日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
46 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
症例報告
  • 宇高 徹総, 山本 澄治, 遠藤 出, 久保 雅俊, 水田 稔, 宮谷 克也
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 717-724
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     非血友病患者で胃癌周術期に第VIII凝固因子インヒビターが出現したために,術後に腹腔内出血,胸腔内出血の治療に難渋した1例を経験したので報告する.患者は69歳男性で,黒色便にて入院.PTは12.4秒と正常であったがAPTTは50.9秒と延長していた.出血性胃癌の診断で幽門側胃切除術を施行した.術翌日と7日目に腹腔内出血にて止血術を,8日目に両側胸腔内出血にて胸腔穿刺ドレナージ術を施行した.凝固検査でAPTTが著明に延長しており,第VIII凝固因子活性が11.6%と低下していた.そこで第VIII因子製剤を投与したが,第VIII凝固因子活性が上昇せず,第VIII因子インヒビターが5 BU/mlと出現していた.プレドニゾロンの投与で腹腔内,胸腔内出血は漸減し軽快退院した.第VIII凝固因子インヒビター出現による出血傾向は本症例のような重篤な出血傾向を呈することが多く,本疾患に対する認識と迅速な対応が必要であると思われた.
  • 渡邉 克隆, 久世 真悟, 京兼 隆典, 高木 健裕, 馬場 聡, 河崎 秀陽
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 725-733
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は65歳の男性で,発熱のため近医を受診し,精査目的で当院に紹介となった.血液検査では,高度の炎症反応上昇と胆道系酵素の上昇を認めた.造影CTで肝左葉は著明に萎縮し,左肝管内に肝内結石を認め,その上流側の肝内胆管拡張を認めた.肝S1に6 cm大の多房性病変を認めた.MRIではT1で低信号域,T2では内部に液体成分の貯留を疑う著明な高信号域を伴った不均一な等~高信号域を認めた.炎症反応が高値のため,抗生剤治療を施行した.抗生剤治療後の造影CTでは,腫瘤は最大6 cm大が4 cm大に縮小し,内部の液体成分も著明に縮小した.以上の  検査所見から,肝炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor;以下,IPTと略記)を疑ったが,肝萎縮を伴う肝内結石を伴っていたため,肝左葉尾状葉切除を施行した.病理組織学的検査では紡錘形細胞の増生とマクロファージの浸潤,リンパ球を中心とした高度の炎症性細胞浸潤を認め,IPTと診断した.
  • 吉本 裕紀, 田中 明, 安部 俊弘, 藤川 貴久, 多田 誠一郎, 前川 久継, 下池 典広, 西山 光郎
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 734-741
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は78歳の男性で,胆石・胆囊炎にて紹介となった.2年前より腎不全にて持続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis;以下,CAPDと略記)中であったが,自尿は1,000 ml/日程度認められていた.手術当日の朝CAPD透析液を排出し手術室に入室,腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy;LC)を施行,創部は全て2層に密に閉創した.術後経過は良好で翌日から食事摂取を開始し,第3病日より半分の透析液量でCAPDを再開した.透析液量を漸増し,第5病日には通常量になったため血液透析(hemodialysis;以下,HDと略記)を施行することなく第6病日に退院となった.術後2年経過する現在まで合併症なくCAPDも順調に施行できている.CAPD患者においても,閉創法,透析液の開始量などの工夫を行えば,症例によっては術後HDを回避でき,早期にCAPDを再開できる可能性が示唆された.
  • 隈本 力, 橋本 雅司, 佐々木 一成, 貝田 佐知子, 的場 周一郎, 松田 正道, 黒柳 洋弥, 宇田川 晴司, 渡邊 五朗, 井上 雅 ...
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 742-750
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は70歳の女性で,食欲不振を主訴に近医受診した.胆道癌による閉塞性黄疸の診断で当院紹介された.CTで不整な胆囊壁肥厚を認め,それと連続し上部胆管から下部胆管にかけて充満する腫瘍を認めた.組織診では神経内分泌細胞癌の診断で,開腹全層胆囊摘出術,肝外胆管切除,肝管十二指腸吻合術を施行した.病理組織学的検査所見では神経内分泌細胞癌(synaptophysin,chromogranin A陽性,MIB-1 index 70%),WHO分類2010では大細胞神経内分泌細胞癌の診断であった.進行度は,T1(fm,pHinf0,pBinf0,pPV0,pA0)N0H0P0M(–)Stage Iの早期癌であり,術後14か月無再発生存中である.胆囊の神経内分泌細胞癌はまれで,予後は極めて不良である.本邦における早期の胆囊神経内分泌細胞癌は本症例が2例目であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 岡田 尚也, 中村 文隆, 中村 透, 高田 実, 安保 義恭, 樫村 暢一, 篠原 敏也
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 751-758
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は16歳の男性で,腹痛と発熱を主訴に2007年12月当院外来を受診した.心窩部から右下腹部にかけての圧痛と腹部膨満および腹膜刺激症状を認めた.CT上右腎上縁から骨盤内にかけて29×14 cmの隔壁に造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた.保存的加療を行うも,炎症反応増悪し,感染を合併したリンパ管囊腫の診断で緊急手術を施行した.手術所見で,骨盤内に多房性で弾性軟の腫瘤を認め,腫瘍の発生部位が小腸間膜であることを確認し,腫瘍摘出術と空腸部分切除を施行した.術後経過は良好で,術後13日目に退院した.青年期における小腸腸間膜リンパ管腫は比較的まれな疾患で,術前診断は困難である.急性腹症の一つとして念頭におき,迅速な治療が必要である.
