日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 1 号
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会告
原著
  • 庄中 達也, 稲垣 光裕, 正村 裕紀, 赤羽 弘充, 柳田 尚之, 中野 詩朗
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     目的:大腸癌肝転移にペルフルブタン(ソナゾイドTM)を用いた術中造影超音波検査(contrast enhanced intraoperative ultrasound;以下,CE-IOUSと略記)の有効性を検証する.方法:対象は2011年4月より2013年3月までに大腸癌肝転移で肝切除を施行した18症例28結節である.画像診断として造影超音波検査(contrast enhanced ultrasound;CE-US),造影CT,造影MRI,PET-CTとの診断能力につき比較検討した.結果:術前画像評価で最も診断率が高かったのはMRIで88.9%,CTの正診率は75.0%.28結節全てCE-IOUSで指摘できたが,うち2結節に関してはperfusion defectを認めない高エコー腫瘤であった.この2結節は病理組織学的診断でpathological complete responseであった.化学療法後肝切除となった22結節,うち切除標本で5~10 mmの大きさであった9結節全てCE-IOUSで指摘可能であった.結語:CE-IOUSは大腸癌肝転移の術中局在検出率が最も高く,5~10 mmという微小な化学療法後の大腸癌肝転移でも全病変を検出可能であった.
症例報告
  • 浅井 慶子, 小原 啓, 長谷川 公治, 北 健吾, 内田 浩一郎, 新居 利英, 谷口 雅彦, 古川 博之
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     右胃大網動脈を用いた冠動脈バイパス術後に発症した胃癌に対して幽門側胃切除D2郭清を施行した1例を経験した.症例は74歳男性で,59歳時に冠動脈バイパス術の既往がある.73歳時,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎に約4 cm大0-IIc病変あり前医にてESDを施行し病理結果tub2,SM1,UL(–),ly(+),v(–),pHM0(2 mm),pVM1であった.手術と再発のリスクを検討し経過観察としたが1年後CTで幽門上リンパ節腫大を認めた.経皮的冠動脈形成術でgraftに依存しない血行再建後幽門側胃切除D2郭清を行った.近年右胃大網動脈を用いた冠動脈バイパス後患者の腹部手術症例が増加しており中でも術後遠隔期における胃癌の発生については問題点の一つとされている.本症例は術前に血行再建を行うことにより安全にD2郭清を施行しえたため文献的考察を含め報告する.
  • 中村 聡, 山田 達也, 黒住 昌史, 塙 秀暁, 岡 大嗣, 江原 一尚, 福田 俊, 川島 吉之, 坂本 裕彦, 田中 洋一
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は84歳の男性で,心窩部痛,食思不振を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で,胃前庭部に全周性の3型腫瘍を認め,生検で扁平上皮癌が疑われた.胸腹骨盤部造影CTで,明らかな遠隔転移や,他臓器の癌からの転移を疑わせる所見はなく,胃原発の扁平上皮癌あるいは腺扁平上皮癌と診断し,幽門側胃切除,D2郭清,大網切除,胆摘,Roux-en-Y吻合術を施行した.切除標本のHE染色では,腺癌成分はなく,中分化の扁平上皮癌の像を呈し,免疫染色検査でもp40陽性であることから胃原発扁平上皮癌と診断した.病理組織学的検査所見は,大きさ40×35 mm,pT3(SS),int,INFb,ly0,v2,pN0であり,Stage IIAと診断した.胃原発扁平上皮癌は,胃癌全体の0.09%と極めてまれであり,診断にp40の免疫染色検査が有用であった1例を報告する.
  • 中野 順隆, 寺島 秀夫, 真船 太一, 塚本 俊太郎, 朴 秀吉, 今村 史人, 丸森 健司, 神賀 正博
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は32歳の男性で,突然の右腹痛と貧血症状を主訴に受診し,腹部造影CTにて十二指腸下行脚に約8 cm大の内腔出血を伴う腫瘍を認めた.精査にて,先天性凝固第VII因子欠乏症を伴う十二指腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断された.術中PT-INRを1.0に維持する目的に,リコンビナント活性型第VII因子製剤を投与しつつ膵頭十二指腸切除術を施行した.術中うっ血した腫瘍からの出血が多くなったものの,腫瘍摘出後は良好な止血が得られ,術後合併症なく第16病日に退院となった.病理組織学的診断では,隣接組織への浸潤は認められず,免疫組織化学染色検査ではMIB-1指数30~40%,c-kit(+),S-100(–)であり高リスクGISTと診断された.先天性第VII因子欠乏症を伴う十二指腸GISTは非常にまれであり,膵頭十二指腸切除術を施行する際の対応方法に言及して報告を行う.
