日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
45 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
原著
  • 土生 正信, 細谷 亮, 三木 明, 瓜生原 健嗣, 小林 裕之, 貝原 聡, 岡田 憲幸, 正井 良和, 宮原 勅治
    原稿種別: 原著
    2012 年 45 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     はじめに: 腎細胞癌は,肺・骨などに転移を来しやすく,膵臓への転移は比較的少ない.このため,腎癌膵転移の治療方針,手術成績と予後については,現状まだまだ症例蓄積を要する段階である.方法: 当施設にて過去23年で13例の腎癌膵転移を経験し,うち8例に膵切除術を施行した.非切除症例も含め,その術式や予後,合併症などを検討した.結果: 膵切除8症例の術式は,膵体尾部切除4例,膵全摘2例,幽門輪温存膵頭十二指腸切除1例,膵中央切除1例であった.手術死亡はなく,術後合併症を2例に認めた.8症例中5例が生存中で,2例は無再発生存,median survival time(以下,MSTと略記)は152か月であった.膵転移切除術後の残膵再発を1例に認めた.非切除症例は5例あり,非切除理由としては,肺転移,骨転移,肝転移,下大静脈腫瘍栓などであった.非切除症例5例中,現在4例が死亡,予後は最短22か月から最長90か月,MSTは38か月であった.13例中6例が同時性膵転移であったが,同時性膵転移の中にも長期予後を認めている症例が含まれていた.結語: 腎細胞癌膵転移は,膵以外にコントロールできない転移巣がなければ,多発性・孤立性にかかわらず切除適応であると思われるが,その術式に関しては慎重に決定する必要がある.
症例報告
  • 五十嵐 雅仁, 若林 和彦, 大森 敬太, 蛯澤 記代子, 山田 和昭, 伊藤 豊
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は63歳の男性で,両側足背部痛と血清ALP高値精査目的に当院内科と整形外科を紹介受診し精査するも原因不明で経過観察となっていた.2か月後に心窩部痛を主訴に消化器科を再診した.胸部X線検査でびまん性造骨性変化を認め,骨シンチでsuper bone scanを呈し,原発不明癌のびまん性骨髄転移の診断となった.原発巣発見のため前立腺精査を行ったが問題なく,続いて行った上部消化管内視鏡検査で胃癌が発見された.胃癌びまん性骨髄転移の診断で手術を施行した.総合所見はT1a(M)N3b H0 P0 M1(LYM,MAR)Stage IVであった.術後化学療法を施行し,長期に病勢は安定し外来通院が可能であったが,術後28か月で骨髄癌症の悪化により永眠した.早期胃癌の一部には高度の遠隔転移を生じる症例が存在することを念頭において慎重に経過観察を行うことが必要であると考える.
  • 工藤 健司, 末永 洋右, 川本 清, 岩垣 立志, 佐藤 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     患者は66歳の男性で,検診の上部消化管造影検査にて体部大彎に隆起性病変を指摘され当院受診された.上部消化管内視鏡検査で体部大彎に中心部に陥凹を伴う3cm大の粘膜下腫瘍を認め,CTでは動脈相・平行相で淡染された.生検で確定診断がつかず2010年6月total biopsy目的に腹腔鏡下胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見は病巣は粘膜下層内にあり,リンパ濾胞形成を伴う著明なリンパ球浸潤を背景とした小胞状から腺房状構造を示す異型上皮の浸潤を認め,異型細胞内のEpstein-Barr virus(以下,EBVと略記)感染の存在からGastric carcinoma with lymphoid stromaの診断となった.外来経過観察中の術後3か月目の上部内視鏡検査で5×10mm大の低分化腺癌を認め同年11月に幽門側胃切除術を施行した.病理組織はEBER-1陽性でEBV関連多発癌と考えられた.
  • 磯崎 由佳, 高山 亘, 西森 孝典, 黄 哲守, 菅谷 睦, 小林 進, 星野 敢, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,2010年4月下旬黒色便を主訴に近医受診した.Hb 3.8g/dlと高度貧血を認め当院内科を紹介受診し,精査の結果十二指腸粘膜下腫瘍もしくは膵腫瘍十二指腸壁穿破が存在し,出血源であると考えられた.入院後も大量下血は続き,入院7日目に外科的加療目的に当科転科した.緊急血管造影を施行し,腫瘍が4本の膵十二指腸動脈と結腸間膜から血流を得ているのを確認し,4本すべての膵十二指腸動脈を塞栓し止血を得た.9日後,待機的に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は径7cmの内部壊死を伴う腫瘍で最終病理組織診断の結果,十二指腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断された.十二指腸GISTはまれな疾患であるが,本症例は致死的な腫瘍出血に対し根治術前に選択的血管塞栓術を施行することによって安全に膵頭十二指腸切除術を施行しえた.
