日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 4 号
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原著
  • 今村 一歩, 藤田 文彦, 川上 悠介, 川原 大輔, 三島 壯太, 井上 悠介, 金高 賢悟, 高槻 光寿, 黒木 保, 江口 晋
    原稿種別: 原著
    2013 年 46 巻 4 号 p. 237-242
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     目的:近年,生理的瘢痕である臍を利用した腹腔鏡手術が報告されており,当科においても2010年1月より腹腔鏡補助下大腸切除術の第一トロカー挿入に臍切開法を導入した.この切開法では術後,臍切開部に浸出液貯留を認める症例をいくつか経験したため,創部感染の有無についてsurgical site infection(以下,SSIと略記)の観点より検討を行った.対象:2007年12月から2012年2月に行われた腹腔鏡下大腸切除術100例を対象とした.方法:臍周囲を切開した50例をA群,臍部を切開した50例をB群とし,術後創部からの浸出液の有無を検討した.また,B群のうち2011年5月以降の症例の20例については執刀直前に臍部より細菌培養を行い,術後も浸出液の有無にかかわらず培養検査を行い感染源の同定を試みた.結果:A群4例(8%),B群9例(18%)に術後創部からの浸出液を認めた.B群にて術後創部の培養を行ったもののうち1例にて浸出液を認め,細菌培養結果陽性であった.しかし,術前の培養にて陽性であった症例ではいずれも術後培養では陰性という結果であった.また,検出菌に関しては全て皮膚常在細菌であり術中の大腸切除手術操作に伴うSSIは認めなかった.結語:臍切開法はSSIの観点から問題なく,整容面においても優れた手技であると考える.
症例報告
  • 徳毛 誠樹, 大橋 龍一郎, 治田 賢, 久保 孝文, 岡 智, 山川 俊紀, 泉 貞言, 小野田 裕士, 鈴鹿 伊智雄, 中村 聡子
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 243-252
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は78歳の女性で,嚥下障害を主訴に2004年12月に内科を受診した.食道造影検査で胸部中部食道に長径約3 cmの狭窄を認め,上部消化管内視鏡検査では門歯から約28~30 cm部に狭窄を認めたが,粘膜面に腫瘍性変化は認められなかった.原因不明の食道狭窄としてバルーン拡張が実施され,症状は一時改善するも再燃を繰り返すため合計5回のバルーン拡張が実施された.その後も症状が再燃し持続するため,2006年8月に狭窄部へ食道ステントが留置された.しかし,食物残渣の貯留によるステントの閉塞と前胸部から心窩部にかけての持続する疼痛を認めるようになり,通過障害の根本的改善ならびに疼痛改善目的での手術加療を希望され外科受診となった.2006年9月に全身麻酔下に食道抜去・後縦隔経路の胃管再建,腸瘻造設を行った.切除標本の病理組織学的検討で狭窄部に一致して類上皮血管内皮腫が認められ,食道狭窄の原因であったと考えられた.
  • 清水 尚, 小川 哲史, 田中 俊行, 五十嵐 隆通, 榎田 泰明, 富澤 直樹, 安東 立正, 坂元 一葉, 伊藤 秀明, 竹吉 泉
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は64歳の女性で,2008年9月,進行胃癌の診断で,幽門側胃切除,D2郭清術が施行された.病理学的進行度はStage IIIAであった.術後,S-1内服を開始したが,薬疹の出現によりUFT/PSK併用に変更し,1年間内服した.2009年9月,肝S8に造影CT平衡相で低吸収域を示す腫瘍を認め,2010年9月のCTでは約10 mm程度にまで増大していた.MRIで胃癌肝転移が疑われたが,FDG-PETで明らかな異常集積は認められず,肝生検を施行したところ,印環細胞様に見える細胞内血管腔を認め,CK20陰性,CD31・CD34はともに陽性を示し,類上皮血管内皮腫と診断された.肝S8部分切除術を施行し,病理組織学的検査所見は生検と同様の所見であり,複数の箇所で門脈浸潤を認めた.術後経過は良好で,術後11病日に軽快退院となった.1年5か月経過した現在,転移再発はなく,外来で経過観察中である.
