日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 6 号
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原著
  • 山本 健人, 三木 明, 岡田 和幸, 市川 千宙, 松岡 亮介, 上原 慶一郎, 貝原 聡, 細谷 亮
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 6 号 p. 473-480
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     目的:消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;以下,GISTと略記)のリスク分類は多数報告され,術後補助化学療法を行うための指標とされている.Modified Fletcher分類の妥当性を検討する.方法:2008年1月1日より2013年10月30日までの期間に当院で切除手術を施行し,病理組織学的にGISTと診断された40例の臨床病理学的解析を行い,Fletcher分類,Miettinen分類,modified Fletcher分類の各分類におけるリスク群間の再発率,無再発生存率を比較した.結果:男性26例,女性14例,平均年齢は64歳であった.原発巣は食道/胃/十二指腸/小腸において1/26/4/9例であった.Modified Fletcher分類におけるリスク分類は,超低/低/中/高リスク症例が5/10/4/21例であった.再発は4例に認め,modified Fletcher分類においてのみ,高リスク群は他の群と比べ有意に再発が多く(19.0% vs. 0% P=0.018),3年無再発生存率は低い傾向を認めた(75.7% vs. 100% P=0.094).結語:Modified Fletcher分類によるリスク分類は妥当である.Modified Fletcher分類において高リスク群に対しては術後補助化学療法を考慮すべきである.
症例報告
  • 鷲尾 真理愛, 佐藤 弘, 岡 伸一, 竹下 宏樹, 藤森 喜毅, 高瀬 健一郎, 櫻本 信一, 山口 茂樹, 小山 勇
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 481-487
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     胸部食道癌胸骨後経路再建術後の胃管流出障害に対し再手術を施行した1例を経験した.症例は74歳の男性で,胸部食道癌cT3N1M0 cStage III(UICC TNM分類 第7版)と診断された.2013年8月に,右開胸胸部食道切除,用手補助腹腔鏡下胃管作成,胸骨後経路胃管再建,3領域郭清を施行した.術翌日より胸部X線写真上,挙上胃管の拡張を認め,左胸腔内への嵌入が疑われた.術後第42病日の経口造影検査でも造影剤は挙上胃管の幽門輪を通過しなかったため,2013年10月(初回手術の術後第66病日)に,開腹癒着剥離,胃管固定術を施行した.術後,幽門輪通過可能となり,2回目の手術後第14病日より食事を開始し,第27病日に退院となった.胃管の流出障害に対する治療報告は極めて少ないが,保存的加療で奏効しない場合は手術が有効な治療法となると考えられる.
  • 冨田 雅史, 西野 栄世, 高見 友也, 大島 侑, 畑野 光太郎, 若間 聡史, 古江 隼人, 松田 靖弘, 片岡 直己, 山口 智之
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 488-495
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     症例は79歳の女性で,胃内視鏡にて胃体中部に1型と2型腫瘍の併存を指摘され,生検で胃腺癌と診断された.腹部造影CTでは肝S5/6に2 cmの占居性病変を認めた.胃癌・単発の肝転移と診断し,胃全摘・Roux-en Y再建・D2郭清・肝部分切除を行った.術後の病理組織学的診断では胃病変の2型腫瘍の部位は腺癌だったが,1型腫瘍の部位に栄養膜様の腫瘍細胞の増殖像を認め絨毛癌と診断した.肝腫瘤にも栄養膜様の腫瘍細胞を認め絨毛癌成分の転移による転移性肝癌と診断した.病理学的ステージはpT3N0M1のステージIVだった.胃原発絨毛癌はまれな疾患で,急速に進行し予後不良であることが多い.特に遠隔転移を伴う場合は,これまでの報告のほとんどの症例で1年以内に死亡している.本症例では術後3年3か月の時点で無再発生存しており,原発巣・肝転移巣ともに一期的な同時切除により長期生存が得られる症例が存在することが示された.
