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二宮 豪, 加藤 公一, 石榑 清, 林 直美, 石田 直子, 田中 伸孟, 平井 敦, 飛永 純一, 黒田 博文, 伊藤 洋一
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
816-822
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
フリー
症例は55歳の女性で,平成20年7月,顔面,手掌の皮疹を主訴に当院を受診.精査にて皮膚筋炎の診断に至り,ステロイド治療が開始された.9月,頸部痛,発熱を認め,食道透視,頸胸部CTにより頸部食道穿孔に伴う縦隔炎と診断し,頸部アプローチにより,頸部・上縦隔洗浄ドレナージを施行した.その後,CTにて右胸腔と後縦隔に液貯留が出現したため,初回手術後7日目に右開胸下に縦隔胸腔ドレナージを施行した.術後,縦隔炎は沈静化したが,頸部食道皮膚瘻の治癒に時間を要した.経管栄養管理の状態で初回手術後162日目に退院し,205日目に瘻孔閉鎖を確認,経口摂取を再開した.皮膚筋炎は消化管潰瘍を合併する報告はあるが,穿孔に至る例はまれである.今回,皮膚筋炎治療中に発症した頸部食道穿孔による縦隔炎に対して段階的な頸部および開胸のドレナージにより救命しえた1例を経験したので報告する.
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古角 祐司郎, 川村 泰一, 徳永 正則, 谷澤 豊, 坂東 悦郎, 寺島 雅典
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
823-828
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
フリー
症例は47歳の女性で,他院にて胃カルチノイドに対して内視鏡的粘膜切除術を施行され,病理組織学的検査結果は腫瘍径3mm,深達度SMであった.8年後の人間ドックにおける腹部エコー検査で胃小彎リンパ節腫大(12mm)を指摘され,その後の経過観察中に増大傾向がみられたため当科紹介となった.上部内視鏡検査では胃体下部小彎に内視鏡治療後瘢痕を認めるのみで,萎縮性胃炎の所見は認められなかった.血清ガストリン値は正常範囲内であった.腹腔鏡下リンパ節生検を行い,胃カルチノイドのリンパ節転移と診断されたため,胃全摘,リンパ節郭清を施行した.病理学的検索では胃周囲に6個のリンパ節転移を認めた.胃カルチノイドにおいては,微小病変であっても,リンパ節転移の可能性を念頭に治療するべきと考えられた.
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野中 隆, 日高 重和, 福岡 秀敏, 阿保 貴章, 竹下 浩明, 七島 篤志, 澤井 照光, 安武 亨, 永安 武
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
829-835
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は65歳の男性で,進行上部直腸癌と胃体下部の早期癌の重複がんに対し,一期的に腹腔鏡補助下高位前方切除術と腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(Roux-Y再建)を施行.術後早期より著明な炎症反応を認め,腹部造影CTを施行するも残胃の虚血性変化や縫合不全の所見などは指摘できなかった.術後15日目の上部消化管内視鏡検査にて残胃空腸吻合部から大彎側を中心とした広汎な粘膜壊死を認め,術後21日目に残胃全摘,Roux-Y再建術を施行した.胃は壁内血流網が発達し,虚血に強い臓器であるため残胃の血流障害はまれである.しかし残胃壊死の予後は極めて不良で,残胃の血流障害を疑った場合には,早期に上部消化管内視鏡検査による虚血の評価を行い,残胃全摘を含めた外科治療を考慮する必要がある.