  • 神賀 貴大, 高見 一弘, 阿部 友哉, 富永 剛, 海野 倫明, 玉橋 信彰
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 260-267
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は76歳の男性で,前日の夕食後に出現した腹痛が増強し,救急外来を受診した.腹部CTおよびMRCPにて胆囊の腫大を認め,肝臓と脾臓の周囲に少量の腹水が貯留していた.急性胆囊炎の診断にて腹腔鏡下胆囊摘出術を行った.腹腔全体に胆汁の貯留を認めたが,胆囊からの明らかな胆汁の流出はなかった.術中胆道造影では主膵管が造影され,潜在的膵液胆道逆流現象の存在が示唆された.肉眼所見で胆囊粘膜は発赤を呈して顆粒状で粗造であったが,明らかな穿孔はなかった.病理組織学的検査では体部から底部の広い範囲に腺管とRokitansky-Aschoff sinus(以下,RASと略記)の上皮に強い異型が生じていた.間質への浸潤はなく,早期胆囊癌の診断となった.本症例は漏出性胆汁性腹膜炎の1例であり,漿膜下層までの進展にしたRASによる壁の菲薄化に逆流膵液の組織障害が加わることで壁構造が破綻して胆汁が漏出したと考えられた.
  • 徳永 尚之, 稲垣 優, 木村 裕司, 北田 浩二, 岩垣 博巳, 柳井 広之
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 268-274
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は75歳の男性で,右側腹部痛を主訴に他院受診され,腹部超音波検査(US)・CTにて急性胆囊炎を疑われ当院紹介となった.造影CTにて胆囊体部を中心に全周性壁肥厚と胆囊外への膿瘍形成が認められ,緊急胆囊摘出術が施行された.病理組織学的検査所見では異型細胞の存在が確認され,中分化~低分化型腺癌の一部に合胞状栄養膜細胞類似の多核細胞が認められた.免疫染色検査にてもhuman chorionic gonadotropin(以下,HCGと略記)が陽性を示したことから絨毛癌の混在と診断された.pT2N1M0:Stage IIIとの結果をうけ肝切除および追加リンパ節郭清の必要性を考慮し早期の再手術に踏み切ったが,既に腹膜転移・多発肝転移の出現により根治切除は不可能で約4か月で永眠された.胆囊原発の絨毛癌は非常にまれで極めて予後不良とされている.当院で経験した急速な転帰をたどった胆囊原発絨毛癌の1例を報告する.
  • 江川 紀幸, 井手 貴雄, 甲斐 敬太, 三好 篤, 北原 賢二, 能城 浩和
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は77歳の男性で,腎盂腎炎で近医入院中に,腹部CTで胆囊腫瘍を疑われ,当科を紹介された.進行胆囊癌と診断し,肝S4a+5切除,胆囊切除,胃部分切除,D2リンパ節郭清術を施行した.切除標本では胆囊粘膜には腫瘍性病変は認めず,胆囊底部に胆囊腺筋腫症と思われる粘膜下腫瘍様の隆起を認め,肝臓および胃へ直接浸潤していた.病理組織学的には腫瘍細胞は肉腫様形態を示し,免疫組織学的にcytokeratin 7陽性,vimentin陽性で肉腫様癌と診断された.背景の胆囊には,底部型の胆囊腺筋腫症を認め,Rokitansky-Achoff sinusがその発生母地である可能性が示唆された.Gemcitabineによる術後補助化学療法を施行し,現在術後20か月無再発生存中である.胆囊の肉腫様癌はまれな組織型で,胆囊腺筋腫症がその発生母地と考えられた報告例はこれまでなく,文献的考察を加えて報告する.
  • 奥村 徳夫, 藤井 努, 石川 忠雄, 山田 豪, 末永 雅也, 竹田 伸, 小寺 泰弘
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 282-288
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は66歳の男性で,CTにて腫瘍径3.0 cmの上腸間膜静脈浸潤をともなう膵頭部癌と診断した.上腸間膜動脈神経叢浸潤が疑われたため,術前補助化学療法(GEM+S-1併用療法)を施行する方針とした.1クール終了後に貧血で来院,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸穿通部からの出血を認めた.クリッピングとトロンビン散布にて止血が得られたが,抗癌剤による腫瘍変性からの出血を疑い術前化学療法は中止し,止血から6日後に膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査所見では穿通部に腫瘍細胞の壊死を認め,化学療法の効果によるものと推察された.第24病日に退院し,術後補助化学療法としてGEM単剤の投与を施行したが,再発を来し術後9か月で永眠された.膵癌に対する術前治療が広まりつつあり,今後,本症例のような穿孔・穿通などのoncologic emergency の機会は増加するものと予想される.
