日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 5 号
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原著
  • 西 英行, 脇 直久, 河合 央, 木下 茂喜, 石崎 雅浩, 間野 正之
    原稿種別: 原著
    2012 年 45 巻 5 号 p. 475-482
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     はじめに:悪性腹膜中皮腫はまれな疾患であるが,遭遇する頻度は増加している.今回,我々は人口動態統計を元に中皮腫による死亡例に関して調査を行い,我が国で行われた腹膜中皮腫に対する治療の現状を検討した.方法:2003年から2008年までの中皮腫による死亡4,860例のうち遺族の同意,医療機関の情報が得られた症例は805例であった.このうちの悪性腹膜中皮腫114例を対象として検討した.結果:男性81例,女性33例.平均年齢は64歳であった.石綿ばく露歴を61例に認めた.確定診断は,83例が開腹または腹腔鏡による生検で得られた.組織型は,上皮型61例,二相型12例,肉腫型10例であった.治療法は,化学療法が63例,手術療法が12例,手術+化学療法が3例に行われていた.予後は,全例の生存期間中央値(MST)は4.8か月であった.Cox回帰による多変量解析では,年齢,性別,腹痛の有無,組織型が予後因子であったが,化学療法や手術は予後因子ではなかった.結論:胸膜中皮腫と比較して女性が多く,上皮型の割合が高く,アスベストばく露歴を有する比率は少ないが高濃度ばく露者に多く発生している可能性が示唆された.予後不良の疾患であり,手術・化学療法が予後に影響を与えていなかった.
症例報告
  • 小林 ゆかり, 村田 一平, 田上 修司, 清水 一起, 野口 芳一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 483-490
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は2年前に胃潰瘍の手術歴を有する60歳の男性で,腹痛,コーヒー残渣様の嘔吐にて他院に搬送され,消化管出血疑いで当院に転送された.Vital signはほぼ安定していたが,腹部は板状硬で腹膜刺激徴候を認めた.腹部CTで著明な後腹膜気腫,門脈ガス,腸管気腫および腹腔内遊離ガスを認め,さらに著明な胃壁の肥厚も認め,広範囲にわたる腸管壊死を疑って緊急手術を施行した.開腹時,無臭茶褐色の混濁腹水1,700ccを認め,後日,培養でカンジダが陽性であった.腹膜は高度に発赤肥厚し汎発性腹膜炎の所見であったが,腸管の血流は良好で虚血性変化は認めなかった.上行結腸から直腸に至る著明な腸管気腫を認めた.さらに胃体下部前壁に径20mm大の潰瘍腹壁穿通を認め,潰瘍縫縮術+ドレナージ術を施行した.自験例は,胃潰瘍が原因の後腹膜気腫,門脈ガス血症,腸管気腫に潰瘍穿孔による腹腔内遊離ガスが合併したものと推察された.
  • 裵 正寛, 田中 宏, 竹村 茂一, 酒部 克, 山本 訓史, 市川 剛, 久保 正二
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 491-496
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は55歳の女性で,8歳時に先天性胆道拡張症に対する手術歴があり,1年前より時々発熱を伴う右季肋部痛が出現した.当初,胆管炎との診断で保存的治療が行われたが,CEA値の上昇とともに,CTで膵頭部に腫瘤性病変が指摘されたため当科に紹介された.閉塞性黄疸を呈しており,経皮経肝胆道ドレナージ術を施行したところ,総胆管空腸側々吻合が行われていたことが判明した.以上より,内瘻術後に発生した胆管癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では中下部胆管に隆起性病変が認められ胆管空腸吻合部まで浸潤するとともに明らかな膵浸潤が認められた.病理組織学的には中分化型腺癌と診断された.術後経過は良好であり,術30日後に退院し,術4年無再発生存中である.今回,我々は,先天性胆道拡張症に対する内瘻術から47年もの年月を経て発見された胆管癌に対する手術症例を経験したので報告する.
