日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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44 巻, 2 号
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原著
  • 内野 基, 池内 浩基, 坂東 俊宏, 松岡 宏樹, 竹末 芳生, 冨田 尚裕
    原稿種別: 原著
    2011 年 44 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     はじめに:小児潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)では成長障害が手術適応となることがあるが,明確な基準はない.そこで,手術症例から適切な手術のタイミングを検討した.方法:1984年~2008年12月までの小児手術30例を対象に合併症とステロイドの関連,さらに排便機能について検討した.結果:ステロイド総投与量は181.5(29.3~1,913.5)mg/kg,術直前投与量は0.7(0.1~1.8)mg/kg/dayであった.圧迫骨折,骨密度低下との関連はなかったが,成長障害は合併群で有意に発症年齢が低く(p=0.04),ステロイド総投与量は1,228.0(210~1,913.5)mg/kgと非合併症例の151.8(29.3~1,020.9)mg/kgより有意に多かった(p=0.01).排便機能に関しては,晩期合併症のない症例では排便回数7(2~12)回/日,85.7%がほぼsoilingなしと良好だったが,吻合部瘻孔のため4例が人工肛門再造設,pouch 非機能症例となっていた.考察:ステロイド総投与量は成長障害合併症例で有意に多かった.成長障害合併の有無からみると,病態や骨端線閉鎖時期を考慮することが重要であるが,ステロイド総投与量200mg/kgという値が手術適応を決定する一つの目安になりうると考えた.晩期合併症の要因,対処に関しては今後も検討が必要である.
症例報告
  • 平野 佑樹, 松本 秀年, 須田 康一, 関 博章, 安井 信隆, 松山 正浩, 新田 美穂, 石川 廣記, 北川 雄光, 嶋田 昌彦
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は54歳の男性で,平成18年4月,健診の上部消化管造影検査にて胃粘膜下腫瘍を指摘され,当院紹介受診となった.上部消化管内視鏡検査にて胃角部大彎前壁に径30mmの粘膜下腫瘍を認めた.腹部CTにて同部に一致して,内部に変性または壊死性変化を伴う嚢胞性病変を認め,悪性病変の可能性を否定できず,8月に幽門側胃切除術を施行した.術中,腫瘤径45mmと増大傾向を認め,胃漿膜面への浸潤を示唆する所見を認めた.病理組織学的検査所見にてLanghans型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を認めたこと,術後施行した胃液抗酸菌培養検査にて結核菌培養陽性であったことより,胃結核と診断した.退院後,外来にて6か月間の抗結核化学療法を施行し,術後3年間無再発にて経過している.
  • 新関 亮, 堀 裕一, 松本 逸平, 白川 幸代, 椋棒 英世, 外山 博近, 味木 徹夫, 福本 巧, 具 英成
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は68歳の女性で,以前から急性膵炎や胆管炎を繰り返し,傍十二指腸乳頭憩室を指摘されていた.今回,重症急性壊死性膵炎を発症し,保存的治療により急性膵炎は軽快した.その後の内視鏡的逆行性胆膵管造影検査で拡張した胆管と傍十二指腸乳頭憩室を認め,これまでの急性膵炎,胆管炎と今回の重症急性壊死性膵炎は傍十二指腸乳頭憩室によるLemmel症候群と考え,急性膵炎の軽快後に内視鏡的乳頭括約筋切開術を施行した.以後13か月の経過観察中,胆管炎,急性膵炎の再発は認めていない.Lemmel症候群は胆管炎の合併頻度が高いが急性膵炎の原因となることはまれで,重症急性壊死性膵炎に至った報告例は本例以外に1例のみであった.また,内視鏡的乳頭括約筋切開術はLemmel症候群の再発や膵炎の重症化を防止するうえで,非侵襲的かつ有効と考えられた.