  • 佐藤 琢爾, 角 泰廣, 宮原 利行, 加藤 喜彦, 中野 良太
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 496-503
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     症例は59歳の女性で,胃癌検診の上部消化管造影検査で肝内胆管が造影され,消化管胆管瘻の疑いで紹介となった.上部消化管内視鏡で胃体中部小彎に胆汁が流出する開口部を認めた.MRCP,ERCPで左肝管から分岐する異所胆管像と総胆管内に陰影欠損像を認めた.以上から,重複胆管,総胆管結石症と診断し異所胆管切除,総胆管切開切石,胆囊摘出術を予定した.手術所見は異所胆管が小網内を左肝管から胃小彎へと走行していた.また,異所胆管に合流する2本の胆管を別に認めた.術中胆道鏡で2本の胆管は胆管正常粘膜を有し,走行から尾状葉胆管枝と考え,左副肝管と診断した.胆囊摘出,総胆管切開切石,胃部分切除を含めた異所胆管,左副肝管切除を行った.左肝管に近い副肝管は温存した.病理組織学的検査で異所胆管,副肝管ともに正常胆管壁で,悪性所見はなかった.重複胆管症と左副肝管を同時に認めた極めてまれな1手術例を経験したので報告する.
  • 平野 勝久, 松井 恒志, 渋谷 和人, 吉岡 伊作, 澤田 成朗, 奥村 知之, 吉田 徹, 長田 拓哉, 塚田 一博
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 504-512
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     症例は70歳の男性で,食道癌に対して食道亜全摘,後縦隔経路胃管再建術を施行され2年11か月無再発生存中であった.感冒を契機に近医を受診した際に閉塞性黄疸を指摘され,腹部CTで膵頭部に23 mmの腫瘤性病変を認めた.Elastase 1,DUPAN 2,CA19-9の上昇を認め,血清IgG4は陰性であった.血管造影検査にて胃十二指腸動脈,右胃大網動脈への浸潤は認めなかった.閉塞性黄疸を伴う膵頭部癌と診断し胃十二指腸動脈温存,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的検査ではIgG4陽性細胞の浸潤を認め自己免疫性膵炎と診断された.血清IgG4が陰性である場合,主膵管造影やMRIによる主膵管の所見がAIPを診断するうえで重要となる.今回,我々は血清IgG4値が陰性であったため,膵癌と診断し膵頭十二指腸切除術を施行した食道癌術後胃管再建症例を経験したので報告する.
  • 黒田 誠司, 塩谷 猛, 南部 弘太郎, 渡邉 善正, 小峯 修, 渋谷 肇, 三島 圭介, 内間 久隆, 島田 裕司
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 513-520
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     症例は66歳の女性で,閉塞性黄疸を主訴に来院した.腹部CTで膵頭部に3 cm大の造影効果に乏しい腫瘤性病変を認め,同部位より末梢の膵管および総胆管・肝内胆管が拡張していた.腫瘤はMRCPの拡散強調画像で著明な高信号を呈しており,PETでは強い集積域を認めたが,全ての検査で胆囊管に異常は認めなかった.以上より,膵癌の診断にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では,膵頭部に3.5 cm大の灰白色充実性腫瘍を認めた.また,胆囊管に6 mm大の隆起性病変を認め,各種免疫組織染色の結果から主病変と酷似した組織像であり,膵癌の胆囊管転移と考えられた.膵癌の転移経路として一般に血行性・リンパ行性が考えられるが,胆囊管周囲の結合組織には癌細胞の明らかな浸潤を認めず,また胆囊管腫瘍の主座が粘膜・粘膜下層であることより胆汁の逆流による癌細胞の胆管内播種の可能性が示唆された.膵癌の転移経路は一般に血行性・リンパ行性が考えられるが,上行性も考慮する必要があると思われる.
