全国で2006年度に制度化された地域包括ケアシステムにおいて中核的な拠点である地域包括支援センター(包括)は,高齢者人口の増加に伴って,近年とくに中規模の都市で設置数を増加させる動きが目立っている。本稿では,三重県鈴鹿市および亀山市を事例に,包括の空間的基盤をなす日常生活圏域の区割りと各包括の機能配置がいかに構築され,高齢者人口の増加に対応した圏域再編が,委託先の運営法人の異動を伴いながら,いかなる過程で進んだのかを,行政や関係する社会福祉法人,医療法人等の各アクターへの聞き取りや資料から詳細に明らかにした。包括が設置された2006年度当初の体制は,予算制約や受託法人の少なさから「鈴鹿4圏域/亀山1圏域」で始まり,その後もサブセンター等の設置による区域の細分化と機能の複層化は部分的な展開にとどまっていた。しかし,高齢者人口や対応事案の増加という需要面と,新たな法人の設立や既存法人の事業規模拡大という供給面での変化を背景に,2021年度に「鈴鹿8圏域/亀山2圏域」の計10圏域へ再編するとともに基幹型包括を新設するなど,全体として機能強化が図られた。ただし,圏域再編と包括の再配置自体は効果的な地域包括ケアシステムの構築を即座に保証するものではなく,新体制での各アクターの果たす役割が重要となる。とくに基幹型包括の運営を市社協に委託し,市というアクターの力が活用されていない点など,課題は残っている。