日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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49 巻, 12 号
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原著
  • 平塚 孝宏, 猪股 雅史, 赤木 智徳, 柴田 智隆, 上田 貴威, 白下 英史, 衛藤 剛, 野口 剛, 白石 憲男, 北野 正剛
    原稿種別: 原著
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1191-1198
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     目的:消化器外科領域のsurgical site infection(以下,SSIと略記)発生抑制のために,SSIサーベイランスにおけるSSI発生リスク因子を明らかにする.対象と方法:当施設では2005年よりサーベイランスを実施し,SSI予防策が一定となった2009年4月から2013年3月までの消化器外科手術症例1,560例を対象とした.SSI発生のリスク因子を解析し,手術手技別に各手術アプローチのSSI発生率を調べた.結果:単変量解析にて年齢・糖尿病・悪性疾患・SSI Risk Index Score・創分類・American Society of Anesthesiologistsスコア(以下,ASAスコアと略記)・人工肛門造設術・緊急手術・合併手術・手術アプローチ(開腹/腹腔鏡手術)・手術時間におけるSSI発生率が有意に高く,性別・肥満・喫煙は有意なSSI発生率上昇を認めなかった.単変量解析で有意であった項目の多変量解析にて,ASAスコア3点以上,悪性疾患,開腹手術,合併手術,人工肛門造設術,糖尿病,80歳以上が高いオッズ比順のSSI発生の独立リスク因子であった.肝胆膵,大腸の手術においては,腹腔鏡手術で有意にSSI発生率が低下していた.結語:SSIサーベイランスにおけるSSI発生のリスク因子において,手術アプローチはSSI発生抑制に外科医が介入しうる点で重要であると考えられた.

症例報告
  • 山本 篤, 山下 好人, 吉井 真美, 森本 純也, 日月 亜紀子, 玉森 豊, 清水 貞利, 井上 透, 金沢 景繁, 西口 幸雄
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1199-1205
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は52歳の男性で,胃部不快感にて上部消化管内視鏡検査をうけ,胃体部に多発性ポリープと噴門部に3型腫瘍,幽門前庭部に1型腫瘍を認め,いずれも中分化腺癌と診断された.他に消化管ポリポーシスは認めず,遺伝性疾患の家族歴や粘膜皮膚の色素沈着を認めなかったため,不全型Peutz-Jeghers(以下,PJと略記)症候群における多発胃ポリープにともなう多発胃癌と診断し,胃全摘術を施行した.病理組織学的診断で,胃PJ型ポリープを背景とした深達度SSとSMの胃癌と診断された.不完全型PJ症候群におけるPJ型ポリープは単発性で空腸発生例が多くほとんどが良性である.胃での報告はこれまで11例あり,癌化の報告は4例であった.不完全型PJ症候群における胃PJ型ポリープの経時的変化や癌化の可能性が完全型PJ症候群と同様であるかは明らかでなく,その治療や経過観察の方法について今後のエビデンスの蓄積が必要である.

  • 上坂 貴洋, 三澤 一仁, 大島 隆宏, 齋藤 健太郎, 寺崎 康展, 葛西 弘規, 皆川 のぞみ, 奥田 耕司, 大川 由美
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1206-1213
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は13歳の男性で,9歳時より原因不明の繰り返す膵炎にて当院通院中であった.3週間前から腹部不快感および体調不良を自覚し,1日前から腹痛と嘔吐を認めたため,当院時間外外来を受診した.腹部造影CTでは十二指腸に腸重積が認められ,これに膵頭部が巻き込まれ膵炎を発症しているものと考えられた.同日緊急入院とし,上部消化管内視鏡併用下にイレウス管を空腸まで誘導し,その後先端バルーンを膨らませたままイレウス管を口側に引き整復した.膵炎および全身状態の改善を待ち再度上部消化管内視鏡および造影検査を実施したところ,十二指腸膜様狭窄が腸重積の原因と考えられた.待機的に開腹手術を行い,十二指腸下行脚にwindsock型の膜様物を認めたため,これを切除するとともに十二指腸切開部を横方向に縫合閉鎖した.先天性十二指腸膜様狭窄が原因で膵炎および腸重積を来した報告例は本邦ではなく,まれな病態であるため報告する.

