日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 3 号
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原著
  • 平林 葉子, 平井 敏弘, 松本 英男, 浦上 淳, 山下 和城, 角田 司
    原稿種別: 原著
    2012 年 45 巻 3 号 p. 243-249
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     はじめに: センチネルリンパ節(sentinel node;以下,SNと略記)同定のトレーサーは,一般的に色素やradioisotope(以下,RIと略記)が用いられる.しかし,色素の粒子径は小さく,生体内で癌細胞の動態を反映するか疑問が残る.また,RIは特殊施設を要する欠点がある.癌細胞に近い粒子径で使用が簡便である蛍光ビーズを色素法(Indocyanine Green;以下,ICGと略記)と併用し,胃癌におけるSN同定の有用性を検討した.対象と方法: 蛍光ビーズ使用に同意を得たcN0の胃癌31例を対象とした.蛍光ビーズは,術前日内視鏡下に病変粘膜下に注入した.ICGは術中漿膜側から注入し,5~15分で緑色に染まったリンパ節および紫外線照射で蛍光発光したリンパ節をSNとした.SN摘出後は標準郭清を行い,摘出標本に紫外線照射し発光したリンパ節を検索した.結果: 早期癌に限ると同定率は蛍光ビーズ法のみで76%(19/25),併用法で92%(23/25),ICG法のみで60%(15/25)であった.平均SN個数はそれぞれ2.3個,3.1個,2.3個であった.同一リンパ節に両トレーサーを認めるリンパ節も7例あった.蛍光ビーズの分布は第1群リンパ節に限らず第2群にも認めた.結語: 早期胃癌症例で蛍光ビーズは色素と併用することでSN同定率を向上させることが可能であった.
症例報告
  • 桐山 宗泰, 吉原 基, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋, 池山 隆
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 250-257
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は41歳の男性で,体重減少,微熱,嘔吐を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で,胃角部から前庭部の小彎に巨大な潰瘍を認めた.同部の生検で,封入体を有する大型細胞を認め,サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus;以下,CMVと略記)関連抗原陽性であり,胃CMV感染と診断した.HIV抗体陽性であり,AIDSによる日和見感染と診断され当院転院となった.潰瘍を伴う胃CMV感染に対し,抗潰瘍薬および抗ウイルス薬による治療を開始したが,血球減少のため抗ウイルス薬を中断した.抗ウイルス薬中断3週間後に上部消化管内視鏡検査で潰瘍部の穿孔を認め,緊急手術を施行した.開腹すると胃前庭部に約4cmの穿孔部を認めた.CMV感染がコントロールされていないため,大網充填では閉鎖不能と判断し,幽門側胃切除術を施行した.術後いったんは退院可能な状態まで改善したが,術後239日目にAIDSの悪化により死亡した.
  • 山崎 祐樹, 伏田 幸夫, 尾山 勝信, 木下 淳, 牧野 勇, 中村 慶史, 藤田 秀人, 二宮 致, 藤村 隆, 太田 哲生
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 258-266
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     術前DCS(docetaxel,cisplatin,TS-1併用)療法が著効した大動脈周囲リンパ節転移を伴う進行胃癌を経験した.また,胸腔鏡下生検が縦隔リンパ節転移の除外診断に有用であったので報告する.症例は70歳の男性で,噴門直下から角上部に及ぶ大型の2型腫瘍を認めた.大動脈周囲・縦隔を含め多数のリンパ節腫大を認めた.DCS療法を2コース行い,原発巣・リンパ節転移巣ともに著明に縮小した.しかし,縦隔リンパ節に変化はなくPET-CTでも淡い集積を認め転移も否定できないため,胸腔鏡下に縦隔リンパ節生検を行ったところ,転移を認めなかった.根治切除可能と判断し大動脈周囲リンパ節郭清を伴う胃全摘術を行った.組織学的に腫瘍の大部分は壊死に陥り,原発巣の一部と壁在リンパ節1個にごく僅かに腫瘍細胞が残存していた.現在,術後2年が経過しているが,無再発生存中である.
