日本消化器外科学会雑誌
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55 巻, 9 号
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原著
  • 三野 和宏, 植村 一仁, 深澤 拓夢, 鈴木 琢士, 齋藤 智哉, 白川 智沙斗, 吉田 拓人, 大畑 多嘉宣, 小丹枝 裕二, 川村 秀 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 9 号 p. 537-548
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    目的:急性胆囊炎に対する経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage;以下,PTGBDと略記)後から胆囊摘出術(以下,胆摘と略記)までの至適な待機期間(以下,待機期間と略記)に関しては,一定の見解が得られていない.待機期間と手術難易度の関連を評価し,至適な待機期間選定に関して検討を加えた.方法:当院でPTGBD後に胆摘を行った85例を対象とし,手術難易度と待機期間およびその他の因子との関連を後方視的に評価した.待機期間の関与が示唆された評価項目に対し,待機期間のカットオフ値を2週間から8週間の間で設定し,ROC曲線で検出力を評価した.選定された待機期間と関連のある因子に関して検討を加えた.結果:胆囊頸部に対する自動縫合器閉鎖あるいはreconstituting,術中胆囊穿孔,術中胆囊頸部一塊所見あり,手術時間120分以上の症例で,有意に待機期間が長かった.これら4項目の検出力を満たす待機期間のカットオフ値として3週間が候補として挙がった.3週間前後で比較すると,3週間以上待機症例で重症胆囊炎が多く,胆囊の炎症が残存し,胆囊頸部一塊所見が多かった.結語:重症胆囊炎症例は,待機期間を要する症例が多く,待機期間を置いても手術難易度が高い状態が続くと考えられるため,慎重な手術操作や術後管理が要求される.

症例報告
  • 香川 正樹, 池部 正彦, 中ノ子 智徳, 上原 英雄, 杉山 雅彦, 太田 光彦, 森田 勝, 竹之山 光広, 井上 要二郎, 藤 也寸志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 549-557
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    食道癌術後に気管膜様部穿孔と膿胸を発症し,手術と術後気道管理の工夫によって救命した1例を経験した.症例は65歳の男性で,食道癌Stage IIと診断し,術前化学療法後に胸腔鏡下食道亜全摘,胃管による胸骨後経路再建術を施行した.術後7日目に縫合不全を認め,保存的に加療した.術後10日目の胸部CTで右胸腔に被包化された胸水を認め,膿胸と診断した.術後14日目の気管支鏡検査で気管膜様部に3か所の穿孔を認め,遅発性気管膜様部穿孔と診断し,頸部食道瘻造設術,胸壁前胃管空置術,筋弁被覆術,開窓術を施行した.術後はダブルルーメンチューブで気道管理を行い,別々の人工呼吸器を用いて分離肺換気とした.次第に穿孔部は上皮化し,再手術後44日目に抜管した.初回手術より94日目に胸郭形成術を,153日目に遊離空腸を用いた再建術を施行し,196日目に退院した.

  • 篠塚 美有, 阪井 満, 平山 泰地, 高島 幹展, 鈴木 亮太, 斎藤 悠文, 鈴木 雄之典, 末岡 智, 村井 俊文, 橋本 昌司, 中 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 558-567
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    症例は83歳の女性で,上行結腸癌術後5年目に行った造影CTにて,肝S5とS4にまたがる部位に動脈相で軽度造影され門脈相で肝実質よりも弱い造影効果を呈する14 mm大の腫瘍を認めた.肝原発の悪性腫瘍もしくは転移性腫瘍を否定できず,腹腔鏡下肝S5・S4a区域切除術を施行した.病理組織学的検査ではリンパ上皮腫様癌を認め,全身検索にて原発巣となりうる病変が確認されなかったことから肝原発と診断した.術後1年目のCTにて肝十二指腸間膜近傍に43 mm大のリンパ節腫大を認めた.超音波内視鏡下生検の結果,リンパ上皮腫様癌の転移と診断した.他に明らかな転移所見を認めずリンパ節再発巣に対して放射線治療を施行した.治療後,腫瘍は消失し,以後6か月間再発を認めていない.肝原発リンパ上皮腫様癌は非常にまれであり,その治療方針は確立されていない.今後の症例の集積が待たれる.