  • 水上 達三, 神山 俊哉, 中西 一彰, 横尾 英樹, 田原 宗徳, 福森 大介, 蒲池 浩文, 松下 通明, 藤堂 省
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は44歳の女性で,生来著患はないが,経口避妊薬の内服歴があった.2008年10月,健診にて肝機能異常を指摘され,腹部エコーを施行したところ,肝両葉に最大径が38mmで低~高エコーの多発する腫瘍を指摘された.CTでは肝両葉の辺縁を中心に,多発性の腫瘤性病変を認めるも確定診断に至らなかった.腹腔鏡下肝生検を施行し,肝類上皮性血管内皮腫(以下,H-EHEと略記)の診断となり移植を含めた加療目的に当科に紹介受診となった.2009年2月,肝右葉切除およびS2,3,4の部分切除を施行した.摘出肝には最大径65mmの多発する灰白色~赤褐色調の結節性病変のほかに,赤色調および八つ頭状の結節を認めた.病理組織学的検索で,H-EHEの他に海綿状血管腫および限局性結節性過形成の合併が認められた.検索したかぎり,類似した報告はわずか1例のみであり,経口避妊薬との関連も含め文献的考察を加えて報告する.
  • 野口 慶太, 神山 俊哉, 中西 一彰, 横尾 英樹, 田原 宗徳, 福森 大介, 蒲池 浩文, 松下 通明, 藤堂 省
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は64歳の男性で,肝右後下区域に肝細胞癌を指摘され当科にて腹腔鏡下マイクロ波凝固療法を施行した.術後3年目に腹腔鏡手術創と異なる右側腹部に腫瘤を認め,肝細胞癌腹壁転移の診断にて腹壁腫瘤摘出術を施行した.その後外来にて経過観察していたが,7か月後に腫瘍マーカー(PIVKA II)の上昇認め,腹部CTで肝細胞癌腹壁転移再発と診断,腹壁腫瘤摘出術を施行した.8か月後に再び腫瘍マーカーの上昇と腹部CTにて切除部近傍に腫瘤を認め,肝細胞癌腹壁転移再々発の診断にて放射線療法を施行した.5か月後,再度腫瘍マーカーの上昇あり腹部超音波検査腹部造影CTにて3度目の肝細胞癌腹壁転移再発の診断にて腹壁腫瘤摘出術を施行した.現在再発なく経過中である.腹壁転移の発生から27か月という比較的長期間,他の遠隔転移を認めず経過したまれな1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.
  • 春山 幸洋, 島山 俊夫, 河埜 喜久雄, 末田 秀人, 今村 直哉, 千々岩 一男
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は63歳の男性で,右季肋部痛,黄疸を主訴に来院した.血清総ビリルビン値は9.8mg/dlと上昇,画像検査で胆嚢と胆管内に石灰化物質を認め胆嚢総胆管結石と診断した.内視鏡的経鼻胆道ドレナージにて減黄を行った後に胆嚢摘出術および経胆嚢管的結石除去術を施行した.摘出標本では胆嚢内に泥状の石灰乳胆汁を認め,頸部には1cm大のビリルビンカルシウム結石が嵌頓していた.総胆管内から除去した物質も化学分析で石灰乳胆汁であり,これが閉塞性黄疸の原因と考えた.石灰乳胆汁は胆嚢管の閉塞で生成されるが,この閉塞の原因がビリルビンカルシウム石で,かつ胆管内の石灰乳胆汁による閉塞性黄疸を合併していた報告は,我々の渉猟しえたかぎりではなかった.本症例ではビリルビンカルシウム結石が胆嚢頸部に嵌頓し胆嚢内に石灰乳胆汁が発生,その後に頸部の結石の嵌頓が解除され石灰乳胆汁が一部総胆管内に移行し,閉塞性黄疸を来したと思われた.
