人文地理
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70 巻, 3 号
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研究ノート
  • 藍澤 淑雄
    2018 年 70 巻 3 号 p. 313-326
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    本論の目的は,アフリカ農民の零細鉱業へのかかわりに着目しながら,農民が零細鉱業を生計手段としてどのように捉えて活用しているのかについて明らかにすることである。このため,タンザニアのゲイタ鉱山地区を事例研究の対象とした。分析の結果,タンザニアのゲイタ鉱山地区の農民は必ずしも零細鉱業を安定的な生計手段とは捉えていないことがわかった。零細鉱業は重要な収入獲得の手段である一方で,農業が生存維持の基盤として不可欠であることが確認された。ゲイタ鉱山地区の農民は主に主食確保の手段として農業活動に従事している。零細鉱業の収入は農業に再投資されており,農業は生存リスクを吸収する生存維持手段となっている。そのため,農民は代替要員などを活用しながら,零細鉱業と農業を両立させている。

  • 竹中 克行
    2018 年 70 巻 3 号 p. 327-346
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    都市は,人や活動が集まることで,共同的な価値が生み出される空間である。都市を生活の場として共有する人々のつきあいが生活の質や満足感を高め,町に一体感を生む。本研究は,共同的な価値形成の核となる空間を「共同空間」とよび,それを成立させている顕示的・非顕示的な制度やプロセスについて,地中海都市のフィールド調査を通じて可視化する試みである。調査地として,カタルーニャ(スペイン)中山間地域の小都市ファルセットを選び,都市計画における共同空間の位置づけ,公道の商業利用や地役権設定に表れる私と公の接合,ハレの場面における屋外空間の共同利用という3つの角度から検討した。その結果,街路・広場,公園・緑地,施設など,都市空間の多様な設定のうちに共同空間としての働きを見出すことができた。しかし,同時に浮かび上がったのは,共同利用という機能が制度的・物理的に特定の空間に固定化されているとは限らないという事実である。そうした発見をふまえ,公的主体と私的主体のダイナミックな交渉と合意こそが共同空間の成立において基本的な意味をもつということを,本研究で得た主要な知見として示した。共同空間は,空間を共同利用する人々の行動と一体のものであり,そうした私的主体の経験の束なりに,都市の集合的アイデンティティを再確認する働きがあるのではないか。

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