日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
50 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集:第50巻記念
原著
  • 松井 あや, 細井 勇人, 鯉沼 潤吉, 狭間 一明, 岩井 和浩, 平野 聡
    原稿種別: 原著
    2017 年 50 巻 5 号 p. 339-349
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     目的:合成吸収性癒着防止剤(セプラフィルム®;以下,癒着防止剤と略記)の大腸癌術後腸閉塞に対する発症予防効果を明らかにする.方法:原発巣切除を施行した大腸癌583症例を,創下へ癒着防止剤を使用したSF群(n=316)と使用しなかったcontrol群(n=267)で,腸閉塞の頻度・発症形式・治療内容・再開腹時所見を後方視的に比較・検討した.さらに,多変量解析で腸閉塞発症に関連する因子を解析した.結果:両群の術後合併症・在院日数・腫瘍学的転帰に有意差はなかった.腸閉塞はSF群で27例(4.6%),control群で29例(4.9%)に発症し(P=0.397),それぞれ7例,8例に手術を要した(P=1.000).このうち各群2例が創への癒着が原因だった(P=0.625).各群で再開腹時の手術創に対する癒着の有無・程度に有意差はなかった.多変量解析で,American Society of Anesthesiologists(ASA)スコア・body mass index・腹部手術の既往・直腸癌・手術時間・術中出血量・開腹手術・人工肛門造設・癒着防止剤使用のうち,人工肛門造設のみが腸閉塞に対する有意な関連を示した(ハザード比2.68,95%信頼区間1.21~5.96).結語:創への癒着に起因する腸閉塞は少なく,今回の検討で癒着防止剤による有意な腸閉塞発症予防効果は示されなかった.

症例報告
  • 朴 正勝, 山本 和義, 西川 和宏, 平尾 素宏, 三宅 正和, 濱 直樹, 宮本 敦史, 池田 正孝, 中森 正二, 関本 貢嗣
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 350-356
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は73歳の男性で,食欲不振を主訴に近医を受診し,精査で腹膜播種を伴う長径20 cmの胃粘膜下腫瘍を認めた.生検結果よりgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断され,imatinib mesylate(以下,imatinibと略記)の投与開始となった.腫瘍縮小効果(縮小率:45%)を認めたが,腫瘍壊死による胃内腔との瘻孔形成により治療継続困難となり,感染コントロール目的に手術となった.腫瘍は炎症により隣接臓器と強固に癒着しており,噴門側胃切除および横行結腸,膵体尾部,脾臓合併切除を施行した.また,可及的に腹膜播種切除も行った.切除検体の病理組織診断で腫瘍は消失し,病理学的完全奏効であった.術後45日目よりimatinibを再開,現在術後18か月を経過し,無再発生存中である.

  • 松山 純子, 山本 学, 田口 健一, 上江冽 一平, 河野 浩幸, 吉田 大輔, 南 一仁, 池部 正彦, 森田 勝, 藤 也寸志
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 357-363
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は24歳の女性で,心窩部痛を主訴に上部消化管内視鏡検査を行ったところ胃体下部前壁にsubmucosal tumor(SMT)様の腫瘍および胃体下部小彎側に褪色調のIIc病変,前庭部に点状白色調病変を認め,いずれも生検にてsignet ring cell carcinomaと診断された.胃全摘術を施行したところ,胃の全割病理組織学的検査にて主病変以外に計182個の胃粘膜病変を認め,全てsignet ring cell carcinomaであった.家族歴は,祖母と父に若年発症の胃癌があり家族性発症が強く疑われた.本症例は,家族内集積のある若年発症の多発胃癌であり,遺伝性が強く疑われる興味深い症例と考えられた.

  • 神野 孝徳, 久留宮 康浩, 世古口 英, 小林 聡, 河合 清貴, 桐山 宗泰
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 364-371
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は61歳の男性で,胃癌に対し幽門側胃切除D2郭清術を施行した.術後化学療法としてS-1の内服を開始した.術後12か月で傍大動脈リンパ節再発を認めた.S-1+paclitaxel(PAC)療法,S-1+docetaxel(DOC)療法を施行したが,CEA値は上昇したため,irinotecan(以下,CPT-11と略記)+cisplatin(以下,CDDPと略記)療法に変更した.変更後CEA値は低下し,傍大動脈リンパ節は縮小した.他に再発を認めなかったため,初回手術から2年後に傍大動脈リンパ節郭清術を施行した.術後CPT-11+CDDP療法を3サイクル施行し,リンパ節郭清術後5年経過した現在無再発生存中である.胃癌術後の傍大動脈リンパ節再発は,化学療法と切除を組み合わせることにより予後の延長や根治できる症例が存在するため,その適応や治療方針に関し今後さらなる症例の集積と検討が必要である.

  • 上里 安範, 砂川 宏樹, 西巻 正
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 372-378
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     今回,我々は十二指腸粘膜内癌に対して腹腔鏡補助下膵温存十二指腸全摘術(laparoscopic assisted panceras preserving total duodenectomy;LAPPTD)を施行したので報告する.症例は64歳の男性で,上部内視鏡検査で十二指腸ファーター乳頭近傍に全周性の粘膜異常を認めた.生検では明らかな悪性所見は認めなかった.病変部位と範囲より外科的十二指腸全摘の方針とした.内視鏡所見より悪性だったとしても粘膜内癌であると思われ,リンパ節郭清は必要ないと判断した.5 portで手術を開始し,十二指腸受動,胃幽門および上部空腸切離を腹腔鏡下で行った後,上腹部に小開腹を置いて十二指腸摘出,胆管空腸吻合,膵管空腸吻合を施行した.手術時間は11時間10分,出血量は310 mlだった.術後の経過は概ね良好だった.病理結果はduodenal cancer,深達度はMだった.術後2年6か月現在無再発で経過している.

