日本消化器外科学会雑誌
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50 巻, 6 号
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症例報告
  • 横井 圭悟, 細田 桂, 片田 夏也, 山下 継史, 森谷 宏光, 三重野 浩朗, 大部 誠, 渡邊 昌彦
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 419-428
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は29歳の男性で,原発性縦隔大細胞型B細胞性悪性リンパ腫に対してR-CHOP療法,9か月後より放射線療法(上縦隔,対門照射,28 Gy斜入照射,2 Gy)を施行した.放射線療法終了後2か月で食事後のつかえ感が出現した.上部内視鏡所見では上部食道の完全閉塞であったため,内視鏡的拡張術は不可能であった.経口摂取は不可能であり,低栄養状態であったため,まず腸瘻造設術を施行し,1.5か月の経腸栄養を行ったのちに食道切除,胃管再建術を施行した.病理組織学的検査所見,臨床経過より放射線食道炎による食道閉塞と考えた.術後は良好に経過し,術後20日で退院した.放射線療法後に食道炎を認めることはしばしば経験するが,狭窄に至る例もまれにある.内視鏡的拡張術が不可能な放射線性食道閉塞で,悪性腫瘍も疑われるときは,全身状態が良好であれば,診断をかねて切除術を行う必要があると考える.

  • 前澤 幸男, 山内 美帆子, 佐藤 勉, 林 勉, 山本 直人, 大島 貴, 湯川 寛夫, 山中 正二, 吉川 貴己, 利野 靖, 益田 宗 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 429-436
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は60歳の男性で,早期胃癌と診断し腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術を施行(D1郭清)した.術後6年5か月のCTで総肝動脈周囲(No. 8a)リンパ節に孤立性の腫大を認め胃癌再発が疑われた.遠隔転移を認めず開腹No. 8aリンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査でカルチノイドと診断,PETや上下部消化管・小腸内視鏡検査を行ったが原発巣は不明であった.半年毎に画像検索し,リンパ節郭清後2年6か月の上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に粘膜下腫瘍を認め生検でカルチノイドと診断した.リンパ節郭清後2年7か月で開腹幽門側胃切除・十二指腸球部切除術(No. 5,12a,17リンパ節郭清)を施行した.病理組織学的検査でリンパ節転移は認めなかった.最大腫瘍径20 mm,核分裂像1個/HPF(high power field),MIB-1 index 2%でneuroendocrine tumor(NET)G1と診断した.リンパ節転移切除後30か月で原発巣が判明した症例を経験したので報告する.

  • 安井 七々子, 稲垣 優, 赤井 正明, 濱田 侑紀, 梶岡 裕紀, 北田 浩二, 徳永 尚之, 園部 宏, 岩垣 博巳
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 437-444
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は53歳の男性で,主訴は黄疸であった.腹部CTで肝内肝外胆管・主膵管の拡張,十二指腸乳頭部腫瘤を認めた.術前の生検では腺癌が疑われ,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織は上皮様細胞が充実性,索状に増殖し,腺管構造は認めず,免疫染色検査ではCD56(+),chromogranin A(−),synaptophysin(−)であった.腺癌や内分泌細胞癌は否定的で,未分化癌と診断した.最終診断は十二指腸乳頭部未分化癌,露出腫瘤型,15 mm,pT3a,pN0,pM0,pStage IIAであった.術後はS-1で補助化学療法を開始したが,肝転移・リンパ節転移を認め,gemcitabineとS-1併用療法に変更した.十二指腸乳頭部未分化癌は非常にまれで悪性度が高く予後不良である.予後改善には術後補助化学療法が有効とされるが,一定の見解はなく今後のさらなる検討が望まれる.

  • 浅野 大輔, 小澤 直子, 松田 祐輔, 西尾 勇一郎, 裴 有安, 馬場 裕信, 近藤 純由, 村山 忠雄, 星野 直明, 小野 千尋, ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 445-453
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は57歳の女性で,食中および食後の低血糖症状を主訴に当院を受診した.入院時の血液検査および内分泌ホルモン検査では明らかな異常を認めなかったが,経口および経静脈的ブドウ糖負荷試験において著明なインスリン過剰分泌と低血糖を認めた.絶食試験でも低血糖が誘発されたがインスリン過剰分泌は認めなかった.Dynamic CTにて膵尾部に腫瘍を認め,血管造影検査,および選択的動脈刺激静脈サンプリング(arterial stimulation venous sampling;ASVS)の結果と併せて糖反応性低血糖を呈する膵尾部単発性インスリノーマと診断し,同病変に対して腹腔鏡下脾動静脈温存脾温存膵尾部切除術を施行した.術中病変摘出直後に経静脈糖負荷試験を施行し,インスリン過剰分泌が消失したことを確認し,病変の完全摘出と判断した.糖反応性低血糖を呈するインスリノーマは非常にまれであり,同疾患に対して術中糖負荷試験を施行することが非常に有用であった1例を経験したので報告する.

