日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 3 号
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症例報告
  • 猪瀬 悟史, 諏訪 達志, 苅込 和裕, 十束 英志, 中村 直和, 岡田 慶吾, 北村 謙太, 松村 知憲
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は78歳の女性で,突然嘔吐を繰り返し,上腹部痛も出現したため当院救急外来を受診した.腹部造影CTにて,食道裂孔から縦隔内へ胃前庭部および十二指腸球部が脱出し,その口側の著明な胃拡張と多量の胃液貯留を認めた.経鼻胃管を留置したところ2,200 mlの排液を認め,上腹部の膨満は消失した.上部消化管内視鏡検査では胃前庭部が頭側に挙上され食道裂孔のレベルで締めつけられており,内視鏡による整復を試みたが不可能であった.保存的治療は無効と判断し腹腔鏡下手術を施行した.脱出していた胃前庭部および十二指腸球部を腹腔内に還納したのち,開大した食道裂孔を縫縮しメッシュによる補強を行い,再発予防のため食道胃接合部および胃底部を横隔膜に数針固定した.術後胃内容排泄遅延を認めた以外は経過良好であった.胃前庭部および十二指腸球部が嵌頓し通過障害を来した食道裂孔ヘルニアのまれな1例を経験したので報告する.
  • 川邉 泰一, 佐藤 勉, 利野 靖, 林 勉, 山田 貴允, 山本 直人, 大島 貴, 湯川 寛夫, 吉川 貴己, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 186-191
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     特発性食道破裂は,嘔吐などに伴う食道内圧の急激な上昇により食道壁全層が穿孔する救急疾患で,早期に適切な治療が行わなければ重症化して致命的となる.今回,我々は術前食道造影で穿孔部位と大きさの確認を行い,胸腔鏡下食道単純縫合閉鎖+ドレナージで軽快した特発性食道破裂の1例を経験したので報告する.症例は52歳の女性で,嘔吐後の急激な上腹部痛を主訴に発症より4時間後に当院へ救急搬送された.CTで縦隔気腫と両側胸水を認め,食道造影で胸部下部食道左壁に約20 mmの穿孔部を認め特発性食道破裂と診断した.発症より12時間後に胸腔鏡下での緊急手術を開始した.食道穿孔部は長軸方向に約25 mmで挫滅・汚染は軽度であったため,食道の全層一層縫合で食道を縫合閉鎖し,閉鎖部の被覆は追加しなかった.重篤な合併症は認めず,術後23日目に退院となった.
  • 西口 遼平, 進藤 吉明, 上野 知尭, 石塚 純平, 横山 直弘, 馬越 通信, 小林 芳生, 齋藤 由理, 田中 雄一, 小野 巖
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 192-200
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は78歳の男性で,出血性胃粘膜下腫瘍の診断により保存的加療を行い,その約3か月後に再び吐血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を施行した.その結果,胃体中部後壁に20 mm大の拍動性出血を伴う隆起性病変を認めたため,クリッピング止血術を施行し,繰り返す出血性胃粘膜下腫瘍の診断で緊急入院した.上部消化管造影X線検査および腹部CTでは胃体中部後壁に20 mm大の隆起性病変を認めた.超音波内視鏡検査で病巣は20×20 mm大,胃壁第4層(MP)と連続し,かつ内部構造は不均一で壊死と思われる低エコー領域として描出された.以上より,胃内発育型の消化管間質腫瘍を疑い,腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除を施行した.病理組織学的検査所見で粘膜下層に異所性腺組織を認め,粘膜内と異所腺内には高分化型腺癌を認めた.今回,我々は腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除後,早期胃癌を伴う出血性胃粘膜下異所腺と診断した1例を経験したので報告する.
