日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 2 号
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症例報告
  • 池田 匡宏, 金子 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は55歳の女性で,腹部USで肝腫瘍を指摘され当院へ紹介された.腹部CTでは早期層で辺縁優位に造影され,後期相で洗い出しされる径19 mm大の腫瘍を認めた.腹部血管造影では辺縁優位に濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であったが,画像検査から肝細胞癌を疑い腫瘍が深部に存在し右肝静脈に接することより右肝切除を施行した.肝腫瘍は被膜の形成なく白色充実性で境界明瞭であった.病理組織学的検査所見で肝reactive lymphoid hyperplasia(以下,RLHと略記)と診断された.肝RLHは肝悪性腫瘍と診断され手術に至ることが多い.そのため造影早期に造影される肝腫瘍の鑑別疾患にRLHの存在を念頭に置くことで,確定診断に至らない場合,診断目的で針生検を検討する必要があると考えられた.
  • 森廣 俊昭, 青木 秀樹, 金谷 信彦, 武田 正, 須井 健太, 重安 邦俊, 荒田 尚, 勝田 浩, 田中屋 宏爾, 竹内 仁司
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     肝腫瘍として見つかり,肝切除術後に原発不明神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma;以下,NECと略記)と診断された症例を経験したので報告する.症例は67歳の男性で,肝S6に20 mm大の腫瘤と肝門部リンパ節腫大が確認された.腫瘍が増大傾向にあり,PET-CTでもFDG集積が確認されたため,肝S6亜区域切除および肝門部リンパ節郭清を行った.切除標本でNECと診断され,肝S6に主病変以外にも12個の腫瘍があった.肝門部リンパ節転移もあり,原発不明NECの肝転移およびリンパ節転移と診断した.その後多発肝転移再発を認め,化学療法,オクトレオチド投与,肝ラジオ波焼灼術や肝動脈化学塞栓術による加療を行った.予後不良と考えられたが,術後34か月の生存が得られた.NECは予後不良とされるが,集学的治療により生存期間延長が期待できる可能性がある.
  • 栗原 唯生, 岡村 行泰, 金本 秀行, 杉浦 禎一, 伊藤 貴明, 絹笠 祐介, 坂東 悦郎, 寺島 雅典, 佐々木 恵子, 上坂 克彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は61歳の女性で,肝腫瘍に対し各種画像検査を行ったが確定診断に至らず,肝生検を施行し転移性肝癌と診断した.各種検査で原発巣の同定が困難だったため,悪性と診断した肝腫瘍の切除を行う方針とした.術中,肝腫瘍の他に胃壁内腫瘤と胃小彎リンパ節の腫大を認め,迅速組織診で悪性の結果であったため,胃癌肝転移と診断し,肝切除に加え,胃全摘,リンパ節郭清を行った.永久標本の病理組織学的検査所見では,肝臓,胃,リンパ節とも全て類上皮血管内皮腫と診断された.肝腫瘍は典型的な類上皮血管内皮腫の組織像を呈したのに対し,胃では腫瘍細胞は主に血管内に疎らに存在するのみであったため,肝原発類上皮血管内皮腫の胃壁内およびリンパ節転移と診断した.
  • 石野 信一郎, 白石 祐之, 堤 真吾, 西巻 正
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     右房内進展を伴う肝細胞癌の切除は人工心肺下での開心術を要し,肝切除のみに比べ侵襲が高い.我々は右房内へ進展した肝細胞癌に対し肝切除先行total hepatic vascular exclusion(全肝血行遮断;以下,THVEと略記)を達成,開心術をせず原発巣と右房内腫瘍栓を摘出しえた症例を経験した.本術式は心房内進展を伴う進行肝細胞癌に対し,開心術併用と比較し低侵襲術式になると思われた.症例は69歳男性で,検診で異常を指摘された.CT で肝右葉に右房内に進展する腫瘍を認め当院紹介となり,肝細胞癌の診断で手術を行った.術式は肝脱転,肝静脈根部剥離,右グリソン処理の後肝切離を行い,肝右葉が右肝静脈のみで繋がる状態とした.肝右葉の牽引により腫瘍栓が右房外に出ることをエコーで確認し,THVEの後に右肝静脈根部を切開,腫瘍栓と肝右葉を一括で摘出した.術後74日目に退院した.術後2年間,無再発生存中である.
  • 里吉 梨香, 佐藤 勤, 吉楽 拓哉, 岩﨑 渉, 齋藤 謙, 小棚木 均
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 118-125
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は73歳女性で,定期的な超音波検査にて胆囊底部に8 mmの隆起性病変を認めた.MRIで胆囊底部に隔壁様構造を認めたが,その内部は胆囊内腔とほぼ等信号であり腫瘍とは認識されなかった.6か月後の超音波検査にて隆起性病変は12 mmに増大していた.内部に血流を認める広基性の隆起であり,胆囊癌も念頭に置いて開腹胆囊摘出術を施行した.胆囊底部の壁内に囊胞性病変が存在し,小孔で胆囊内腔と交通していた.囊胞内は粘液で充満していた.組織学的には囊胞基底面で粘液産生性の異型上皮が乳頭状に増殖し,高分化型粘液腺癌と診断された.腫瘍周囲の胆囊壁にRokitansky-Aschoff sinus(以下,RASと略記)が多数存在しており,囊胞はRAS内に発生した粘液性腫瘍が粘液を充満させて増大したものと考えた.RAS内に発生した粘液産生性胆囊癌はこれまでに報告がなく,興味深い症例であると考えた.
