日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 11 号
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原著
  • 黒木 博介, 杉田 昭, 小金井 一隆, 辰巳 健志, 二木 了, 山田 恭子, 荒井 勝彦, 福島 恒男
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 11 号 p. 883-889
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     目的:分割手術で結腸(亜)全摘,Hartmann手術が行われた潰瘍性大腸炎第2期手術の残存直腸切除術時の問題点を明らかにする.方法:潰瘍性大腸炎に対してHartmann手術を施行した23例で直腸断端が腹膜翻転部以上を高位群,それより低い低位群に分類し,残存直腸切除時の問題点から1期目手術時の留意点を検討した.結果:第2期手術は高位群17例で回腸囊肛門管吻合術17例,低位群6例では回腸囊肛門管吻合術4例,回腸囊肛門吻合術1例,回腸囊直腸吻合術1例であった.手術時間と出血量の中央値は高位群がそれぞれ212分と370 ml,低位群が344分と983 mlで,低位群で出血量が有意に多く(P=0.04),手術時間が長い傾向にあった(P=0.26).第2期目手術1年後の1日平均排便回数は高位群が6.4回,低位群が7.5回であった.結語:Hartmann手術の際に直腸切離を腹膜翻転部より低位で行うと,直腸断端と精囊腺などの周囲組織との強い癒着のために剥離が困難で出血量が多く,手術時間が長くなることから,第1期手術でHartmann手術を選択する際には断端を腹膜翻転部より高位にするべきと考えられる.
  • 花田 圭太, 畑 啓昭, 菊地 志織, 中西 宏貴, 佐治 雅史, 松末 亮, 成田 匡大, 山口 高史, 大谷 哲之, 猪飼 伊和夫
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 11 号 p. 890-896
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     目的:近年,腹腔鏡下胃切除・Roux-en-Y再建術後の内ヘルニア発症の報告が増加している.本研究の目的は開腹および腹腔鏡下胃切除・Roux-en-Y再建術後の内ヘルニア発症頻度,および内ヘルニア発症に関連する因子を明らかにすることである.方法:2006年1月から2013年6月に当科において胃癌に対して開腹および腹腔鏡下胃切除・Roux-en-Y再建術を行った460例を対象とした.診療記録に基づきretrospectiveに内ヘルニア発症頻度,および内ヘルニア発症における患者因子,手術因子との関連性について検討した.結果:2.2%(460例中10例)に内ヘルニアが発症した.開腹術後は2.6%(350例中9例),腹腔鏡下術後は0.9%(110例中1例)であった.単変量解析では患者因子に内ヘルニア発症における有意な因子は認めなかった.手術因子では胃切除術式,アプローチ法や再建経路に有意差はなく,腸間膜の間隙閉鎖のみが有意な因子であった(P=0.041).結語:胃切除・Roux-en-Y再建術後の内ヘルニアは開腹術後症例において比較的高い頻度で認められ,内ヘルニア発症予防には間隙閉鎖が有用であると考えられた.
症例報告
  • 芳澤 淳一, 増尾 仁志, 高須 香吏, 唐澤 文寿, 窪田 晃治, 中山 中
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 897-903
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     症例は63歳の男性で,腹痛,一過性の意識消失を認め受診した.受診時ショック状態であり,上腹部に圧痛を認めた.血液検査では貧血と血小板減少,腹部CTでは腹腔内にややdensityの高い多量の腹水貯留を認め,腹腔内に右胃大網動脈から連続して75×45×36 mm大の囊状に拡張した造影剤貯留を認めた.右胃大網動脈瘤破裂による腹腔内出血,出血性ショックと診断し,緊急手術を施行した.手術では多量の腹腔内出血と右胃大網動脈に拍動性の動脈瘤を認めた.動脈瘤壁は破綻し,動脈瘤破裂の所見であった.右胃大網動脈根部を露出し結紮切離,大網とともに動脈瘤を摘出した.ショックを呈した胃大網動脈瘤破裂はまれであるが,救命のためには迅速な診断と治療が求められる.胃大網動脈瘤破裂につき,その疫学,診断および治療につき報告する.