  • 地主 皓一, 清水 潤三, 山下 雅史, 能浦 真吾, 川瀬 朋乃, 今村 博司, 冨田 尚裕, 堂野 恵三
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 568-574
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    症例は80歳の男性で,胆石性胆管炎の診断で内視鏡的結石除去術を試みたところ総胆管結石が固く,砕石できずにバスケット鉗子が総胆管内の乳頭直上に嵌頓した.透視下にエンドトリプターなどを使用するも嵌頓の解除は困難であり,嵌頓解除目的に当科に紹介となった.手術は開腹後,胆管切開し,鉗子で採石具の把持を試みるも困難であったため,胆道ブジーを行う方針とした.胆道ブジーにて乳頭部を拡張させると,採石具と結石は十二指腸内に落ち込み摘出することに成功した.Tチューブを留置し,閉腹した.バスケット鉗子嵌頓の発生率は0.8~5.9%と報告されている.胆管切開からバスケット鉗子を引き出せない場合は,胆道ブジーは有用な手段と考えられた.

  • 伊藤 量吾, 服部 正興, 岩清水 寿徳, 小澤 千尋, 篠原 健太郎, 平田 明裕, 青野 景也, 吉原 基
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 575-582
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    症例は15歳の女性で,腹痛と腹部膨満のため近医を受診し,腸閉塞の診断で当院に紹介となった.腹部造影CTで右側結腸の拡張とwhirl signを認め,結腸軸捻症として内視鏡下に整復した.再構築した3DCTで,S状結腸が腹部正中を走行し,下行結腸が腸管軸方向に約270°捻転していたため,persistent descending mesocolon(以下,PDMと略記)による下行結腸軸捻症と診断した.軸捻を繰り返したため,腸管減圧と捻転予防目的に経肛門イレウス管を挿入し,待機的腹腔鏡下結腸固定術を行った.大動脈左側を走行するS状結腸と小腸間膜の癒着を切離し,結腸を脾彎曲部からS-D junctionを形成するように左側腹壁に固定した.術後6か月現在,再発なく外来経過観察中である.今回,我々はPDMによる下行結腸軸捻症に対し,腹腔鏡下結腸固定術を行った1例を経験したので報告する.

  • 坂本 聡子, 森川 充洋, 前川 展廣, 呉林 秀崇, 澤井 利次, 小練 研司, 玉木 雅人, 村上 真, 廣野 靖夫, 今村 好章, 五 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 583-590
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    症例は56歳の女性で,2013年に他院で下行結腸の0-Isp病変に対して内視鏡的粘膜切除術が施行された.病理診断は腺腫内腺癌で,分割切除のため断端不明であった.4か月後に再検査を施行し,粘膜切除瘢痕部に腺腫病変の再発が確認された.手術を勧められたが,自己判断で通院中断となっていた.2017年に施行された大腸内視鏡検査で,前回瘢痕部に1型腫瘍が確認され生検で高分化腺癌と診断された.当科に紹介初診され,腹腔鏡下結腸左半切除術(D3)を施行した.病理検査ではadenosquamous carcinoma with adenoma component,T1b(SM massive),n0,ly0,v0であり,stage Iの最終診断となった.術後補助化学療法は施行せず術後4年1か月再発は認めていない.大腸癌における腺腫成分を伴う腺扁平上皮癌の症例は非常にまれであり自験例について報告する.

  • 近森 健太郎, 岡田 倫明, 河田 健二, 山田 洋介, 岡村 亮輔, 板谷 喜朗, 肥田 侯矢, 小濵 和貴
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 591-599
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/30
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    肛門周囲の上皮内に隣接臓器癌が進展しPaget病様の組織像を呈する現象をPagetoid spreadと呼ぶ.症例は84歳の女性で,主訴は肛門周囲の発赤であった.内視鏡で直腸癌を認め,肛門周囲皮膚の生検と免疫染色検査の結果から直腸癌由来のPagetoid spreadが考えられ,ロボット支援下直腸切断術と肛門周囲皮膚切除術を施行した.病理学的検討では肛門皮膚病変は直腸癌と連続しておらず,直腸癌とは別に肛門腺癌を認め,また肛門皮膚病変の免疫染色検査のプロファイルが直腸癌と一致せず,肛門腺癌と一致したため,肛門腺癌由来のPagetoid spreadと最終診断した.肛門腺癌はまれで,粘膜に病変を認めにくく,初期の発見は困難である.肛門周囲にPaget細胞を認めた場合,肛門腺癌によるPagetoid spreadの可能性を念頭に置き,免疫染色検査を含めた詳細な病理学的検討を行うことが重要である.

特別報告
編集後記
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