人文地理
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58 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Special Issue
  • Kiyonori Kanasaka, Shii Okuno, Noboru Ogata, Masaki Takayama, Masato I ...
    2006 年 58 巻 6 号 p. 533-539
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
  • サヴェッジ ビクター R
    2006 年 58 巻 6 号 p. 540-556
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー

    地理学は75年に亘って大学の科目として教授されてきた。国立シンガポール大学地理学教室は十分整備された地理科学機関としてシンガポールで唯一のものである。最近15年間(1990–2005)について,本稿では主に地理学教室内のシンガポール出身者の人文地理学における貢献を検討する。

    本稿ではシンガポール大学地理学教室が,過去15年間に若い地理学者の加入によって再生をもたらしてきたこと,イギリス的研究システムからアメリカ的研究システムに大学が変わってきたこと,3人(ライリー・コング,ヘンリー・ユング,ブレンダ・ヨー)の地理学講座の研究者が,研究面で触媒的インパクトを与えてきたことを主張する。講座の人文地理学における研究成果は顕著なものであり,それは主に3つの領域への貢献に見られる。すなわち,国家,都市,また都市エコシステムとしてのシンガポール研究,また,ディアスポラ,移動とジェンダー問題,そしてグローバル・シティ,コスモポリタン人口,多国籍企業,グーバル-ローカル・ディアローグを論ずるグローバル化の種々の側面についてである。

  • 姜 蘭虹, 周 素卿
    2006 年 58 巻 6 号 p. 557-571
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー

    台湾の地理学者は,5つの地理学科とさまざまの社会科学および教育関係の諸学科に所属している。地理学者の数は少ないけれども,その研究業績は中国語による主要な5雑誌と英語圏のいくつかの国際的雑誌によく示されている。この論文では,上記の諸学科の発展を要約する他に,主要な大学に所属する地理学者の専門領域を紹介し,1996年から2005年までの研究業績を検討した。そして,人文地理学の発展を分析するために,計量文献学的なアプローチを用いた。この分析に関しては,人文地理学会の主題分類法を使用した。

    地理学的研究は英語圏の諸国,ことに台湾の地理学者の多くが学位を得たアメリカ合衆国やカナダのプラグマチックな研究動向の後を追うと同時に,台湾の社会変化を反映したものであった。地理学者は,人文地理学の新たなパラダイムに導かれながら,1990年代になると他の社会科学者と共同するようになり,その結果,研究者の関心はとりわけ経済,都市,社会,そして人口地理学などの異質の分野に分散することになった。実証的研究が多くを占めているけれども,研究された全てのテーマで社会的適切さが示された。人文地理学の将来の発展は,一層の学際的協力,海外の研究者との共同,そして伝統的な研究テーマと方法論を打破する若手研究者の実践にかかっている。

  • 白 善恵
    2006 年 58 巻 6 号 p. 572-587
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー

    韓国の近代地理学は,大韓地理学会が創立された1945年に始まったといえよう。その後の60年余りの歴史は決して長くはないけれども,韓国地理学は今日まで量的・質的に大きく成長してきた。韓国地理学のこうした発展によって,2000年には国際地理学会を誘致できたが,この大会は国際地理学の世界大会の歴史上最も優れたもののひとつであると評価されている。韓国地理学は1960年代以前,1970年代,1980年代,1990年代,2000年代の5つに分けて捉えられる。各時期はそれぞれ独自の特徴があるけれども,とりわけ2000年以後には急激な成長がみられる。韓国の社会は都市化,産業化,経済成長と,そして最近の文化的需要の増加などを経験しながら激しい空間的変化と問題とを抱えるようになったが,韓国の人文地理学は,このような国土の現実と問題点を分析して解決策を模索してきた。韓国人文地理学は学問的理論から政策に至るまでの幅広い研究成果を提出し,社会的にも学問的にも韓国社会に大きな役割を果たしている。

    この研究は,韓国人文地理学の発展過程を時期別に分けて概観し,最近の研究傾向を明らかにするとともに,最後に将来的展望を導こうとした。これらの目的のために,特に2000年以後の大韓地理学会誌に掲載された論文及び各大学地理関連の博士学位論文と,それから韓国地理学の発展過程に関する論文とを中心に検討した。

  • グエン カオ・フアン, 野間 晴雄, グエン ドック・カー, チャン アイン・トゥアン
    2006 年 58 巻 6 号 p. 588-605
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,ベトナム地理学の歴史を前近代の地理的知識の発達から現在の状況まで,その専門分野や方法・手法の変遷と制度や大学での地理学の教育から概観を試みることである。

    前近代は中国の地誌の影響を受け,国家の土地問題や地方行政制度に有用な地理的知識が蓄積され,それらに関連した地図も作成されたが,地誌の体裁は中国の伝統的な形式を超えるものではなかった。

    フランス植民地時代には旧来の地誌の形式を踏襲した自然,経済,歴史・政治地理,統計の4分法が用いられた。マスペロらによる古文書研究所での地名や歴史地理は注目される。自然地理学ではカルスト地形や洞窟学が考古学者や地質学者によって発達した。応用的な地理学分野としては工芸作物の適地利用,灌漑システム,気象観測所の適地調査,フランス人のためのヒルステーション立地などが研究された。

    1930年代になるとフランスの人文地理学の影響が顕著となり,ロブカンやグルーが北部ベトナムの地誌や土地利用研究で活躍した。とりわけグルーの『トンキンデルタの農民』(1936)は空中写真や詳細な地形図を駆使した不滅の業績であるが,第二次世界大戦以後のベトナム地理学では長く忘れられた存在であった。

    現代の地理学は1954年から75年までが一つの画期となる。モスクワ大学を頂点とするソビエト地理学の圧倒的な影響下にあって,地質学,地形学が中心となった。ベトナムの戦後第一世代の多くがこの時期に共産圏諸国の留学生によって占められた。1975年に南北ベトナムの統一が達成されたが,メコンデルタや中部の研究に特色が見いだされる。

    1986年以降のドイモイによる経済開放によって,アングロサクソン系地理学のさまざまな手法や概念が英語メディアを通じて徐々に入ってきたが,その歩みは遅々たるものだった。その間に,リモートセンシングやGISの手法による地域計画が国家事業の観点から重要な役割をにない,地理学の地位を高めた。

    大学における地理学はハノイ大学(現在はベトナム国家大学ハノイ校)の地質学・自然地理学を中心に,景観生態学や地形学,土地管理などの分野が中心の学部と,ハノイ教育大学,ホーチミン大学における経済地理,人文地理学中心のものに大別される。いずれもGIS,リモートセンシングなどを用いたツーリズムや応用地理学的な分野に特色を持つ。

    ベトナムの地理学会は1988年に設立され,ハノイ大学を中心として5年ごと大会を開催しているが,定期刊行物はない。ほかにベトナム国立科学技術アカデミーにも研究者がいて,天然資源,環境,災害が主要テーマとなっている。

    近年は「総合地理学」の名のもとに,人文地理学がベトナムでようやく力を持ち始めている。その対象とするのは人間が作った人文景観や中・小地域でのコミュニティ,都市・農村地理学で,現代ベトナム地理学の台風の目となろうとしている。その一方で,政策・計画や自然地理学と社会経済地理学を重視したソ連流の人文地理学も並存し重要視されている。

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