  • 里吉 梨香, 佐藤 勤, 吉楽 拓哉, 岩﨑 渉, 小棚木 均
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 497-503
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は79歳女性で,黄疸を指摘され入院した.US,CTで膵頭部に30mmの腫瘤を認め,MRIで膵尾部にもT1強調で低信号域の20mmの腫瘤を認めた.MRCPでは頭部主膵管に所見はないが尾部に不整な狭小化が認められた.膵頭部・尾部2か所の膵癌の診断で膵頭十二指腸切除,膵体尾部切除,脾摘を施行した.組織学的に膵頭部腫瘤は中分化型管状腺癌であり,胆管浸潤,十二指腸浸潤を認めた.膵尾部の腫瘤はリンパ球,形質細胞浸潤と線維化を認め,形質細胞の大半は免疫組織学的にIgG4陽性で自己免疫性膵炎と診断された.膵上縁胆管の均一に肥厚した壁にはIgG4陽性細胞の浸潤が認められ硬化性胆管炎と診断された.膵癌と自己免疫性膵炎の合併はまれなためそれぞれが異なる腫瘤と術前診断することはできなかった.胆管閉塞の主因も自己免疫性膵炎関連硬化性胆管炎と考えられ極めてまれで興味ある症例と考えられた.
  • 長谷川 智行, 富澤 直樹, 小川 哲史, 渡辺 正秀, 袖山 治嗣, 竹吉 泉
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 504-511
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は55歳の男性で1996年に右腎細胞癌で右腎摘出術を施行されていた.2010年8月,人間ドックの腹部CTで1年前に認めなかった脾腫瘤を指摘された.自覚症状はなく外傷や炎症性疾患などの既往もなかった.超音波検査で同腫瘤は2cm大の一部血流を認める低エコー腫瘤として描出され,MRIでは出血を伴なう腫瘍性病変の可能性が指摘された.CT,FDG-PET-CTなどの精査では画像上の特徴所見に乏しく,確定診断には至らなかったが悪性腫瘍の可能性を否定できず,2010年9月に脾摘出術を施行した.CD31,CD34,CD8などの免疫組織化学検査所見でSclerosing angiomatoid nodular transformationと診断された.本疾患は非常にまれな脾腫瘤形成性疾患と考えられ,本邦報告例は5例のみであった.本例を加えた6例の臨床的特徴を検討し報告する.
  • 雄谷 慎吾, 加藤 岳人, 平松 和洋, 柴田 佳久, 吉原 基, 鈴村 潔, 山田 英貴, 榊原 綾子
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 512-521
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は49歳の男性で,2009年2月下旬に健康診断でバリウムによる上部消化管造影検査を施行した.検査2日後に腹痛,発熱が出現し,翌日に当院を受診した.理学的に腹膜刺激症状があり,血液検査所見で炎症反応が顕著であった.腹部単純X線とCTで,腹水,遊離ガス像に加え,下腹部に境界明瞭なバリウム貯留像を認めた.消化管穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.開腹所見で,回腸末端より約55cm口側回腸の腸間膜付着部対側にメッケル憩室を認めた.メッケル憩室は先端半分が囊状に拡張し,茎部との移行部にくびれがみられた.囊状部分に約5mmの穿孔があり,憩室切除術を行った.組織学的所見では,囊状部分の粘膜は壊死状で異所性粘膜は確認できなかった.本症例のメッケル憩室は囊状部分基部が屈曲し内腔が狭窄する形状のため,囊状部分に貯留欝滞したバリウムによる内圧上昇と化学的刺激が契機となって発症したと考えられた.
  • 大東 雄一郎, 薮内 裕也, 松本 宗明, 北東 大督, 中島 祥介
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 522-529
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は20歳の男性で,交通事故で胸腹部を打撲,近医に入院となったが保存的治療で改善し退院となった.しかし受傷後12日目にイレウスを発症し当院に入院となった.入院後イレウス管を挿入し治療をおこなうも改善せず,手術をおこなった.Treitz靱帯から120cmの空腸に輪状の瘢痕性狭窄を連続して3か所認め,小腸間膜には多数の瘢痕,短縮を認めた.さらにS状結腸にも1か所の狭窄を認め,S状結腸間膜に瘢痕,短縮を認めた.腹部外傷後の遅発性空腸,S状結腸狭窄と診断し,それぞれを切除し吻合した.今回の手術は腹腔鏡手術も検討したが,腹腔内の検索を十分におこなうことが重要と考え,開腹術を選択した.鈍的腹部外傷後の遅発性イレウスでは不可逆性の腸管狭窄を伴い,しかも多発している可能性があることを十分に認識して治療をおこなう必要がある.