  • 大橋 勝久, 佐々木 章公, 太田 和美, 松尾 嘉禮
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     まれな非穿孔性無石性胆嚢炎による漏出性胆汁性腹膜炎の1例を経験したので報告する.症例は75歳の女性で,右側腹部痛にて当院を受診した.術前画像診断および身体所見から胆汁性腹膜炎の診断で,発症早期であることから腹腔鏡下手術を選択した.手術所見では腹腔内に胆汁性腹水貯留を認め,胆嚢は浮腫性炎症を呈し,明らかな穿孔は認めなかった.続いて肝臓,総胆管,上部消化管を確認したが,視野は良好で異常所見は認めなかった.漏出性胆汁性腹膜炎と診断し,引き続いて胆嚢摘出術を行った.病理組織学的検査では粘膜部に壊死部位なく,壁の鬱血性浮腫と漿膜下優位の変性を認め漏出性胆汁性腹膜炎に矛盾しない所見であった.背景には何らかの虚血による相対的血流低下から漿膜側優位の変性が生じたと考えられた.
  • 園田 寛道, 清水 浩紀, 中野 智継, 池田 純, 糸川 嘉樹, 小出 一真, 谷口 史洋, 上島 康生, 塩飽 保博, 榎 泰之
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は57歳の女性で,自ら腹部腫瘤に気付き当院を受診した.精査の結果,十二指腸壁外発育型gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断し,手術を施行した.手術所見では十二指腸外側に十二指腸との連続性のない径10cm大の弾性硬の可動性良好の腫瘍を認め,また,膵頭部の実質内に径4cm大の弾性硬の可動性良好の腫瘍を認めた.この両者の腫瘍に連続性は認めなかった.リンパ節転移を伴う膵腫瘍と診断し膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査ではともにGISTに類似した組織像を呈しており,リンパ節,もしくは腹膜播種転移を伴う膵原発Extra-GISTと最終診断を行った.膵原発Extra-GISTは非常にまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 藤本 大裕, 戸川 保, 藤田 邦博, 佐藤 保則, 石田 誠
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の男性で,上腹部の痛みと体重減少にて近医受診し,腹部USにて膵体部に低エコー腫瘤を認め当院に紹介された.腹部CTにて膵体部に5cm大の造影効果の乏しい腫瘍と,末梢膵管の著明な拡張を認めたため膵体部癌と診断し,膵体尾部切除を行った.病理組織学的に腫瘍は主膵管および周囲の小範囲に浸潤性膵管癌を認める以外,浸潤部のほとんどに広範な異型の強い紡錘形細胞の増殖と線維化を認めた.各種免疫染色検査においてこれらの紡錘形細胞は間葉系マーカーに陽性を示した.以上より,膵体部に発生した癌肉腫と診断した.術後6か月経過したが,再発兆候はなく,補助化学療法としてgemcitabine投与を行っている.膵癌肉腫は極めてまれでまた治癒切除が施行された場合でも再発し,急速に進行し予後不良とされている.今後は化学療法を含めた集学的治療の確立のため,さらなる症例数の蓄積が必要と考えられた.
  • 水野 礼, 奥野 将之, 小島 秀信, 藤 浩明, 森 友彦, 伊東 大輔, 古元 克好, 小切 匡史
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の男性で,食事摂取で増強する心窩部痛を認め近医を受診し,急性膵炎の診断で当院紹介入院となった.保存的加療で急性膵炎が軽快した後,原因精査を行った.腹部造影CTで膵体部に淡く造影効果を認める低吸収域を認め,その尾側の膵管は拡張していた.MRCP,ERCPでは膵体尾部主膵管の拡張と,拡張部の膵頭側での陰影欠損を認め,膵管内腫瘍が考えられた.膵液細胞診でClass IVの結果を得たため,膵管内腫瘍,通常型膵癌などを鑑別疾患に考え,膵体尾部切除術を行った.摘出標本を観察すると主膵管は7mm径に拡張し,内部に6mm大のポリープ様の腫瘍が付着していた.病理組織診断の結果,膵管内管状腺癌の診断を得た.膵管内管状腫瘍は非常にまれであり,その臨床病理学的特性についての知見は乏しい.今回,我々は急性膵炎を契機に発見された膵管内管状腺癌の1例を経験したので文献的考察を交えて報告する.