  • 磯辺 太郎, 秋葉 純, 橋本 宏介, 木崎 潤也, 的野 吾, 衣笠 哲史, 青柳 慶史朗, 矢野 博久, 赤木 由人
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は26歳の男性で,心窩部痛を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部の粘膜下腫瘍を指摘され当科紹介となった.超音波内視鏡検査にて第3層内に不均一なエコーレベルの腫瘤を認め,内部に小さな低エコー域の混在を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引生検を行ったところ,平滑筋への分化を伴う非上皮性腫瘍が疑われ,胃内視鏡ガイド下に腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.切除標本では,異型のない粘膜上皮が粘膜筋板の介在を伴い内反するように粘膜下層を主体に見られた.これらの所見より胃hamartomatous inverted polypと診断した.
  • 久保田 哲史, 香川 俊輔, 菊地 覚次, 黒田 新士, 西崎 正彦, 母里 淑子, 岸本 浩行, 永坂 岳司, 加藤 博也, 藤原 俊義
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     胃切除後の合併症としてまれながら腹腔内膿瘍があり,治療にはドレナージが必要であることが多い.CT・US下の経皮ドレナージが低侵襲で第一選択となるが,腹腔内臓器に囲まれた深部の膿瘍は穿刺がしばしば困難である.今回,我々は腹腔鏡補助下幽門側胃切除術後,腹腔内膿瘍を合併した症例を経験した.膿瘍は残胃の背側にありCT・US下の経皮ドレナージが困難であったが,超音波内視鏡により膿瘍ならびに近接する総肝動脈も明瞭に観察され,超音波内視鏡ガイド下に経残胃ドレナージを安全に施行可能であった.胃切除後であっても腹腔内膿瘍に対する経胃的ドレナージの施行は,低侵襲な治療手段としての一選択肢となりうると考えられたので報告する.
  • 倉田 徹, 林 泰寛, 中沼 伸一, 宮下 知治, 田島 秀浩, 高村 博之, 北川 裕久, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 太田 哲生
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     扁平上皮癌肝転移の肝切除に関する報告はまれであり,その意義に関して明確な報告は少ない.今回当科における扁平上皮癌肝転移切除3症例を検討した.原発巣は口腔底癌1例,肺癌1例,咽頭癌1例であった.同時性転移が2例,異時性転移が1例であり,原発巣に対しては全例切除が施行されていた.原発巣切除から肝転移切除までの期間は平均11か月であった.肝切除の際の術式は部分切除1例,拡大右肝切除および左副腎摘除1例,後区域切除,横隔膜合併切除および右肺部分切除1例であった.予後は術後21か月で他病死が1例,術後60か月無再発生存1例および術後13か月頸部リンパ節再発を認め加療後経過観察中が1例であった.1例に肝再発を認め,再肝切除を行った.局所制御が可能であると判断される症例においては,肝切除そのものによる予後改善の可能性,あるいは肝外再発に対する集学的治療との組み合わせによって予後改善の可能性が示唆された.
  • 海津 貴史, 金田 悟郎, 金澤 秀紀, 細谷 智, 坂本 友見子, 石井 健一郎, 瀧川 政和, 堀田 綾子, 齋藤 生朗, 渡邊 昌彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 224-233
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は74歳の女性で,盲腸癌に対する腹腔鏡下回盲部切除後7か月目のCTで,肝S2に径3.8 cmの腫瘤を指摘されたが肝炎症性偽腫瘍の診断で経過観察となった.術後3年3か月目には腫瘍径が6.4 cmまで増大し,術後に正常化したCA19-9が170 U/mlと上昇したため,肝転移を疑い術前化学療法としてFOLFOX+パニツムマブを3回施行した.腫瘍径は5.5 cmに縮小しCA19-9は55 U/mlまで低下したが,有害事象およびCVポート感染による敗血症を併発したため化学療法は中止とし,拡大肝左葉切除術を行った.病理組織学的診断は細胆管細胞癌であり,肝切除後2年8か月無再発生存中である.細胆管細胞癌の長期経過を観察し,術前化学療法を施行した症例は極めてまれである.細胆管細胞癌の診断や生物学的特性を考えるうえで貴重な症例と考え報告する.