  • 木村 俊久, 澤井 利次, 戸川 保, 石田 誠, 上田 順彦, 澤 敏治, 山口 明夫, 佐藤 保則
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 530-536
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は46歳の男性で,腹痛とふらつきを主訴に来院した.腹部は膨満し,下腹部に手拳大の腫瘤を触知した.腹部USおよび腹部CTで腹腔内に大量の液体貯留と腫瘤を認めた.腹水穿刺で血液を吸引したため腫瘤からの腹腔内出血と診断し,緊急手術を施行した.腫瘍は小腸間膜に存在し,表面から出血していた.また,腸間膜に多数の播種を認めた.腫瘍を含めて小腸を切除し,播種は電気メスで焼灼した.標本は12×10×6cmの充実性腫瘍で,割面は白色分葉状で一部に出血を認めた.免疫染色検査では腫瘍細胞はc-kit,CD34が陽性でα-smooth muscle actin(SMA),S-100は陰性であり,小腸のgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.術後早期よりimatinib mesylate 400mg/日の内服を継続し,術後5年の現在,無再発生存中である.
  • 川井田 啓介, 門野 潤, 上田 英昭, 大迫 政彦, 石崎 直樹, 清水 健, 鮫島 淳一郎, 井本 浩, 田畑 峯雄
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 537-543
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は81歳の女性で,大腸内視鏡検査で上行結腸肝彎曲部に全周性2型病変を認め,生検で中分化から低分化型腺癌と診断された.CTで同部の壁肥厚と,傍大動脈リンパ節転移,腹膜播種,多発肺転移を認め,腸閉塞予防目的に結腸右半切除術を施行した.術後,発熱,白血球増加,CRPの高値が持続したが感染源は指摘しえず.血中granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)濃度が124pg/mlと高値で,腫瘍部は免疫組織化学染色でG-CSFが弱陽性でありG-CSF産生結腸癌と診断した.FOLFOX4療法を6コース施行し多発リンパ節,肺転移は著明に縮小したが,多量の胸腹水貯留を認め,術後7か月で癌死した.G-CSF産生大腸癌の予後は不良であるが,FOLFOX4療法の有用性が示唆された.
  • 平賀 理佐子, 小出 直彦, 小松 大介, 吉澤 明彦, 宮川 眞一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 544-551
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     患者は70歳の男性で,血便を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で横行結腸に2型病変を認めた.腹部CTでは横行結腸癌の胃大彎への浸潤を認めた.上部消化管内視鏡検査では胃角部大彎に粘膜下腫瘍様病変を認め,超音波内視鏡検査ではこの粘膜下腫瘍は壁外性浸潤の可能性が指摘された.胃浸潤を伴う横行結腸癌の診断にて開腹し,横行結腸切除および胃浸潤部の部分切除を施行したが,胃切除部の術中迅速診断にて遺残が疑われたため幽門側胃切除を追加した.切除標本の腫瘍の割面は,横行結腸癌の壁外発育を示す胃浸潤を認めた.病理組織学的検査では横行結腸癌の中分化腺癌が低分化腺癌に移行し,この低分化腺癌が胃壁浸潤し胃固有筋層から粘膜下層にかけてリンパ管浸潤を伴いびまん性に浸潤していた.横行結腸間膜のリンパ節転移は認められなかったが,胃角のNo.3リンパ節に転移を認めた.術後経過は良好で,術後2年経過して明らかな再発を認めていない.
  • 井村 仁郎, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 村田 嘉彦, 小林 陽一郎, 藤野 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 552-558
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は84歳の男性で,56歳時より脳梗塞でアスピリンを内服しており,腹痛を主訴に来院した.身体所見では腹部全体が板状硬で,腹部CTでダグラス窩に腹水とfree airを認めたため,汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.S状結腸漿膜面に血腫を認め,これと連続する柔らかい腫瘤を結腸壁内に触知した.この周囲に膿の付着を認めたためS状結腸穿孔と診断し,S状結腸を部分切除し吻合した.切除標本肉眼所見ではS状結腸の漿膜下の血腫から連続する結腸壁内の粘膜下腫瘤と,腫瘤の頂部にびらんを認めた.この粘膜下腫瘤は病理組織学的に内輪筋層内に形成された血腫であった.アスピリンによる凝固機能障害を基礎に結腸壁内出血により血腫が形成され,血腫の圧迫により粘膜のびらん,腸壁の哆開を来して穿孔したと考えた.特発性大腸壁内血腫の本邦報告例は15例であるが,穿孔性腹膜炎を合併したのは自験例のみであった.
