日本消化器外科学会雑誌
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50 巻, 3 号
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症例報告
  • 大平 将史, 市川 伸樹, 上泉 洋, 加藤 寛士, 辻 健志, 横山 良司, 伊藤 浩二, 中島 保明
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 177-189
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     今回,我々は保存的治療が可能であった膿胸・縦隔膿瘍を伴う食道穿孔を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,認知症とてんかんで近医精神科に入院中に箸を誤飲した.箸は用手的に抜去され,出血やバイタルサインの変化がなく経過観察されていたが,翌日に発熱と呼吸苦が出現した.胸部単純X線検査上,左肺の完全虚脱を認め当院に紹介された.胸腔ドレーンを挿入したところ多量の消化液様胸水を認め,CT上も気胸,膿胸,縦隔膿瘍を認めたため食道穿孔を疑い,穿孔部確認のために上部消化管内視鏡検査を施行した.門歯から18 cmの食道に約2 mmの穿孔を認め,内視鏡的クリッピングで閉鎖した.その後CTガイド下に縦隔ドレーンを留置し,ドレナージと抗菌薬で保存的治療を継続した.次第に状態の改善を認め,第15病日の食道造影検査で食道外への漏出を認めず,第19病日から食事を開始し,第50病日で外科的治療を要することなく退院となった.

  • 吉野 めぐみ, 海保 隆, 柳澤 真司, 新村 兼康, 岡本 亮, 西村 真樹, 小林 壮一, 岡庭 輝, 井上 泰, 宮崎 勝
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 190-198
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は76歳の男性で,胃癌,S状結腸癌の診断で,胃全摘術,S状結腸切除術を施行した.胃の摘出標本内には既知の病変の他,体中部後壁に25×21 mm大の粘膜下病変を認め,病理組織所見や免疫組織学的検索の結果よりS状結腸癌胃転移の診断となった.最終病理所見は,胃癌はNeuroendocrine carcinoma,large cell type,U,Less,Post,type 2,34×27 mm,pT2,ly0,v3,pN0,M0,P0,CY0,H0,Stage IB,大腸癌はS,type 2,24×22 mm,tub1,pT2,ly0,v1,pN0,sH0,sP0,pM1(胃),Stage IVだった.大腸癌の胃転移は非常にまれで本邦ではこれまでに剖検例を含め33例の報告があり,このうち同時性転移で切除された症例は4例のみだった.

  • 朴 正勝, 西川 和宏, 山本 和義, 平尾 素宏, 三宅 正和, 濱 直樹, 宮本 敦史, 池田 正孝, 中森 正二, 関本 貢嗣
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は64歳の女性で,2014年4月より黒色便を自覚するようになり,近医を受診された.精査にて胃幽門部早期癌と診断され,当院を紹介受診された.初診時血液生化学検査で汎血球増加を認め,精査にて真性多血症(polycythemia vera;以下,PVと略記)と診断された.PVに対する治療は胃癌治療後より開始する方針とし,2014年5月に腹腔鏡下幽門側胃切除術,Billroth-I法再建を施行した.術後腹腔内出血を来したが,保存的加療にて軽快し,術後14日目に退院となった.PV合併患者は周術期の出血および塞栓症の発症リスクが高い.しかし,まれな疾患のため手術症例の報告が少なく,周術期管理に関する明確なガイドラインが定まっていない.今回,PVを合併した胃幽門部早期癌に対し,腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.