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美馬 浩介, 掛地 吉弘, 佐伯 浩司, 吉田 倫太郎, 吉永 敬士, 森田 勝, 武冨 紹信, 調 憲, 前原 喜彦
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
836-841
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
フリー
症例は53歳女性で,腹部超音波検査で右上腹部に腫瘤を認め入院となった.内視鏡検査で十二指腸第2部に2型腫瘍を認め生検で中~高分化腺癌と診断された.腹部CTで十二指腸下行脚内側に約9cmの腫瘍を認め上腸間膜静脈と膵頭部への浸潤が疑われた.原発性十二指腸癌の診断で局所コントロール目的に胃癌に準じてTS-1とCDDPによる化学療法を施行した.3コースの投与で縮小率31%の効果が得られ治癒切除可能と判断し膵頭十二指腸切除術を施行した.術中所見で上腸間膜静脈への明らかな浸潤は認めなかった.術後経過良好で治療開始後12か月が経過した現在無再発生存中である.局所進行十二指腸癌に対して胃癌に準じたTS-1+CDDP療法は術前化学療法として有用である可能性が示唆された.
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福田 周一, 山田 晃正, 後藤 邦仁, 高橋 秀典, 宮代 勲, 大植 雅之, 山本 正之, 矢野 雅彦, 大東 弘明, 石川 治
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
842-847
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は65歳の男性で,2000年8月,水平脚に局在する35mm大の十二指腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)に対し,十二指腸部分切除術を施行した.術後補助療法は施行せずに経過観察されていた.2009年6月,CTにて肝腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当院受診となった.無病期間が9年と長期ではあったが,十二指腸GISTの肝転移を最も疑い,腫瘍生検を施行した.免疫組織学的にc-kit陽性の紡錘形細胞の増生を認め,GISTと確定診断した.単発,かつ肝機能良好であることより手術適応と判断し肝右葉切除術を施行した.本症例は無症状で画像診断にて肝転移を指摘されており,十二指腸GISTの術後は5年経過以降も画像診断を含めた長期的経過観察が必要であると思われた.
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佐藤 武揚, 赤石 敏, 海野 倫明, 佐々木 巌, 里見 進
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
848-854
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は20歳の女性で,平成21年12月,乗用車運転中に対向車と正面衝突した.精査にて腹腔内出血,肝・膵・脾損傷と右大腿骨骨幹部骨折を認め当院へ入院した.来院時全身状態は安定しており,血管造影検査を行い明らかな造影剤の漏出がないことを確認し,保存的に経過観察とした.受傷後8日に上腹部に限局した腹膜刺激症状が出現しCTを行ったところ,網嚢内に限局した腹水貯留を認めた.胆道損傷を疑い受傷後9日目に緊急手術を行った.肝臓,脾臓からは出血を認めず膵臓は全体に腫大していた.肝十二指腸間膜の検索にて総胆管の完全断裂を認め,胆嚢摘出,術中胆道造影,総胆管空腸吻合術を行った.術後経過は良好で近医へ転院した.鈍的外傷による胆管損傷はまれな病態であり,損傷形態としては総胆管完全離断を来すことが多い.鈍的外傷による複数の臓器損傷から発症初期に胆管損傷を診断することは困難であり注意が必要である.
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竹本 圭宏, 榎 忠彦, 原田 栄二郎, 林 雅太郎, 都志見 貴明, 濱野 公一
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
855-860
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
フリー
肝門部胆管癌切除後の腹壁再発・腹膜播種に対し,再切除術を行い,その後無再発長期生存している症例を経験したので報告する.症例は65歳の女性で,心窩部不快感を自覚し,門脈左枝浸潤を伴う肝門部胆管癌と診断された.拡大左葉・尾状葉切除+肝外胆管切除術を施行し,術後25日目に軽快退院となった.術後22か月目のCTで,腹壁正中に3cm大の腹壁再発を認めた.その他の臓器には再発を疑う所見を認めず,切除術を行った.腹壁再発の頭側の大網内に2cm大の単発の腹膜播種を認め,同時に切除した.術後11日目に軽快退院となり,外来でTS-1 100mg/日の内服(4投2休)を開始した.定期的に造影CTを行っているが,術後57か月目の現在,新たな再発巣は認めていない.肝門部胆管癌の再発例は予後不良だが単発の腹壁再発や腹膜播種に関しては,切除術+術後化学療法により長期生存が得られる可能性がある.