  • 橘高 弘忠, 山田 晃正, 後藤 邦仁, 高橋 秀典, 大植 雅之, 矢野 雅彦, 大東 弘明, 石川 治, 長田 盛典, 冨田 裕彦
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 559-565
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     Paraganglioma(以下,PGと略記)は,傍神経節細胞由来の腫瘍で,多くは腹部大動脈周囲に発生するが,横隔膜原発PGの報告はほとんどない.今回,極めてまれな横隔膜原発PGの1例を経験したので報告する.症例は61歳の男性で,検診で肝細胞癌が疑われ,精査加療目的で当院受診となった.受診時,特に症状はなかった.CTでは,肝S8横隔膜ドーム直下に40mm大の経時的に淡く造影される腫瘤を認め,MRIでは,T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示した.腹部血管造影検査で,右下横隔動脈を供血血管とすることは判明したが,画像検査では確定診断に至らなかった.悪性腫瘍が否定できず,診断的治療目的で開腹術を施行.腫瘍は右横隔膜内に存在し周囲への浸潤は認めず,一部横隔膜とともに腫瘍を摘出した.病理組織学的検査所見よりPGと診断され,臨床所見を併せnon-functioning PGと最終診断した.
  • 杉本 卓哉, 三毛 牧夫, 草薙 洋, 加納 宣康
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 566-571
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     腰部には上腰三角と下腰三角とよばれる2つの解剖学的抵抗減弱部位が存在する.下腰ヘルニアは下腰三角から発生する極めてまれなヘルニアであるが,嵌頓例はさらにまれである.今回,我々は非外傷性の下腰ヘルニアの小腸嵌頓の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は74歳の女性で,右腰部の腫瘤および疼痛と嘔吐を主訴に来院した.身体所見上,腰部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,腹部CTで右下腰三角から腹水を伴う小腸の脱出を認めた.下腰ヘルニア嵌頓と診断し,還納できなかったため同日緊急手術を施行した.下腰三角から小腸の脱出を認めたが腸管壊死所見はなかった.ヘルニア門を直接縫合閉鎖し,light-weightのpolypropylene meshを用いて補強した.術後経過は良好であった.
  • 丸山 哲郎, 星野 敢, 武藤 頼彦, 菅本 祐司, 福長 徹, 木村 正幸, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 572-577
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は20歳の女性で,左下腹部痛を主訴に当院産婦人科を受診しMRIを施行したところ,直腸背側に4cm大の囊胞性腫瘤を認めた.epidermoid cystやtailgut cystなどが疑われ当科紹介となった.術前検査では確定診断は得られず,仙骨部囊胞性腫瘍の診断にて手術の方針となった.経仙骨的に腫瘍を摘出した.灰白色の内容を含む囊胞性腫瘍であり,組織学的には毛包などの皮膚付属器を伴った扁平上皮による被膜を呈する囊胞であり,Dermoid cystの診断となった.悪性所見は認めず,術後3日目に退院となった.前仙骨部は発生学的に胎児性組織が集中し,さまざまな先天性腫瘍が発生すると言われている.それらの術前診断は困難であること,易感染性であり感染後は完全摘出が困難になることなどから,発見後早期に手術を行うことが多い.今回,我々は成人仙骨前dermoid cystの1例を経験したので報告する.
  • 下村 昭彦, 橋本 雅司, 森山 仁, 的場 周一郎, 渡邊 五朗, 大橋 健一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 5 号 p. 578-582
    発行日: 2012/05/01
    公開日: 2012/05/16
    ジャーナル フリー
     粘液線維肉腫(Myxofibrosarcoma;以下,MFSと略記)は中高年の四肢に好発する軟部肉腫であり,後腹膜原発はまれである.MFSに対する化学療法や放射線療法の有効性は確立されておらず,初回手術の際に根治的切除できなければ局所再発を繰り返す例や遠隔転移を来す例が少なくない.症例は58歳男性.右腸腰筋原発のMFSに対し前医で腫瘍切除+右腸腰筋合併切除を施行された.その1年5か月後に局所再発を来し当科紹介受診,腫瘍摘出術+右腎・尿管・腸腰筋合併切除施行した.さらに2年9か月後に腫瘍摘出+右半結腸合併切除,3年5か月後に腫瘍摘出+右腸腰筋・回腸合併切除,4年5か月後に腫瘍摘出+腸腰筋・空腸・胆囊合併切除と計4回の再発・再手術を繰り返した.現在,初回手術より10年,最後の腫瘍切除術より5年経過するが再発の兆候なく生存中である.
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