  • 下条 芳秀, 矢野 誠司, 川畑 康成, 西 健, 木谷 昭彦, 原田 祐治, 田島 義証
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 234-240
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)に併存した膵腺房細胞癌(acinar cell carcinoma;以下,ACCと略記)の1例を経験した.症例は83歳の女性で,CTおよびMRIで膵頭下部の囊胞性病変に加え,膵頭部に径3.6 cm大の充実性腫瘤を認めた.ERCPとMRCPでは腫瘤陰影に隣接する主膵管の狭窄と尾側膵管の拡張,門脈の圧排像を認めた.以上より,分枝型IPMNに併存した浸潤性膵管癌と診断し,門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査の結果,分枝型IPMN に併存したACCと診断された.IPMNに併存したACCは報告が少なく貴重な症例であった.IPMNは浸潤性膵管癌を高率に合併するが,ACCなど術前に確定診断をつけることが難しいまれな膵癌を合併することも念頭に置く必要がある.
  • 大村 範幸, 小野 文徳, 小原 恵, 佐藤 純, 佐藤 学, 山村 明寛, 平賀 雅樹, 小野地 章一, 笹野 公伸, 古川 徹
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 241-247
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー HTML
     症例は74歳の女性で,皮膚の掻痒感を主訴に当院を受診した.黄疸を認め,US,CT,ERCPなどの画像検索では膵頭部に粗大な石灰化を伴う囊胞性腫瘍を認めた.悪性疾患を否定できないこと,および有症状であることから,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では,胆管および十二指腸への浸潤を認める膵管内乳頭粘液性癌と診断された.組織亜型はhigh-grade gastric typeの分枝型であり,豊富な骨梁形成を伴う骨化像を呈していた.術後3年4か月を経た現在,再発を認めていない.石灰化を伴う分枝型膵管内乳頭粘液性癌の報告は比較的まれであり,骨形成を来した症例は報告されていない.
  • 友利 賢太, 中島 紳太郎, 宇野 能子, 北川 和男, 阿南 匡, 小菅 誠, 衛藤 謙, 小村 伸朗, 小峰 多雅, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 248-254
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     髄外性形質細胞腫は形質細胞性腫瘍の一種であり,鼻咽頭や上気道に発生することが多く,後腹膜に発生することは極めてまれである.今回,我々は他疾患の治療中に無症候性で偶然に発見された骨盤内後腹膜に由来する髄外性形質細胞腫の1例を経験した.症例は51歳の男性で,胆石胆囊炎にて当院消化器内科に入院した.腹部造影CTで左腸骨窩の後腹膜に約9 cm大の充実性腫瘤を指摘された.精査の結果,骨盤内後腹膜原発の悪性リンパ腫や神経鞘腫が疑われたが,確定診断には至らなかった.このため,胆囊炎の保存的治療後に,診断と治療の目的で胆摘と同時に腫瘍切除を行った.病理組織学的検査所見でIgGκ型の後腹膜髄外性形質細胞腫の診断に至った.病理学的に完全切除が得られたので,術後の放射線療法や化学療法は施行しなかった.髄外性形質細胞腫は画像や生化学検査で特徴的な所見に乏しいため,術前診断に至らないことが多い.
  • 浅田 崇洋, 越川 克己, 澤木 康一, 米山 哲司, 福岡 伴樹, 佐野 正明, 山村 義孝, 新畑 昌滋
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 255-263
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は51歳の男性で,左下腹部痛および意識消失を主訴に受診された.腹部CTで血性腹水を認め入院となった.Dynamic CTで左胃大網動脈の多発動脈瘤と周囲の血腫を認め動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断された.動脈瘤の成因は臨床的にsegmental arterial mediolysis(以下,SAMと略記)と診断した.待機的に腹部血管造影検査および経カテーテル的動脈塞栓術(以下,TAEと略記)を行った.術後6か月の腹部CTでは塞栓していない動脈瘤の自然消失を認めた.胃大網動脈瘤は非常にまれな疾患で,その成因の一つとしてSAMが挙げられる.SAMは破裂による腹腔内出血で発症することが多く,開腹手術が行われてきたが,TAEの報告例が増えてきている.本症例では破裂動脈瘤に対し,安全・低侵襲にTAEを行えた.また,未破裂動脈瘤の自然消失を認め,今後の治療戦略構築の一助となると考えた.