  • 北田 浩二, 後藤田 直人, 信岡 大輔, 加藤 祐一郎, 木下 敬弘, 高橋 進一郎, 小西 大, 木下 平
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の男性で,健診でγ-GTPのみの高値を指摘され近医を受診した.外側区域に限局した肝管の拡張と左胸膜の肥厚を認め,アスベスト暴露歴もあり当院紹介となった.精査から,肝内胆管癌および悪性中皮腫の疑いで,まず腹腔鏡補助下肝左葉切除を施行した.病理組織学的に悪性所見はなくIgG4陽性の形質細胞浸潤を認め,IgG4関連硬化性胆管炎と診断した.一方,胸膜生検組織に悪性所見はなく,線維性の間質を背景にIgG4陰性の炎症細胞浸潤を認めた.結石を伴わない限局性肝内胆管狭窄が良性疾患であることはまれで,多くは肝内胆管癌をはじめとした悪性疾患である.またIgG4関連硬化性胆管炎に胸膜病変が合併したという報告はないが,唾液腺炎,後腹膜線維症,自己免疫性膵炎など種々の臓器に線維化を伴う炎症を来すことが報告されている.今回,肝内胆管癌の疑いで肝左葉切除をしたところ,IgG4関連硬化性胆管炎であった1例を経験したので報告する.
  • 小西 孝宜, 貝沼 修, 永田 松夫, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 池田 篤, 鍋谷 圭宏, 趙 明浩, 太田 拓実, 山本 宏
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の女性で,皮膚筋炎の診断時に施行した腹部造影CTにて肝外側区域に5cm大の門脈相で周囲に造影効果を伴う肝腫瘍を認め,精査加療目的に紹介となった.肝炎ウイルスはHBV,HCVが陰性で,AFP,PIVKA-IIは正常範囲内であった.転移性肝腫瘍を鑑別に精査するも肝外に原発巣は認めなかった.診断治療目的に腹腔鏡下肝部分切除術を施行.病理組織学的検査は,HE染色で核/細胞質比が高く核異型の強い小型腫瘍細胞の増殖を認め,免疫染色検査でCD56,Synaptophysin陽性であり肝原発小細胞癌と診断された.術後CDDP+VP-16を2コース施行するも,術後10か月で腹腔内リンパ節再発を術後12か月で右副腎再発を認めた.無治療のまま現在術後16か月生存中である.肝原発小細胞癌は極めてまれな疾患であり,予後や治療法に関して一定の見解は得られていない.肝原発小細胞癌に関して文献的考察を加え報告する.
  • 土岐 朋子, 三橋 登, 木村 文夫, 清水 宏明, 吉留 博之, 大塚 将之, 加藤 厚, 宮崎 勝
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     胆嚢欠損症に胆管結腸瘻を合併したまれな1例を経験した.症例は67歳の男性で,主訴は39°Cの発熱.腹部CTで肝膿瘍とpneumobiliaが認められERCPで造影剤が結腸に流出することから内胆汁瘻と診断された.あらゆる画像検査で胆嚢が描出されているものはなかった.総胆管結石を認め内視鏡的乳頭切開,砕石術後に経口胆道鏡を施行したが,胆管粘膜は炎症性変化が主体で悪性所見は認めなかった.大腸内視鏡で瘻孔部は肉芽様変化のみで内胆汁瘻の原因となる病変はみられなかった.開腹所見では肝S4/5が低形成で凹み,同部に横行結腸が入り込んで肝門部と強固に癒着していた.胆嚢と思われる構造物はなく,瘻孔は右肝管起始部で形成されていた.胆嚢欠損症は総胆管結石を高率に合併することが知られているが内胆汁瘻の報告はなされていない.本症例は総胆管結石による胆管炎が隣接する横行結腸に波及し内胆汁瘻を形成したものと考えられた.