  • 小菅 敏幸, 比企 直樹, 布部 創也, 窪田 健, 谷村 愼哉, 山本 智理子, 佐野 武, 山口 俊晴
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は72歳の女性で,下血の精査で行った上部消化管内視鏡検査で胃体中部大彎に0-IIc病変を認め,生検の結果は低分化腺癌であった.胃癌T1aN0M0 Stage IAの術前診断で,腹腔鏡下幽門側胃切除,D1+郭清の方針とした.ところが,術中迅速病理組織学的診断でNo.4sbリンパ節転移を認めたため,腹腔鏡下胃全摘,脾合併切除を含むD2郭清を行った.病理組織学的診断は,非充実型低分化腺癌,pT1a,pN3b(19/91)であった.病変を詳細に再評価したところ,粘膜下組織の一部にもごくわずかな癌の浸潤巣を認めた.自験例は,術後に高度リンパ節転移が判明した注意すべき肉眼的粘膜内癌症例であり,当初は病理組織学的にも粘膜内癌と診断されたが,リンパ節転移が高度であるため追加検討を行うこととなり,最終的にはごくわずかな癌の粘膜下層浸潤が確認されたという点で,病理組織学的にも興味深い1例であった.
  • 龍 知記, 高見 裕子, 立石 昌樹, 和田 幸之, 才津 秀樹, 桃崎 征也
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 273-281
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は73歳の女性で,右側腹部痛を認め近医での腹部超音波検査にて肝右葉に約12cmの肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.CTにて肝右葉S7/8を主座とする最大径13cmの巨大肝腫瘤を認めた.充実性腫瘍であるが,内部は一部出血壊死を伴っており,壊死部以外は造影剤による遅延性濃染を呈していた.肝右葉切除術を施行したところ,病理組織学的検査所見は肝未分化肉腫であった.術後8か月目に腹膜播種再発を認めたものの,放射線治療と外科的切除を組み合わせることにより術後4年2か月の長期生存を得ている.肝未分化肉腫は主に小児に発生する悪性間葉系腫瘍で,成人に発症する例はきわめてまれな予後不良な疾患である.外科的切除が唯一の根治的治療法であるが,術後の腹膜播種再発においても放射線治療と積極的な外科的切除を行うことにより長期生存が得られる可能性があると考えられた.
  • 篠崎 健太, 味木 徹夫, 岡崎 太郎, 沢 秀博, 上野 公彦, 木戸 正浩, 松本 逸平, 福本 巧, 伊藤 智雄, 具 英成
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 282-289
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は74歳の男性で,黄疸,トランスアミナーゼの上昇を指摘され精査加療目的で当院に紹介となった.画像検査では総胆管と肝内胆管の拡張を認め,上中部胆管内に辺縁平滑な腫瘍の存在が疑われた.内視鏡的逆行性胆管造影時に施行された生検でspindle cell malignancyと診断され手術を施行した.術中,胆管内に有茎ポリープ状に発育する腫瘍を認め術中迅速診断で術前の生検と同様の診断を得たため胆管切除術,胆道再建術を施行した.切除標本のHE染色ではポリープ状の部分を中心に肉腫様の異型細胞,茎部に腺癌細胞を認め,一部で肉腫様細胞と腺癌細胞が混在する移行部を認めた.免疫組織学的検索では肉腫様の形態を示す細胞も上皮マーカーに陽性を示しいわゆる癌肉腫と診断された.術後16か月目に肝転移再発を来し,術後27か月目の現在外来にてゲムシタビンによる化学療法を施行中である.
  • 濱田 哲宏, 谷口 英治, 吉川 正人, 太田 喜久子, 森山 裕煕, 山上 裕子, 大橋 秀一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は66歳の男性で,十二指腸乳頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行したのち,4年10か月間を無再発で経過していたところ膵管内蛋白栓と主膵管の拡張を伴う膵炎を発症した.蛋白分解酵素阻害薬を中心とする保存的治療にて軽快し,経過観察していたが頻回に同様の発作を繰り返した.膵腸吻合部の内視鏡下バルーン拡張術を施行し一旦は軽快したが再び半年後に蛋白栓と主膵管の拡張を伴う膵炎が発症した.膵液の粘稠度低下および分泌量増加を期待して塩酸ブロムへキシンの経口投与を開始したところ,内服開始3か月後には蛋白栓の消失と主膵管の拡張の改善を認めた.その後,3年6か月間に渡って蛋白栓や膵炎の再発は認めていない.膵頭十二指腸切除術後の慢性膵炎に対する外科的治療や内視鏡的治療は侵襲が大きく高度な技術を要することより,これらを考慮する前に塩酸ブロムヘキシンの投与は試みるべき治療の選択肢であると思われた.