  • 伊藤 嘉智, 福永 正氣, 菅野 雅彦, 吉川 征一郎, 平崎 憲範, 東 大輔
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は63歳の男性で,急性心筋梗塞(3枝病変)で冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;以下,CABGと略記)の既往がある.術後経過観察中に上腹部不快感と灰白色便および閉塞性黄疸を認め,精査にて中部胆管癌と診断された.経皮経肝胆道ドレナージを行い,減黄したのち膵頭十二指腸切除術を施行した.バイパス血管が右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEAと略記)だったため,術前に経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention;以下,PCIと略記)を行った.手術では同動脈を温存しIV型再建とした.病理組織学的検査所見は中~低分化型管状腺癌でpT2N0M0,stage IIIBであった.術後経過は良好で術後第7病日より経口摂取を開始し,著明な合併症もなく第32病日に退院となった.RGEAを用いたCABG後の上腹部手術は胃癌での報告例が散見されるが胆道悪性腫瘍ではまれである.安全性も高く,根治性を損なわない手術を遂行するために,術前に心機能を厳密に評価し,本症例のように手術に先立ってPCIを行うことが重要であると思われる.
  • 藏田 能裕, 鈴木 一史, 宮内 英聡, 大平 学, 当間 雄之, 米山 泰生, 松永 晃直, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は67歳の男性で,60歳時に肛門痛を自覚した.前医で仙骨前面に囊胞性腫瘍を指摘された.64歳時に腫瘍の増大を認め,腫瘍の一部を摘出し尾骨囊胞腺腫と診断された.遺残腫瘍が増大し,臀部痛・排便障害が出現したため当院紹介となった.仙骨前面に最大径115 mmの囊胞性腫瘍を認め,CEAが18.6 ng/‍mlと高値を示した.悪性腫瘍の存在を強く疑い,仙骨合併腹会陰式直腸切断術を施行し腫瘍を完全切除した.病理組織学的検査所見ではmucinous cyst adenocarcinomaと診断され,発生母地となった囊胞性腫瘍はtailgut cystであったと考えられた.術後3年,再発徴候なく生存中である.Tailgut cystは胎生期の遺残物から発生する囊胞性腫瘍であり,悪性腫瘍を伴った報告も散見される.報告例を検討すると,高齢・CEA高値が悪性症例に有意に多く,完全切除例では再発の報告は見られなかった.
  • 久保 徹, 神藤 英二, 田代 恵太, 上野 秀樹, 識名 敦, 深澤 智美, 末山 貴浩, 河合 俊明, 山本 順司, 長谷 和生
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は46歳の女性で,検診の腹部超音波検査で卵巣腫瘍が疑われ,当院紹介となった.造影CTおよび造影MRIでは直腸背側を中心とし,最大径8 cmの内部壊死を伴う腫瘍を認めた.注腸造影および大腸内視鏡検査では直腸の圧排を認めたものの,粘膜面の変化は認めなかった.FDG-PETでは同部位に集積を認めた.以上から,骨盤内の悪性腫瘍を念頭に手術の方針とした,開腹所見では明らかな腹膜播種なく,腫瘍は下部直腸の間膜内に限局して発育していた.腫瘍切除を伴う低位前方切除を行った.病理組織学的に免疫染色検査ではcalretinin,cytokeratin 5/6,D2-40陽性で,CEA,MOC-31陰性であり,悪性腹膜中皮腫(上皮型)と診断された.本症が腹膜外(下部直腸間膜内)に限局性に発生することは極めてまれであり,文献的には本邦において過去に1例報告されたのみである.
  • 佐藤 正幸, 椎葉 健一, 三浦 康, 木内 誠, 長谷川 康弘, 山本 久仁治, 角川 陽一郎, 藤谷 恒明
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は76歳の男性で,右殿部痛にて近医を受診しMRI で骨盤内に巨大腫瘍を指摘され当院紹介となった.肛門左側に鶏卵大の弾性軟な腫瘤を触知した.下部内視鏡検査では直腸の圧排のみであった.腹部CT,MRIでは10 cm大の骨盤全体を占める囊胞性腫瘍を認めた.穿刺細胞診で乳白色粥状の内容を採取した.悪性所見はなく細菌培養も陰性であった.以上より,developmental cystを疑い手術を勧めるも同意得られず経過観察となった.定期検査40か月のMRIで囊胞壁に造影効果を有する充実成分が出現したため悪性を疑い浸潤を疑う直腸とともに切除術を施行した.囊胞は単房性で内容物には骨や毛髪などは認めず,直腸に接する部に7 cm大の硬い充実性部分を認めた.病理組織学的検査では囊胞壁部分は重層扁平上皮で覆われ,充実性部分に扁平上皮癌を認めepidermoid cystに発生した扁平上皮癌と診断した.術後2年無再発生存中である.
