日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 8 号
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症例報告
  • 新原 正大, 佐藤 弘, 眞栁 修平, 後藤 裕信, 寺島 雅典, 坪佐 恭宏
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 555-563
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     症例は71歳の男性で,2011年8月に嚥下時違和感を主訴に前医を受診し,頸部超音波検査を施行したところ甲状腺腫瘤を認め,当院頭頸部外科に紹介となった.穿刺吸引細胞診にて食残を認めたため食道憩室が疑われ当科紹介となった.食道造影および頸部CT所見よりKillian-Jamieson憩室(以下,K-J憩室と略記)と診断した.手術を希望されたため,2012年5月に手術を施行した.手術は左頸部に切開をおき,甲状腺左葉を授動して左反回神経を同定し,頸部食道を露出した.憩室の同定に難渋したが,術中内視鏡を施行することで同定が可能であった.憩室起始部まで慎重に剥離し,発生部位はKillian-Jamieson部位であることを確認した.甲状腺腫瘍との鑑別を要した,比較的まれなK-J憩室を経験したので報告する.
  • 岩崎 健一, 寺島 秀夫, 久倉 勝治, 佐野 直樹, 宮本 良一, 稲川 智, 大河内 信弘
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 564-572
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     症例は63歳の男性で,食事のつかえ感と体重減少を主訴に来院した.胸部下部食道に2型病変を,胃上部小彎には0-IIa病変を認め,病理組織学的検査所見はそれぞれ扁平上皮癌,高~中分化型腺癌であった.右側大動脈弓はCT画像の分析により,Edwards分類Type IIIBであることが判明した.術前診断は,胸部下部食道癌がcT3N2M0,cStage III,胃癌がcT1bN0M0,cStage IAとなった.術前化学療法の後に,左開胸開腹食道亜全摘術,3領域リンパ節郭清,高位胸腔内食道胃吻合を行った.術前の十分な画像診断により左反回神経の温存と安全な脈管処理を達成できた.右側大動脈弓の解剖学的な位置関係を鮮明な術中画像により供覧するとともに,再建経路と右反回神経周囲リンパ節郭清に関する諸問題に関して考察を行った.
  • 谷岡 利朗, 川村 秀樹, 高橋 昌宏
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 573-578
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     胃全摘術後の食道空腸吻合部縫合不全の治療として,内視鏡下にクリッピングを試み良好な結果を得たので報告する.症例は63歳の男性で,食道裂孔ヘルニアの合併を認めた.検診発見の体上部小彎の早期胃癌に対して2010年10月に腹腔鏡下胃全摘術を施行した.吻合は25 mm circular stapler(OrVilTM)を用いた.術後に38.5°Cの発熱があり,4日目のルーチンの消化管造影で食道空腸吻合部から縦隔への造影剤の漏出を認めた.直ちに内視鏡を施行し,約1 cmの縫合不全部が確認され,Lサイズのクリップ3本で閉鎖した.縦隔内の膿瘍はCTガイド下にドレナージを行った.クリッピング後20日目より食事を開始し,術後33日目に退院した.胃空腸吻合部の縫合不全に対する内視鏡下クリッピングによる治療報告は少ないが,有効な治療法となりえると考える.
  • 徳安 成郎, 遠藤 財範, 吉本 美和, 渡邊 浄司, 坂本 照尚, 奈賀 卓司, 広岡 保明, 堀江 靖, 池口 正英
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 579-585
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     患者は69歳の男性で,かかりつけ医での血液検査で肝胆道系酵素の上昇を認め,精査・加療目的に当院へ紹介となった.精査の結果,右肝管優位で肝門部胆管に15 mm大の腫瘍を認め,生検にて神経内分泌細胞癌と診断された.左内側枝胆管(B4)にも浸潤があり,肝予備能も合わせて評価した結果切除不能と判断し,CPT-11:70 mg/m2(day 1,day 15)とCDDP:80 mg/m2(day 15)を28日毎,合計3クール施行した.その結果,腫瘍は9 mm大に縮小し,左肝管への浸潤も消失したため,尾状葉切除を含む拡大右葉切除術,2群リンパ節郭清,胆管空腸吻合術にて根治手術を施行しえた.肝門部原発の神経内分泌細胞癌はまれな疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 岡村 裕輔, 名取 健
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 586-593
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     症例は59歳の男性で,2008年12月,右腎細胞癌にて右腎摘出術を施行された.2010年12月,CTで右肺結節と胆囊腫瘤を認めた.腎細胞癌肺転移の診断でインターフェロンα治療を施行したが,胆囊腫瘤は徐々に増大傾向であった.2011年11月,急性胆囊炎を発症した.造影CTで胆囊頸部に動脈相で強く造影され,平衡相でwashoutされる35 mm大腫瘤が認められ,腎細胞癌胆囊転移を疑った.肺転移巣が安定しており,胆囊炎のため手術適応とし,原発性胆囊癌を否定できなかったため拡大胆囊摘出術を施行した.胆囊頸部に60 mm大の脆弱で軟らかい腫瘤が認められ,病理組織学的検査所見は腎細胞癌胆囊転移であった.また,腫瘍表面に血腫が付着し,胆囊内に血性胆汁が充満しており,腫瘍からの出血が疑われた.腎細胞癌は多彩な臓器に転移することが知られており,胆囊転移の報告もあるが,文献的報告例は48例のみである.
