1. 家兎に沃化メチルあるいは塩化コバルトを注射すると高トリグリセライド(TG)血症が出現する。高TG血症発現における両者間の相違を比較検討するため,肝臓のCoA, Carnitineおよびそれらの誘導体,α-グリセロリン酸塩(α-GP), TGの各含有量の変化をしらべた。
2. 絶食群は正常食群に比べて,肝臓のCoA, acetyl-CoA, acyl-CoA, acylcarnitineの各含有量と,carnitine acetylation ratioが増加した。
3. 対照の絶食群と比較して,沃化メチル群の肝臓のcarnitine, acetylcarnitineが増加し,carnitine acylation ratioは減少したが,acetyl-CoA, acyl-CoA, acylcarnitineの各含有量には有意差は認められなかった。
4. pair-fed群と比較すると,塩化コバルト群の肝臓のacyl-CoA, carnitine, acetylcarnitineは増加し,carnitine acylation ratioは減少したが,CoA, acetyl-CoA, acylarnitineの各含有量には有意差は認められなかった。
5. carnitine acylation ratioは,正常食群と比較して,絶食群で増加し,沃化メチル群と塩化コバルト群では減少した。このratioの減少は,沃化メチル,塩化コバルトがいずれも肝臓の脂肪酸のエステル化を促進するように作用していることを示唆している。
6. 沃化メチルあるいは塩化コバルトを注射すると,肝臓のα-GPとacyl-CoAの含有量が増加した。両者の増加は,TGの合成に促進的に作用していることを示唆している。
7. 沃化メチルあるいは塩化コバルトは,家兎の高血糖と高TG血症を誘発したが,塩化コバルト注射家兎ではさらに血中インシュリンが増加した。他方,沃化メチルは血中インシュリン量には影響しないが肝臓の脂肪の蓄積をおこした。これらのことから,増加したインシュリンと血糖は,肝臓から血中へのTGの放出を促進することが示唆された。
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