日本消化器外科学会雑誌
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47 巻, 6 号
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原著
  • 工藤 克昌, 柴田 近, 武者 宏昭, 田中 直樹, 大沼 忍, 羽根田 祥, 神山 篤史, 中川 圭, 内藤 剛, 海野 倫明
    原稿種別: 原著
    2014 年 47 巻 6 号 p. 305-312
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     目的:今回,我々は胃癌手術症例に対して,術前controlling nutritional status(以下,CONUTと略記)法による栄養評価と術後合併症について検討を行ったので報告する.方法:当科にて胃癌の診断で手術療法を実施した178例のうち,術前にCONUT法により栄養評価を行った174例を対象とし,CONUT値3点以下をA群152例,4点以上をB群22例として2群に分け検討を行った.結果:手術時年齢はA群65.2±11.3歳,B群が71.6±6.7歳で,B群が高齢であった(P=0.009).進行度についてはstage IA・IBがA群109例に対し,B群は5例であった(P<0.0001).術後合併症は,A群で22例(14%),B群では9例(41%)に認められた(P=0.002).術後合併症のうち,遠隔臓器感染症はA群では4例(2.7%)に認められたのに対し,B群は4例(22.2%)であり(P=0.001),多変量解析では,危険因子として術前CONUT値と,臨床病期が抽出された.結語:胃癌手術症例において,術前のCONUT値が4以上の栄養障害を認める症例は合併症,特に遠隔臓器感染が多く認められた.
症例報告
  • 西田 久史, 波多野 悦朗, 冨山 浩司, 福光 剣, 瀬尾 智, 田浦 康二朗, 小倉 靖弘, 安近 健太郎, 上本 伸二
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 313-320
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     症例は40歳の男性で,全身倦怠感と腹部膨満を主訴に前医を受診した.CTにて下大静脈(inferior vena cava;以下,IVCと略記)と右房内に進展する腫瘍栓を伴うS7中心の肝細胞癌と診断された.入院時,肝静脈灌流障害による肝機能障害と腹水貯留を認め,直ちに肝動脈注入化学療法(5-FU+CDDP)を開始した.2クール後,CTにて原発巣と腫瘍栓の縮小を認め,肝機能障害の軽快を確認後,肝右葉切除・IVC腫瘍栓摘出術を施行しえた.術後経過は良好で,術後18日目よりソラフェニブ内服を6か月継続し術後27か月無再発生存中である.周術期の補助療法と外科切除の集学的治療が奏効し,長期生存の得られた1例を経験した.
  • 四倉 正也, 鈴木 慶一, 金田 宗久, 浅沼 史樹, 山田 好則
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 321-328
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     症例は42歳の女性で,健診の超音波検査で総胆管拡張を指摘され受診した.MRCPで総胆管は30 mmと拡張し,ERCPで主乳頭から造影される腹側膵管は盲端であった.副乳頭からは副膵管および背側膵管が造影され,拡張した総胆管と合流していた.腹側膵管と背側膵管の間に交通は見られなかった.膵・胆管合流異常と完全型膵管癒合不全の合併例と診断し,肝外胆管切除・肝管空腸吻合術を行った.病理組織学的検査所見上,悪性所見は認められなかった.発生論上胆道系は腹側膵原基と結合して生じるため,背側膵原基由来の副膵管とは交通しえない.何らかの理由で副膵管と胆道系が交通した場合でも,主膵管とも交通を有する例がほとんどである.器官形成時期に完全型膵管癒合不全が生じるとともに背側膵管と総胆管の交通が生じ,主膵管と交通する胆管が退縮途絶し,背側膵管と交通する胆管が残存した結果,自験例のような走行形態が形成されたと考察した.
  • 溝田 知子, 平野 聡, 野路 武寛, 松本 譲, 加藤 健太郎, 土川 貴裕, 七戸 俊明, 田中 栄一, 新田 健雄, 三橋 智子
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 329-336
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     膵癌に併存する囊胞性病変は多くの場合,術前にその成因を確定することが比較的容易である.今回,囊胞の成因の鑑別が困難であった大型の多発囊胞性病変を伴う膵体部癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳の女性で,CTにて膵体部の結節性病変と,それに接して存在する大型の多発性囊胞性病変を認めた.結節性病変は生検にて腺癌の診断を得たことから,囊胞性病変は大型化した癌性腺管あるいは貯留囊胞の可能性が考えられたが,確診には至らなかった.切除標本の病理組織学的検索では管状腺癌が隣接する囊胞壁に浸潤し,さらに連続して尾側の囊胞壁へと進展していた.囊胞内腔の大部分は腺癌細胞により裏打ちされており,膵癌が既存の多発囊胞の壁に浸潤し,囊胞腺癌のごとく内腔を裏打ちし,次第に増大したものと考えられた.囊胞性病変を伴う膵癌の切除時には癌の囊胞内進展の可能性も考慮に入れ,囊胞の取扱いを極めて慎重に行うべきと考えられた.