  • 二川 康郎, 三澤 健之, 柴 浩明, 北村 博顕, 石田 祐一, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 594-602
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     今回,我々は膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下,PDと略記)を施行した肝硬変(liver cirrhosis;以下,LCと略記)合併症例2例を報告する.(症例1)74歳の男性(B型肝炎でChild-Pugh 6点(Grade A))で,下部胆管癌症例であった.術後8日目に上腸間膜静脈内血栓を生じ,術後15か月でChild Pugh score 7点(Grade B),肝細胞癌に対しTAIを2回施行した.(症例2)77歳の女性(輸血後C型肝炎でChild-Pugh 5点(Grade A))で,ファーター乳頭部癌にて PD,脾臓摘出術を施行した.術後約2か月間全身管理に難渋,術後12か月で Child Pugh score 8点(Grade B),難治性腹水を生じた.LC合併症例にPDを施行する際,術中出血量増加,門脈血栓,LCの非代償化など重篤な合併症が生じる可能性あり,手術適応に対する慎重な判断と注意深い術後管理が必要と考えられた.
  • 渡邊 祐介, 奥芝 俊一, 宮坂 大介, 佐々木 剛志, 海老原 裕磨, 川田 将也, 川原田 陽, 北城 秀司, 加藤 紘之, 宮田 康邦
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 603-610
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     心血管疾患の既往のない54歳の女性の上腸間膜動脈閉塞症(superior mesenteric artery occulusion;以下,SMAOと略記)に対して緊急手術を行った.回腸中心に広範な虚血所見を認め,壊死範囲を正確に判断することが困難であった.このため上腸間膜動脈閉塞部の血栓除去後にindocyanine green(以下,ICGと略記)蛍光血管造影を施行し,血流の確認できない回腸末端側40 cmのみを切除した.血栓症の原因精査からループスアンチコアグラント陽性,抗β2グリコプロテインI抗体陽性の抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome;以下,APSと略記)と診断し,抗血小板薬による抗凝固療法を行った.術後3年が経過するが血栓症の再発は認めていない.腸管切除を最小限にとどめるため,自験例で使用したICG蛍光血管造影は切除範囲の決定に有用であった.APSに随伴するSMAO 16例と関連文献の考察から,心血管疾患の既往がない場合はAPSを念頭に抗血栓療法を継続することが重要である.
  • 中島 正夫, 内山 哲史, 足立 淳, 内迫 博幸, 田中 慎介
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 611-617
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     症例は62歳の男性で,イレウスを発症し当院受診した.CTで直腸腫瘤による閉塞性イレウス,直腸膀胱瘻を疑い緊急手術(確定診断が付かず人工肛門造設術のみ)を施行した.術後各種検査を施行し直腸憩室炎による直腸狭窄,直腸膀胱瘻と診断し慎重に経過観察(抗菌薬,消炎鎮痛薬内服)を行った.経過観察中直腸膀胱瘻の軽快を認め,初回手術5か月後に根治術を施行した.直腸と膀胱の癒着は予想より軽度であり,直腸膀胱瘻の残存も認めず,狭窄部に対する直腸部分切除術のみという縮小手術にとどめることができた.病理組織学的診断は直腸憩室炎による直腸膀胱瘻であった.直腸憩室炎による直腸膀胱瘻は非常にまれな疾患であるが,良性疾患であるため可及的に手術侵襲を抑えることが重要となる.直腸膀胱瘻の原因が憩室炎である場合は一時的人工肛門を造設し病変部の安静を保ち,保存的加療を行うことにより二期的手術時の侵襲を軽減できる可能性が示唆された.
  • 関野 康, 小出 直彦, 石曽根 聡, 得丸 重夫, 宮川 眞一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 618-625
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     ヒルシュスプルング病(Hirschsprungs disease;以下,HDと略記)は腸管壁内神経叢の先天的欠如により頑固な便秘を来す疾患で,術後の大腸癌の報告はまれである.HD術後の大腸癌2例を経験した.【症例1】52歳女性で,18歳時にHD手術を施行された.不正性器出血を主訴に受診した.直腸から膣に浸潤する腺癌と診断し,後方骨盤内臓全摘術を施行した.病理組織学的検査所見では吻合部に発生し,嵌入した粘膜に沿って浸潤した腺癌と診断された.術後局所再発を認め化学療法を施行している.【症例2】56歳男性で,4歳時にHD手術を施行された.腰痛精査でのMRIで仙骨前面に腫瘤を認め,内視鏡下生検で粘液癌と診断された.仙骨浸潤のため切除不能であり,化学療法を施行している.2症例ともHDにDuhamel変法が施行されていた.吻合部近傍に発生し,大腸癌としては非典型的な壁外発育型の大腸癌症例であった.
  • 石上 俊一, 北口 和彦, 花本 浩一, 浦 克明, 平良 薫, 大江 秀明, 吉川 明, 白瀬 智之, 土井 隆一郎
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 8 号 p. 626-633
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/08/09
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     患者は56歳の男性で,2010年4月に下腹部有痛性腫瘤で受診した.腹部造影CTで骨盤腔に径6 cmの囊腫性病変が2個あり,造影効果のある充実成分を一部に認め,手術を施行した.大網に血管増生著明な大小の集簇性囊腫性病変が多発し回腸浸潤が疑われ,大網と回腸の部分切除を施行した.免疫組織学的検査で腺様腫瘍(adenomatoid tumor;以下,ATと略記)を伴う良性多囊胞性腹膜中皮腫(benign multicystic peritoneal mesothelioma;以下,BMPMと略記)と診断された.ATとBMPMの合併例は珍しく,これまで本例以外に4件の報告しかなかった.BMPMは切除が原則だが再発率が高く,悪性転化やリンパ節転移の報告もある.本例は再発巣切除後にpaclitaxel(PTX)を導入し24か月が経過したが,現在まで再々発は認めていない.
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