日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 1 号
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会告
原著
  • 小網 博之, 伊佐 勉, 谷口 春樹, 本成 永, 白井 智子, 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成, 松村 敏信, 長嶺 義哲, 古波倉 史子
    原稿種別: 原著
    2013 年 46 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     目的:門脈ガス血症(hepatic portal venous gas;以下,HPVGと略記)は腸管壊死を示唆する予後不良の因子とされているが,重症度を規定する因子に関する報告はほとんどない.今回,我々は肝蔵での門脈ガスの分布領域と重症度との関連について検討したので報告する.対象:2008年8月から3年4か月間に当院で施行したmulti-detector CT(以下,MDCTと略記)にてHPVGを認めた32症例(男性56%,平均年齢76.2歳)である.方法:ガスの分布領域を肝左葉のみ(L群;n=15),両葉(LR群;n=17)の2群に分け,患者背景,腹部造影CT所見,腸管壊死の有無,治療方針や予後に関してそれぞれ検討を行った.結果:患者背景や来院時現症,血液検査所見には有意差はなかった.CT所見では,胃・十二指腸の拡張(L群46.7% vs. LR群82.4%;P=0.040),小腸の拡張(53.3% vs. 94.1%;P=0.011),腸管気腫(46.7% vs. 100%;P<0.001),門脈本幹ガス(33.3% vs. 70.6%;P=0.035)においてLR群が有意に多かった.また,手術や腸管壊死の有無,死亡率に有意差は見られなかった.結語:本検討よりHPVGの分布領域と臨床的重症度や予後に関連は認められなかった.
症例報告
  • 稲本 道, 牧 淳彦, 荒木 宏之, 山下 幸大, 岡村 亮輔, 倉橋 康典, 篠原 尚, 白潟 義晴, 水野 惠文, 三村 六郎
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は62歳の男性で,健診で指摘された胃癌に対し胃全摘術を施行しalpha-fetoprotein産生胃癌(以下,AFP産生胃癌と略記)と診断された.術後10か月,19か月時にAFP値の上昇とそれぞれ肝S5,S6に単発肝腫瘍を認め,いずれも肝部分切除術を施行しAFP産生胃癌の肝転移と診断された.AFP値は一時低下したが再上昇し,S-1,PTX,CPT-11/CDDPなどの化学療法を施行したが奏効しなかった.さらに,肝S5–8の再発腫瘍を認め,ラジオ波焼灼術や肝動脈塞栓術を施行したが,AFP値の上昇と腫瘍径の増大を認めた.初回術後4年時に肝拡大右葉切除術を施行し,断端陰性にて切除しえた.以降AFP値は正常値に低下し,画像上も再発腫瘍を認めず,胃原発巣切除後5年6か月(3回目の肝切除術後1年6か月)の生存を得ている.AFP産生胃癌の肝転移に対し,積極的な肝切除術が有効であった1例を経験した.
  • 黄 哲守, 高山 亘, 西森 孝典, 角田 慎輔, 柳橋 浩男, 小林 進, 菅谷 睦
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     早期胃癌術後半年で肝転移を来し,肝切除を施行した胃小細胞型内分泌細胞癌(以下,胃小細胞癌と略記)の1例を経験したので報告する.症例は79歳男性で2005年10月に早期胃癌の診断にて胃全摘術施行.術後病理組織学的検査でneuroendocrineの性格を持つ胃小細胞癌と診断された.胃全摘から6か月経過した2006年4月CA19-9が急激に上昇.CTにて肝S4に直径4 cm大の造影効果を伴った腫瘤性陰影を認めた.その後施行された血管造影検査にても同様に肝S4に腫瘍濃染を認めたため胃小細胞癌による肝転移と診断.他区域,他臓器に転移を認めなかったことから,治癒切除可能と判断し肝内側区域切除術を施行した.病理組織学的検査結果も胃小細胞癌の肝転移を診断された.その後,化学療法は施行せず外来にてフォロー中であるが,胃切除後6年5か月,肝切除後5年10か月経過した現在,無再発生存中である.