  • 高梨 秀一郎, 鈴木 一也, 諸原 浩二, 保田 尚邦, 神坂 幸次, 鈴木 豊, 清水 喜徳, 村上 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     膵管内乳頭粘液性腺癌(Intraductal Papillary-Mucinous Carcinoma;以下,IPMCと略記),下部胆管癌,胆嚢癌による3重複癌に対し根治術を施行した1例を経験した.症例は82歳の男性で,膵炎,胆管炎による入院歴が6回あった.今回,発熱,左季肋部痛を主訴に来院し,腹部CT,ERCPで下部胆管癌およびIPMCと診断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本からは術前に診断しえなかった胆嚢癌も伴っており,3重複癌と最終診断された.これまでIPMCと胆道癌との重複例は報告がみられるが,下部胆管癌,胆嚢癌との3重複癌はみられなかった.また,本症例は繰り返す膵炎,胆管炎が膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)の発生とIPMCへの進展,さらに他臓器癌の新たな発生に関与した可能性が示唆された興味深い1例であった.
  • 才川 大介, 海老原 裕磨, 奥芝 俊一, 渡邊 祐介, 宮坂 大介, 佐々木 剛志, 川原田 陽, 北城 秀司, 加藤 紘之
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     門脈が膵実質に完全に包まれる膵形態異常は国内外合わせ,ごく少数だが存在し“portal annular pancreas”または“circumportal pancreas”として報告されている.今回,膵鈎部が膵体部背側と癒合し門脈を輪状に巻き込んだまれな膵形態異常を伴う下部胆管癌症例を経験し,膵頭十二指腸切除術を施行したので若干の考察を加え報告する.症例は84歳の女性で,閉塞性黄疸を呈し下部胆管癌の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した.術中に膵鈎部が背側より門脈を包み込んで膵体部と癒合する形態異常を認めた.改めて主膵管が門脈腹側を通過していることを確認し,門脈のトンネリング後に主膵管が露出するまで膵実質を鋭的に切離し,さらに背側の膵実質は自動縫合器にて切離した.術後にInternational Study Group on Pancreatic Fistula(ISGPF)分類でGrade Aの膵液漏を認めたが保存的治療にて改善した.
  • 山本 和幸, 平野 聡, 田中 栄一, 古川 聖太郎, 那須 裕也, 加藤 健太郎, 松本 譲, 土川 貴裕, 七戸 俊明, 近藤 哲
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は79歳の男性で,膵頭部癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後9日目に膵・空腸吻合部ドレーン排液のアミラーゼ値の上昇を認め,膵液瘻と診断した.経皮ドレナージを継続し膵液瘻は改善したため,術後26日目にドレナージチューブを抜去した.術後36日目に発熱,腹痛を認め,CTで膵・空腸吻合部近傍に液体貯留を認めたため,膵液瘻の再燃と診断した.ドレナージの適応と判断したが,経皮的穿刺は腹壁直下に小腸が存在するため困難であった.経胃的超音波内視鏡下にドレナージを試み,内瘻チューブの留置に成功した.その後,自他覚的所見の改善が得られ,CTで膵・空腸吻合部近傍の液体貯留の消失が確認されたため,内瘻チューブ留置後29日目に退院となった.退院後3週間目に内瘻チューブの自然脱落を認めたが,術後9か月後の現在も無症状で良好に経過している.
  • 木村 真樹, 山田 卓也, 加藤 喜彦, 関野 考史, 阪本 研一, 竹村 博文
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は65歳の女性で,2年半前に甲状腺乳頭癌に対して甲状腺右葉切除と中央区域郭清を施行された.その1年後に局所再発が気管内へ浸潤し呼吸困難を来したため,緊急気管切開後に気管合併切除再建を伴う遺残甲状腺全摘出術を施行された.さらに1年後に頸部および鎖骨上リンパ節に再発を来して郭清術を施行された.その後の経過観察中にFDG-PETで膵尾部に異常集積を指摘された.Fine needle aspiration biopsyを施行されて甲状腺乳頭癌の転移と診断された.Hand-assisted laparoscopic surgeryによる脾臓合併膵体尾部切除術を施行され,術後1年半経過して無再発生存中である.甲状腺乳頭癌の膵転移は非常にまれであり文献的考察を加えて報告する.