  • 松井 俊樹, 加藤 憲治, 市川 泰崇, 春木 祐司, 奥田 善大, 岩田 真, 三田 孝行, 玉置 久雄, 伊佐地 秀司
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 264-271
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
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     症例は,手術歴,妊娠歴のない33歳女性で,間欠的な腹痛および嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部・骨盤造影CTで小腸イレウスと診断し,直腸右腹側にclosed loopの形成を認め,矢状断再構築画像でダグラス窩から仙骨方向に突出するclosed loopを認めたことから,ダグラス窩の異常裂孔を介する内ヘルニアと診断した.陥入した腸管壁の造影効果は保たれ腸管壊死を疑う所見に乏しかったことから,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.ダグラス窩に陥入した小腸は,愛護的に整復を試みると容易に整復でき,ダグラス窩のやや右側に1.5 cm大の腹膜欠損を認めた.小腸は腹膜欠損部にRichter型に陥入しており,腸管壊死の所見はなく腸管切除は行わなかった.腹膜欠損部を縫合閉鎖し,手術を終了した.ダグラス窩腹膜欠損部を介した内ヘルニアの報告は現在までに7例と極めて少なく,本例は術前診断できた初めての症例と考えられた.
  • 熊澤 慶吾, 小柳 剛, 遠藤 大昌, 青柳 信嘉, 今村 雅俊, 石田 剛
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー HTML
     症例は70歳の女性で,右上腹部違和感を自覚し近医受診した.腹部超音波検査にて肝外側区域に腫瘍を疑われ,当院紹介受診した.画像診断にて肝血管腫と判断され,以後外来にて経過観察となった.9か月後のフォローアップCTにて腫瘍の軽度増大および肝S4に3 cm大の新たな病変が出現したため,悪性の原発性肝腫瘍が疑われ手術が行われた.外側区域の腫瘍と診断されていた病変は開腹所見では腹壁より発生しており,外側区域を圧排していた.腹壁より肝外の腫瘍を切除し,肝S4の部分切除を行った.病理組織学的診断はmalignant fat-forming solitary fibrous tumorであった.その後の経過は,多発肝肺転移を来し術後2年3か月目に原病死となった.腹壁原発の孤在性線維性腫瘍は極めてまれであり,特に悪性の転帰を来した症例は本報告が最初である.
特別寄稿
特別報告
  • 味木 徹夫, 赤澤 宏平, 葉梨 智子, 上田 順彦, 内山 和久, 幸田 圭史, 杉山 政則, 夏越 祥次, 真船 健一, 丸橋 繁, 具 ...
    原稿種別: 特別報告
    2015 年 48 巻 3 号 p. 282-290
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー HTML
     外科医を取り巻く労働環境について,平成24年に本学会を含む外科系関連学会による合同アンケート調査を実施した.回答者のうち,消化器外科医は5,416名で,全回答者の65.1%と大多数を占め,長時間労働の実態を分析するに足る集団構成と考えられた.解析の結果,1週間の労働時間が55時間を越える消化器外科医師は74.5%と高率で,消化器以外の外科医の72.4%に比し高率であった.また,この割合は,大学病院や公的病院,病床規模の大きい病院,外科病床数の多い病院で特に高かった.勤務時間短縮の方策についてのアンケート回答では,医療事務支援の充実が最多で,化学療法・終末期医療などを他科へ依頼すること,メディカルスタッフ(看護師,薬剤師,技師)の支援充実などが続いた.以上より,消化器外科医療を魅力的なものにし,多くの若手医師が消化器外科に参入できるよう,これらの回答に基づいた提言を行った.
    Editor's pick

編集後記
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