日本消化器外科学会雑誌
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47 巻, 7 号
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原著
  • 本多 通孝, 比企 直樹, 布部 創也, 清川 貴志, 三浦 昭順, 錦織 達人, 草薙 洋, 大西 良浩, 脇田 貴文, 福原 俊一
    原稿種別: 原著
    2014 年 47 巻 7 号 p. 365-373
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     目的:上部消化管術後のQOLを測定する尺度としてGastrointestinal Symptom Rating Scale(以下,GSRSと略記)がしばしば用いられている.今回,術後患者の評価尺度としてのGSRSの妥当性を検証した.対象と方法:2012年6月から12月の期間,胃・食道術後患者を対象に横断的調査を行い,GSRSの各下位尺度得点(酸逆流,腹痛,消化不良,下痢,便秘)を評価した.併存的妥当性としてSF-12,known-groups妥当性として,術式,栄養学的指標,および上部消化管内視鏡検査との関連を評価した.結果:対象は325例,年齢中央値66歳,施行術式は食道切除109,胃全摘89,胃切除124,胃部分切除5例であった(重複あり).GSRSの得点は全項目で分布が偏っており,強い床効果を認めた.SF-12のサマリースコアとGSRSの相関係数は,腹痛と精神的側面のQOLスコアにおいて0.314であったが,その他の組み合わせは0.3以下であり,相関関係が強いとはいえなかった.BMI 18未満の群では腹痛のスコアが有意に高値であったが,その他の指標(術式,血清アルブミン値,内視鏡所見)のいずれにおいても有意な関連は認めなかった.まとめ:GSRSは上部消化管術後患者に対するQOL尺度としては計量心理学的妥当性が低く,臨床研究のアウトカムとしては不適切である.
症例報告
  • 近藤 昭宏, 橋本 希, 竹林 隆介, 諸口 明人, 山田 礼二郎, 岡田 節雄, 香月 奈穂美, 串田 吉生
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 374-380
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     症例は62歳の男性で,1991年に他院で胃癌に対する切除術の既往があった.1999年4月に腸閉塞で入院され,肝彎曲部の横行結腸と肝臓,胆囊,腹壁に浸潤した腫瘍を認め結腸右半切除術+肝臓,胆囊,腹壁合併切除術が施行された.病理組織学的検査所見で腫瘍は主として大腸壁外に存在し,組織型は印環細胞癌であった.その後,2000年10月と2003年2月に癌性腸閉塞の手術が施行された.手術は腸閉塞の部分と播種巣の可及的切除術が施行され,いずれも印環細胞癌であった.それぞれの術後に化学療法が施行された.最後に手術を施行した2003年から10年以上たった現在も再発を認めず経過観察中である.初回手術の胃癌も含め全て印環細胞癌で,粘液形質が胃型かつサイトケラチン7(+),20(–)であったため,今回の一連の経過は胃癌の腹膜播種再発として矛盾しないものと考えられた.胃癌として特異な経過と思われ文献的考察を含め報告する.
  • 宮本 昌武, 三澤 俊一, 桐井 靖, 高木 洋行, 太田 浩良
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 381-387
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     症例は73歳の男性で,右胸背部痛を主訴に受診しCTにて右第6肋骨に転移性骨腫瘍を指摘された.精査にて胃噴門部の1型胃癌,孤立性肋骨転移と診断した.導入治療としてS-1単剤による化学療法を施行し肋骨転移はcomplete responseとなったため,胃全摘,D2郭清を施行した.病理組織学的検査所見では中分化型腺癌,T1b (SM),int,INFb,ly (1),v (1),pN0,H0,P0,CY0であり,胃病変は癌遺残なしと判断し肋骨転移に対し放射線治療を追加した.治療開始後2年5か月,術後1年10か月経過した現在,再発・増悪所見を認めていない.導入化学療法が奏効したことが,本症例の無再発・無増悪で経過している要因と考えられた.