  • 小田切 理, 石戸 圭之輔, 豊木 嘉一, 工藤 大輔, 木村 憲央, 脇屋 太一, 堤 伸二, 若狭 悠介, 津谷 亮佑, 袴田 健一
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1214-1221
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は65歳の女性で,2014年6月に前医で肝外胆管,総肝動脈,および膵頭部への浸潤を有する切除不能局所進行胆囊癌の診断となり,gemcitabine+S-1併用療法が開始された.8コース施行後の腹部CTで上記浸潤所見が消失したため,2015年1月手術目的に当科紹介となった.拡大肝右葉切除術,肝外胆管切除術,総肝動脈合併切除術を施行し,病理組織学的診断は胆囊体部を主座とする中~高分化型管状線癌で,pT3N1M0,Stage IIIB,R0切除を達成した.S-1による術後補助化学療法を施行し,術後8か月間の無再発生存が得られている.化学療法が奏効し非切除因子が消失した局所進行胆囊癌の治療法について一定の見解は存在しない.しかし,conversion surgeryにより良好な予後を得られる可能性があり,化学療法中も外科的切除の可能性を定期的に追求することが重要であると思われた.

  • 水上 博喜, 田中 淳一, 関根 隆一, 喜島 一博, 横溝 和晃, 松原 猛人, 根本 洋, 加藤 貴史
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1222-1228
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は43歳の男性で,腹痛にて前医を受診し,胆石性膵炎の診断で入院した.翌日の腹部CTで壊死性膵炎が疑われ,当院救命救急センターに転院となり,保存的加療を行った.入院後21日の腹部CTで膵体部を中心に壊死腔が形成されていた.保存的加療を継続するも壊死腔が増大したため,入院後57日に超音波ガイド下で壊死腔にドレナージチューブを挿入し,入院後66日にvideo-assisted retroperitoneal debridement(以下,VARDと略記)を施行した.手術時間は215分,出血量は90 mlであった.合併症を認めず,術後32病日に退院した.感染性膵壊死に対する主たる治療は,ネクロセクトミーやドレナージであり,近年では低侵襲性を考慮した超音波内視鏡検査下経胃ネクロセクトミーなどが報告がされている.今回,我々は感染性壊死性膵炎に対して,VARDが有効であった症例を経験したため報告する.

  • 野口 大介, 田岡 大樹, 草深 智樹, 大森 隆夫, 大倉 康生
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1229-1236
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は68歳の男性で,右背部痛を主訴に当院受診,CTで膵頭部に60 mm大の腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡検査では下十二指腸角に粘膜下腫瘤を認め,針吸引細胞診にてgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断し,膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy;PD)を施行した.上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)の背側を走行する膵頭部の灌流静脈を認めたため,SMA周囲操作での深部出血を危惧しartery first approachを回避した.SMA背側を走行する膵頭部灌流静脈が解剖亜型として存在する可能性があり,近年普及しつつあるartery first approachを施行する際には,動脈走行のみならず灌流静脈の存在を意識すべきである.

  • 尾崎 友理, 平松 聖史, 雨宮 剛, 後藤 秀成, 関 崇, 陸 大輔, 藤枝 裕倫, 牧田 智, 新井 利幸
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1237-1242
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     今回,我々は特異的な側副血行路を形成した遊走脾に対して腹腔鏡手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は33歳の女性で,10年ほど前に遊走脾を指摘され,腹痛発作を時々認めたが,その都度症状は軽度で,すぐに軽快するため経過観察していた.数日前からの体動時の断続的な左側腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTにて遊走脾の部分的な造影不良域と脾臓へと連続する渦巻き状の血管を認めた.遊走脾の慢性的な捻転と診断し,腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.脾臓の後腹膜への固定は全くなく,脾門部の血管束と脾門対側に付着する特異的な血管束の2か所で牽引され,幾重にも捻転していた.脾動静脈からなる脾門の血管束はすでに高度に線維化し閉塞していた.脾門の対側に付着した高度の渦巻き状血管束は胃大網動静脈に由来し,大網を介して脾臓へ付着し栄養血管となっていた.

  • 須浪 毅, 坂下 克也, 雪本 清隆, 澤田 隆吾, 阪本 一次
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1243-1251
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は91歳の女性で,心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置術後,短期間に腸閉塞を繰り返したため手術を施行したところ,コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による小腸穿孔・狭窄が原因であった1例を経験した.小腸CCEの本邦報告例20例を集計し,穿孔,壊死,狭窄に分類し検討した.壊死・狭窄症例はCCEに高頻度に合併する皮膚症状,腎機能障害の合併もなく小範囲の小腸部分切除術が施行され死亡例はなかった.一方,穿孔例はほぼ全例に皮膚症状,重度の腎機能障害を合併し,穿孔部位も多発かつ広範に及び,広範な小腸切除術が必要であった.術後の再穿孔,縫合不全も多く13例中12例が死亡していた.CCEが消化管穿孔や狭窄の原因となることは比較的まれであるが,高齢化に伴い今後増加することが予想され,本疾患を認識しておくことは重要であると思われる.