  • 古川 賢英, 脇山 茂樹, 堤 純, 高山 澄夫, 柴 浩明, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     症例は77歳の女性で,1年前より不明熱,炎症反応高値を指摘され精査していたが,その時点では単純CT上腹部に異常を認めなかった.今回,腹部単純CTにて,著明な脾腫を認めた.血清アミロイドA蛋白高値,上部消化管内視鏡による胃粘膜生検でアミロイドの沈着を認め,アミロイドーシスと診断した.腹部造影CTでは,脾辺縁に造影効果がなく,アミロイドの沈着およびそれに伴う脾破裂を疑い開腹手術を施行した.手術所見では,脾臓は白色充実性腫瘍により鎧状に覆われており,また,腸間膜を中心に播種を認めた.脾臓を含め腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査所見は,脾臓を覆う腫瘍および腹膜播種巣は上皮型悪性腹膜中皮腫であり,脾臓はアミロイドの沈着はなく著明な萎縮を認めるのみであった.以上より,悪性腹膜中皮腫と診断した.今回,アミロイドーシスを併存し脾臓腫大を認めた悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.
  • 久保 秀正, 糸川 嘉樹, 植木 智之, 下村 克己, 池田 純, 谷口 史洋, 塩飽 保博, 浦田 洋二
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 158-164
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     潰瘍性大腸炎は大腸内容や炎症が逆流しbackwash ileitis(以下,BWIと略記)と呼ばれる回腸炎を来すことがある.今回BWIを伴い回腸穿孔を来した症例を経験した.症例は82歳の女性で,2年前に直腸穿孔でHartmann手術を施行した.今回血便で入院し全大腸型潰瘍性大腸炎と診断された.血便が続き貧血と血圧低下を認め,大腸亜全摘,回腸ストマ造設を行った.この際,回腸末端に炎症と潰瘍を認めたが十分な切除は行わなかった.術後6日目に創部より腸液様排液を認め,小腸穿孔を疑い術後8日目に再手術を施行した.回腸末端に多発潰瘍と2か所の穿孔を認め,正常粘膜部位まで切除し小腸ストマを再造設した.術後集中治療室で加療を続けたが全身状態は悪化し再手術後14日目に死亡した.BWIは手術時に診断されることが多いが適切な治療法は確立されていない.本症例では初回手術時に炎症の及んだ小腸を十分に切除すべきであったと考えられた.
  • 上田 有紀, 森川 充洋, 五井 孝憲, 藤本 大裕, 澤井 利次, 小練 研司, 村上 真, 廣野 靖夫, 飯田 敦, 山口 明夫
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー HTML
     症例は77歳の男性で,1990年に膀胱癌に対して膀胱全摘+Indiana pouch造設術を施行した.2012年7月に血尿を認め,CTでIndiana pouch内に隆起性病変,リンパ節転移,多発肝転移を認めた.Indiana pouch内の腫瘍からの生検で大腸高分化腺癌と診断された.遠隔転移を伴う大腸癌であり,まずmFOLFOX6+bevacizumab療法を6クール施行した.化学療法後に原発巣およびリンパ節転移,肝転移の縮小を認め,Indiana pouch摘出術+尿管皮膚瘻造設を施行した.以降,化学療法を継続中である.Indiana pouch内に発生した大腸癌の報告は現在までに自験例を含めて11例のみであり,非常にまれである.若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 奥村 公一, 細木 久裕, 山浦 忠能, 吉村 文博, 金谷 誠一郎
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/02/17
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     腹腔鏡下胃切除術Billroth-I法再建後には間膜内間隙は理論上生じず,内ヘルニアの報告はない.今回,我々は医原性に作られた肝鎌状間膜内小孔に内ヘルニアを生じた1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は67歳男性で早期胃癌の診断にて腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.ペンローズドレーンを用いた肝外側区の挙上目的で左三角間膜に小孔をあける際,鎌状間膜に挿入口を設けた.初回手術で鎌状間膜の閉鎖は行わなかった.術後8日目食事開始したが,術後11日目よりイレウス症状を認めた.画像検査の結果,肝鎌状間膜内ヘルニアと診断し,腹腔鏡下に再手術を施行した.鎌状間膜内に嵌入した小腸を整復し,欠損口を非吸収糸で閉鎖した.小腸に絞扼壊死の所見はなかった.鎌状間膜欠損口に陥入した内ヘルニアは本邦では8例のみ報告があり,手術後での報告例はない.腹腔鏡下胃切除術後に起こりえるまれな合併症として認識が必要と考えられた.
編集後記
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