  • 向川 智英, 渡辺 明彦, 西口 由希子, 中谷 充宏, 松阪 正訓, 高 済峯, 石川 博文
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 337-343
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     症例は36歳の女性で,左下腹部腫瘤を主訴に当院を受診し,骨盤MRIで後腹膜腫瘍と診断された.SCC抗原が4.7 ng/mlと高値であったが,膀胱,尿管,子宮,卵巣に異常を認めなかった.手術所見で腫瘍は小骨盤腔左側を占居する囊胞性腫瘤で,一部に充実成分が存在し左内腸骨動静脈と左閉鎖神経を巻き込んでいたが,これらを温存して腫瘤を摘出した.充実成分は左閉鎖リンパ節の集塊で,左総腸骨,左外腸骨動脈沿いにもリンパ節腫大を認めたため左側方リンパ節郭清を行った.囊胞性腫瘤の病理組織学的診断は扁平上皮癌で,郭清したリンパ節も全て同じ組織型と診断された.囊胞性腫瘤を含め全てが転移で原発巣が潜在している可能性を考慮し,FDG-PETによる全身検索を行ったが明らかな原発巣を指摘できなかった.したがって,本症例は後腹膜の囊胞性腫瘤を原発巣としリンパ節転移を伴った扁平上皮癌と考えられた.
  • 青山 広希, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 服部 正興, 宮田 完志, 藤野 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 344-350
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     症例は86歳の女性で,50年前の妊娠時より左鼡径部の腫脹があったが2011年7月,左鼡径部腫瘤の痛みを主訴に当院を受診した.臨床的にイレウスを呈しなかったが,CTで左鼡径靭帯直下に内部が低吸収性の腫瘤を認め,これが腹腔内の腸管と連続していたため,大腿ヘルニア嵌頓と診断し緊急手術を行った.ヘルニア内容は小腸憩室で,この憩室は腸間膜対側に位置し,憩室固有の間膜を有していた.憩室の色調が不良であったため小腸部分切除・吻合を行い,McVay法によってヘルニア修復を行った.小腸憩室は組織学的に回腸に発生した腸管全層を有する真性憩室で,憩室固有の間膜をもっていたのでMeckel憩室と診断した.Meckel憩室をヘルニア内容とする大腿ヘルニアはイレウス症状に乏しく,発症からの経過が長いことがあり,発症後24時間以内に手術されることが少なく,壊死や穿孔を伴うことが多いので注意が必要である.
  • 富永 哲郎, 福田 大輔, 竹下 浩明, 黨 和夫, 阿保 貴章, 日髙 重和, 七島 篤志, 木下 直江, 永安 武, 澤井 照光
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 351-356
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     腸管子宮内膜症は,腸管で子宮内膜組織が異所性に増殖するまれな疾患である.症例は38歳の女性で,3か月前から腸閉塞症状を繰り返すため精査目的で当院へ紹介された.腹部造影CTで回盲部の腫瘤影と多発子宮筋腫を認めた.月経に随伴する腹部症状と,CA125の上昇より腸管子宮内膜症を疑い回盲部切除術を施行した.組織学的診断では回盲部に粘膜下層から漿膜下層にかけて子宮内膜組織の増生を認め,一部リンパ管侵襲を伴っていた.腸管子宮内膜症のリンパ行性進展を示唆する貴重な症例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 三宅 祐一朗, 長谷川 順一, 金 浩敏, 三方 彰喜, 清水 潤三, 金 鏞国, 廣田 昌紀, 相馬 大人, 三輪 秀明, 根津 理一郎
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 6 号 p. 357-363
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/07
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     症例は44歳の男性で,血尿,左腰背部痛を主訴に近医を受診し腹部CTにて左内腸骨動脈領域に55 mm,35 mm,直腸間膜内に32 mmの,いずれも石灰化を伴う計3個の腫瘤を指摘され紹介となった.鑑別疾患として悪性リンパ腫,間質系腫瘍,骨盤内腫瘍のリンパ節転移などが挙がったがCTにて直腸壁にも石灰化を認めたため,下部消化管の精査を施行し内視鏡検査で下部直腸に粘膜下腫瘤が認められた.生検で直腸カルチノイドと診断され側方リンパ節転移を伴う直腸カルチノイドと診断した.18F-FDG-PET/CTで骨盤内腫瘤3か所にFDGの集積を認め,それ以外に異常集積は認められなかった.内肛門括約筋切除術,左側方リンパ節郭清,回腸人工肛門造設術を施行した.最終病理組織学的検査にて側方リンパ節転移を伴う直腸カルチノイドと診断した.骨盤内腫瘤は直腸カルチノイドのリンパ節転移の可能性があり消化管の精査も必要であると考えられた.
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