日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 11 号
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症例報告
  • 竹内 大輔, 小出 直彦, 芳澤 淳一, 鈴木 彰, 長屋 匡信, 浅野 功治, 宮川 眞一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1075-1082
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     症例は53歳の女性で,健診での上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部に0-I型の隆起性病変を指摘された.病変周囲の円柱上皮下に食道柵状血管網を認め,Barrett上皮の存在が疑われた.腫瘍よりの生検でadenocarcinoma(tub1>tub2)と診断された.CTにて胃小彎に直径7 mmのリンパ節を認めたが,FDG-PETでは同リンパ節に異常集積を認めなかった.遠隔転移を疑う所見を認めなかった.以上より,食道胃接合部癌(Siewert type II,cT1b,cN0,cM0,cStage I)の診断にて,手術を施行した.病理組織学的検査では,深達度pT1a-DMMのBarrett食道癌であり,術前に指摘されたNo. 3aリンパ節1個に転移を認めた.現在術後27か月で無再発生存中である.
  • 中川 和也, 森 隆太郎, 上田 倫夫, 野尻 和典, 谷口 浩一, 松山 隆生, 武田 和永, 田中 邦哉, 國崎 主税, 遠藤 格
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1083-1090
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     肝門部胆管狭窄を呈する黄色肉芽腫性胆囊炎はまれであり,しばしば胆囊癌との鑑別が困難なことがある.症例は40歳の男性で,上腹部痛と黄疸を主訴に近医を受診し,精査加療目的で当院を紹介された.血液検査所見では肝胆道系酵素の上昇と炎症反応を認めた.腹部造影CTで肝門部に腫瘤を認め,ERCPで総肝管から左右肝管にかけて狭窄を認めた.管腔内超音波で胆管は全周性かつ均一な壁肥厚像を示したため,良性胆管狭窄を疑った.肝門部腫瘤から超音波内視鏡下針生検を施行したところ,肉芽腫成分を認めた.黄色肉芽腫性胆囊炎による良性胆管狭窄を最も疑ったが,悪性も否定できないため,手術を施行した.術中エコーで胆囊と連続する肝門部腫瘤を認めた.同部位からの針生検で,黄色肉芽腫性胆囊炎と確定診断し,胆囊摘出術のみを施行した.本症例では管腔内超音波および超音波内視鏡下針生検が胆囊癌との鑑別に有用で,過大手術を回避することが可能であった.
  • 新田 健雄, 平野 聡, 松本 譲, 加藤 健太郎, 土川 貴裕, 田中 栄一, 七戸 俊明
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1091-1097
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     症例は49歳の女性で,健診にて肝胆道系酵素の上昇を指摘され,精査にて右肝内胆管に進展する肝門部胆管狭窄と門脈分岐部の高度狭窄,さらに右肝動脈周囲神経叢浸潤が疑われ,Bismuth IV型肝門部胆管癌と診断した.肝血流確保のため早期の手術加療を要する症例で,無黄疸で肝機能が良好,肝左葉の容積が十分であり,門脈合併切除を伴う肝右葉・尾状葉・胆管切除術により根治切除が可能と判断した.手術は門脈合併切除・再建を肝切除に先行させ,残肝の門脈血流を確保した後に肝実質切除を開始した.一般に肝門部胆管癌に対し門脈合併切除を伴う肝葉切除を行う際には切除の最終段階で門脈を合併切除・再建する例が多くみられるが,本症例のような温存予定肝側の門脈浸潤を来した肝門部胆管癌手術においては,門脈の切除・再建を先行させる術式が,手術の早い段階で温存予定肝への門脈血流が確保できるという安全性の観点から妥当であると考えられた.
  • 熊本 宜文, 田中 邦哉, 平谷 清吾, 野尻 和典, 森 隆太郎, 谷口 浩一, 松山 隆生, 武田 和永, 秋山 浩利, 遠藤 格
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1098-1104
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     症例は73歳男性で,下部胆管癌の診断で紹介となった.初診時APTTは27秒と正常であったが,術当日49.2秒と延長を認めた.APTT延長が軽度で,胆管炎を繰り返したため,手術は延期せず膵頭十二指腸切除術を施行した.術直後に交差混合試験の結果から,凝固因子インヒビターの存在が明らかになり,第VIII因子活性4.8%,第VIII因子インヒビター2.9 BU/mlで後天性血友病と診断した.術後3日目,9日目に吻合部出血を認め,内視鏡,活性型第VII因子投与で止血した.以後出血傾向は認めず術後62日目に退院となった.本例は軽症で,術後速やかにインヒビターが消失し,致死的な出血性合併症には至らなかった.しかし,術前に発症し術前に診断がつかなかった後天性血友病の本邦報告例3例は全て出血に伴う合併症で死亡していた.術前検査でAPTT延長が認められた症例は,後天性血友病の可能性を念頭におき,精査が必要であると考えられた.
  • 前田 一也, 西田 洋児, 清水 さつき, 田中 伸廣, 浅海 吉傑, 佐藤 嘉紀, 平能 康充, 宮永 太門, 橋爪 泰夫, 海崎 泰治
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1105-1111
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     症例は77歳の男性で,前医にて分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)の経過観察中であった.2011年に施行されたMRIでIPMNの部位に一致して充実性腫瘤を指摘され,膵腫瘤の精査加療目的に当科紹介となった.腹部CTでは膵体部に約25 mmの乏血性の充実性腫瘤を認めた.FDG-PETでは同部位に異常集積を認め,IPMN由来の膵癌と診断し手術治療を行った.組織学的には胚中心を伴うリンパ濾胞の増生とリンパ球,形質細胞浸潤,膵実質の線維化を認めた.IgG・IgG4の免疫染色検査ではIgG4陽性形質細胞を50%程度(50–60/HPF)認めた.また,腫瘤内にはmucinous hyperplasiaからadenoma相当のIPMNを散在性に認めた.
