日本消化器外科学会雑誌
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56 巻, 4 号
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症例報告
  • 西野 将司, 浅野 大輔, 吉野 潤, 入江 工, 松永 史穂, 井垣 尊弘, 小郷 泰一, 長野 裕人, 加藤 俊介, 井ノ口 幹人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 189-198
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    症例は79歳の女性で,遠位胆管癌に対して2020年5月に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除を施行した.術後膵液瘻を認めたが保存的に軽快し術後26日で退院した.9月に40°Cの発熱および肝胆道系酵素の上昇を認め術後胆管炎として加療し軽快した.その後同様の症状で6回の入退院を繰り返した.腹部造影CTで経時的に肝外門脈狭窄の増悪および挙上空腸の側副血行路発達の所見を認め,門脈狭窄による求肝性静脈瘤からの出血にともなう胆管炎と診断した.翌年1月に経皮経肝門脈ステント留置ならびに挙上空腸側副血行路のコイル塞栓を施行した.処置後胆管炎の発症は見られず術後1年経過した現在,無再発生存中である.膵頭十二指腸切除後の胆管炎は頻度の高い合併症ではあるが,門脈合併切除を施行した場合には門脈狭窄を背景として胆管炎を発症する場合があり注意を要すると考えられた.

  • 平田 明裕, 服部 正興, 青野 景也, 山口 貴之, 野尻 基, 篠原 健太郎, 伊藤 量吾, 小澤 千尋, 岩清水 寿徳, 吉原 基
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    症例は89歳の女性で,嘔吐を主訴に救急外来を受診した.腹部CTで大坐骨孔ヘルニア嵌頓,閉鎖孔ヘルニア嵌頓により腸閉塞に陥っていたが用手整復により腸閉塞を改善させた.待機的に腹腔鏡下で大坐骨孔ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアを1枚のシート状メッシュを用いて,閉鎖神経を通過させるスリットを作成し同時修復した.閉鎖孔には閉鎖神経,動静脈が通過し,大坐骨孔周囲には尿管や坐骨神経,上下殿動脈などが走行するためこれらを損傷しないように注意が必要である.感染の危険がない場合には,腹腔鏡下のメッシュによる修復は,有効な治療法となりうると思われたので報告する.

  • 中村 彩乃, 中野 昌彦, 平川 雄介, 勝本 充, 中山 ひとみ, 大島 孝一, 赤木 由人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 206-213
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    超高齢化社会を迎えて高齢者大腸癌症例は増加している.また,これまでの抗癌剤,分子標的薬に加えて免疫チェックポイント阻害薬の登場で大腸癌の薬物療法は多岐にわたっている.今回,免疫チェックポイント阻害薬であるpembrolizumab(以下,Pembroと略記)が著効した高齢者大腸癌症例を経験したので報告する.症例は87歳の女性で,上行結腸癌に対して腹腔鏡補助下右結腸切除術を施行した.術後4か月目のCTで腹壁再発と播種病変を認めたので1次治療としてFOLFOXIRI+BEVを開始したところ,一時は全ての再発病変は縮小し痛みも軽減した.しかし,14コース後にCTで右側腹部腫瘤の再増大と他病変出現を認めた.そこで,2次治療としてPembro投与開始したところ著効した.27コース後に呼吸困難感や食欲低下などの症状を呈し,精査を行った.その結果,免疫関連副作用の診断で加療を行った.症状の改善を認めて治療の継続が可能となり,その後もpartial response(PR)を維持している.

  • 坂本 恭子, 岡林 剛史, 松井 信平, 清島 亮, 茂田 浩平, 真杉 洋平, 北川 雄光
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    症例は75歳の男性で,72歳時に横行結腸癌に対して腹腔鏡補助下結腸左半切除術を施行し病理組織学的診断はpT2N1,tub2,ly1,v2,pStage IIIaであった.術後補助療法としてUFT/UZEL6コース施行後再発なく経過していたが術後2年11か月目のCTで骨盤内腹膜播種再発が診断された.TEGAFIRI+Bev療法12コース施行後stable diseaseであり切除の方針となった.手術所見では直腸前壁漿膜面に結節を認め,低位前方切除術を施行した.病理組織学的所見では直腸結節は横行結腸癌の腹膜転移として矛盾しなかった.No. 251リンパ節に2個の転移リンパ節を認め,腹膜播種結節からのリンパ行性転移と考えられた.術後補助療法としてXELOX 3コース施行し以降無治療経過観察しているが,術後9年無再発生存中である.腹膜播種結節からのリンパ節転移は非常にまれであり報告する.

  • 西村 元伸, 上原 圭, 小倉 淳司, 村田 悠記, 小林 龍太朗, 水野 隆史, 宮田 一志, 横山 幸浩, 江畑 智希
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    近年,高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high;以下,MSI-Hと略記)切除不能大腸癌に対し,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitors;以下,ICIと略記)使用が推奨されている.今回,ICI投与後に根治切除を行ったborderline resectableの1例を経験したため報告する.S状結腸癌術後1年,前医で左下腹壁に浸潤する限局性腹壁再発を指摘された.RAS/BRAF野生型であり,一次治療としてFOLFIRI+panitumumabを施行し,縮小を認めたため切除の可能性を求めて当科を受診した.MSI-Hを呈しており,さらなる病勢制御のためにipilimumab+nivolumab併用療法を導入した.中間画像評価では5%の増大を示したため,3コースで終了し根治手術(腹壁腫瘍切除+リンパ節郭清+大腿筋膜腹壁再建)を施行した.病理結果は完全奏効で,術後補助療法は施行せず,無再発経過観察中である.

  • 針金 幸平, 根本 洋, 山野 格寿, 小森 啓正, 宮地 孟, 去川 秀樹, 志村 国彦, 矢澤 直樹, 宮前 拓
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 4 号 p. 229-238
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/25
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    傍胸骨孔横隔膜ヘルニア(parasternal diaphragmatic hernia;以下,PDHと略記)はMorgagni-Larreyヘルニアなどの名で呼ばれた,比較的まれな疾患である.今回,我々の腹腔鏡下の1手術例の報告に加え邦文,英文報告例の655例をレビューした.症例は83歳の女性で,嘔吐,脱水により入院し,PDH,胃十二指腸嵌頓と診断された.全身状態の改善後,腹腔鏡下でtension free法で修復し,術後の経過は良好であった.PDHは女性や肥満症例に多く発症する.過去には胸腔内の腫瘍と診断されることもあり,開胸手術が多く行われたが,CT診断で正診率は上昇し,最近は腹腔鏡手術が主流となっている.手術はtension free法が増加している.手術成績は良好で術後死亡率や術後再発は1%未満であった.

編集後記
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