日本消化器外科学会雑誌
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47 巻, 12 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 菅生 貴仁, 山田 晃正, 奥山 正樹, 長岡 慧, 中川 朋, 金 致完, 平岡 和也, 小西 健, 遠藤 俊治, 西嶌 準一
    原稿種別: 原著
    2014 年 47 巻 12 号 p. 743-754
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     目的:当科では2010年12月から播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;以下,DICと略記)に対してヒトリコンビナント・トロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin;以下,rTMと略記)を使用しており,消化器外科周術期に発症した腹部疾患が原因の敗血症性DICに対するrTMの有効性を検討した.対象・方法:2007年以降,周術期に腹部疾患が原因で敗血症性DICを発症した43例を対象とし,rTM群(n=23)とnon-rTM群(n=20)に分類し retrospectiveに比較検討した.結果:rTM群はほとんどの症例でrTM+AT併用療法が施行されていた.DIC scoreはrTM群がday 3で有意に改善しておりnon-rTM群と比較して早期に改善していた.Systemic inflammatory response syndrome score(SIRS score)はnon-rTM群では有意に改善しなかったが,rTM群はday 5で有意に改善していた.Sequential organ failure assessment score(SOFA score)はday 7でrTM群がnon-rTM群と比較して有意に改善していた.白血球数,CRP,T. Bilはnon-rTM群がday 0と比較して有意に高値を示していた.rTM群はICU入室期間が有意に短縮しており,発症後30日目以内の生存率において有意な改善を認めた.結語:rTMは,全身の微小循環を早期に改善させることで臓器障害の進行を抑制し,短期予後を改善する可能性があり,腹部疾患に関連した敗血症性DICに対するrTM投与は有用であると考えられた.
症例報告
  • 渡邊 真哉, 山口 竜三, 伊藤 哲, 笹本 彰紀, 會津 恵司, 林 友樹, 井田 英臣, 金井 道夫, 立山 尚
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 755-761
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は75歳男性で,4年前にstage IIIAの進行胃癌に対し胃全摘術を施行した.術後4年目のCTで膵体部近傍の脾静脈に約1.5 cmの陰影欠損像が出現し,術後4年7か月のCTで門脈本幹まで進展した.腫瘍性病変も否定できずFDG-PETを施行したところ膵体部に異常集積を示した.CT,MRIでは膵臓には明らかな腫瘍影を指摘できなかった.また,MRCPでは脾静脈内の陰影欠損近傍の主膵管に2 cmの狭窄像を認めた.門脈内腫瘍塞栓を伴う膵癌または胃癌膵転移を疑い胃癌術後4年8か月目に膵体尾部脾合併切除,門脈内腫瘍塞栓摘出術を施行した.膵体部に門脈内腫瘍塞栓と連続した3 cmの腫瘍を認め,胃癌と同様の中分化型腺癌で胃癌膵転移と診断した.また,胃癌と膵腫瘍の免疫染色検査でも胃癌膵転移として矛盾しない所見であった.術後S-1で補助化学療法を行い,7か月経過しているが再発を認めていない.
  • 森田 剛文, 坂口 孝宣, 海野 直樹, 木内 亮太, 武田 真, 平出 貴乗, 柴崎 泰, 鈴木 淳司, 菊池 寛利, 今野 弘之
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 762-767
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     幽門側胃切除後の膵体尾部切除・脾摘術において,残胃温存の可否に関していまだ結論は出ていない.近年,術中indocyanine green(以下,ICGと略記)蛍光造影が臓器血流評価に有用とする報告が増えている.今回,我々は幽門側胃切除既往症例の膵体尾部切除・脾摘術において,術中ICG蛍光造影による残胃血流評価を行った後に,残胃を温存した症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,25歳時に胃潰瘍に対して幽門側胃切除を施行された.心窩部痛を契機に膵体部癌を指摘された.術前画像診断では左右胃動静脈と右胃大網動静脈は前回手術時に切離されていると思われた.左胃大網動静脈,短胃動静脈,脾動静脈を切離した後のICG蛍光造影にて,食道側や小網側から残胃血流が維持されていることを確認し,残胃を温存した.術後軽度の膵液瘻を認めたものの,11病日に軽快退院した.
