日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 9 号
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原著
  • 山名 大輔, 笠島 浩行, 遠山 茂, 鍵谷 卓司, 常俊 雄介, 大橋 大成, 工藤 大輔, 原 豊, 鈴木 伸作, 木村 純
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 9 号 p. 729-738
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     目的:大腸癌イレウスに対する緊急手術は,周術期合併症のリスクが高まることが知られている.保存的治療を先行する場合,経鼻・経肛門イレウスチューブ留置による減圧が中心であったが,2012年1月よりself-expandable metallic stent(以下,SEMSと略記)が保険適用となった.当施設における大腸癌イレウス症例に対するSEMSの有用性を評価した.方法:2005年1月から2013年11月までに当科で行われた1,065例の大腸癌手術の内,イレウス症例は286例であった.当施設ではSEMSは横行結腸より肛門側の病変を有する症例に用いており,減圧不要症例・横行結腸より口側の症例は検討から除外した.同期間に条件を満たした大腸癌イレウス症例はSEMS群32例,経肛門イレウスチューブ群27例,緊急手術群39例の計98例であった.各群における背景因子と周術期経過について検討した.結果:SEMS群は経肛門イレウスチューブ群や緊急手術群と比較して,ストーマ造設率が有意に低く,一期的縫合施行率,腹腔鏡手術施行率は有意に高かった.メタ解析にて有意にストーマ造設を回避できると考えられた.結語:SEMS使用によってストーマ造設を回避し,低侵襲かつ根治的手術を行うことが可能になると考えられ,SEMSは大腸癌イレウスに対して有用であると考えられた.
症例報告
  • 向出 裕美, 道浦 拓, 由井 倫太郎, 尾崎 岳, 福井 淳一, 井上 健太郎, 岩本 慈能, 山道 啓吾, 權 雅憲, 濱田 円
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 739-746
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は60歳の男性で,嚥下困難,体重減少を主訴に近医受診し食道癌にて当院受診となった.生検病理組織学的診断は中分化型扁平上皮癌でWBC 43,400/μl,血清granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)66 pg/ml(基準値<39 pg/ml)と高値を示した.生検組織の免疫組織化学的検査はG-CSF陽性であり食道原発G-CSF産生扁平上皮癌と診断した.食道癌根治目的にて手術を施行するも,大動脈浸潤を含む急速な腫瘍の増大を認め切除を断念し,根治的化学放射線療法(60 Gy照射,5-fluorouracil,cisplatin ×2コース)を施行し完全奏効を得た.その後補助化学療法を追加,完全奏効判定後7年4か月無再発生存している.食道原発G-CSF産生扁平上皮癌の長期生存の報告は極めて少なく化学放射線療法の奏効した極めてまれな症例と考えられる.
  • 山本 雅樹, 丸山 常彦, 酒向 晃弘, 杉田 真太朗, 上田 和光, 奥村 稔
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 747-753
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は29歳の女性で,近医より腹腔内腫瘍,腹腔内出血の精査加療目的に当院紹介された.腹部造影CT,上部消化管内視鏡から胃粘膜下腫瘍の破裂と診断した.同日幽門側胃切除,Roux-en-Y再建術を施行し9病日に退院となった.病理組織学的検査でKIT,PDGFRAに変異のない野生型gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)であった.Imatinib 400 mg/dayによる術後補助療法を開始したが,術後1年で多発肝再発を来した.手術適応はなく,sunitinib 50 mg/day 4投2休に変更し,現在術後1年10か月で,縮小率43%と再発巣は縮小した.30歳以下で発症するGISTは,非常にまれである.本邦でも報告が少なく,sunitinibを使用した報告はない.若年性胃GISTの肝再発に対してsunitinibが奏効した1例を経験したので,報告する.