  • 盛 直生, 櫻井 直樹, 飯澤 肇, 緒形 真也
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 379-385
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は45歳の女性で,特発性血小板減少性紫斑病の診断で当院血液内科にて加療を受けていたが,内科的な治療に抵抗性のため外科へ紹介になり,2014年8月にhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)による脾臓摘出術を行った.術後経過は良好で第6病日目に退院した.術後門脈血栓および脾動脈瘤の検索目的で行った第17病日目の造影CTで肝内に多発する動脈瘤を認めた.Segmental arterial mediolysis(以下,SAMと略記)を疑い,全身検索を行ったところ,肝内の動脈瘤以外には病変を認めなかった.摘出した脾臓の病理組織検査の結果,脾門部の動脈内に空泡変性が認められたためSAMと診断し,肝内動脈瘤はSAMによるものと判断した.患者および家族と相談し,造影CTによる定期的な経過観察を行っていたところ,約10か月後のCTで肝内動脈瘤は画像上消失していた.

  • 林 英司, 岡田 禎人, 高橋 洋平, 島田 聡子
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 386-392
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     胆道原発顆粒細胞腫は極めてまれである.今回,我々は肝門部胆管癌と術前に鑑別困難であった肝門部胆管顆粒細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は38歳の女性で,健診の腹部超音波検査で左肝内胆管拡張を指摘され当院へ精査目的で紹介された.腹部造影CTで肝左葉の著明な胆管拡張と左肝管に腫瘤像を認めた.ERCPで左肝管に結節型の著明な狭窄を認め,この上流側の著明な胆管拡張を認めた.生検で異型円柱上皮細胞を認め良悪性の判断はしえなかったが,肝門部胆管癌の術前診断で尾状葉合併左肝切除兼肝外胆管切除・胆道再建を行った.術後の病理組織学的検査で肝門部胆管顆粒細胞腫と診断された.術後経過は良好であり,術後1年半の現在までに再発を認めていない.我々が文献検索したかぎりでは,胆道原発顆粒細胞腫の本邦報告例は本症例を含めて7例であり,肝門部胆管顆粒細胞腫の報告は本邦初である.

  • 東 勇気, 清水 康一, 渡邉 利史, 寺井 志郎, 川原 洋平, 天谷 公司, 寺田 逸郎, 山本 精一, 加治 正英, 前田 基一, 内 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 393-400
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は49歳の女性で,乳癌の術後経過観察目的に施行した胸腹部CTで総胆管拡張が指摘され,精査の結果,膵・胆管合流異常症に合併した胆囊癌・胆管癌との診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.遠位胆管癌と胆囊癌のいずれもpT1N0M0 Stage Iとの結果であった.術後1年6か月後に施行した腹部CTで残存膵に乏血性の病変を認め,原発性膵癌を疑い,脾合併残膵全摘術を施行した.病理組織学的検査所見では病変が膵内に不規則に分布し,拡張した膵管内には上皮内に乳頭状構造を示す異型上皮を認めた.また,免疫組織学的所見で染色パターンが,前回の遠位胆管癌と同様であったため,膵・胆管合流異常症を背景とした遠位胆管癌の共通管を介した膵管内播種による残膵再発と診断された.これまでに膵・胆管合流異常症の共通管を介して管内播種を来した報告はない.膵・胆管合流異常症に合併した胆道癌症例に関しては,共通管を介した膵管内播種再発の可能性も念頭におく必要がある.

  • 前田 真吾, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 吉岡 裕一郎, 奥野 正隆, 宮田 完志, 藤野 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 401-408
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は85歳の女性で,腹痛,下痢を主訴に当院を受診した.直近3か月に他疾患の治療や抗生剤使用歴はなかった.便の迅速検査でglutamate dehydrogenase(以下,GDHと略記)抗原は陽性であるもClostridium difficile(以下,CDと略記)toxinは陰性であったため感染性腸炎と診断された.入院4日目に腹痛が増悪し,腹部CTでfree airを認めた.同日,便培養検査でCDが検出され,同検体のCD toxinが陽性となったためCD腸炎による大腸穿孔と診断し手術を行った.横行結腸中央部からS状結腸に色調不良を,S状結腸に穿孔を認めたため,結腸左半切除,横行結腸人工肛門造設術を行った.他疾患の治療,抗生剤投与歴がなくても劇症型CD腸炎を発症することがある.また,CD toxinが陰性でもGDH抗原陽性でCD腸炎が疑われればCD腸炎の治療を開始すべきである.

  • 村木 隆太, 山本 真義, 石川 慎太郎, 川村 崇文, 小坂 隼人, 石松 久人, 原 竜平, 原田 岳, 倉地 清隆, 今野 弘之
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 5 号 p. 409-415
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー HTML

     症例は57歳の女性で,排便時の違和感を主訴に近医を受診した.直腸Rbに径10 mm大の粘膜下腫瘍を認め,同院にて内視鏡的粘膜切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査所見にて直腸神経内分泌腫瘍と診断され,当科紹介となった.術前に行った画像診断にて,石灰化を伴う左側方リンパ節転移が疑われたため,腹腔鏡下超低位前方切除術+左側方リンパ節郭清を施行した.摘出リンパ節の病理組織学的検査所見にて,直腸神経内分泌腫瘍G1の左側方リンパ節#263,#283への転移と診断された.自験例を加えた4例の側方リンパ節転移症例の検討から,腫瘍径や肉眼形態にかかわらず,術前のCT,MRIによる画像評価を行うことが重要であり,側方リンパ節転移が疑われる症例に対しては,直腸癌に準じた側方郭清を行うことで良好な予後が期待できるものと考えられた.

特別寄稿
編集後記
feedback
Top