  • 紙谷 直毅, 高 済峯, 松阪 正訓, 向川 智英, 石川 博文, 渡辺 明彦, 田村 智美
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 206-212
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は75歳の男性で,5年前に腹痛を主訴に近医を受診し,虚血性腸炎の診断で入院加療となった.入院時の腹部CTで,門脈直下での上腸間膜静脈の閉塞を指摘されていたが,原疾患の改善後は経過観察となっていた.1年前から吐下血を反復するようになり,上下部消化管内視鏡検査を施行するも出血源が同定できず,精査加療目的に当院内科へ紹介となった.腹部CTで上腸間膜静脈の閉塞と十二指腸水平脚に著明な静脈瘤を認め,主出血源と考えられた.最大径の回盲部の動静脈奇形に対してコイル塞栓術を施行したが,顕性の下血が持続し,手術加療目的に当科へ紹介となった.出血部位の切除と門脈の減圧を目的に,膵頭十二指腸切除術,回盲部切除術,上腸間膜静脈閉塞部切除,右外腸骨静脈グラフト間置による血行再建を施行した.術後1年半の経過で消化管出血の再燃は認めていない.過去に同様の報告例を認めず報告する.

  • 小松原 春菜, 栗山 直久, 飯澤 祐介, 加藤 宏之, 安積 良紀, 岸和田 昌之, 水野 修吾, 臼井 正信, 櫻井 洋至, 小塚 祐司 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 213-221
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は64歳の男性で,閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージ後に当院紹介となった.血液,画像検査から肝門部胆管癌が疑われたが,精査期間中に胆管狭窄像は自然軽快した.また,血清IgG4値の軽度上昇から,IgG4関連硬化性胆管炎が疑われた.1か月後の再評価時に胆管再狭窄像を認め,PETで胆管狭窄部,胆囊壁,肝十二指腸間膜リンパ節に高集積を認めたため悪性腫瘍を否定できず開腹手術を施行した.術中迅速診断で腫大リンパ節,胆囊管断端に悪性所見を認めず,胆囊摘出術のみで手術を終了した.胆囊壁には高度硝子線維増生とIgG4陽性形質細胞増加を認め,臨床経過と合わせてhyalinizing cholecystitis(以下,HCと略記)合併IgG4関連硬化性胆管炎と最終診断した.HC合併IgG4関連硬化性胆管炎の報告は本例がはじめてと考えられ,胆囊壁の病理学的所見が診断の一助となる症例も存在する可能性が示唆された.

  • 竹浪 努, 中川 圭, 橘 知睦, 藪内 伸一, 唐澤 秀明, 片寄 友, 元井 冬彦, 内藤 剛, 藤島 史喜, 海野 倫明
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 222-230
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は61歳の女性で,心窩部不快感を主訴に精査を行い,胆囊腫瘤と巨大なリンパ節腫大を認めた.リンパ節が肝動脈に接しており切除困難な進行胆囊癌と診断され,gemcitabine/cisplatin療法(以下,GC療法と略記)を開始した.化学療法2コース終了後のCTでリンパ節は著明に縮小し,4コース終了時には画像上不明瞭化した.審査腹腔鏡を施行したところ,肝転移および腹膜播種を認めず切除の方針とした.開腹所見では,胆囊腫瘍は明らかでなく,広範なリンパ節の瘢痕化を認めた.術後早期からの化学療法の再開を企図して,化学療法前の浸潤範囲の包括的切除にこだわらず,手術侵襲を最小限にし,かつ切離面の陰性を期待できる術式として胆囊摘出・肝外胆管切除・下大静脈楔状切除を選択した.胆囊とリンパ節ではviableな細胞が散見されたが,剥離面は陰性であった.術後にGC療法を12コース施行し,現在24か月無再発生存中である.

  • 大山 真, 萱島 寛人, 原田 昇, 前田 貴司, 今井 大祐, 増田 隆伸, 山口 将平, 松山 歩, 筒井 信一, 谷 千尋, 柿沢 秀 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は82歳の男性で,14年前に十二指腸乳頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行された.術後補助化学療法は施行されなかった.心窩部痛を主訴に造影CTを施行したところ,上腸間膜動静脈に広範に浸潤した腫瘍を認め,腫瘍による門脈閉塞と側副血行路の発達および挙上空腸静脈瘤を指摘された.化学療法を開始するも難治性下血にて入退院を繰り返し,継続困難であった.解剖学的な問題より内視鏡的治療や経皮的血管内治療が困難な状況であったこと,腫瘍の鑑別診断として,残膵癌,乳頭部癌再発,悪性リンパ腫が疑われて腫瘍生検が必要であったこと,術前に挙上空腸静脈瘤への流入血管および胃冠状静脈を介した門脈供給路を各々同定できたことから,開腹下に挙上空腸静脈瘤を塞栓した.3D-CTによる術前シミュレーションに基づいて開腹で直視下に原因血管より塞栓術を施行して止血可能であった肝門部挙上空腸静脈瘤の1症例を経験したので報告する.