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奥川 郁, 土屋 邦之, 石原 陽介, 中野 且敬, 秋岡 清一, 大坂 芳夫, 高橋 滋, 迫 裕孝
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
861-867
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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ポリカルボフィルカルシウム製剤服用後にイレウスにて開腹術を行った67歳の女性の症例について報告する.右卵巣嚢腫で手術既往があった.下痢のため近医よりポリカルボフィルカルシウム製剤を7日分処方された.服用12日目に腹部膨満と嘔吐が出現し,当院救急受診,入院となった.CTにて小腸の拡張と,小腸内に結腸内便様の内容物を認めた.イレウス管を挿入し保存的に経過を見たが,症状の増悪を見たため入院4日後に開腹した.癒着解除だけでは,腸内容を送り出せなかったため,小腸壁を切開し内容物を排出した.腹腔内の癒着のために腸管内容排出遅延が生じ,そのために服用していたポリカルボフィルカルシウム製剤が過度に膨潤,硬化した.このことによって,開腹術が必要となったと考えられた.この症例について,文献的考察を加えて報告する.
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中村 勇人, 京兼 隆典, 柴原 弘明, 高見澤 潤一, 諸藤 教彰, 久世 真悟
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
868-874
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は81歳の女性で,下腹部痛を主訴に受診した.下腹部正中に腹膜刺激症状を伴う圧痛があり,白血球数とCRPの上昇を認めた.腹部造影multidetector-row CT(以下,MDCTと略記)の水平断でSMV rotation signを認め,前額断では小腸は椎体の右側に,上行結腸は左側に存在していたため,腸回転異常症と診断した.上行結腸を口側に追うと,下腹部正中に腫大した虫垂を認め,圧痛部位と一致した.以上より,腸回転異常症に伴う穿孔性虫垂炎による腹膜炎と迅速に診断し,緊急手術を行った.全身麻酔下に下腹部正中小切開で開腹,回盲部は正中やや左側に認め,虫垂は壊疽性虫垂炎の状態であった.本症は通常のCTで診断可能であるが,実際には正診率は高くないのが現状である.MDCTは本症の迅速で正確な術前診断を可能にし,小開腹手術などの低侵襲手術を選択することで,適切な治療につながると考えられた.
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関野 康, 小出 直彦, 石曽根 聡, 佐近 雅宏, 宮川 眞一
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
875-881
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は40歳の女性で,子宮筋腫の手術歴があり,妊娠35週で癒着性腸閉塞を発症した.帝王切開と癒着剥離術を施行しイレウス管を挿入した.術後第4病日にイレウス管を抜去し第29日に退院した.退院後16日目に嘔吐を認めた.腹部CTで腸重積と診断され,保存的に改善なく整復術を施行した.トライツ靭帯から25cmの空腸が腸重積をきたしており,初回手術時のイレウス管が誘因となったtelescoping現象によるものと考えられた.イレウス管に伴う腸重積の報告例を集計し,原因を3種類に分類した.Type 1;先進部に器質的病変なくtelescoping現象によるもの.Type 2;イレウス管の先端が先進部となるもの.A;バルーンが先進部,B;イレウス管の側孔に粘膜が吸引された場合.Type 3;イレウス管の引き抜きによるもの.これまでの報告例では今回提唱するType 1が多く認められた.
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小山 明男, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 田畑 光紀, 村田 嘉彦, 小林 陽一郎
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
882-889
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は79歳の男性で,平成10年腹部膨満感を主訴に他院を受診した.下部消化管内視鏡検査で回腸末端に腸石を認め,内視鏡的に摘出が試みられたが摘出できず経過観察されていた.その後もしばしば腸閉塞をくり返し,平成20年1月腹痛・腹部膨満感を主訴に当院を受診した.CTにて回腸終末部付近に腸石を認め,それより口側の腸管の拡張を認めた.腸石による腸閉塞と診断し,下部消化管内視鏡による摘出を試みたが困難であった.高齢で慢性閉塞性肺疾患を併存していたが,全身麻酔下に4cmの小開腹で回腸切開による腸石摘出術を行った.腸石は1個で,直径40mm主成分はシュウ酸カルシウムで真性腸石であった.術後経過は良好で第16日目に退院した.真性腸石によるイレウスは保存的治療で軽快するものは少なく,穿孔のリスクもあるので,診断がつき次第治療を行うべきである.自験例では小切開の開腹・腸切開によって低侵襲かつ安全に腸石を摘出しえた.