  • 宇野 耕平, 飯野 年男, 久保 寿朗, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 754-760
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は78歳の女性で,心筋梗塞の既往歴有り.嘔吐を主訴に当院を受診し,腹部CTを施行したところ,肝内胆管にpneumobiliaを認め,45 mm大の結石が十二指腸に嵌頓していた.胆囊十二指腸瘻に起因するBouveret症候群と診断して手術を施行したところ,胆囊および十二指腸は一塊となっており,結石も触知しえなかった.全身状態を考慮して,通過障害の解除目的に空置的胃空腸吻合術のみを施行した.術後84日目に嘔吐の再燃を認め,腹部CTを施行したところ,胃空腸吻合部の肛門側空腸に結石が移動して嵌頓しており,再手術にて結石を摘出した.術後の経過は良好であり,現在は外来通院治療としている.Bouveret症候群はまれな疾患で高齢者に多く,併存疾患から治療法の選択に悩まされることが多い.本症例は低侵襲を優先した手術方法を選択し,大きな合併症なく経過したので報告する.
  • 岡﨑 慎史, 大西 啓祐, 熊田 博之, 今野 裕司, 堀内 真, 二瓶 義博, 小野 桂, 五十嵐 幸夫, 妹尾 和克, 守本 和弘
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 761-768
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は70歳の女性で,2週間前から続く気分不良と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CTにて小腸内に石灰化を伴う異物と,口側の小腸の拡張像を認め閉塞性イレウスと診断された.保存的治療で改善せず,手術目的に当科転科となった.腹部造影CTで胆囊底部にガス像を認め,胆囊頸部の結石,胆囊と十二指腸の近接も認めたことから胆囊十二指腸瘻に伴う胆石イレウスと診断した.初回は単孔式腹腔鏡下に腹腔内を検索し,胆囊周囲の著明な癒着と,結石の嵌頓した腸管を同定した.創部から体外に腸管を導出して結石の摘出のみ行った.33日後,腹腔鏡下に胆囊摘出術と胆囊十二指腸瘻閉鎖を行う二期的手術を施行した.胆摘後,十二指腸側の瘻孔部には大網を被覆した.術後経過は良好であった.近年,胆石イレウスに対する腹腔鏡下手術の有用性が報告されている.腹腔鏡下二期的手術を行い良好に経過した1例を経験したため報告する.
  • 渡邉 幸博, 岡本 光順, 森田 洋平, 石田 慎悟, 岡田 克也, 合川 公康, 宮澤 光男, 小山 勇, 山口 浩, 清水 道生
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 769-775
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は76歳の男性で,2007年に膵頭部の混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)と診断され,以後5年間明らかな変化を認めなかった.2012年のCT,MRIにてもほとんど変化を認めなかったが,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸乳頭開大の軽度増加を認め,ERCPにて十二指腸に瘻孔を認めた.同部位からの造影では囊胞内に欠損像を認め,膵管内超音波検査にては囊胞内に充実性の腫瘤を認めた.以上より,混合型IPMNの十二指腸穿破,悪性化を考え,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では,最も異型の強い部位はcarcinoma in situであったが,瘻孔形成部は腺腫相当の病変で悪性所見を認めなかった.混合型IPMNの長期観察中に十二指腸へ穿破し,画像所見の変化が軽微であった悪性化の1例であった.
  • 本成 永, 亀山 眞一郎, 原 鐵洋, 谷口 春樹, 堀 義城, 新垣 淳也, 伊志嶺 朝成, 長嶺 義哲, 古波倉 史子, 伊佐 勉
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 776-781
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は46歳の女性で,右下腹部に限局する圧痛を認め,結腸憩室炎を疑われて当院紹介受診となった.CTで骨盤腔内に憩室炎を疑う腸管壁肥厚と周囲脂肪織の濃度上昇を認めた.病変部の腸管は周囲腸管との連続性が確認できず,上腸間膜動脈分枝からの供血を受けていたことから回腸重複腸管を疑った.入院3日目に単孔式腹腔鏡補助下回腸部分切除術を行った.回腸末端部から45 cmの腸間膜側に,大きさ12×5 cmで憩室と憩室周囲により強い壁肥厚を伴う重複腸管を認めた.病理組織学的検査所見では,重複腸管は異型のない小腸粘膜および筋層を有しており,憩室周囲を首座とする炎症性細胞浸潤を認め,重複腸管に生じた憩室炎と診断した.これまでに重複腸管に生じた憩室炎の報告はなく,極めてまれな症例と考えられた.