  • 花木 武彦, 荒井 陽介, 齊藤 博昭, 渡邉 淨司, 徳安 成郎, 坂本 照尚, 本城 総一郎, 池口 正英
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 904-911
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     症例は89歳の男性で,意識消失発作後のショックのため,当院搬送となった.胸部X線写真で心囊気腫を認め,CTでの胃内腔-心囊腔の交通所見から,胃潰瘍心囊穿破,心タンポナーデと診断した.全身状態の悪さから,経鼻胃管の間欠的吸引とCTガイド下心囊ドレナージによる保存的治療を開始した.バイタルはその後安定化し,炎症反応も順調に低下していたが,第14病日に突然死した.心囊気腫は,心タンポナーデとなると致死的な経過をたどる疾患であり,消化管と心囊腔の交通は,感染や消化液による化学的な刺激を生じ,これに続発する収縮性心外膜炎は生命予後を規定する因子となる.遭遇頻度が低いこともあり,同病態に対する外科的な治療の介入の必要性の判断,タイミングに苦慮することが予想される.今回,胃潰瘍の心囊穿破による心囊気腫の1例を経験したので,本邦における消化管穿破による心囊気腫の報告を集計し報告する.
  • 佐藤 雄介, 川瀬 義久, 高橋 卓嗣, 大河内 治, 坪井 賢治
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 912-920
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEAと略記)を用いた冠動脈バイパス術(coronary artery bypass graft;以下,CABGと略記)後の胃癌に対し,幽門側胃切除術,同時血行再建を行った1例を経験した.症例は64歳の男性で,RGEAを用いたCABGの既往があり,No. 6リンパ節転移を伴う胃癌を指摘された.冠動脈造影では右冠動脈に閉塞を認め,RGEAグラフトは開存していた.手術では大腿動脈とRGEAグラフト末梢にカテーテルを留置して灌流したうえでRGEAを切離し胃切除術を行った.総肝動脈-大伏在静脈グラフトをRGEAグラフトに吻合して血行を再建した.同時血行再建を伴う胃切除の報告は少なく,今回と同様の術式の報告はない.本術式は術中のグラフト損傷や虚血の恐れが少なく,No. 6リンパ節の確実な郭清が可能であり有用と思われた.
  • 石黒 友唯, 嶋村 剛, 本間 重紀, 川村 秀樹, 高橋 典彦, 腰塚 靖之, 後藤 了一, 山下 健一郎, 武冨 紹信, 藤堂 省
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 921-928
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     症例は57歳の女性で,自己免疫性肝炎による肝硬変に対して生体部分肝移植を施行した.術後は免疫抑制療法を継続し,定期的に全身CT,腫瘍マーカー測定,上下部消化管内視鏡検査でフォローした.移植後8年時に上腹部違和感を主訴に精査し,胃角部後壁に5 cm大の胃粘膜下腫瘍を認め,gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)疑いにて胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見より胃GISTの診断であり,腫瘍径4.2 cm,核分裂像数 <5/50 HPFのlow risk群のため術後治療は付加せず,術後42か月現在,無再発生存中である.肝移植後の治療成績向上により患者の長期生存が可能となってきた.しかし,移植患者は一般人に比べ悪性腫瘍の発生頻度が高いため,長期的に免疫抑制剤を内服する際は悪性腫瘍発生を念頭においたスクリーニングが重要である.
  • 山本 貴之, 鳴海 俊治, 岡田 学, 辻田 誠, 平光 高久, 後藤 憲彦, 渡井 至彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 929-935
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     脳死下膵腎同時移植後5か月経過して発症したグラフト十二指腸回腸吻合部穿孔の1例を経験したので報告する.症例は45歳の女性で,約20年来の1型糖尿病にて2013年8月に脳死下ドナーより膵腎同時移植を施行した.術後27日目に移植膵機能,腎機能とも良好で退院した.2014年1月に突然下腹部痛が出現し,急性汎発性腹膜炎および敗血症性ショックの診断にて当院へ救急搬送され,同日緊急開腹術を施行した.十二指腸グラフト回腸吻合の穿孔を認めたため,十二指腸グラフトから回腸にかけて減圧用腸瘻チューブ留置し,穿孔部縫合閉鎖および大網被覆術を施行した.術後経過良好で術後27日目に退院となった.術後11か月経過した現在もインスリンフリーを維持しHbA1c 5.4%,血清クレアチニン0.74 mg/dlと経過良好である.膵臓移植後の合併症として今回の経過はまれであり報告する.