  • 石川 晋之, 稲吉 厚, 本村 裕, 橋本 大輔, 廣田 昌彦, 有田 哲正, 八木 泰志
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 210-217
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は34歳の男性で,飲食店で揚げたカレイを摂食した翌日から右下腹部痛が出現した.2日後に近医受診し,虫垂炎疑いで当センター紹介となった.腹部超音波と腹部単純CTで小腸内に線状の異物を認め,腸管壁を穿通していると診断し緊急手術を施行した.回盲部末端から口側約30cmの部位にメッケル憩室を認め,同部位から魚骨が上行結腸の結腸垂に穿通していた.メッケル憩室を含めた小腸切除術を施行した.メッケル憩室の多くは無症状に経過し,一部が穿孔などの合併症により偶然発見される比較的まれな疾患である.また消化管異物はしばしばみられるが,誤飲された異物が消化管穿孔を起こすのは1%以下と報告されている.今回,魚骨によりメッケル憩室穿通を来した極めてまれな症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 秀幸, 羽根田 祥, 三浦 康, 内藤 剛, 小川 仁, 安藤 敏典, 矢崎 伸樹, 渡辺 和宏, 柴田 近, 佐々木 巌
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 218-224
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は39歳の女性で,内科的治療に抵抗性の全大腸炎型潰瘍性大腸炎に対し大腸全摘・回腸嚢肛門吻合・回腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,約4か月後,回腸瘻閉鎖術を行ったが,術後腸閉塞を発症し,術後第10病日よりイレウスチューブ挿入するも改善は乏しかった.第39病日多量の下血が出現,プレショック状態となり,第41病日緊急手術を施行した.術中内視鏡検査にて小腸粘膜に多発するびらんと血液の滲出を認めたが,活動性出血は認めず,びらん部からの生検を行い,手術を終了した.病理組織学的検査所見上,潰瘍性大腸炎類似の小腸病変が示唆され,プレドニゾロンの静注を開始した.また,血管造影検査にて血管外漏出を認めた第2空腸動脈領域に塞栓術を施行した.その後下血は治まり,再手術後第27病日に退院した.これまでの文献を踏まえ,本症例の病態に対する考察を加えて報告する.
  • 増渕 麻里子, 八木 斎和, 松村 貴世, 堀場 隆雄, 佐藤 榮作, 折原 明, 篠田 育男, 片山 雅貴
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は51歳の男性で,2007年12月に下行結腸癌に対し手術を施行した.所見はD,type 3,40×50mm,tub2,SE,N1,H0,P0,M0,Stage IIIa,D2,PM0,DM0,RM0,R0,Cur Aであった.2008年9月頃より左鼠径部に疼痛を伴い増大する腫瘤を自覚したため精査を施行,左停留精巣・左精巣腫瘍と診断して,高位精巣摘出術を施行した.病理組織学的には,精巣上体間質に管状構造を示す高円柱状腫瘍細胞の増殖を認め,免疫組織学的にはサイトケラチン20:陽性,サイトケラチン7:陰性,カルレチニン:陰性であり,大腸癌の精巣上体転移と診断した.術後,便秘・血便があり大腸検査を施行し,前回下行結腸癌の吻合部近傍および直腸に腫瘍を認めたため手術を行った.病理組織学的検査の結果,前回吻合部近傍に異時性癌が発生し,その腹膜播種により他の腸管および精巣上体へ転移を来したものと考えられた.
  • 滝口 典聡, 遠藤 彰, 春木 茂男, 有田 カイダ, 薄井 信介, 伊東 浩次, 松本 日洋, 平沼 進
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 2 号 p. 232-241
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
     症例は53歳の男性で,1996年下行結腸癌,同時性肝転移に対して結腸左半切除,肝左葉外側区域切除術を施行した.1998年血清CEA値が上昇し,腹部CTにて膵尾部に腫瘍性病変を認めたため膵転移を疑い膵尾部脾切除を施行した.術中結腸吻合部背側の再発巣を確認しこれも切除した.病理組織学的検査所見では大腸癌の膵転移および後腹膜再発と診断された.術後2か月で左肺上葉の転移が見つかり左肺部分切除を施行した.1999年胸部CTにて右肺に2個の転移を確認し,さらに骨盤CTで左腸骨動脈に接する尿管転移が見つかった.左尿管転移巣を切除後,右肺転移を切除した.2000年新たな右肺転移を切除した.現在最終手術より10年経過し無再発で生存している.複数の臓器に次々に転移再発した場合でも,それぞれが切除可能であれば,積極的に手術の計画を立てて切除を繰り返すことにより良好な予後が得られる症例があり報告する.
feedback
Top