  • 鳥居 康二, 小松 義直, 田上 鑛一郎, 鈴木 夏生, 村岡 曉憲, 岩下 寿秀
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は52歳の女性で,腹痛,嘔吐にて当院受診した.血液検査では炎症反応は軽度,腹部CTにて拡張した腸管と,子宮右側に3cmの,不均一に造影される腫瘤および腹水を認め,USでは小腸と連続する腫瘍と思われた.MRIでも同様の所見であり,小腸腫瘍によるイレウスと診断,開腹手術を施行した.開腹すると回盲部から約10cmの小腸に灰白色充実性の腫瘍があり,近傍の腸間膜リンパ節の腫大を認めた.リンパ節転移を伴う小腸悪性腫瘍と判断し,近傍リンパ節郭清および末端回腸60cmを含む回盲部切除を施行した.病理結果では組織球肉腫(histiocytic sarcoma:以下,HS)の診断であった.術後FDG-PETにて全身の転移のないことを確認し,外来にて経過観察を行い,13か月の無再発生存を得ている.非常にまれな組織球肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 田村 徹郎, 西中 秀和, 高松 祐治, 柏木 孝仁, 蒲池 綾子
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     肺多形癌の虫垂転移の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,1年前に左肺多形癌(T2N0M0:stage II)に対し左上葉切除術を施行された.下痢,発熱を主訴に受診した.急性腸炎の診断にて,抗生剤投与による保存的治療を行ったが,症状は改善しなかった.腹部CTにて,骨盤内右側に5cm大の嚢胞状の腫瘤が認められ,虫垂腫瘍の診断で開腹手術を施行した.開腹所見では,回盲部に嚢胞状の虫垂腫瘍が認められ,後腹膜側に穿孔し限局性の膿瘍を形成していた.虫垂の悪性腫瘍が疑われ,D2リンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では,肺多形癌組織と酷似した癌細胞が嚢胞壁に認められ,肺多形癌の虫垂転移と診断された.術後化学療法を行ったが,1年2か月後に腹膜播種で死亡した.
  • 竹下 雅樹, 角谷 直孝, 正司 政寿, 天谷 公司, 吉川 朱実, 野島 直巳, 福島 亘, 泉 良平, 斎藤 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     まれなRhabdoid featureを呈した巨大直腸癌を報告する.症例は75歳の男性で,肛門痛,肛門出血を認め,近医を受診した.肛門皮膚に浸潤した腫瘍を認め,直腸癌疑いにて当科入院となった.大腸内視鏡検査にて直腸Rbから肛門皮膚にかけて全周性で約10cmの腫瘍を認めた.腹部CT,MRIにて直腸下部から肛門にかけて巨大腫瘤を認め,仙骨前面に浸潤が疑われ,直腸切断術を施行した.病理組織学的診断では腫瘍細胞は核が偏在し,好酸性の細胞質を有していた.免疫染色ではcytokeratin,vimentinに陽性であり,電子顕微鏡像では細胞質内の渦巻状の中間径フィラメントの集族により核は圧排されていた.以上より,rhabdoid featureを呈した直腸癌と診断した.術後2か月で左鼠径部リンパ節転移を認め,化学療法を開始するも,術後5か月で死亡した.Malignant rhabdoid tumorの多くは幼小児期に発生する予後不良な腎原発腫瘍であり,消化管でrhabdoid cellを認めることはまれである.