  • 粟津 正英, 若原 智之, 土田 忍, 白川 幸代, 前田 哲生, 田上 修司, 芦谷 博史, 豊川 晃弘, 菅原 淳
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 936-943
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     症例は49歳の男性で,20歳時に先天性胆道拡張症に対する分流手術(肝外胆管切除,総肝管空腸吻合術)を受け,37歳時より肝内結石を生じ胆管炎を反復するようになった.最大径35 mmの両葉多発肝内結石と肝左葉の萎縮を認めたため,肝左葉切除術,切石用空腸瘻造設術を施行した.術後に経空腸瘻的内視鏡的切石術を追加し残肝結石を全て切石することが可能であった.術後19か月目に肝内結石再発による胆管炎を来したが,ガストロボタンにて瘻孔を確保していたため,再び経空腸瘻的内視鏡的切石術が施行可能であった.胆道再建術後の肝内結石に対しては治療後の再発の可能性を念頭に,長期的な展望にたった治療戦略が重要である.本術式は術後の残肝結石に対する内視鏡治療を容易にするのみならず,結石再発時にも即座に内視鏡治療を施行可能とする有用な術式であると考えられた.
  • 南 裕太, 川元 真, 後藤 晃紀, 本間 祐樹, 高川 亮, 渡邉 純, 盛田 知幸, 茂垣 雅俊, 舛井 秀宣, 長堀 薫
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 11 号 p. 944-951
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     症例は73歳の男性で,胃潰瘍で広範胃切除の既往あり.膵尾部癌の診断で2012年1月,膵体尾部脾切除,D2リンパ節郭清,残胃全摘,横行結腸部分切除,胆囊摘出術を施行した.病理組織学的診断は低分化腺癌,T4N0M0 pStage IVaであった.術後補助療法としてgemcitabineを半年間投与した.同年9月のCTで左鼠径部に2.5 cm大の腫瘤を認め,FDG-PETで同部位に集積を認めた.膵癌の転移を疑い,他に転移を認めなかったため,切除の方針とし,同年10月,左精索腫瘍摘出,精巣合併切除術を施行した.病理組織学的診断は膵癌の精索転移であった.術後S-1内服を勧めたが,患者希望で補助療法なしで経過観察した.2013年2月のCTで腹膜播腫を疑う結節影を認め,2014年7月まで外来通院していたが,その後状態が悪化し,同年8月に原病死した.本邦における精索転移を来した膵癌の報告例は13例とまれであり報告する.
臨床経験
  • 青木 丈明, 森本 芳和, 水野 均, 赤丸 祐介, 安政 啓吾, 野呂 浩史, 河野 恵美子, 山崎 芳郎
    原稿種別: 臨床経験
    2015 年 48 巻 11 号 p. 952-960
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/25
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     分岐異常を伴った右肝動脈(aberrant right hepatic artery;以下,ARHAと略記)が併存する膵頭部領域癌12例に対し,膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下,PDと略記)を施行した.膵癌8,遠位胆管癌3,乳頭部癌1であった.ARHAの分類は,上腸間膜動脈より右肝動脈が分岐するA型,上腸間膜動脈より総肝動脈が分岐するB型,腹腔動脈より右および左肝動脈がそれぞれ独立分岐するC型,胃十二指腸動脈末梢より右肝動脈が分岐するD型の4型とし,各々6,1,3,2例であった.10例はARHAを温存し,2例はR0切除のためARHAを合併切除した.ARHAの再建1例,非再建1例で,後者は胆管炎を繰り返した.R0/非R0は各々7/5であった.非R0の要因は,膵周囲剥離面浸潤4,肝転移1で,全例が再発原病死した.ARHA症例にPDを施行する際,術前の周到な画像評価に加え,R0を行ううえで,ARHAの分岐形態も入念に検討する必要がある.
特別寄稿
編集後記
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