日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
症例報告
  • 大島 一真, 田中 毅, 藤田 正博, 舩坂 好平, 芹澤 朗子, 秋元 信吾, 中内 雅也, 柴崎 晋, 稲葉 一樹, 宇山 一朗, 廣岡 ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 555-564
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    消化管手術後の縫合不全に対して,欧米ではフルカバードステント挿入による瘻孔閉鎖が多く報告されているが,本邦では保険収載がなく報告は少ない.今回食道胃接合部癌術後の縫合不全に対して,内視鏡的にフルカバードステントを留置して良好な経過を得られた症例を経験した.症例は49歳の男性で,食道胃接合部癌に対してロボット支援下部食道噴門側胃切除術を施行した.術後2日目に縫合不全を認め,術後9日目に胸腔鏡・腹腔鏡下洗浄ドレナージ,穿孔部の縫合閉鎖・大網被覆を行ったが再度縫合不全を認めた.炎症のコントロール不良であり術後27日目に内視鏡下にHanaroSTENT 18 mm×80 mmを挿入した.その後速やかに臨床症状の改善が得られ,瘻孔の縮小を確認してステントを抜去し,術後95日目に退院した.難治性縫合不全に対してフルカバードステント留置は保険適用外ではあるが,低侵襲で有用な治療選択肢である可能性が示唆された.

  • 山路 隆斗, 栗山 直久, 湯淺 浩行, 山本 雅人, 藤井 武宏, 飯澤 祐介, 村田 泰洋, 種村 彰洋, 岸和田 昌之, 林 昭伸, ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 565-574
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    十二指腸腫瘍に対する手術は,高度な技術が要求されることがある.今回,我々は下十二指腸角gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)に対して,術中内視鏡を併施した腹腔鏡下十二指腸局所切除術が有用であった1例を経験したので報告する.症例は65歳の男性で,末梢神経鞘腫瘍術後のCTで,下十二指腸角に膵頭部に接する腫瘤を指摘された.内視鏡検査でVater乳頭近傍に粘膜下腫瘤を認め,超音波検査で径15 mmの低エコー腫瘤として描出された.生検から十二指腸GISTと診断し,腹腔鏡下十二指腸局所切除術を施行した.術後経過は良好で,術後14日目に退院した.病理組織学的には low risk GISTで断端は陰性であった.Vater乳頭近傍に発生した十二指腸GISTに対して,本術式は膵頭十二指腸切除を回避することで臓器機能温存が可能であり,有用な術式と考えられた.

  • 岡本 行平, 宮田 陽一, 山本 理恵子, 谷 圭吾, 永井 元樹, 野村 幸博
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 575-582
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy;以下,LCと略記)施行時の,腹腔内の落下結石の遺残による膿瘍形成は注意すべき合併症の一つである.今回,我々はLC時の遺残結石により,腹腔内多発膿瘍を形成し治療に難渋した1例を経験したので報告する.症例は81歳の女性で,コントロール不良の糖尿病を合併しており,LC施行時に小結石が落下し可及的に回収した.術後2か月後に右側腹部痛を主訴に来院し,遺残結石を核とした腹腔内多発膿瘍を認めた.当初は保存加療を行ったが,治療抵抗性であり開腹結石除去,洗浄ドレナージを施行した.しかし,結石の完全除去は困難であり,腹腔内膿瘍の再燃を認めたため再ドレナージを要した.再手術後8か月後に画像上膿瘍の消失を確認でき,再手術後12か月の時点で膿瘍の再燃なく外来で経過観察中である.LC時に結石が落下し遺残した場合,特に膿瘍形成のリスクが高い症例では治療に難渋することもあり,初回手術時に落下結石の完全除去が重要である.

  • 山本 寛之, 佐藤 彰記, 木村 弘太郎, 櫛谷 洋樹, 山吹 匠, 高田 実, 加藤 健太郎, 安保 義恭, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 583-590
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    胆道出血は比較的まれだが,遭遇した場合に迅速な対応が求められる病態である.今回,我々は切除不能遠位胆管癌の化学療法施行中に胆道出血を来し,手術加療で根治を得られた症例を経験したので報告する.症例は77歳の男性で,肝逸脱酵素上昇の精査で総肝動脈神経叢に浸潤する遠位胆管癌の診断となった.化学療法を開始して1年4か月で,胆道出血の診断で緊急入院となった.非手術療法で止血を試みたが,止血は得られず手術加療の適応と判断された.しかし,画像上resectabilityは不変であったため,総肝動脈神経叢に悪性所見を認めなければ根治切除を目指す方針とした.術中迅速診断で総肝動脈神経叢の悪性所見が陰性であったため,膵頭十二指腸切除術を施行し病理結果から根治切除が得られた.切除不能遠位胆管癌の胆道出血に対する治療戦略として,根治切除にも配慮した手術治療が選択肢の一つとして考えられた.