  • 平井 隆二, 山野 寿久, 黒田 雅利, 吉富 誠二, 高木 章司, 池田 英二, 辻 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 768-775
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     十二指腸乳頭部癌は他の胆・膵癌に比較して予後良好な症例が多いが,中には術後早期に全身転移を来す予後不良な症例も報告されている.我々はそのような1例を経験したので報告する.患者は64歳の男性で,黄疸を主訴とし入院した.腫瘤潰瘍型の十二指腸乳頭部癌で,#13a,#14dリンパ節転移陽性を疑った.術前生検で未分化癌組織を含む低分化型腺癌と診断されたが,根治手術可能と判定し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.pT3,pN2,M(−),fStage IVaであった.術後7週目に多発性肺・肝転移を続発し,術後2か月で癌死した.病理組織学的検査では未分化癌組織を多く含む低分化管状腺癌と診断された.自験例を含む低分化型腺癌本邦報告8切除例中,3例が術後6か月以内に再発死亡していた.術後急速に遠隔転移を来し再発死亡する十二指腸乳頭部癌を術前に選別することができれば,不要な手術を回避できると思われた.
  • 吉田 優子, 味木 徹夫, 岡﨑 太郎, 松本 拓, 村上 冴, 篠崎 健太, 福本 巧, 友野 絢子, 原 重雄, 具 英成
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 776-782
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     肝内結石症に合併した広範進展型肝内胆管癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,12年前より近医にて肝内結石症で経過観察中に総胆管結石を指摘され当院へ紹介された.腹部CT・MRCPにて肝右葉の著明な萎縮と,同部に多数の肝内結石および総胆管結石を認めるも,明らかな腫瘍性病変は認めなかった.内視鏡的逆行性胆管造影検査施行時に右肝管に狭窄を認め,同部の擦過細胞診にて腺癌を検出し,右肝管主体の肝門部胆管癌と診断した.2012年2月肝右葉切除術を施行した.術後病理組織学的検査にて,切除標本内の大型胆管から末梢の細胆管に至るまで広範に進展した上皮内癌がみられたが,右肝管切離断端は癌陰性であった.肝切離面に一部上皮内癌の露頭を認めたが周囲組織への浸潤はなかった.術後24か月の現時点で再発の徴候は認めていない.
  • 松本 敏文, 平下 禎二郎, 原 貴生, 久保 信英, 廣重 彰二, 折田 博之
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 783-789
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は34歳の男性で,突然の臍周囲痛を主訴に当科受診した.右下腹部に圧痛と筋性防御を認め,腹部CTで臍部右側に鏡面像を有する5 cm大の液体貯留像を認めた.腹腔内膿瘍もしくは小腸の絞扼を疑い緊急開腹手術を施行した.手術所見ではバウヒン弁から90 cmの回腸腸間膜対側に存在する憩室の頂部に索状物を有し,腸間膜とブリッジを形成し口側小腸が内ヘルニアを形成していた.索状物を切離すると内ヘルニアは容易に解除でき憩室のみが基部で捻転し壊死に陥っていたために,憩室を含む回腸部分切除を施行した.病理組織学的には真性憩室でMeckel憩室と診断し,索状物はmesodiverticular bandと判断した.Mesodiverticular bandによる内ヘルニアが起因となり嵌入する小腸に伴ってMeckel憩室茎捻転を来した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 平野 利典, 坂下 吉弘, 宮本 勝也, 藤本 三喜夫, 横山 雄二郎, 小林 弘典, 村尾 直樹, 岡田 健司郎, 中井 志郎