  • 福田 純己, 鈴木 善法, 奥芝 俊一, 佐藤 大介, 山本 和幸, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 454-460
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は52歳の男性で,健診にて糖尿病とCA19-9の高値を指摘され当院受診した.CTで膵体部に33 mm大の不整形腫瘍を認め,総肝動脈・脾動脈根部および腹腔動脈周囲神経叢に浸潤しており,局所進行切除不能膵癌と診断した.化学療法の適応となり,FOLFIRINOX療法(オキサリプラチン:L-OHP,イリノテカン:CPT-11,フルオロウラシル:5-FU,レボホリナート:l-LV併用)を開始した.化学療法開始後から10か月のCTでは主病変の著明な縮小と,腹腔動脈神経叢浸潤の改善を認めたため根治切除を計画した.術中迅速病理検査で総肝動脈周囲組織に悪性所見がないことを確認し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査ではpStage I,Evans化学療法治療効果判定基準ではGrade IIIの診断となった.術後化学療法としてS-1療法を行い,術後6か月の現在も再発を認めていない.

  • 宮田 隆司, 岡村 行泰, 杉浦 禎一, 伊藤 貴明, 山本 有祐, 蘆田 良, 上村 直, 上坂 克彦
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 461-468
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は58歳の男性で,CTで上腸間膜動脈に180°未満の浸潤を疑う切除可能境界膵頭部癌の診断で紹介となり,術前化学放射線療法(neoadjuvant chemoradiation therapy;以下,NACRTと略記)(S-1(120 mg/day 4投2休1クール),RT 50.4 Gy/28日)を施行した.NACRT後,画像の効果判定は有効であったが,動脈浸潤部の所見は不変であった.開腹手術に臨んだが,1か所の肝転移を認め試験開腹術とした.術後はS-1療法を継続し,7クール後,腫瘍はさらに縮小し,新規病変も認めなかったため,膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的治療効果判定はGrade 4であった.術後はS-1による補助療法を施行し,現在,24か月無再発生存中である.近年,化学療法の進歩により,切除不能膵癌が画像上切除可能となる症例が散見される.本症例のように,切除を行い良好な成績が得られる症例もあるが,手術の適応や時期には一定の見解はなく,今後の症例集積が重要である.

  • 橋本 喜文, 中野 雅人, 亀山 仁史, 山田 沙季, 八木 亮磨, 田島 陽介, 岡村 拓磨, 中野 麻恵, 島田 能史, 若井 俊文
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 469-475
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は45歳の男性で,24歳時,家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis;以下,FAPと略記)に対して大腸全摘,W型回腸囊肛門吻合術(ileal pouch anal anastomosis;以下,IPAAと略記)が施行された.術後,38歳時に施行した経肛門的内視鏡検査で回腸囊内に約30個のポリープを認め,生検の結果,管状腺腫であった.44歳時に施行された経肛門的内視鏡検査で回腸囊肛門吻合部の約1 cm口側に8 mm大の0-Is病変を認め,内視鏡的粘膜切除術を行った.病理組織診断の結果,腺腫内癌,高分化管状腺癌であった.現在も経肛門的内視鏡検査で経過観察中であるが,癌の再発や異所性癌の発生は認めていない.FAPに対する大腸全摘,IPAAの術後,回腸囊内腺癌を認めた症例を経験した.早期発見・治療のためには,回腸囊の定期的なサーベイランスが重要である.

  • 佐藤 梨枝, 松田 信介, 小林 基之, 永井 盛太, 鈴木 英明
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 476-485
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は85歳の女性で,30年前に虫垂炎の手術歴がある.7年ほど前から徐々に増大する右下腹部腫瘤あり,腫瘤上の皮膚が自潰し粘液が流出してきたため受診した.CTでは回盲部に接し,80 mm大の囊胞性腫瘤を認め,腫瘤は腹壁を貫き皮下に連続していた.MRIでは腫瘤の内部に充実性成分を示す結節を認めた.遺残虫垂原発の粘液癌を疑い手術を施行した.腹壁,回盲部と一塊となった粘液貯留囊胞様の腫瘤がみられ,腹壁合併回盲部切除を施行した.腹壁欠損部は外側大腿回旋動脈下行枝を血管柄とする有茎大腿外側広筋皮弁で再建した.摘出標本では大量の粘液を入れる囊胞性病変で皮下に浸潤していたが,回盲部への浸潤はなく,遺残虫垂は同定できなかった.病理組織学的検索では線維性の壁を円柱上皮が被覆,壁の一部に高度異型を伴う乳頭状増殖を認めた.免疫染色検査ではCDX-2,CK20,CK7がともに陽性であり,遺残虫垂原発の粘液癌と診断した.