  • 仲野 哲矢, 塚原 明弘, 水木 亨, 池田 義之, 畠山 悟, 丸田 智章, 田中 典生, 小山 俊太郎, 下田 聡, 若木 邦彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     血管筋脂肪腫は血管,平滑筋細胞ならびに成熟脂肪細胞が混在する良性の間葉系腫瘍である.その多くは腎臓で認められ,腎臓以外の臓器で発生することは極めてまれである.今回,我々は小腸重積症で発症した小腸原発の血管筋脂肪腫の1例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,1年前から間欠的腹痛を自覚し,近医で内服加療されていたが腹痛の増悪を認め,精査目的に当院紹介となった.腹部骨盤部造影CT所見では,回腸の腫瘤性病変を先進部とする小腸重積を認め,小腸部分切除術を施行した.腫瘍は3.3×3.8 cm大のポリープ状の腫瘍で,表面平滑で一部にびらんを伴っていた.病理組織学的には多数の血管を伴った脂肪組織と平滑筋線維の増生を認め,血管筋脂肪腫と診断された.検索しえたかぎりでは,本邦および海外英文において小腸原発の血管筋脂肪腫の報告例は本例を含め4例のみであり,極めてまれな症例と思われたため報告する.
  • 長尾 祐一, 沢津橋 佑典, 佐藤 永洋, 中本 充洋, 鍋島 篤典, 山田 壮亮, 久岡 正典, 中山 善文
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 6 号 p. 527-532
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     症例は20歳の女性で,左下腹部腫瘤を自覚し,近医受診した.精査加療目的にて当科紹介受診され,精査にて小腸もしくは小腸間膜の囊胞性腫瘍を認め,腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.手術所見は,Treitz靱帯より30 cm肛門側の空腸間膜に60 mm大の隆起性病変を認めた.腫瘍は空腸と密に接しており,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見は,囊胞形性を伴った小腸間膜原発平滑筋腫であった.現在,術後2年6か月の状態であるが,再発所見は認めていない.小腸間膜原発の平滑筋腫はまれであるが,さらに囊胞形性を伴った平滑筋腫は極めてまれであり報告する.
臨床経験
  • 豊川 貴弘, 山下 好人, 山本 篤, 清水 貞利, 寺岡 均, 西口 幸雄
    原稿種別: 臨床経験
    2015 年 48 巻 6 号 p. 533-540
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     イマチニブの登場により転移・再発gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)の予後は劇的に改善したが,イマチニブ治療と外科的介入,特に完全切除との併用の意義は明らかにされていない.1993年から2012年の間に,転移・再発GISTと診断された23例中,完全切除を行った9例の臨床像および治療成績についてレトロスペクティブに検討した.完全切除は9例に対してのべ14回行われた.完全切除とイマチニブの併用が行われた6例は,観察期間中央値が77か月(38~109か月)で,全例が生存中である.再発GISTに対して完全切除が行われた後に,補助化学療法が行われなかった7例は,全例が再々発を来し,無再発期間の中央値は394日であった.イマチニブ治療に完全切除を併用することで予後の改善が得られる可能性がある.完全切除が得られても,イマチニブは早期に再開し可及的に継続投与すべきである.
  • 黒木 博介, 小金井 一隆, 辰巳 健志, 二木 了, 山田 恭子, 荒井 勝彦, 福島 恒男, 杉田 昭
    原稿種別: 臨床経験
    2015 年 48 巻 6 号 p. 541-548
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/06/17
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     クローン病の直腸切断術後に合併した会陰創小腸瘻の自験8例の臨床経過を検討した.会陰創小腸瘻の原因は6か月以上閉鎖しない会陰創治癒遅延が6例,小腸病変が2例であった.後者は1例がクローン病の病変,1例は回腸吻合部の縫合不全であった.全例に瘻孔部の小腸部分切除,瘻管ドレナージ術を施行した.8例中5例は術後に瘻孔の再発はなく,経過が良好であった.残り3例は会陰創小腸瘻が再発し,1例は術後23か月後に再度小腸部分切除術を施行した.この1例を含め排膿が持続したため,3例全例で骨盤内ドレーン留置のまま退院とし,うち2例は再度ドレーンから回腸が造影され,会陰創小腸瘻が再発した.クローン病の直腸切断術後には会陰創治癒遅延または小腸病変を原因として会陰創小腸瘻が生じる症例がある.瘻孔部の小腸切除術で治癒することが多いが,感染の遷延や再発があり,その発生の予防や治療法について今後検討する必要がある.
編集後記
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