  • 佐々木 勉, 谷口 尚範, 吉村 玄浩, 錦織 達人, 政野 裕紀, 近藤 正人, 内藤 雅人, 浅生 義人, 山之口 賢, 古山 裕章
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 296-303
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は74歳の男性で,pStage IIの十二指腸乳頭部癌に対しD2郭清を伴う膵頭十二指腸切除術,Child変法再建術を施行した.術後膵液瘻による門脈本幹の閉塞から術後4か月目に肝性脳症を発症した.肝不全症状が進行し,門脈ステントを留置する方針とした.超音波下に門脈血流が確認できず,肝右葉表面に腹水が貯留していたため,まず開腹下に回腸静脈にシースを留置し,血管造影下にガイドワイヤーを用いて門脈本幹閉塞部の疎通を試みたが不可能であった.門脈本幹が側副血行路を介してわずかに確認され,後日腹水のみられない肝外側区域から経皮経肝ルートで血管造影下に門脈ステントの留置に成功した.ステント留置後,肝不全症状は消失した.膵頭十二指腸切除術後の良性門脈狭窄に対して適応を慎重に考慮すれば,門脈ステント留置術は有効な治療法と考えられる.
  • 三浦 孝之, 元井 冬彦, 深瀬 耕二, 大塚 英郎, 坂田 直昭, 内藤 剛, 力山 敏樹, 片寄 友, 江川 新一, 海野 倫明
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 304-311
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は78歳の男性で,2003年10月,膵尾部浸潤性膵管癌に対し膵体尾部切除術を施行した.術後補助化学療法としてGemcitabine(1,000mg/m2/week)療法を3コース施行され,その後Tegafur-uracil(300mg/day)を4年9か月間内服した.術後6年間無再発であったが,2009年11月の造影CTにて造影効果に乏しい13mm大の腫瘤性病変を膵頭部に指摘された.膵管擦過細胞診,超音波内視鏡ガイド下針生検にてadenocarcinomaと診断された.遠隔転移を認めず,同年12月に残膵全摘術が施行された.浸潤性膵管癌の再発としては経過が長く,膵断端も悪性所見は陰性であったため,残膵に発生した異時性膵癌と診断された.浸潤性膵管癌は予後が不良で,長期生存に加え,異時性に膵癌を発症する症例は極めてまれと考えられるが,長期生存症例に対し,本疾患を念頭に置くことは重要である.
  • 柳川 泉一郎, 眞次 康弘, 小橋 俊彦, 秋本 悦志, 大森 一郎, 池田 聡, 中原 英樹, 漆原 貴, 西阪 隆, 板本 敏行
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 312-318
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     十二指腸乳頭部癌に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除後6年目に診断された残膵癌に対して残膵全摘を行った1例を報告する.症例は69歳の男性で,6年前に十二指腸乳頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行い,中分化型管状腺癌,stage IIIであった.術後定期検査のCTで残膵体部に2cm大の低濃度腫瘤を認め,残膵体部癌の診断で残膵全摘を行った.組織学的には中分化管状腺癌であったが,第1癌切除から第2癌発見まで6年経過していること,膵管空腸粘膜吻合部から離れた部位に病変を認めたこと,腫瘍より尾側膵の非癌部に閉塞性膵炎がみられたこと,病理組織学的検査所見ではMUC5ACの発現形式が異なっていたことから転移ではなく重複癌の可能性が高いと診断した.膵頭十二指腸切除後の異時性残膵癌はまれだが,自験例を含めた本邦報告例6例中5例は術後5年以上経過した後に発症しており長期間の経過観察が必要である.
  • 鈴木 秀幸, 柴田 近, 木内 誠, 田中 直樹, 三浦 康, 内藤 剛, 小川 仁, 上野 達也, 佐々木 巌
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 319-325
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は69歳の女性で,強皮症の治療中に腹部膨満が出現し,二次性慢性偽性腸閉塞症(chronic intestinal pseudo-obstruction;以下,CIPと略記)および腸管嚢腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis;以下,PCIと略記)と診断された.保存的治療により一度は改善したが,その後再増悪した.食事再開とともに発熱などの症状の増悪を繰り返す状態となったため,PCI部の空腸の切除術を施行した.術後経過は良好で,食事量は増加し栄養状態の改善も図れた.CIPに対する外科的治療には議論がある.CIPにPCIを伴い経口摂取が困難な場合,PCI部の切除を考慮する必要があるが,病変が限局的であれば,強皮症のような全身病に合併した場合であっても切除の有効性は高いと思われた.
