日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 7 号
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原著
  • 沼田 幸司, 土田 知史, 吉田 達也, 大佛 智彦, 米山 克也, 笠原 彰夫, 山本 裕司, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    原稿種別: 原著
    2013 年 46 巻 7 号 p. 477-486
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     目的:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa’s dementia scale. Revised;以下,HDS-Rと略記)と周術期合併症のリスク評価法であるestimation of physiologic ability and surgical stress(以下,E-PASSと略記)の術後せん妄発症予測に対する有用性について検討した.方法:術前にHDS-Rによる評価を行った65歳以上の消化器手術症例72例.術後にE-PASSの各スコアを算出し,術後せん妄の有無で2群に分けretrospectiveに比較検討.結果:術後せん妄は19.4%(14/72例)に発症.発症群では非発症群より年齢が高く,performance status(PS)2以上・American Society of Anesthesiologists(ASA)3以上が多く,小野寺らの予後栄養指数(prognostic nutritional index;PNI)・HDS-Rが低値,E-PASSの総合リスクスコアが高値であった(P<0.05).単変量解析で有意差を認めた項目で多変量解析を行った結果,HDS-Rと総合リスクスコア(comprehensive risk score;以下,CRSと略記)(Odds比0.77,30.3,P=0.0031,0.0237)が術後せん妄発症の独立したリスク因子であり,HDS-R 23点以下かつCRS 0.35以上の患者の術後せん妄発症は83.3%(10/12例)と高率であった.結語:HDS-RとE-PASSは高齢者の消化器手術後せん妄発症の予測因子として有用である.
症例報告
  • 金丸 理人, 小泉 大, 志村 国彦, 笹沼 英紀, 俵藤 正信, 佐田 尚宏, 安田 是和
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 487-493
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     症例は70歳の男性で,2008年9月,近医での血液検査にて肝機能障害を指摘され,精査目的に当科紹介受診し,膵管内乳頭粘液性腫瘍intraductal papillary-mucinous neoplasm(IPMN)と診断された.2009年6月,脾温存膵体尾部切除術(spleen-preserving distal pancreatectomy;SPDP)を施行した.術後第25病日に,ドレーンからの出血を認め,膵液瘻による胃十二指腸動脈瘤の破裂を認め,血管塞栓術を行い,術後第66病日で退院した.2009年11月(術後5か月),腹部CTを施行したところ,胃静脈瘤が描出された.上部消化管内視鏡検査でも穹隆部に孤立性の胃静脈瘤(Lg-cf,F2,Cb,RC(–))を確認できた.SPDP術後に脾静脈が閉塞し,孤立性胃静脈瘤が発生した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 千堂 宏義, 金治 新悟, 仁和 浩貴, 押切 太郎, 小南 裕明, 川崎 健太郎, 田中 賢一, 前田 裕己, 藤野 泰宏, 富永 正寛
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 494-501
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     今回,我々は悪性リンパ腫の寛解期に発生し,急速に増大する経過を経時的に観察しえた低悪性度の肝粘液状腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は33歳の男性で,当院血液内科にて悪性リンパ腫で治療され,寛解状態であった.その経過観察中のCTで肝臓に径1.2 cmの低吸収腫瘤を認めた.約7か月間で肝腫瘍は5.0×4.6 cmと増大し,悪性腫瘍の可能性が否定できず,肝右葉切除術を施行した.摘出肝重量は700 gで,腫瘍径は6.5×6.5×5.0 cm,腫瘍割面は淡黄色透明様の充実性腫瘍であった.病理組織学的診断にて極めてまれな肝原発の低悪性度粘液線維肉腫と診断された.術後約2年が経過したが再発は認めていない.
  • 岸 真也, 高橋 伸, 森瀬 昌樹, 米山 公康, 竹下 利夫, 中野 浩, 大坪 毅人
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 502-508
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     症例は78歳の女性で,閉塞性黄疸治療目的に入院となり,肝門浸潤を伴う進行胆囊癌の診断にて術前門脈右枝塞栓術を施行後に肝右葉切除+肝外胆管切除を予定して手術に臨んだ.しかし,術中に腹膜播種を認めたため,切除を断念して左肝管上流側に肝管空腸側々吻合を施行した.術後経過は良好で合併症なく退院.その後も大きなトラブルもなく約1年半にわたり,自宅にて通常の日常生活が可能であった.肝門部悪性腫瘍による黄疸の治療は切除不可となれば難渋する場合も少なくなく,ステント挿入ではひとたびトラブルを発症すると効果が十分に得られなくなる場合もある.左肝管に対しての胆道バイパス術は有効な減黄治療となりえる可能性が示唆された症例であると思われた.
  • 野中 隆, 永田 康浩, 釘山 統太, 渡邊 健人, 朝長 哲生, 徳永 隆幸, 蒲原 行雄, 伊東 正博, 藤岡 ひかる
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 509-514
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     症例は42歳の男性で,健診による腹部CTで肝門部腫瘤を指摘され当院に紹介入院となった.腫瘤は境界明瞭で均一に造影され,膵頭部上縁に存在し,総肝動脈・固有肝動脈に接していた.その他,血液生化学検査,上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかった.悪性リンパ腫などの悪性疾患の可能性も否定できず,治療方針決定のため腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った.病理組織学的検査所見では,腫瘍は異型性を認めず,リンパ球主体の濾胞増生と血管増生からなり,Castleman病(hyaline vascular type)と診断された.Castleman病は原因不明のリンパ増殖性疾患で,縦隔や肺に好発し,膵上縁の後腹膜に発生する症例は少ない.治療においては,周囲臓器の切除やリンパ節郭清は不要で,腫瘤摘出により診断されれば良好な予後が期待されるため,腹腔鏡手術はよい適応になると考えられた.