  • 寺脇 平真, 川添 准矢, 椿山 正哉, 佐倉 悠介, 青山 諒平, 山田 真規, 横山 智至, 伊東 大輔, 山下 好人, 安近 健太郎, ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 591-597
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は42歳の女性で,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;以下,SLEと略記)のフォロー中に腹痛を主訴として当院救急外来を受診した.感染性腸炎の診断で入院となり保存加療が行われたが,2日後に腹痛の増悪を認めた.CTで腸管壊死が疑われ,審査腹腔鏡手術を施行した.空腸から結腸全域にわたって広範な壊死所見を認め,小腸・結腸切除および小腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で術後59日目に退院となった.切除標本における病理組織診断はループス腸炎であった.ループス腸炎による腸管壊死や消化管穿孔はステロイドにより腹部症状がマスクされることに加え,免疫機能が低下していることが多く,致死率の高い病態である.SLE患者の腹部症状の増悪ではループス腸炎に伴う腸管壊死や穿孔を念頭に置いた早期診断と治療介入が重要であると考えられた.

  • 増井 亮太, 杉本 卓哉, 岩崎 寛智, 安里 嗣晴, 横溝 博
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 598-603
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    横行結腸の腸重積症は比較的まれであるが,胃の嵌入を伴った症例はさらに少ない.症例は68歳の男性で,前日からの腹痛,腹部膨満の増悪と嘔吐を主訴に当院に救急搬送された.来院時には発熱があり,腹部は板状硬を呈していたが,腹部造影CTでは腹腔内遊離ガス像はなく,左側結腸の腸重積を疑う所見と先進部の腫瘤性病変を認めた.また,胃の大彎側も重積部に嵌入して通過障害を来しており,緊急手術を行った.手術所見でも同様に,横行結腸の脾彎曲部から直腸までの腸重積を認め,胃体部の大彎側と大網の一部が重積部に巻き込まれていた.先進部の腫瘍については進行大腸癌を疑い,嵌入した胃,結腸を用手的に整復した後に結腸左半切除術,D2郭清を施行した.摘出した腫瘍の病理組織学的診断は平滑筋肉腫であった.

  • 瀬尾 信吾, 村尾 直樹, 吉良 孝之, 久原 佑太, 桑田 亜希, 中島 亨, 坂部 龍太郎, 布袋 裕士, 田原 浩
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 604-611
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は79歳の男性で,12年前に直腸癌(Ra)に対し開腹低位前方切除術が行われた.術後無再発にて経過していたが,1週間前からの排便困難を主訴に当院を受診し,腹部造影CTにて残存S状結腸に生じた結腸軸捻転症と診断した.内視鏡的整復術を施行するも改善を認めず,手術の方針とした.開腹すると,低位前方切除術時の左側結腸授動剥離面および郭清部への癒着が原因で残存S状結腸が捻転していた.低位前方切除術の吻合部は肛門に近く,腸切除やその後の再建は合併症リスクが高いと判断し,原因となった癒着剥離と癒着防止材の貼付を行い手術を終了した.現在まで術後1年4か月捻転の再発なく経過している.左側大腸癌手術の再建は,過長な遊離腸管の後腹膜固定など,術後の軸捻転予防に配慮する必要がある.また,左側大腸癌術後の軸捻転症に対する手術では,侵襲度と安全性を考慮のうえ,必ずしも腸管切除は行わず,適切な術式を選択する必要がある.

  • 小野(廣田) 礼, 梶原 由規, 鈴木 崇文, 神藤 英二, 永生 高広, 岡本 耕一, 山寺 勝人, 東 隆一, 松熊 晋, 岸 庸二, ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年58 巻10 号 p. 612-621
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は53歳の女性で,S状結腸癌による大腸閉塞にて転院搬送された.Coronavirus disease 2019(以下,COVID-19と略記)を併発していたが迅速な腸管減圧を要し,同日にS状結腸人工肛門を造設した.術後2日目に人工肛門周囲の皮膚の発赤,4日目から黒色調への変化,拡大傾向を認め,壊死性筋膜炎が疑われた.術後5日目に人工肛門部を含む壊死部腹壁の広範切除,回腸人工肛門とS状結腸粘液瘻の造設,筋皮弁にて腹壁再建を行った.病理組織学的に皮膚と皮下組織に広範な壊死性変化を認めた.術後は腹壁再建部周囲に紫斑の拡大を認めたが,新鮮凍結血漿やヘパリンの投与にて,壊死性変化の進行なく,再手術後40日で軽快退院した.人工肛門造設後の人工肛門周囲感染症は約0.9~8%程度で急激に壊死性変化に至ることはまれとされ,併存のCOVID-19による血栓形成傾向が病態の要因となった可能性が考えられた.

編集後記
feedback
Top