  • 平下 禎二郎, 松本 敏文, 原 貴生, 久保 信英, 廣重 彰二, 折田 博之, 吉河 康二
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は67歳の男性で,糖尿病の精査にて膵腫瘍を指摘され,当科を受診した.血液検査にてIgG4が異常高値であり,腹部CTで膵尾部に囊胞を伴う限局性の充実性腫瘤を認めた.ERCPでは膵体部で主膵管は途絶していた.超音波内視下穿刺吸引法による組織診では腫瘍性病変や自己免疫性膵炎を疑う所見は認めなかった.FDG-PETでは膵充実性腫瘤部位に集積を認めた.膵囊胞性腫瘍と自己免疫性膵炎が合併したものとの考え,膵体尾部切除術を施行した.切除標本では淡褐色充実性の境界明瞭な腫瘤を認め,粘調な粘液を内容物とした囊胞を伴っていた.病理組織学的検査にてIgG4陽性の形質細胞と1層の立方上皮を壁とする粘液の貯留する囊胞を認めた.粘液を内容とした非腫瘍性の真性囊胞である貯留囊胞を伴った自己免疫性膵炎の診断であった.
  • 青山 広希, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 服部 正興, 宮田 完志, 藤野 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は68歳の男性で,高血圧症,狭心症,慢性心不全,高脂血症,閉塞性動脈硬化症に対する左腋窩-両側大腿動脈バイパス術,左腎動脈狭窄に対する左腎摘出術,慢性腎不全の既往を有し,抗血小板剤を含む内服治療が行われていた.右下腹部痛を主訴に当院を受診し,CTで門脈ガスと横行結腸の造影不良を認め,下部消化管内視鏡検査で右側結腸の3か所に壊死を認めた.拡大結腸右半切除術を施行し,7日間のICU管理を経て24病日に退院した.その12か月後に左上腹部痛を主訴に来院し,CTで門脈ガスと前回の回腸結腸吻合部周囲に腸管壁の限局性肥厚を認め,下部消化管内視鏡検査で吻合部に壊死を認めたため,壊死腸管を含めた回腸横行結腸吻合部切除を施行した.17日間のICU管理を経て39病日に退院した.門脈ガス血症を合併する重篤な壊死型虚血性腸炎を2回とも救命しえたが,壊死型虚血性腸炎は再発することがあり,全身状態の安定,適切かつ緩徐な循環動態のコントロール,脱水の誘因を取り除くこと,腸管内圧上昇因子を取り除くことなどの再発防止対策をとることが必要である.
  • 武田 光正, 中島 紳太郎, 宇野 能子, 衛藤 謙, 小村 伸朗, 澤田 亮一, 加藤 智弘, 田尻 久雄, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は67歳の女性で,下血の精査目的に他院で上部および下部消化管内視鏡検査が施行されたが異常所見を認めなかった.当院でカプセル内視鏡を施行したところ回腸に易出血性の隆起性病変を認め,質的診断の目的で小腸内視鏡検査を予定していたが,腹部CTで回腸遠位部から上行結腸に重積を認めていたため外科的切除を行った.開腹したところ,回腸が約10 cm上行結腸に重積し,用手整復を試みたが困難であったため回盲部切除を施行した.摘出標本で終末回腸に20 mm大の隆起性病変を認め,これが先進部となって重積を発症したと判断した.病理組織学的検査で回腸pyogenic granulomaの診断に至った.Pyogenic granulomaは皮膚や口腔粘膜に好発するが,消化管に発生することは極めてまれであり,これによる腸重積の報告は和文・英文を合わせて4例目であった.
