インフルエンザ様疾患のリスク因子を調べるため,1988/89年の最流行期直後に福岡県内I小学校(児童総数509人)において,イ様疾患の罹患状況調査と生活習慣調査を自記式調査票を用いて行い,症例・対照研究をデザインした。
インフルエンザ以外の急性熱性呼吸器疾患による症例群の希釈,及びインフルエンザの対照群への混入をできる限り避けるため,サーベランス事業による福岡県内のイ様疾患の報告患者数が最も集積した1ヶ月間に,観察期間を限定した。罹患情報をもとに,(1)無症状群(NS:観察期間中かぜ症状なし,欠席なし,医師受診なし),(2)軽インフルエンザ様疾患群(MILI:発熱38度以上39度未満,欠席あり,医師受診あり),(3)重インフルエンザ様疾患群(SILI:発熱39度以上,欠席あり,医師受診あり),の3群を設け,NS-MILI,NS-SILI間でχ
2検定による比較を行い,有意差を認めた因子につきUnconditional logistic regression modelにより計算を行って,オッズ比((OR)と95%信頼区間(95%CI)を求めた。
MILIの高リスク因子として,扁桃腺が腫れ易い(OR:3.2,95%CI:1.6-6.4),低リスク因子として,高学年(0.4,0.2-0.8),牛乳・乳製品の頻回摂取(0.5,0.3-1.0)を認めた。学年,牛乳・乳製品についてはTrendも有意であった。
SILIの高リスク因子として,扁桃腺が腫れ易い(3.3,1.4-7.9),低リスク因子として,高学年(0.1,0.1-0.3),排気筒なしのストーブ・ファンヒータの使用(0.4,0.2-0.9),予防接種(0.3,0.1-0.7)を認めた。学年,予防接種についてはTrendも有意であった。
学年,扁桃腺が腫れ易い,予防接種の3要因は互いに独立してSILIリスクと関連していることを認めた。排気筒なしのストーブ・ファンヒーターについての解釈としては,燃焼時発生水蒸気による湿度保持の影響が考えられる。
抄録全体を表示