  • 荒川 敏, 守瀬 善一, 梅本 俊治, 冨重 博一, 川辺 則彦, 永田 英俊, 大島 久徳, 川瀬 仁, 吉田 梨恵, 今枝 義博
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1112-1120
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     症例は81歳の女性で,門脈ガス血症,腸管気腫症,腸閉塞の診断にて入院となった.受診時には,腹部所見および発熱などの炎症所見が軽度であったため保存的治療を選択し,イレウスチューブを挿入して腸管減圧を行った.翌日には門脈ガス血症,腸管気腫症,腸閉塞の所見は改善するも腹部CTでは回腸の一部に壁肥厚を認めた.この部位を中心として小腸内視鏡検査とカプセル内視鏡検査にて精査を行い特発性限局性回腸炎と診断した.入院1か月後に施行した腹部CTでは回腸の同部位に壁肥厚が残存し,同時期の小腸内視鏡検査にて潰瘍の残存と小腸狭窄部位を認めたため,単孔式による腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した.同時に経過中に発症した無石胆囊炎に対し経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)チューブを留置後に,腹腔鏡下胆囊摘出術も併施した.単孔式腹腔鏡下手術は小腸疾患が限局しており術前に場所が同定できれば,有用な治療のオプションになりえると考えられた.
  • 田中 幸恵, 下出 賀運, 赤見 敏和, 麦谷 達郎, 武村 学, 清水 啓二, 荻野 史朗, 中尾 俊雅, 石田 英和
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1121-1128
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     緩徐に進行する腸閉塞を契機に発見した虫垂切除後の遺残虫垂原発複合型腺神経内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性で,17歳時に虫垂切除術を施行されている.嘔気・腹痛を主訴に他院を受診し,CT上,回盲部の壁肥厚を認め,それらによる小腸イレウスと診断された.上下部内視鏡検査では腫瘍性病変を認めず,生検でも悪性所見が得られなかったため経過観察となっていたが,半年後に再度症状が出現し,当院紹介となった.繰り返すイレウス症状に対し,腸閉塞解除目的に回盲部切除術を行ったところ,病理組織学的に虫垂断端を中心に漿膜下層へ浸潤する腺癌細胞と神経内分泌分化を示唆する細胞を認め,免疫染色検査でchromogranin A,CD56/NCAMいずれも陽性であり,遺残虫垂原発複合型腺神経内分泌細胞癌と診断した.Ki-67 index 23%より組織学的に悪性度が高いと考え,術後補助化学療法を施行した.
  • 山名 大輔, 村田 暁彦, 小山 基, 坂本 義之, 太田 栄, 諸橋 一, 木村 憲央, 袴田 健一, 森田 隆幸
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1129-1136
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸囊肛門管吻合術(ileo-anal canalanastomosis;以下,IACAと略記)の8年後に,残存した直腸に発癌した1例を経験した.症例は71歳の男性で,1998年11月に内科的治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対して一期目手術として大腸亜全摘術を施行した.切除標本でS状結腸に1 cm径のIp型病変を認めたが,病理組織学的検査所見で管状腺腫の診断であった.Sporadic adenomaと判断し,2000年8月に二期目手術として残存直腸切除・IACAを施行した.2008年10月に吻合部肛門管直腸粘膜に直腸癌を発症,腹会陰式直腸回腸囊切断術を施行した.切除標本で吻合部直下残存直腸に最大径30 ‍mmの3型病変を認め,tub2,pMP,pN0,pStage Iであった.IACA後に残存した直腸からの発癌はまれであるが,IACA術後発癌に関する文献的考察を含め報告する.
臨床経験
  • 大橋 紀文, 神野 敏美, 小林 大介, 田中 千恵, 山田 豪, 藤井 努, 野本 周嗣, 藤原 道隆, 竹田 伸, 小寺 泰弘
    原稿種別: 臨床経験
    2012 年 45 巻 11 号 p. 1137-1143
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2012/11/16
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     腹膜播種陽性胃癌に対してS-1+パクリタキセル(以下,PTXと略記)経静脈・腹腔内併用療法が注目されているがPTXの腹腔内投与は保険収載がなく日常臨床として行うことはできない.2011年より高度医療評価制度を用いて臨床試験を実施することとなり,協力機関としての承認を受けるために,当院の生命倫理審査委員会の承認を経て,腹膜播種陽性進行,再発胃癌に対して5例の投与経験を得た.3週を1コースとしてS-1 80 mg/m2 2週,day 1,8にPTX 50 mg/m2静脈投与および20 mg/m2腹腔内投与し,可能なかぎり継続した.治療継続期間中央値は13か月であり4例で1年以上の無増悪生存が得られた.特に同時性転移例では3例中2例で腹膜播種の消失を認めR0-1手術が可能となった.2例にGrade 4の好中球減少を認めたが減量により継続は可能であった.本治療は腹膜播種陽性進行再発胃癌に対して有望な治療法と考えられる.
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