  • 中ノ子 智徳, 森田 勝, 大垣 吉平, 定永 倫明, 芝原 幸太郎, 沖 英次, 掛地 吉弘, 前原 喜彦
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は29歳の女性で,軽度の右季肋部痛から次第に増強する腹痛を主訴に近医を受診した.38℃台の発熱と血液検査で炎症所見を認めた.腹部CTで右閉鎖孔に嵌頓する嚢胞性腫瘤を認め,右閉鎖孔ヘルニア嵌頓が疑われた.小腸拡張像はなく虫垂および卵巣の位置にも異常は認められなかったため,2日間保存的に経過観察されるも,改善しないため当科紹介入院となった.来院時,腹膜刺激症状を伴っていたため緊急手術を施行した.術中所見において,炎症性に腫大した右卵管采が右閉鎖孔に嵌頓し強固に癒着していた.卵管采を腹腔内に還納し閉鎖孔を縫縮した.卵管采は温存することができ,術後経過は良好であった.若年者閉鎖孔ヘルニアはまれであり,腹腔鏡による確定診断と治療が有用と考えられた.
  • 木田 裕之, 井上 晴洋, 里館 均, 伊藤 寛晃, 田中 淳一, 工藤 進英
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     術後肝動脈仮性動脈瘤はいったん発症した場合,出血を繰り返しその治療に難渋する場合も少なくない.今回,我々は胃癌に対する幽門側胃切除術後に固有肝動脈仮性動脈瘤を形成し,出血を繰り返した症例を経験した.緊急開腹術や血管内治療で出血のコントロールの後,IDCTM(interlocking detachable coil,Boston Scientific,USA以下,IDCと略記)soft typeを用いて直接仮性動脈瘤を塞栓することで最終的に止血を得た.最近肝動脈仮性動脈瘤に対してcovered stentを用いて止血を行った報告などがみられるが,血管の分岐部付近などでは依然困難なことが多い.今回左右肝動脈分岐部直前に発生した術後固有肝動脈仮性動脈瘤に対しIDCを用いて安全に止血しえた1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中村 勇人, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋, 吉原 基, 池山 隆, 桐山 宗泰
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は31歳の女性で,腹痛,嘔吐,下痢を主訴に当院受診し,入院2日目に施行した造影CTで小腸イレウスと診断し,骨盤腔内子宮後側に口径変化のある小腸を認めた.同日イレウス管を留置して減圧治療を開始し,症状の一時的改善を認めたが,入院6日目に腹痛の増強を認めた.CTを再検し,腹腔内遊離ガスと腹水を認め,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹所見で,直腸子宮窩腹膜に径1.5cmの異常な開口部があり,そこに回腸末端近くの回腸が嵌頓していた.嵌頓部から約20cm口側の小腸に小孔を2か所認めた.嵌頓腸管を解除し直腸子宮窩腹膜の異常開口部を縫合閉鎖した.嵌頓腸管は壊死していなかったので温存し,腸管穿孔部は縫合閉鎖した.自験例の直腸子宮窩の腹膜異常裂隙は先天性発生と思われた.報告例は少ないが,画像検査で直腸子宮窩に腸閉塞の閉塞機転を認めた場合,本疾患も鑑別診断として考慮する必要があると考えられた.
臨床経験
  • 岡田 健一, 平林 健一, 今泉 俊秀, 松山 正浩, 堂脇 昌一, 飛田 浩輔, 幕内 博康
    原稿種別: 臨床経験
    2011 年 44 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     国際共同研究でintraductal papillary-mucinous neoplasm(以下,IPMNと略記)の組織亜型が示され,胃型と腸型の臨床病理組織学的特徴が判明しつつある.比較的まれなpancreatobiliary type(以下,膵胆型と略記)IPMNの病態の解明を行った.当院で治癒手術を施行したIPMN95例のうち,形態とムチン発現様式に基づき膵胆型と診断された7例について臨床病理組織学的事項を検討した.診断は腺腫1例,IPMN由来浸潤癌6例であった.予後は3例が再発死し,その内2例に肝転移を,1例は肺骨転移を来し,術後生存期間は平均26.4か月であった.その他4例は無再発生存中である.自験例では外科切除時に浸潤癌である率が高く予後不良であった.今後組織亜型の術前診断が治療方針決定に貢献するためにも,症例の蓄積が重要と考えられた.
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