  • 香川 哲也, 上山 聰, 小林 達則
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 388-394
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     症例は66歳の女性で,胃癌に対し幽門側胃切除術を施行し,病理組織学的検査にて低分化腺癌,pT4a(SE),pN2,cM0,cP0,CY0,cH0,pStage IIICと診断された.術後6年3か月頃より臍部腫瘤を自覚し,同時期にCA19-9の急激な再上昇を認めた.臍部腫瘤は細胞診で悪性と診断され,画像検査にて他に原発巣・転移巣を疑う所見を認めず,胃癌の孤立性臍転移が強く疑われた.臍部腹壁全層切除術を施行し,切開創から腹腔鏡を併用して腹腔内を検索したが,P0,CY0であった.病理組織学的検査所見は,免疫染色検査を含め原発巣と類似し胃癌の転移巣と診断された.術後早期にCA19-9は正常化し,現在化学療法を行い経過観察中である.胃癌術後晩期の孤立性臍転移は極めてまれであるため,胃癌臍転移の本邦報告97例についての検討を含めて報告する.
  • 宮坂 大介, 山口 晃司, 山田 徹, 宮谷内 健吾, 松永 明宏, 新関 浩人, 須永 道明, 池田 淳一, 石津 明洋
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 395-402
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     肝孤立性壊死性結節は,中心壊死,硝子化線維性組織,弾性繊維を特徴とするまれな良性病変とされるが,術前診断困難で,発症機序も不明である.今回,胆管細胞癌などを疑ったが確診に至らず肝切除術を行い,肝孤立性壊死性結節と診断した1例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,他科でのCTで肝腫瘍影および肝胆道系酵素上昇を指摘され紹介となった.肝S4に3 cm弱の境界不明瞭な腫瘍影を認め,超音波で等エコー,MRIでT1WI低信号,T2WI高信号,造影CT,MRI,超音波では早期濃染を認めず,辺縁部に弱い造影効果を示した.他臓器に悪性所見を認めず,胆管細胞癌などを疑い肝内側区域切除術を施行したところ,病変部は肝孤立性壊死性結節,背景肝は原発性胆汁性肝硬変と診断された.11年前に肝S4に7 cm大の限局性結節性過形成もしくは炎症性偽腫瘍を疑う所見を指摘されていた経緯があり,あわせて報告する.
  • 岩崎 寿光, 福本 巧, 出水 祐介, 寺嶋 千貴, 藤井 收, 小松 昇平, 松本 逸平, 味木 徹夫, 不破 信和, 具 英成
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 403-409
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     症例は53歳の男性で,脱分化型後腹膜脂肪肉腫およびその局所再発に対して,3回の開腹手術が施行された.3回目の手術では腫瘍が大動脈に浸潤・固着し,外科切除不能であったため,遺残腫瘍に対する粒子線治療を希望して来院した.腫瘍は小腸と近接しており,そのままでは粒子線による根治的照射は不可能であったため,スペーサー留置手術の後,粒子線照射を併用する2段階治療を計画した.まず,開腹下にスペーサーを留置し腫瘍と近接消化管の間に最低1 cmの距離を確保した.術後1か月より陽子線70.4 GyE/32 Frの照射を開始した.腫瘍は緩徐に縮小し,治療後22か月の現時点では腫瘍は縮小を維持し,再発も認めていない.根治的切除が困難な後腹膜脂肪肉腫に対して本療法は有望な治療手段になりえると考えられた.
  • 戸嶋 俊明, 濱田 円, 原野 雅生, 松川 啓義, 小島 康知, 塩崎 滋弘, 大野 聡, 岡島 正純, 二宮 基樹, 松浦 博夫
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 47 巻 7 号 p. 410-418
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2014/07/16
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     症例は77歳の男性で,2000年9月直腸癌,Rs,type2,tub2,SE,N2(#251 6個,#252 1個),v1,ly2,H0,P0,M0,fStage IIIbに対し直腸低位前方切除術,D3郭清を施行した.術後補助化学療法としてカルモフール内服を1年間施行し,術後5年間経過観察され無再発であった.その後他院で腹部CTを施行し,腹部大動脈左側に軟部陰影を指摘され,当院紹介となった.精査の結果大動脈周囲リンパ節再発の術前診断のもと2012年9月,腫瘍摘出術を施行した.術中所見では,腫瘍は前回の直腸癌手術時の下腸間膜動脈根部の結紮切離部の近傍に存在した.術後病理組織学的検査所見では大腸癌のリンパ節および後腹膜線維脂肪織への転移再発と診断された.大腸癌根治術後10年以上を経過してのリンパ節再発を切除しえた報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.
特別寄稿
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