  • 舘野 佑樹
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 486-491
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     6度の反復性結腸憩室炎の既往がある挙児希望女性に対し,待機的腹腔鏡下結腸切除術を施行し,妊孕性を保持しえた症例を経験した.ガイドラインでは,反復性結腸憩室炎に対する待機的結腸切除術は再発回数や重症度によってのみでなく,症例毎の状況で決定することとされているが,一致した見解はない.加えて,挙児希望女性への治療方針も一致した見解がないのが現状である.憩室炎の好発年齢が出産年齢より高齢であり,症例が少ないことも理由の一つと考えられるが,近年の出産年齢上昇で本症例のような症例の頻度は増加する可能性がある.本症例を通して,挙児希望女性の反復性結腸憩室炎に対する待機的結腸切除術の手術適応,術式に関し検討を行い,報告する.

  • 赤塚 昌子, 中島 隆善, 生田 真一, 竹中 雄也, 相原 司, 栁 秀憲, 覚野 綾子, 山中 若樹
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 492-498
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     症例は80歳の女性で,主要動脈浸潤を伴う切除不能膵体部癌の診断で化学療法を開始した.治療開始約1か月後に腹痛,腹部膨満を主訴にショック状態で救急搬送となった.膵癌腹膜播種もしくは原発性S状結腸癌によるS状結腸の狭窄を原因とする腸閉塞と診断し緊急で人工肛門造設術を施行した.術後に外来化学療法を再開したが,ヘルニアを合併したストーマ管理が困難となったため,腹腔鏡下S状結腸切除術および人工肛門閉鎖術を行い,狭窄病変を切除した.切除標本の病理組織学検査で腸管被覆上皮に異型細胞を認めず,粘膜下層から漿膜下層にかけて中分化型の腺癌細胞が認められた.さらに,免疫組織化学染色検査ではCK7陽性,CK20陰性,CK19陽性,CA19-9陽性を示し,膵体部癌のS状結腸転移と診断した.膵癌結腸転移はまれであり本症例を報告する.

  • 平田 晃弘, 池内 浩基, 坂東 俊宏, 蝶野 晃弘, 佐々木 寛文, 堀尾 勇規, 廣田 誠一, 井出 良浩, 内野 基
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 499-505
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
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     難治性の潰瘍性大腸炎に対して,大腸全摘・J型回腸囊肛門管吻合術(ileal J-pouch anal canal anastomosis;以下,IACAと略記)を施行後,16年目に残存肛門管粘膜から発癌を認めた1例を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,42歳時に一期的にIACAを行った.回腸囊炎を2,3年に1回合併する以外は,良好に経過しており,不定期にJ-pouchおよび残存肛門管の内視鏡検査が行われていた.肛門部の違和感を生じるようになり,内視鏡検査を行ったところ残存肛門管に3型の腫瘍を認め,生検で粘液癌と診断されたため,腹会陰式J型回腸囊・残存肛門管切断術を行った.最終的なStageはIIIbであり,術後補助化学療法を行い,現在のところ12か月経過しているが,再発を認めていない.術前の手術適応が癌またはdysplasiaであった症例の残存肛門管癌の症例報告は散見されるが,難治で手術を行った症例の残存肛門管の発癌症例は極めてまれであり,報告する.

  • 新庄 幸子, 福原 研一朗, 高台 真太郎, 浦田 順久, 西岡 孝芳, 大畑 和則
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 6 号 p. 506-512
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/21
    ジャーナル フリー HTML

     症例は54歳の男性で,腹壁瘢痕ヘルニアに対してメッシュによる修復術を施行した.術32日の浸出液よりPseudomonas aeruginosa,methicillin-resistant Staphylococcus aureusが検出され,創離開を来したため,術39日目にデブリードマンを行った.貯留していた凝血塊と浸出液を洗浄し,不良肉芽を可及的に除去した.メッシュに破損はなく,メッシュは除去せずに翌日より持続陰圧吸引療法(vacuum-assisted closure therapy;以下,VAC療法と略記)を開始した.施行中,白血球増多やCRP上昇などの炎症反応の増悪は認めなかった.創部は徐々に肉芽が増生し閉鎖した.1年が経過した現在,ヘルニアの再発や感染の再燃徴候なく経過している.今回,腹壁瘢痕ヘルニア術後の創感染に対してVAC療法が奏効しメッシュを温存しえた1例を経験したので報告する.

編集後記
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