  • 脇山 幸大, 中村 淳, 浦田 雅子, 古賀 靖大, 池田 貯, 能城 浩和
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 289-294
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は66歳の男性で,1年6か月前に進行胃癌に対して,腹腔鏡下胃全摘術・D2リンパ節郭清・脾臓摘出術・Roux-en Y再建(overlap法)を施行した.外来での経過観察中に,心窩部痛が出現し当科を受診した.腹部造影CTを施行したところ,拡張した小腸の縦隔内への脱出を認め,壁の一部は造影効果に乏しく虚血が疑われた.以上の所見より,食道裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.術中所見では,空腸空腸吻合部より肛門側の小腸が,横行結腸を乗り越えて,開大した食道裂孔左側から縦隔内へ脱出しており,絞扼による腸管壊死が疑われた.腹腔鏡下に脱出小腸を腹腔内に還納後,小開腹下に壊死腸管を切除再建した.腹腔鏡下胃全摘術後に発生した内ヘルニアの報告は少なくないが,食道裂孔ヘルニア嵌頓による絞扼性イレウスは比較的まれであるため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 竹内 大輔, 小出 直彦, 奥村 征大, 鈴木 彰, 宮川 眞一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 295-301
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     患者は25歳の女性で,妊娠22週に右季肋部痛が出現し,当院産科を受診した.腹部CTでは,回盲部は頭側へ圧排され,虫垂は腫大し周囲脂肪織への炎症の波及を認めた.急性虫垂炎の診断にて虫垂切除術を施行した.病理組織学的検査では蜂窩織炎性虫垂炎の所見であった.また,切除標本にて虫垂の先端に径7 mmの結節を認め,病理組織学的には類円形の核を有する異型細胞の増殖を認めた.免疫染色検査にて虫垂神経内分泌腫瘍(G1)と診断された.腫瘍細胞は固有筋層まで浸潤を認めたが,脈管侵襲は認めなかった.妊娠36週に陣痛の発来を認め,帝王切開術を施行した.この際,虫垂神経内分泌腫瘍の腹膜播種およびリンパ節転移の検索のために術中洗浄細胞診,回結腸動脈リンパ節のサンプリングを行い,迅速病理診断に提出したが,結果はいずれも陰性であった.妊娠22週に虫垂炎を契機に発見された虫垂神経内分泌腫瘍の1例を報告した.
  • 橋本 直樹, 小林 純哉, 原 倫生, 本田 勇二, 石川 仁, 竹吉 泉
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 4 号 p. 302-309
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     症例は80歳の女性で,下血を主訴として近医を受診した.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に易出血性病変を認めた.精査加療目的で当科に入院した.下部消化管検査を再検し,生検を行ったところ扁平上皮癌が疑われた.全身検索の結果,他臓器原発の病変は認められず,悪性腫瘍の既往もないことから,S状結腸原発扁平上皮癌の診断で手術を施行した.腫瘍の小腸浸潤を認め,S状結腸切除,小腸合併切除および人工肛門造設術を施行した.腫瘍内部には壊死による内腔形成があった.病理組織学的検査で一部に角化を認め,腺癌成分は認めず,扁平上皮癌と診断した.術後に局所再発が出現し,術後1年3か月で死亡した.大腸原発の悪性腫瘍は肛門管・下部直腸を除くと,そのほとんどが腺癌であり,結腸原発の扁平上皮癌は極めてまれである.文献的考察を加え報告する.
臨床経験
  • 酒井 朗子, 藤井 義郎, 近藤 千博, 大谷 和広, 千々岩 一男
    原稿種別: 臨床経験
    2013 年 46 巻 4 号 p. 310-316
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/04/09
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     他の肝機能検査が正常でありながらインドシアニングリーン15分血中停滞率(indocyanine green retention rate at 15 minutes;以下,ICGR15と略記)のみ異常高値を示す体質性ICG排泄異常症(constitutional ICG excretory defect;以下,CIEDと略記)の疑われる患者に肝細胞癌(hepatocelluar carcinoma;以下,HCCと略記)が発生した場合,術前肝機能評価に難渋する可能性がある.今回,我々はICGR15が高度異常(60%以上)を示すもChild-Pugh grade Aで,術前からCIEDが疑われたHCC手術症例4例を経験した.それぞれICGR15は60.6,72.0,78.8,96.6%であった.全例術後肝不全を起こすことなく経過した.若干の文献的考察を加え報告する.
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