  • 芳澤 淳一, 大久保 洋平, 唐澤 文寿, 竹内 信道, 中山 中
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は13歳の男性で,腹痛,嘔吐を主訴に受診した.上腹部,右下腹部に腹膜刺激症状を伴う圧痛を認め,血液検査では炎症反応の上昇を認めた.腹部CTでは小腸の拡張像と下腹部から骨盤内に約12×12×6 cmのニボー像を伴う拡張した囊状の腸管像を認め,この腸管壁の造影効果は不明瞭であった.絞扼性イレウスを疑い開腹術を行った.手術では膿性腹水と骨盤内に囊状に拡張し壊死した腸管を認めた.この腸管はBauhin弁より約60 cm口側の回腸の腸間膜接合部より発生し,その基部で360°捻転し絞扼壊死していた.絞扼した腸管は回腸と共通の腸間膜を有しており,腸管重複症捻転と診断した.正常腸管も含め,絞扼壊死した腸管重複症を切除した.腸管重複症自体の捻転の報告は少なく,まれな病態であると考えられ,文献的考察を加えて報告する.
  • 三野 和宏, 服部 優宏, 後藤 順一, 土橋 誠一郎, 安本 篤史, 玉置 透, 久木田 和丘, 目黒 順一, 米川 元樹, 川村 明夫
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     先天性第V因子欠乏症は100万人に1人,先天性第VII因子欠乏症は50万人に1人発症するといわれているが,その複合型に関しては報告例がない.今回,複合型先天性第V,VII,VIII因子欠乏症に発症した結腸憩室出血に対し結腸右半切除術を行った1例を経験したので報告する.症例は68歳男性で,多量の血便による出血性ショックのため当院救急搬送となり,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸憩室からの出血を認めた.内科的治療が無効であったため右半結腸切除を施行した.経過中の血液検査にてインヒビターのない血液凝固第V,VII,VIII因子の活性低下を認めた.術後,各凝固因子活性と止血維持状態に乖離が見られ一時的に出血傾向となったものの,プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間,トロンボテストを指標に血液製剤の投与法を調整することで,重篤な出血合併症や血栓症に陥ることなく管理することができた.
  • 平山 一久, 林 忠毅, 西脇 由朗, 中村 明子, 大菊 正人, 田村 浩章, 金井 俊和, 池松 禎人, 森 弘樹, 小澤 享史
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     症例は84歳の男性で,便通異常を主訴に当院を受診した.初診時の血液生化学検査の白血球数は10,900/‍mm3(好中球8,500/mm3)で,大腸内視鏡検査では直腸に全周性の2型腫瘍を認め,生検では未分化癌が検出された.腹部CTにて肝転移を認め,直腸未分化癌(A,N2, P0,H1)の診断でハルトマン手術を施行した.術後化学療法(cetuximab単独投与)を施行したが,肝転移巣の急激な増大,骨盤内再発を認め,術後53病日に多発性脳梗塞(Trousseau症候群)を併発し,術後58病日目に死亡した.切除標本の病理組織学的検査所見は未分化癌で,免疫染色検査ではgranulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)が陽性だった.血清G-CSF値高値と併せてG-CSF産生腫瘍と診断した.G-CSF産生大腸癌はまれであり文献的考察を加えて報告する.
  • 若林 正和, 河野 悟, 木村 友洋, 佐々木 一憲, 藤平 大介, 小池 卓也, 船津 健太郎, 保刈 岳雄, 相崎 一雄, 高橋 知秀
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/24
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     Abdominal cocoon(以下,ACと略記)とは,小腸の一部または全てが厚い線維性の被膜に包まれる原因不明のまれな疾患である.今回,我々はACによる絞扼性イレウスの1例を経験したので報告する.症例は77歳の女性で,5時間前から急激に発症した持続する腹痛を認め,当院へ救急搬送された.腹部造影CTにて,内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,緊急手術となった.腹腔鏡下に観察したところ,拡張した空腸が線維性の被膜に覆われ虚血に陥っていた.被膜を開放しようと試みたが,被膜と内部の空腸の関連性が把握しがたく,空腸を損傷する可能性も高いため,小開腹した.小開腹下に状態を確認し,線維性の被膜を開放したところ,徐々に空腸の血流は改善した.被膜を可及的に切除摘出し,手術終了とした.術後経過は良好であり,退院後は再発を認めていない.
特別寄稿
編集後記
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