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 790-795
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は87歳の女性で,腹痛,嘔吐を主訴に当院内科を受診した.開腹胆囊摘出術の既往歴あり.腹部単純X線検査で拡張した小腸と鏡面像あり,イレウスの診断で入院となった.腹部CTでは回盲部近傍に狭窄を伴うsac-like appearanceを呈する小腸ループ像を認め,術後の癒着や内ヘルニアが疑われた.イレウス管による保存的加療が行われたが,症状は改善するものの閉塞は解除されず,第9病日当科紹介となり緊急手術を行う運びとなった.術中所見では,回腸末端の腸間膜後葉の欠損孔をヘルニア門として口側回腸が嵌入しており,小腸間膜内ヘルニアと診断した.用手的に小腸を整復し,腸管切除は行わず欠損孔を縫合閉鎖した.術後経過は良好で,術後13日目に退院となった.小腸間膜内ヘルニアは内ヘルニアの中でも非常にまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 今井 健晴, 須原 貴志, 櫻谷 卓司, 古田 智彦
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 796-805
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は73歳,女性で,急な上腹部痛と嘔気を主訴に,当院を受診した.受診時に腹部は全体に膨隆し,軽度の圧痛を認めた.腹部造影CTでwhirl signを認め,小腸軸捻転と診断した.また,右下腹部に結腸が見られず,whirl signに巻き込まれていたことから,腸回転異常が背景にあると考えた.腸管の血流は保たれているものの,腸管の浮腫や腸間膜の脂肪織輝度の上昇も見られたことから,同日に緊急手術とした.術中,小腸が時計軸方向へ720°の軸捻転をしており,捻転を解除した.解除後の腸管の血色は良好であったため腸管切除は施行しなかった.盲腸は後腹膜との固定がない遊離盲腸であった.Treitz靭帯から30 cm肛門側の空腸に5 cm程の腫瘤が見られたため切除した.遊離盲腸と空腸重複腸管が併存した小腸軸捻転症について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 川本 裕介, 長久 吉雄, 藤澤 真義, 岡部 道雄, 河本 和幸, 佐野 薫, 朴 泰範, 伊藤 雅
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 806-813
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は48歳男性で,持続する悪心,嘔吐を主訴に当院に紹介受診された.来院時,上腹部に圧痛を認めた.造影CTで空腸の腸閉塞および異所性膵が疑われ,入院後経鼻胃管を挿入して減圧した後,待期的手術の方針とした.術中所見ではトライツ靱帯から約5 cm遠位側の空腸に約3 cm大の腫瘍を認め,その約30 cm肛門側の腸間膜に癒着し,そこに空腸が入り込み腸閉塞を起こしている状態であった.癒着を切離して閉塞を解除した後,小開腹下に空腸部分切除術を行った.術後経過は良好で術後6日目に退院された.病理組織学的検査所見はHeinrich I型の異所性膵であった.症状を来す空腸異所性膵はまれであり,その多くは腸重積が原因とされている.症状を呈した小腸異所性膵についての文献的考察を加えて報告する.