  • 鈴木 優美, 平松 聖史, 雨宮 剛, 後藤 秀成, 関 崇, 新井 利幸
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は17歳の女性で,腹部打撲後の心窩部痛,嘔気を主訴に当科を受診した.左上腹部に小児頭大の腫瘤を触知し,CTで膵尾部に84×75 mmの境界明瞭平滑で内部に不均一な造影効果を伴う腫瘤を認めた.MRIのT2強調像で低信号と高信号が混在し,T1強調像では高信号に乏しく出血を伴う充実性腫瘍が疑われた.画像所見・年齢・性別から膵solid-pseudopapillary neoplasm(以下,SPNと略記)と診断し,膵体尾部切除術を施行した.術中横行結腸間膜に白色結節を認めたため合併切除した.病理組織学的に主病変は膵SPNと診断,合併切除した白色結節も原発巣と同様の組織像を認め,SPNの腹膜播種と診断した.術後経過良好で軽快退院し,現在外来通院中である.

  • 大久保 悟志, 加藤 祐一郎, 工藤 雅史, 相澤 栄俊, 高橋 大五郎, 西田 保則, 中山 雄介, 後藤田 直人, 高橋 進一郎, 小嶋 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は54歳の女性で,黄疸を主訴に当科を紹介受診した.腹部造影CTでは下部胆管に25 mm大の壁肥厚・濃染部位のほか,膵体尾部に不均一な造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた.下部胆管病変と膵体尾部病変は画像上明らかな連続性は認められず,下部胆管癌および膵体尾部浸潤性膵管癌と診断し,膵全摘術を施行した.切除標本の肉眼的所見では主膵管と下部胆管は十二指腸壁外での交通を認め膵・胆管合流異常の所見であった.病理組織学的検査所見では異型の強い腫瘍性上皮が複雑な乳頭状増殖を呈しており,膵胆管合流部を通じて下部胆管病変と膵管内病変の連続性を認めた.腫瘍の形態および分布,免疫染色検査の結果より膵胆道型の膵管内乳頭粘液性腺癌と診断し,下部胆管病変は腫瘍の胆管進展と判断した.経過良好で術後9日目に軽快退院された後,術後6か月無再発生存中である.

  • 渡部 晶之, 佐瀬 善一郎, 多田 武志, 花山 寛之, 佐藤 哲, 遠藤 久仁, 木村 隆, 大須賀 文彦, 見城 明, 鈴木 剛, 後藤 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 3 号 p. 254-261
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2017/03/24
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     症例は62歳の男性で,乗用車とトラックとの間に体幹を挟まれ受傷し,ドクターヘリで当院へ搬送された.腹腔内出血による出血性ショックの診断で,受傷2時間後に緊急手術を行った.門脈が脾静脈分岐部末梢で上腸間膜静脈と完全に離断していたが,門脈の直接縫合再建は困難であったため,右大伏在静脈によるグラフト再建術を行った.再建後,小腸の色調不良を呈していたため,翌日2nd look operationを行い,腸管の色調改善と肝内・外の門脈血流を確認した.術後68日目に退院となった.外傷性肝外門脈損傷は非常にまれであり報告例も少なく,その死亡率は高いとされている.治療法には,縫合術,結紮術,グラフト置換術,門脈-下大静脈シャント術が主に行われているが,本邦ではグラフト再建にて救命した報告はなかった.門脈損傷の直接縫合が不可能な場合でも循環動態が保たれていれば,グラフト再建も積極的に施行すべきと考えられた.

特別寄稿
編集後記
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