  • 井村 仁郎, 宮田 完志, 湯浅 典博, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 服部 正興, 川合 亮佑, 小林 陽一郎, 藤野 雅彦, 伊藤 茂樹
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 515-523
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     症例は40歳の女性で,膵体部の腫瘤性病変の精査のため当院を受診した.超音波検査では膵体部に点状高エコーを伴う境界の比較的明瞭な低エコー腫瘤を認めた.造影CTでは膵体部に造影効果を有する径10 ‍mmの腫瘤を認め,また腫瘤より尾側の膵のCT値は–80 HUで内部に索状構造を認めたため膵体尾部脂肪置換と診断した.臨床所見,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診所見から低悪性度病変を疑い,腹腔鏡下膵中央切除を施行した.尾側膵との消化管吻合は行わなかった.膵体部の腫瘤には病理組織学的に線維化,リンパ球浸潤,石灰化を認め,限局性膵炎と診断された.術後に膵内分泌・外分泌機能低下を示唆する所見を認めなかった.自験例では膵管閉塞を認めたが尾側膵に循環障害を示唆する所見はなく,脂肪置換の成因は膵管閉塞と推定される.
  • 竹内 聖, 堀 志郎, 藤田 尚久, 森 誠治, 因藤 春秋, 前場 隆志
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 524-529
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     今回,我々は長期生存中の非機能性膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor;以下,pNETと略記)複数肝転移の1例を経験したので報告する.患者は51歳の男性で,11年前に膵体尾部の非機能性pNET G2,Stage IIの診断で膵体尾部切除術を受けた.術後8年目にCTで肝S4とS5/6に2か所の再発を認め,肝中央二区域切除術を施行した.病理組織学的検査所見で核分裂像数が<1(/10HPF),Ki-67指数が8%で,非機能性pNET G2の肝転移再発と診断した.肝切除後3年の現在,無再発生存中である.pNET肝転移は治癒切除することで長期予後が望めることから積極的に手術を行うべきと考えられた.
  • 谷田部 沙織, 中島 紳太郎, 羽生 健, 藤田 明彦, 山形 哲也, 諏訪 勝仁, 岡本 友好, 小村 伸朗, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 530-537
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     症例は68歳の女性で,便潜血の精査目的で大腸内視鏡検査を施行したところ,虫垂開口部から盲腸内腔に露出する直径約15 mm大の隆起性病変を認めた.生検鉗子で同部を牽引すると腫瘍が盲腸内に反転して,その形態が虫垂粘膜に基部をもった有茎性ポリープと判明した.基部が虫垂内であったため内視鏡切除は施行せずに生検のみを行い,高分化型腺癌の診断に至った.以上より,早期虫垂癌と診断して腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.原発性虫垂癌は比較的まれな疾患であり,特異的症状に乏しく,早期診断が困難であることから腹腔内腫瘤や癌性腹膜炎など進行癌の状態で発見されることが多い.今回,我々は術前に大腸内視鏡検査で有茎性ポリープの形態をとった早期虫垂癌と診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 蘆田 良, 坂東 悦郎, 近藤 潤也, 徳永 正則, 谷澤 豊, 川村 泰一, 絹笠 祐介, 金本 秀行, 上坂 克彦, 寺島 雅典
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 538-546
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
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     胃癌術後の横行結腸軸捻転症に対し内視鏡下に整復しえた症例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,進行胃癌に対し,胃全摘,脾摘,D2郭清およびRoux-en-Y再建術(結腸前)を施行した.第5病日に腸閉塞と診断し絶飲食管理を開始した.その後も状態は改善せず,第7病日に腹部造影CTで脾彎曲での結腸の狭窄を認め,口側の横行結腸の捻転を認めたため,横行結腸軸捻転症と診断した.腹膜刺激症状を認めなかったためイレウス管を挿入し,経過を観察した.その後も上行結腸の拡張は改善を認めなかったため,第10病日に大腸内視鏡検査を施行した.脾彎曲で狭窄と粘膜の螺旋状の集中像を認めたが,血流障害を示唆する所見はなく内視鏡下に整復を行った.整復後の経過は良好で第21病日に退院した.術後12か月軸捻転の再発なく経過している.周術期に横行結腸の腸閉塞を認めた場合には,頻度は低いものの本疾患を念頭におく必要がある.
  • 長谷川 康弘, 黒田 房邦, 竹村 真一, 川口 桂
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 7 号 p. 547-553
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー HTML
     症例は48歳の男性で,腹痛を主訴に前医を受診した.腹部超音波検査で肝腫瘍が疑われ,精査加療目的に当院紹介となった.腹部超音波検査で肝臓に接する境界明瞭な径約5 cmの病変を認めた.腹部造影CTでは漸増型の弱い造影効果を示す腫瘤を認めた.PETでは同部位に高度集積を認めた.腫瘍マーカーはCEA,CA19-9,AFP,PIVKA-IIともに正常範囲内であった.以上より,肝腫瘍あるいは後腹膜悪性腫瘍,gastrointestinal stromal tumor が疑われ,腫瘍摘出術を行った.病理組織学的検査では免疫染色検査でcalretinin,cytokeratin 5/6,D2-40,AE1/AE3は陽性で,CEA,cytokeratin 20は陰性であった.以上より,悪性腹膜中皮腫と診断された.術後経過は良好で術後9か月経過時点で無再発生存中である.
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