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秦 政輝, 丹羽 浩一郎, 石山 隼, 杉本 起一, 高橋 玄, 小島 豊, 五藤 倫敏, 田中 真伸, 冨木 裕一, 坂本 一博
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
890-897
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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化学療法後の瘢痕狭窄に対し手術を施行し寛解状態と診断された回腸濾胞性リンパ腫の症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は55歳の男性で,腹痛,腹満を認め,イレウスの診断で入院となった.CTで右側骨盤内に腸管壁が全周性に肥厚した小腸を認めた.小腸内視鏡検査では回腸に全周性の隆起性病変を認め,生検で濾胞性リンパ腫と診断した.イレウス症状改善後にR-CHOP療法を6コース施行予定であったが,4コース終了時にイレウスで再入院となった.CTで小腸腫瘍部の壁肥厚は診断時と比較し縮小傾向がみられたが,小腸内視鏡検査では同部位に狭窄を認めた.狭窄症状が改善しなかったため,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査では明らかなリンパ腫細胞は認められず,寛解状態と診断した.
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寺邊 政宏, 濱口 哲也, 増田 亨, 藤岡 正樹
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
898-905
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
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症例は51歳の女性で,盲腸低分化型腺癌の術後,血清Na値が低下し20日目に118mEq/Lとなった.浸透圧は血漿239mOsm/kg,尿750mOsm/kgで,細胞外液量は正常,Antidiuretic hormone(以下,ADHと略記)は2.3pg/mlと分泌は抑制されず,Syndrome of inappropriate secretion of ADH(以下,SIADHと略記)の診断で水制限とナトリウム負荷を行い6日間で血清Na値は138mEq/Lとなった.脳MRIで癌性髄膜症と診断されSIADHの原因と考えられた.術後2か月,口渇,多飲,多尿を認め,尿浸透圧は183mOsm/kg,ADHは0.3pg/ml以下で中枢性尿崩症と診断,デスモプレシンの投与で尿量は著減した.転移が下垂体から視索上核,室傍核に及んだためと推察された.大腸癌の頭蓋内転移によりSIADHと尿崩症を発症することはまれと思われ報告した.
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坂東 道哉, 佐藤 裕二, 森 正樹, 村田 祐二郎, 服部 正一, 倉田 長幸, 田村 徳康, 及川 芳徳, 八木 浩一, 中村 聡
原稿種別: 症例報告
2011 年 44 巻 7 号 p.
906-912
発行日: 2011/07/01
公開日: 2011/07/23
ジャーナル
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症例は82歳の男性で,血液疾患や抗凝固療法や外傷の既往はない.腹部膨満感と嘔吐にて来院され,腹部単純X線検査で大腸イレウスと診断した.腹部超音波,CT,MRIにて下行結腸に最大径6cm大の腫瘤を認めた.注腸では腫瘤圧排による下行結腸の内腔狭窄がみられた.大腸内視鏡では同部の隆起の粘膜面は正常,暗赤色調で,下行結腸壁内血腫と診断した.高齢であり,腸管壁内血腫は自然治癒の可能性もあると考え,保存的治療を選択した.約4週間の経肛門イレウス管留置にて改善し,イレウス管抜去後,退院した.3か月後のMRIと大腸内視鏡で壁内血腫は消失していた.誘因となる既往なく,原因不明の大腸壁内血腫を発症し,イレウスを来すことは文献的にもまれであり,検索しえたかぎりでは,経肛門イレウス管を用いて保存的に治癒した報告例はない.考察を加えて報告する.
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