弓場 健義, 山崎 芳郎
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1462-1469
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
症例は34歳女性で,32歳時にS状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行した.最終診断はS,2型,tub2,pSE,pN1,sH0,sP0,cM0,ly2,v1,fStage IIIa,R0,CurAであった.術後9か月目に骨盤内リンパ節再発を認め,化学療法を開始した.抗腫瘍効果はStable Diseaseであったが,術後2年2か月目に左卵巣腫瘍と胸腹水が出現した.pseudo-Meigs症候群を疑い,後方骨盤内臓全摘出術を施行した.卵巣腫瘍は高分化腺癌で,免疫組織学的に結腸癌の卵巣転移と診断した.現在second-lineの化学療法を継続し,術後10か月で明らかな再発,転移を認めていない.大腸癌異時性卵巣転移によるpseudo-Meigs症候群の報告はまれである.しかし本症例のように手術により全身状態が改善し,化学療法の継続が可能となれば予後改善も期待できると考える.
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鈴木 隆, 船橋 公彦, 牛込 充則, 若林 峰生, 渋谷 和俊, 金子 弘真
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1470-1477
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は49歳の女性で,血便を主訴に来院した.下部消化管内視鏡にてS状結腸に1型の暗黒色の腫瘤を認め,皮膚や他臓器からの転移所見はなく,組織学的にS状結腸原発の悪性黒色腫(pSS,pN2,cH0,cM0,pP0;fStage IIIb)と診断した.術後5か月でリンパ節再発が見られdacarbazine(DTIC)・nimustine(ACNU)・cisplatin・tamoxifenの多剤併用療法(DAC-Tam)を施行するも,乳房,脳に転移を来し術後11か月で原癌死した.1938年以降の欧米を含めた結腸原発の悪性黒色腫に関する15例の文献的考察では,本邦症例は欧米に比べて発症年齢に差はなかったが,発症部位は左側結腸に多くみられた.治療は有用な化学療法はなく,直腸肛門部の悪性黒色腫と同様,原病変に対する根治術が有用と考えられるが,結腸の場合報告例が少なく手術治療の成績は不明である.
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山口 圭三, 緒方 裕, 大地 貴史, 竹内 正昭, 村上 直孝, 内田 信治, 山口 倫, 亀井 英樹, 白水 和雄, 秋葉 純
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1478-1484
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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症例は53歳の女性で,直腸S状部癌と診断され,2006年3月に低位前方切除術(3群郭清)を施行した.腸管傍リンパ節に3個転移を認め,最終診断はRS,2型,90×60mm,pSE,pN1(3/20),sH0,sP0,cM0,fStage IIIaであった.経口抗癌剤による補助化学療法を半年間実施した.同年10月にCTを実施したところ,左腎臓に境界不明瞭な腫瘤を指摘された.MRIではT1強調画像で等信号,T2強調で低信号を呈する腫瘤として描出され,非典型的ながら腎細胞癌もしくは転移性腫瘤が疑われた.11月に腎摘を施行した.著明な壊死を背景に大小の胞巣を形成し増殖する異型細胞を認め,一部に腺腔形成が見られた.免疫染色検査でCK7陰性,CK20およびCDX2陽性により直腸癌からの転移と診断された.術後半年間FOLFOX6による化学療法を実施した.初回手術から53か月経過し,無再発生存中である.
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那須 啓一, 志田 大, 松岡 勇二郎, 谷澤 徹, 松永 裕樹, 真栄城 剛, 宮本 幸雄, 井上 暁, 梅北 信孝
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1485-1492
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
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S状結腸癌の術前検査にて偶発的に発見され,癌手術に際して同時切除した仙骨前面の骨髄脂肪腫の症例を経験した.症例は70歳の男性で,S状結腸癌の術前検査の腹部CTにて第3から第5仙椎前面に内部不均一に淡い造影効果を示す径4cmの腫瘤が見られた.MRIでは脂肪成分の含有を認め辺縁も一部不整であったことから,脂肪肉腫の術前診断にて,S状結腸癌の手術にあわせて同時に切除した.仙骨前面腫瘤は径4cm大の被膜形成の明瞭な充実性腫瘤で仙骨前面に比較的強固に付着していたが浸潤はなかった.組織学的には成熟脂肪組織の増生とその中に混在する三系統(赤血球,白血球,血小板)の造血細胞からなる骨髄組織が見られ,悪性所見はなく骨髄脂肪腫と診断した.骨髄脂肪腫は,主として副腎に発生する比較的まれな軟部組織由来の良性腫瘍であり,副腎以外の部位に発生する骨髄脂肪腫は極めて少ないことから,画像診断も含めて文献的考察を加え報告する.
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坂井 寛, 岡本 有三, 吉岡 伸吉郎, 大城 望史, 平田 雄三, 小野 栄治
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1493-1498
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
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腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の遅発性メッシュ感染の報告は少ない.今回,Composix Kugel patch(以下,CKPと略記)の癒着が原因と考えられた遅発性メッシュ感染を経験したのでその原因と予防法について考察を加え報告する.症例は75歳の女性で,他院で腹壁瘢痕ヘルニアに対しCKPで修復術を受け術後3年経過して遅発性メッシュ感染を発症した.保存的治療に抵抗性であったためメッシュ除去手術を施行した.腹腔内に留置されたCKPはPolytetrafluoroethyleneの辺縁が全周性に腹腔側に折れ曲がり外側のポリプロピレンが腹腔内に露出し全周性に小腸が癒着していた.腸管とメッシュに囲まれた間隙に膿瘍を認めた.メッシュを除去して欠損した腹壁を直接縫合閉鎖し術後は合併症なく退院となった.本例はCKPの固定法に何らかの問題があったと考えられCKPを使用する際には固定法に注意すべきだと思われた.
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板垣 友子, 宮原 栄治, 亀田 彰, 寺本 成一, 右近 圭
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 11 号 p.
1499-1505
発行日: 2011/11/01
公開日: 2011/11/25
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症例は37歳の男性で,右季肋部痛を主訴として当院を受診した.既往歴として10年前に交通事故による多発外傷があった.腹部CTを含めた画像診断にて肝門部に膵頭部,胆嚢,十二指腸を圧排する直径約10cm大の嚢胞性病変を認めた.嚢胞内部に隔壁はなく,嚢胞壁に充実性部分を認めなかった.入院時より右季肋部痛が軽減せず,保存的加療による治癒は難しいと判断し,手術施行.開腹時,嚢胞は十二指腸,胆嚢,膵頭部を背側より圧排するように後腹膜に存在し,横行結腸間膜との間に板状の癒着を認めた.嚢胞は11×10×7.8cm大の単房性の嚢胞で嚢胞内容は淡黄色,漿液性であった.病理組織学的検査にて嚢胞壁には膠原線維の増生とリンパ球を主体とした細胞浸潤を認め,嚢胞内腔に上皮細胞を認めず,後腹膜仮性嚢胞と診断した.本疾患は本邦報告例11例と極めてまれであり若干の文献的考察を加え報告する.
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