日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 3 号
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症例報告
  • 遠藤 俊治, 宮崎 知, 道清 勉, 山田 晃正, 奥山 正樹, 福地 成晃, 酒田 和也, 小西 健, 山内 周, 西嶌 準一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は65歳の男性で,右鼠径部腫瘤を自覚し当院を紹介受診した.13年前に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行し,病理組織学的検査では低分化腺癌t2(ss)n0M0 stage Ib(胃癌取扱い規約12版)であった.6年前に右後頭部皮膚転移に対し切除術および放射線治療の既往がある.右鼠径部に径3 cm大の弾性硬,可動性良好の腫瘤を触知した.頸胸腹部造影CTでは右鼠径部に27×25×12 mm大のリンパ節腫大を認めた.他に明らかな転移を指摘できなかった.局所麻酔下に右鼠径部リンパ節摘出生検を行った.病理組織学的検査で転移性腺癌と診断され,13年前の胃癌の転移として矛盾しない所見であった.胃癌の皮膚転移,鼠径リンパ節転移は,終末期にはしばしば見られるものの,単独転移は極めてまれで,胃切除後7年,13年を経た転移は非常に珍しい再発形式である.文献的考察を加え報告する.
  • 大島 稔, 上村 淳, 宮井 由美, 岡野 圭一, 羽場 礼次, 鈴木 康之
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 167-174
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は79歳の女性で,食欲低下,嘔吐,黄疸を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸腫瘍が疑われ,加療目的で当院に入院となった.十二指腸腫瘍は巨大であり,上部消化管通過障害に対して胃管挿入を,閉塞性黄疸に対して経皮経肝胆道ドレナージを施行した.さらに,十二指腸腫瘍部から出血を繰り返したため,主病変切除のために膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本で十二指腸に隆起した腫瘤を認め,腫瘍の一部は膵臓に浸潤していた.病理組織学的検査で腺癌成分と充実性に増殖する肉腫様成分が混在してみられ,十二指腸原発癌肉腫と診断された.十二指腸原発の癌肉腫は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 山野 武寿, 池田 義博, 仁科 拓也, 村嶋 信尚, 中山 文夫, 松本 剛昌, 伏見 聡一郎, 飽浦 良和
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は56歳の女性で,腹部膨満と貧血を主訴に来院された.腹部MRIで出血を伴う巨大卵巣囊腫と術前診断され,緊急開腹手術を施行したところ卵巣腫瘍ではなく巨大後腹膜腫瘍であり,穿破部からの腹腔内出血を認めた.出血性ショック状態であったため,腫瘍をサンプリングし,穿破部位を縫縮により止血し,手術を終了した.病理組織学的検査でgastrointestinal stromal tumorと診断された.腫瘍縮小後の切除を期待してメシル酸イマチニブ投与を開始した.内服開始後12日目に腫瘍が十二指腸腔内に穿通したため,腫瘍と十二指腸の一部を切除した.腫瘍は,十二指腸原発と病理組織学的検査で診断され,急速な腫瘍壊死が穿通の原因と考えられた.メシル酸イマチニブ投与に際しては,まれに消化管穿孔・穿通を経験するので,注意深い経過観察が必要である.
  • 浅野 史雄, 野尻 和典, 武田 和永, 松山 隆生, 谷口 浩一, 熊本 宜文, 秋山 浩利, 田中 邦哉, 益田 宗孝, 遠藤 格
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;以下,CABGと略記)において,右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEAと略記)はしばしばグラフトとして使用される.RGEAを使用したCABG後の上腹部手術では,グラフト損傷を引き起こす可能性があり,術前のグラフト走行の把握と慎重な手術手技が必要である.我々は,RGEAグラフトによるCABG後に肝細胞癌を発症した症例を経験した.症例は75歳の女性で,4年前に心筋梗塞に対しRGEAを用いてCABGを施行され,腹部超音波検査で肝外側区域に原発性肝癌を認めた.グラフトは腫瘍前面を走行しており,損傷に注意しながら肝外側区域部分切除術を施行した.周術期の合併症発生はなかった.心機能やグラフトの術前評価にmultidetector row CTと心筋シンチグラフィが有用であり報告する.
  • 松本 知拓, 伊関 丈治, 京田 有介, 大場 範行, 高木 正和, 渡辺 昌也, 大端 考, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 菊山 正隆
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     慢性肝炎を合併した胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術後に難治性の腹水貯留を認め,腹水検査の結果肝性リンパ漏と診断し手術的にリンパ漏閉鎖を行いえた症例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,胆石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術後に保存的治療ではコントロールできない難治性の腹水貯留が発生した.腹水検査の結果,肝性リンパ漏と診断し術後5か月目に縫合閉鎖を施行した.肝硬変や慢性肝炎を伴う胆石症に胆囊摘出術を施行した際の合併症の一つに腹水の貯留があるが,通常は保存的治療で軽快する.しかし,極めてまれではあるが難治性の場合があり,リンパ管切離部からの肝性リンパ液の漏出に起因することがあるため,腹水検査で原因を明らかにすることが重要である.肝硬変や慢性肝炎を合併した患者の胆囊摘出術に際しては術後の合併症として肝性リンパ漏を念頭におく必要がある.