  • 田畑 光紀, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 小林 陽一郎, 伊藤 雅文
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は74歳の男性で,2002年に十二指腸乳頭部腫瘍に対し開腹十二指腸乳頭部腫瘍切除が施行され,病理組織学的に高度異型腺腫であり,切除断端陰性と診断された.2008年,黄疸を主訴に当院を受診した.内視鏡検査で十二指腸乳頭部に不整な腫瘤を認め,生検で中分化型腺癌と診断された.下部消化管内視鏡検査にて,S状結腸にひだ集中と辺縁隆起を伴う不整な潰瘍性病変を認め,生検所見を考慮して転移性腫瘍と診断した.十二指腸乳頭部癌,同時性S状結腸転移と診断し膵頭十二指腸切除術・S状結腸切除術を施行した.病理組織学的検査所見は中分化型腺癌,Panc1b,Du2,N2(#13b,#14d,#17d),EM0,M1(S状結腸),Stage IVbであった.S状結腸転移は血行性あるいはリンパ行性転移と考えられた.大腸に孤立性転移を認める十二指腸乳頭部癌は極めてまれで,内視鏡所見,生検所見から術前診断しえたので報告する.
  • 高橋 龍司, 武田 仁良, 磯邉 眞, 田中 眞紀, 篠崎 広嗣, 山口 美樹, 津福 達二, 堀内 彦之, 中島 収, 白水 和雄
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は63歳の男性で,下腿浮腫を主訴に来院し,血液検査にて肝機能異常とCEA高値を認め,造影CTにて肝外側区域の肝内胆管拡張を認めた.ERCPでは左肝内胆管がB1分枝直後で完全閉塞し,同部位での擦過細胞診と胆汁細胞診では悪性所見を認めなかった.肝内胆管癌を疑い,2008年8月に肝左葉+尾状葉切除術を施行した.病理組織像では,肝S2に限局した肝内胆管狭窄と多房性囊胞性病変を呈しており,囊胞性病変と肝内胆管との交通は認められなかった.胆管狭窄部は異型のない単層立方上皮で被われ,囊胞壁の線維化,付属器腺の増生,軽度のリンパ球浸潤を認めた.初回手術から44か月経過し,無再燃生存中である.良性肝内胆管狭窄はまれな疾患であり,本邦では12例の報告のみである.肝内胆管癌との鑑別は困難であり,現時点では十分なinformed consentを行ったうえで肝切除を検討すべきであると考えられた.
  • 下村 治, 福永 潔, 中野 順隆, 野渡 剛之, 小林 昭彦, 小田 竜也, 佐々木 亮孝, 山田 健二, 野口 雅之, 大河内 信弘
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は64歳の男性で,全身倦怠感を主訴に近医で精査され,高度の炎症反応上昇と肝左葉の腫瘤性病変から肝膿瘍を疑われ加療されていたが改善しないため,当院紹介となった.CTにて肝左葉に長径13 cmの腫瘍を認め,中心部は壊死傾向が強く,血管を巻き込むように進展しており肝内胆管癌と診断された.拡大肝左葉切除術を施行したが,血性腹水を認め,腫瘍破裂の状態であった.術後,全身状態の改善が乏しく創部より血性の浸出が続いており,術後14病日に施行したCTで腹膜播種性転移,多発肝内転移,大臀筋内の遠隔転移を認めた.腫瘍からの出血のため術後19病日に死亡した.術前より白血球数が著しい高値を示しており,血清G-CSF濃度が高値であること,腫瘍細胞が抗G-CSF抗体を用いた免疫組織化学染色検査で陽性を示したことより,G-CSF産生腫瘍と診断した.G-CSF産生肝内胆管癌の報告は7例と極めてまれであった.
  • 橋口 真征, 上野 真一, 迫田 雅彦, 飯野 聡, 南 幸次, 又木 雄弘, 前村 公成, 新地 洋之, 平木 翼, 夏越 祥次
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は71歳の男性で,肝S4S8に4 cm大の腫瘤を指摘された.US上,境界不明瞭な低エコー像を呈し,CT上の造影効果は微弱で,CT during arterio-portgraphy(以下,CT-APと略記)上,門脈血流も低下していた.また,Gd-EOB-DTPA MRI早期相で弱く造影された.HBc抗体陽性でHBVの既感染も疑い,高分化型肝細胞癌と診断し肝中央二区域切除を行った.腫瘍は4×2 cm大で,割面は白色充実成分と肝実質成分のまだら状を呈した.病理組織学的検査で腫瘍部はびまん性小型リンパ球浸潤を認め,それらの多くは免疫染色検査上,CD20,bcl-2陽性のBリンパ球であり,mucosa-assosiated lymphoid tissue(以下,MALTと略記)リンパ腫と診断された.肝原発悪性リンパ腫はまれであり,中でもMALTリンパ腫の報告は極めて少なく,診断を中心に報告する.