  • 塩入 利一, 藤代 雅巳, 石橋 至, 児玉 俊, 高田 厚, 河原 正樹, 岡 輝明
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 782-788
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     注腸による腸重積の整復後に,待機的に単孔式腹腔鏡下回盲部切除術を施行した盲腸膿瘍による腸重積症の1例を経験した.症例は41歳の女性で,腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CTにて腸重積症と診断し,注腸検査にて非観血的に腸重積を整復した.大腸内視鏡検査では盲腸に粘膜下腫瘍様所見を認め,待機的に単孔式腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査にて,盲腸の粘膜下に30 mm大の肉芽組織に囲まれた膿瘍病変と診断した.成人の腸重積症は小児と比較してまれな疾患であるが,腫瘍性病変が原因となり,緊急手術が施行されることが多い.今回,我々は盲腸膿瘍による腸重積症を経験したが,注腸による非観血的整復と待機的な単孔式腹腔鏡下回盲部切除が有用な治療法であったと考えられた.
  • 眞鍋 恵理子, 進士 誠一, 小泉 岐博, 菅 隼人, 山田 岳史, 高田 英志, 松田 陽子, 内藤 善哉, 内田 英二
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 789-797
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例は67歳の男性で,左下腹部痛を主訴に受診し,血液検査で高度の炎症所見を認め,腹部CTで憩室炎と診断し緊急入院した.大腸内視鏡検査ではS状結腸に亜全周性の狭窄,粘膜面の浮腫状変化と発赤を認め,内視鏡は通過できず,また,生検で悪性所見は指摘されなかった.保存的治療を行うも,腹痛と炎症反応の上昇が再燃したためS 状結腸切除術を施行した.病理組織学的検査ではtub1,SS,N2であり4型S状結腸癌,特に高分化腺癌が癌性リンパ管症を伴うことなく顕著な炎症細胞浸潤と線維化とともに伸展して高度狭窄を来すinflammatory typeと考えられた.その後,リンパ節郭清を目的に追加腸切除を行い,術後補助化学療法を施行後18か月無再発である.繰り返す憩室炎では4型大腸癌の可能性を考慮する必要があり,さらにinflammatory typeに相当する貴重な症例と考えられ報告する.
  • 石井 健太, 平松 和洋, 加藤 岳人, 夏目 誠治, 前多 松喜
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 9 号 p. 798-807
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/15
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     症例1は73歳の男性で,貧血による体動困難で救急搬送された.腹部CTで上行結腸に悪性腫瘍を疑う壁肥厚があり,微小穿孔が疑われたため緊急手術を行った.腫瘍は肝臓への直接浸潤と腸間膜側への穿通を認め,結腸右半切除術でen-blocに切除した.病理組織学的検査で腫瘍の一部に角化があり,腺管構造は認めず,上行結腸原発扁平上皮癌と診断した.術後2年10か月無再発経過観察中である.症例2は50歳の男性で,右下腹部痛を主訴に受診した.腹部CTで上行結腸に壁肥厚があり,後腹膜側に膿瘍を形成,肝両葉には転移性病変を認めた.上行結腸癌後腹膜穿通,多発肝転移の診断で緊急手術を行った.回盲部切除を施行したが剥離断端は陽性となった.病理組織学的検査で上行結腸原発の扁平上皮癌と診断した.術後,肝転移が急速に増悪し,化学療法を行ったが術後53日目に癌死した.結腸原発の扁平上皮癌は極めてまれであり報告する.
特別寄稿
編集後記
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