  • 渡邉 雄介, 中原 千尋, 河田 純, 大薗 慶吾, 鈴木 宏往, 宮竹 英志, 井上 政昭, 石光 寿幸, 吉田 順一, 篠原 正博
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 759-768
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は86歳の男性で,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)血栓症に対する血栓溶解療法・抗凝固療法を誘引として発症したコレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による腸閉塞に対し,単孔式腹腔鏡下手術(single incision laparoscopic surgery;以下,SILSと略記)を施行した.CCEによる腸閉塞はまれであり,これに対し単孔式を含めた腹腔鏡下手術を施行した報告はない.本症例に対しSILSを安全に施行するうえで,術前の閉塞部位の同定とイレウス管による腸管の減圧などが有効であった.今後,インターベンション治療や抗凝固療法の増加に伴いCCEの罹患数は増加するものと考えられ,一般消化器外科医もこの疾患の存在を認識することが重要である.また,本症例のようにCCEはSMA血栓症などの致死的な疾患を背景として発症する可能性のある疾患であり,外科的治療を考える際には低侵襲な単孔式を含めた腹腔鏡下手術も治療選択肢としてあげられると考えられた.
  • 長尾 美津男
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 769-776
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     小腸癌切除1年後に腹直筋転移を来した症例を経験したので報告する.症例は70歳の女性で,2009年12月小腸癌のため空腸部分切除を施行した.病理組織学的検査所見は中分化型腺癌(se,ly2,v0,n1)であった.2011年5月右下腹部痛が出現し,同部位にピンポン玉大の腫瘤が出現した.FDG-PETの結果,孤立性の腹直筋転移と診断し,腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的検査所見では横紋筋に浸潤する中分化型腺癌が認められ,小腸癌の腹直筋転移と診断した.腹直筋転移切除後1年6か月経過しているが無再発生存中である.小腸癌が腹直筋にのみ転移を来した症例は極めてまれな症例であり,文献を含めて報告する.
  • 野中 健一, 浅井 竜一, 安福 至, 富田 弘之, 松橋 延壽, 廣瀬 善信, 高橋 孝夫, 山口 和也, 長田 真二, 吉田 和弘
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 777-783
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は70歳の男性で職場の検診で下部消化管内視鏡検査を施行し上行結腸バウヒン弁対側に大きさ15×8 mm,肉眼型0-IIc型の病変を認めた.当院での下部消化管内視鏡検査で腫瘍陥凹部にVIおよびVN pit patternを認め,超音波内視鏡検査では第4層の途絶を認めた.CTを施行したところNo. 202リンパ節に転移を疑わせる腫大を認めた.腹腔鏡下回盲部切除および3群リンパ節郭清を施行したが,術後の病理組織学的検索にて口側断端近くの漿膜下リンパ管浸潤を認めたため,追加切除を施行した.切除腸管に腫瘍細胞の残存は認めなかった.腫瘍が小型であっても0-IIc型の大腸癌はde novo発癌であることが多く脈管侵襲を来しやすい.また,本症例は術前CTで中間リンパ節に転移が疑われており,リンパ管への浸潤傾向が強かったことが考えられる.このような症例は回腸も腫瘍から十分な距離を離して切離すべきであると考えられた.
  • 渡邉 武志, 正木 忠彦, 藤原 愛子, 松木 亮太, 松岡 弘芳, 阿部 展次, 森 俊幸, 杉山 政則, 大倉 康男
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 10 号 p. 784-790
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     大腸癌は通常肝臓や肺への血行性転移が多く,所属外リンパ節への転移はまれである.今回,我々は初回手術後1年目に胃小彎リンパ節に孤立性転移を来した直腸癌症例を経験した.症例は68歳の男性で,2型の進行直腸癌に対して2010年10月直腸超低位前方切除術ならびに側方郭清を含めた3群リンパ節郭清を施行された.病理組織学的検査所見は腺扁平上皮癌,Rb,2型,30×30 mm,pA,pN2(11/38),sH0,sP0,sM0,Stage IIIbであった.術後CA19-9値が上昇してきたことより全身検索を行ったところ胃小彎リンパ節の腫大を認め,2012年3月開腹リンパ節摘出術を施行した.病理組織学的検査所見で扁平上皮成分を主体とする腫瘍細胞を認め直腸癌からの胃周囲リンパ節転移と診断された.補助化学療法はCapeOX療法を選択し,術後6か月の時点で再発兆候を認めていない.
臨床経験
  • 石井 文規, 山内 靖, 乗富 智明, 石塚 賢治, 林 博之, 鍋島 一樹, 山下 裕一
    原稿種別: 臨床経験
    2013 年 46 巻 10 号 p. 791-797
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/10/11
    ジャーナル フリー HTML
     症例は59歳の女性で,幼少時より鼻出血を繰り返し,数回の赤血球輸血を受けていた.9年前より慢性C型肝炎を指摘され近医で経過観察されていた.今回,肝S6に径4 cm大の腫瘍を指摘され当科紹介となった.家族歴と血液検査結果よりvon Willebrand病(von Willebrand disease;以下,vWDと略記)患者に発生した肝細胞癌と診断した.凝固因子補充療法のガイドラインに従い,activated partial thromboplastin time(APTT)を指標として血液凝固第VIII因子(blood clotting factor VIII;以下,F VIIIと略記)製剤の投与後に肝部分切除術を施行した.術後第1病日より8日間のF VIII製剤の補充を行い,術後経過良好にて第13病日に退院となった.v WD病患者においてもF VIII製剤の補充を行うことで安全に肝切除を施行した症例を報告する.
feedback
Top