  • 今村 一歩, 曽山 明彦, 高槻 光寿, 村岡 いづみ, 原 貴信, 山口 泉, 田中 貴之, 木下 綾華, 黒木 保, 江口 晋
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は73歳の男性で,肝細胞癌に対し肝後区域切除術施行の1年6か月後に左前頭部腫瘤を自覚した.術前精査では腫瘍マーカーの上昇なく,骨シンチグラフィにても既知の部位以外に骨病変は認めず頭蓋骨腫瘍疑いにて頭蓋骨腫瘤摘出術を施行された.病理組織学的診断は肝細胞癌頭蓋骨転移であった.初回手術より3年8か月後の腹部CTにて右第10肋骨に骨破壊を伴う径5 cmの腫瘤性病変を指摘された.肝細胞癌肋骨転移と術前診断され,孤発巣であったため手術適応と判断し第10肋骨を部分合併切除し腫瘤摘出術施行した.病理組織学的診断にて肝細胞癌肋骨転移と診断された.原発巣切除より5年,初回骨切除より3年7か月経過しているが再発・転移は認めていない.骨転移症例においては骨単独再発も念頭に置いたうえで,早期発見・治療のための厳重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 本多 正幸, 加藤 祐一郎, 後藤田 直人, 木下 敬弘, 高橋 進一郎, 小嶋 基寛, 小西 大
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は67歳の男性で,胆石症手術歴があり,肝機能障害で当院へ紹介となった.無黄疸であった.内視鏡で主乳頭に腫瘤を認め,生検で中分化型腺癌と診断した.CTで4.5 cm大の乳頭状腫瘍を下部胆管から乳頭部に認めた.総胆管のみ拡張し,主膵管の拡張は認めず,下部胆管癌と診断し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では囊腫状に拡張した総胆管の主膵管への合流を認め,2 cmの共通管を有する膵胆管合流異常症と診断した.膵頭部主膵管から共通管に主座を置き,管内を進展し,総胆管内および乳頭部に突出している腫瘍が観察された.病理組織学的には樹枝状・乳頭状構造を呈する好酸性細胞を認め,膵管内乳頭粘液性腺癌oncocytic typeと診断した.膵管内乳頭粘液性腫瘍のうちoncocytic typeはまれな亜型であるが,膵胆管合流異常を合併した1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 加藤 健宏, 小木曽 清二, 小林 建仁, 加藤 一夫
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は83歳の女性で,子宮脱にて膣式子宮全摘の既往がある.発熱にて救急外来を受診した.身体所見上,下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,腹部造影CTにて骨盤内に内部に気泡を伴い左卵巣動静脈と連続する囊胞性病変を認めた.注腸造影検査では,直腸から瘻孔を介し囊胞内腔が造影された.瘻孔からバルーンカテーテルを挿入し膿瘍のドレナージを行い,炎症は数日で軽快した.大腸内視鏡下で瘻孔部の粘膜生検を行い卵巣癌と診断した.以上より,左卵巣癌直腸浸潤・卵巣内膿瘍の術前診断にて,入院2週間後に手術を施行した.術中所見は,左卵巣が硬く腫大し直腸前面に浸潤していた.ハルトマン・両側付属器切除術にて腫瘍をen-blocに摘出した.病理組織学的検査所見はendometrioid carcinomaの直腸浸潤・直腸穿通であった.術後14日目,合併症なく補助化学療法目的に婦人科転科した.術後6か月現在,再発なく術後補助化学療法中である.
臨床経験
  • 波多 豪, 川西 賢秀, 永井 健一, 畑 泰司, 森田 俊治, 藤田 淳也, 岩澤 卓, 赤木 謙三, 堂野 恵三, 北田 昌之
    原稿種別: 臨床経験
    2013 年 46 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/01/17
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     症例は75歳の男性で,胸部食道癌T3N2M0 cStage IIIに対し,術前化学放射線療法施行後,食道癌根治術を行った.経口摂取開始後よりドレーン排液の白濁を認め,乳縻胸と診断した.絶食,TPN管理を開始し, lipiodolリンパ管造影,再開胸下での胸管結紮術,octreotide acetate投与を試みるも,排液量減少は得られなかった.第30病日よりetilefrine投与を開始すると徐々に排液量は減少し,第55病日に胸腔ドレーンを抜去した.Etilefrine投与中止後も胸水増加は認めなかった.食道癌術後合併症として乳縻胸の発生はまれであるが,確実な治療法がなく,治療に難渋することが少なくない.今回,我々はetilefrine投与によって治癒した症例を経験した.術後難治性乳縻胸に対するetilefrine投与は,本邦での過去の報告例はなく,試みられるべき効果的な治療法と考えられた.
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