これまでの試験では, 動物を長時間磁場へ入れれば, 抑制的あるいは一部賦活的な効果が見出された。しかし, 現実には長時間の連続曝露はあり難いので, 比較的短時間の曝露による作用の検出が望まれる。ここではカイウサギの生理的な反応の検出を試みた。
磁場の中で電気生理学的な記録を行うためには, 誘導電流によるノイズを可及的に小さくし, かつそれを識別することが必要である。このためリード線を短くする方法としてテレメータを用い, またダミーのループを作って他のリード線とともに平行に引いて, 誘導電流による電位が均等に乗るようにした。さらに, このノイズを1ch分別に記録して真の生体電位と比較することにした。
ウサギは無麻酔で, 知覚運動野と後頭部からの脳波及び心電図を2時間半連続して記録した。はじめの40分を曝露前とし, ついで33分間6,000 Oeの定常磁場へ曝露した。また, 誘発電位記録のために, 音, 光, あるいは電気で1回につき2秒毎に100回刺激した。タイミングは, 曝露前に10回, 曝露中は励磁直後, 5, 10, 20, 30分後, 曝露後は電流を切った直後, 5, 10, 20, 30, 45, 60分後とした。
脳波は, 100秒間のパワースペクトルを81本 (2時間15分) 連続して描出した。動きの少ないウサギでは知覚運動野に電位の変化は見出せない。動きの大きいウサギでは曝磁中の, 磁場の脳電位への直接の作用を判定することは困難である。聴性誘発反応, 視覚誘発電位, 体性感覚誘発電位は特に変化を見出せなかった。
誘発電位と同じタイミングで追った心拍数の変化は, 磁場中では著明な変動はないが, 曝露の後30∼45分間心拍数が増加した。これは, 強磁場への短時間の曝露による生体への刺激作用のためとみられる。
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