  • 杉戸 伸好, 村元 雅之, 長谷川 毅, 小森 徹也, 保里 惠一, 松尾 洋一, 竹山 廣光
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1252-1260
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     患者は65歳の男性で,急性虫垂炎の診断で,近医にて抗生剤による保存的治療を受けたが,再燃したため受診した.腹部所見では,右下腹部に鶏卵大の弾性硬の腫瘤を触れ,右足挙上時の腰背部違和感を認めた.CTで右下腹部に内部不均一に造影効果のある腫瘤を認め,その背側の腸腰筋内部に3×4 cm大の低吸収域を認めた.腹部超音波検査では腸腰筋内は斑状で不均一であった.急性虫垂炎および腸腰筋への膿瘍の穿破の診断で手術を施行した.術前の診断どおり,虫垂先端が腸腰筋へ穿破していた.内部からは膿汁ではなく,直径2~4 mm大の真珠様の粒状物を認めた.虫垂切除後,粒状物を回収し,腸腰筋内部を洗浄,ドレーンを留置し手術を終えた.病理学的には中等度異型像を示したが,悪性像はなく,粘液球腫症(myxoglobulosis)を伴う虫垂原発粘液産生性腺腫と診断した.術後5年ほど経過しているが,特に再発は認めていない.

  • 早川 俊輔, 安田 顕, 北瀬 正則, 黒坂 健一郎, 渡邊 貴洋, 藤幡 士郎, 宮井 博隆, 山本 稔, 北上 英彦, 清水 保延, 早 ...
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1261-1267
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は55歳の男性で,腹痛を主訴に救急搬送された.既往歴に心房細動を認めた.腹部造影CTにて回結腸動脈の閉塞,回腸の血流低下と浮腫状の変化を認め,上腸間膜動脈閉塞症と診断した.身体所見,画像所見から腸管の壊死を疑い,緊急診断的腹腔鏡を施行した.腹腔内を観察すると,回腸末端から1 mほどの範囲でやや色調が変化した腸管を認めたが蠕動は良好であったため,腸管壊死には至っていないと判断した.術中血管内治療を施行し,血流改善を認めた.再度腹腔鏡にて腸管の色調に悪化がないことを確認し,手術を終了した.術後経過良好で14日目に退院となった.診断的腹腔鏡と術中血管内治療の併用で開腹手術を回避しえた症例はまれであった.腸管のviabilityが不明な本症に対して血管内治療施行可能な手術室において診断的腹腔鏡を施行することで迅速に治療法の選択と実行が可能となり,腸管壊死を認めなければ開腹手術を回避することができる.

  • 中西 亮, 中村 隆俊, ウッドハムス 玲子, 藤田 翔平, 横田 和子, 海津 貴史, 山下 継史, 田島 弘, 山梨 高広, 渡邊 昌彦
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 12 号 p. 1268-1274
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2016/12/17
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     症例は68歳の男性で,全身性エリテマトーデス,血管炎の診断で通院中に腹痛を主訴に当院救命センター受診した.腹部単純X線検査で小腸ガスを認めたため,腹部造影CTを施行し右大腿ヘルニア嵌頓と診断し,用手的還納後に経過観察目的に入院した.腹痛が再度生じたので腹部造影CTを施行し,小腸腸間膜動脈の仮性動脈瘤の形成と骨盤腔に高吸収性の腹水を認め,腹腔内出血を疑った.Hb 7.9 g/dlまで低下し,赤血球濃厚液を2単位投与するも貧血が進行するため腹部血管造影検査を施行した.上腸間膜動脈からの造影にて,回盲部の仮性動脈瘤より出血所見を認めたのでコイル塞栓術を行った.全身状態安定後に大腿ヘルニアに対し,腹腔鏡下ヘルニア根治術を行った.大腿ヘルニア嵌頓の用手的還納に腸間膜仮性動脈瘤を形成した症例に対し腹腔鏡下ヘルニア根治術を行ったのは極めてまれであるため報告する.

編集後記
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