  • 田島 陽介, 飯合 恒夫, 野上 仁, 亀山 仁史, 島田 能史, 伏木 麻恵, 関根 和彦, 細井 愛, 畠山 勝義, 梅津 哉
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 326-332
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は女性で,23歳・妊娠12週時より腹痛・嘔吐が出現した.画像上小腸全体の拡張を認めたが,器質的な閉塞機転を認めず,機能的な腸管運動不全が疑われた.出産後も症状は軽快せず,24歳時に回盲部切除術を施行された.病理組織学的検査所見で腸管神経節細胞脱落を認め,慢性特発性偽性腸閉塞症(chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction;以下,CIIPと略記)と診断された.25歳時にさらに大腸亜全摘・回腸人工肛門術を施行されたが,症状は改善しなかった.29歳時に空腸人工肛門造設術を施行後,症状が軽快し経口摂取可能となった.CIIPの発症機序は不明だが,近年その発症に自己免疫学的異常が関わるとする報告が散見される.一方,種々の自己免疫疾患と妊娠との関連が示唆されている.本症例もCIIP発症に自己免疫学的機序が関与しているかもしれない.
  • 伊東 英輔, 小澤 壯治, 岡村 浩子, 石川 健二, 杉尾 芳紀, 町村 貴郎, 山崎 等, 木勢 佳史, 幕内 博康
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 333-339
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     患者は77歳の女性で,数日前より腹痛を自覚し救急外来を受診した.腹部は板状硬であり,腹部CTにて肝表面に腹水と少量の遊離ガスを認めた.右側結腸には憩室が多発していたが明らかな石灰化や膿瘍形成の所見は認めなかった.右側結腸憩室穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断し同日緊急手術を施行した.右側結腸を授動し詳細に観察すると,盲腸後部に存在する虫垂の先端部で壊死穿孔をきたしていた.虫垂根部の炎症は認めず,虫垂切除術を施行した.虫垂穿孔で腹腔内遊離ガスを認めることはまれである.術後の病理組織学的検査所見にて虫垂原発の印環細胞癌と診断され,断端も陽性であったため2期的に結腸右半切除術を施行した.今回,穿孔性腹膜炎で発症した虫垂原発印環細胞癌の1例を経験し,術中には虫垂癌と診断することは成しえなかったが,あらためて本症を念頭においた術式選択と,切除虫垂における病理組織学的検討の重要性を再認識した.
  • 藪下 泰宏, 木村 英明, 山本 壽恵, 上 奈津子, 国崎 玲子, 佐々木 毅, 小金井 一隆, 杉田 昭, 福島 恒男, 遠藤 格
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 340-344
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     Crohn病による回腸・卵巣嚢腫瘻の1例を経験したので報告する.症例は22歳の女性で,20歳時に小腸大腸型Crohn病と診断され通院加療中であった.右下腹部痛が生じたため,精査加療目的に入院した.消化管造影検査で瘻孔は描出されないものの,CTで右卵巣嚢腫内部にニボー形成を認めた.腸管卵巣嚢腫瘻を疑い手術を施行したところ,回腸と一塊となった卵巣嚢腫を認め,回腸・卵巣嚢腫瘻と診断し回腸部分切除,右付属器切除を施行した.瘻孔形成はCrohn病の合併症の一つであるが,卵巣との瘻孔形成の報告はまれであり,文献的考察を含め報告する.
  • 中山 智英, 伊藤 清高, 竹本 法弘, 鈴木 雅行
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
     症例は85歳女性で,心窩部痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診し,CTで胃・横行結腸・大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断した.保存的治療で症状は改善したが,症状の悪化を危惧し翌日臨時手術を施行した.胸骨後面の横隔膜にヘルニア門を認め,右胸腔内へ脱出した横行結腸・大網を腹腔内へ還納し,ヘルニア門を腹壁外結紮法を用いて閉鎖した.手術は腹腔鏡で施行した.Morgagni孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアのなかでも比較的まれな疾患であり,以前は開腹での修復術が中心であったが,近年腹腔鏡下手術の報告例が散見される.しかし,腹腔鏡下手術におけるヘルニア門の修復法については一定の見解が得られていない.我々が今回経験した腹壁外結紮法はMorgagni孔ヘルニアに対し,腹直筋筋膜を利用し緊張を維持しながらヘルニア門を縫縮できる術式であり,確実なヘルニア門の縫縮という点では有用な方法であると考える.
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