  • 堅田 朋大, 桑原 史郎, 登内 晶子, 眞部 祥一, 須藤 翔, 岩谷 昭, 横山 直行, 山崎 俊幸, 橋立 英樹, 渋谷 宏行
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 814-820
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は50歳の男性で,発熱,左下腹部痛,血便を主訴に入院した.腹部CTにて回腸に径35 mm大の高吸収域腫瘤を認め,手術を施行した.腸管内に露出した小腸腫瘍と近傍の腹膜に結節性病変を認め,小腸および腹膜部分切除を行った.病理組織学的検査では好酸球や好中球の著明な浸潤を伴う線維芽細胞様紡錘形細胞の増殖を認め,免疫組織化学でvimentin・anaplastic lymphoma kinase・alpha-smooth musle actin陽性から多発inflammatory myofibroblastic tumor(以下,IMTと略記)と診断した.術後,自覚症状は速やかに改善したが,1か月後に症状が再燃した.腹部CTにて吻合部近傍に小腸腫瘍を認め,小腸部分切除を施行した.病理組織学的検査では初回摘出病変と類似の所見を認め,IMTの遺残病変と考えられた.本邦において小腸多発IMTは極めてまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 塚本 俊太郎, 寺島 秀夫, 高橋 一広, 中野 順隆, 今村 史人, 丸森 健司, 神賀 正博
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 821-825
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     症例は78歳の女性で,17歳時に開腹虫垂切除術を受けて術後合併症なく経過した既往歴を有していた.70歳頃より虫垂切除時の手術瘢痕が時々発赤腫脹を呈することがあり,76歳時に自潰し便汁が漏出するようになった.腸管が徐々に突出し,約1年後には単孔式人工肛門に見えるような唇状糞瘻になった.便汁が主に便秘時に漏れ出すエピソードから,盲腸の末端部が唇状糞瘻を形成している可能性が示唆された.CTと糞瘻造影によって,その推測が裏付けられた.手術治療が行われ,虫垂切除後の手術瘢痕部に存在する径1 cm大のヘルニア門から脱出した盲腸壁を周囲皮膚とともに切除した.病理組織学的検査所見として大腸粘膜上皮と皮膚上皮の癒合が確認された.唇状糞瘻形成の機序として,70歳以前に既に小さな腹壁瘢痕ヘルニアが存在しており,70歳時に盲腸末端のRichter型嵌頓・壊死を来し,創感染の反復,糞瘻へ進展した可能性が考えられた.
  • 中安 靖代, 吉松 和彦, 中山 真緒, 矢野 有紀, 横溝 肇, 山口 健太郎, 塩澤 俊一, 島川 武, 勝部 隆男, 成高 義彦
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 826-831
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
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     遺伝性血管浮腫(hereditary angioedema;以下,HAEと略記)は,局所的な浮腫によって腹痛や呼吸困難などを起こす疾患で,気管内挿管が必要な全身麻酔における周術期管理において厳重な注意が必要とされている.今回,我々はHAEに併存した直腸カルチノイドの手術例を経験し,独自な周術期管理によって安全に低位前方切除術を施行したので報告する.症例は60歳の男性で,血便を主訴に当院を受診した.下部消化管内視鏡検査で直径20 mm大の直腸カルチノイドを認め,手術適応と判断した.原因不明の腹痛での入院歴およびHAEの家族歴があり,血清補体価,補体第一成分阻害因子(C1 inhibitor;以下,C1-INHと略記)活性低値よりHAEと確定診断した.術前にダナゾール,トラネキサム酸,C1-INH製剤を投与した後,硬膜外併用脊椎麻酔下に低位前方切除術を施行し,術後は浮腫発作なく良好に経過した.
  • 仲田 真一郎, 横山 元昭, 登内 昭彦, 志田 崇, 中村 純一, 宮崎 勝, 吉留 博之
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 12 号 p. 832-838
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル フリー HTML
     症例は79歳の女性で,健診にて便潜血陽性を指摘され精査を施行し,直腸癌の診断にて当科受診した.2013年9月腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術を施行した.術後第1病日より意識レベルの低下と低カリウム血症を認め,追加検査を施行し,リン・マグネシウムの低値を認め,臨床症状とあわせてrefeeding syndrome(以下,RFSと略記)を来したと考えられた.リン,マグネシウムを補充した後に全身状態の改善が見られた.RFSは一般的に飢餓状態への栄養投与により電解質,水分の不均等な状態となり意識障害,呼吸障害などが出現する病態であるが,近年では高齢者,癌患者におけるRFSも報告されている.RFSは多臓器障害へと進展することがあり,高齢者に対する悪性腫瘍手術が増加している近年では,本疾患も念頭に入れ術後管理を行うことが必要であると考えた.
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