  • 松下 克則, 森本 脩邦, 元木 祥行, 岡野 美穂, 足立 真一, 平尾 隆文, 竹内 真, 福崎 孝幸, 柴田 邦隆
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は47歳女性で,糖尿病にて当院内科フォロー中であった.スクリーニング目的の腹部USで膵頭部にmassを認め,PET-CTで同部位にSUV max 3.8の集積を認めた.また,MRCPでは膵頭部において主膵管は途絶しており,その末梢で主膵管の拡張を認めた.膵臓癌cT1N0M0 Stage Iの診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理組織学的診断はintraductal tubulopapillary neoplasm(以下,ITPNと略記)であった.術後合併症もなく,2年6か月経過した現在,再発は認めていない.ITPNは膵管内腫瘍に分類される新しい疾患概念で,非常にまれであり,通常型膵臓癌やその他の膵管内腫瘍との鑑別が重要である.
  • 沖田 充司, 藤村 昌樹, 千野 佳秀, 田畑 智丈, 水谷 真, 下代 玲奈, 舛田 誠二, 佐藤 功, 飯田 稔, 熊野 公束
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は46歳の女性で,腹痛を主訴に近医を受診し,腸閉塞の診断でイレウス管が挿入された.原因不明で,症状が改善しないため入院加療後12日目に当院紹介となり,手術を施行した.腹腔鏡で観察すると,回腸が上行結腸に強固に癒着していたため,閉塞解除が困難で原因の診断も困難であった.開腹に移行し,回盲部切除と上行結腸との癒着小腸を部分切除した.摘出標本と病理組織学的診断で上行結腸の腸間膜付着部異常窩に小腸が嵌頓した内ヘルニアと診断した.術後は順調に経過し術後第14病日に退院した.上行結腸間膜に生じた異常窩に小腸が嵌頓したまれな内ヘルニアの1例を経験したので文献考察を踏まえ報告する.
  • 磯崎 哲朗, 大平 学, 首藤 潔彦, 宮内 英聡, 松崎 弘志, 青山 博道, 河野 世章, 夏目 俊之, 神戸 美千代, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 210-216
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は47歳の女性で,卵巣癌の診断で両側付属器切除術を施行した.病理組織学的検査でsignet-ring cell carcinomaを認め,消化管からの転移が疑われた.下部内視鏡検査で虫垂に杯細胞カルチノイドを認め手術を施行した.腹膜播種を認めたが原発巣切除および診断のため回盲部切除を施行した.病理組織学的検査所見で杯細胞カルチノイドの組織像を背景に低分化腺癌への移行が認められた.最終診断はWHO分類のmixed carcinoid-adenocarcinomaであった.術後経過は良好で化学療法を行い18か月現在生存中である.Mixed carcinoid-adenocarcinomaは杯細胞カルチノイドから発生した腺癌であるが杯細胞カルチノイドとの境界は明記されてなく混同して扱われていると考えられ,杯細胞カルチノイドの本邦報告例を検討した.
  • 金井 俊平, 谷口 正展, 北村 美奈, 長門 優, 岡内 博, 中村 一郎, 中村 誠昌, 下松谷 匠, 丸橋 和広
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は76歳の女性で,便潜血反応陽性を指摘され精査目的の下部消化管内視鏡検査で下行結腸にI p型ポリープを認めた.過形成性ポリープの診断でポリペクトミーを施行したが,切除標本の大部分に低分化腺癌と粘液癌を認め,切除断端が陽性であったため,追加腸切除を施行した.また,術前画像所見より大動脈周囲リンパ節転移を疑い,大動脈周囲リンパ節郭清も同時に施行した.切除腸管に腫瘍細胞の遺残は認めなかったが大動脈周囲リンパ節転移陽性のため,最終診断はadenocarcinoma por2,muc>tub2 type 0-Ip,pSM(>5,000 μm),int,INFb,ly0,v1,M1 Stage IVであった.今回,この特徴的な内視鏡所見を呈した病変が粘膜下層深部へ浸潤し,さらには遠隔リンパ節転移を来した要因を病変の割面形態,および病理組織学的検査所見との関係から若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中村 謙一, 北上 英彦, 早川 哲史, 山本 稔, 田中 守嗣, 伊藤 誠
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 3 号 p. 224-231
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/20
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     症例は62歳の男性で,増大する左側腹部腫瘤と同部の疼痛を主訴に当科を紹介受診した.CT,MRI所見で左腎を圧排する150 mm×110 mm大の腫瘤を認め,後腹膜悪性軟部腫瘍を疑い手術を施行した.腫瘍は左腎と一塊となり腹側で下行結腸と癒着していたため,下行結腸を部分切除し左腎とともに切除した.病理組織学的検査所見で後腹膜原発のmyxofibrosarcoma(以下,MFSと略記)と診断した.術後37か月目に腹腔内で急速に増大する腫瘍を認め,MFSの再発と診断し腫瘍を摘出した.その4か月後に腹腔内に6か所の腫瘍再発を認め全て摘出した.その後,補助化学療法としてMAID療法(MESNA+ADM+IFM+DTIC)を施行し,最終手術から4か月目現在で無再発である.MFSは中高年の四肢に好発するが,今回非常にまれである後腹膜原発のMFSの1例を経験したので報告する.
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