人文地理
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論説
  • 近藤 裕幸
    2022 年 74 巻 2 号 p. 111-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/19
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は,明治期から第二次世界大戦期において地理科が実業学校でどのような位置づけにあったのかを諸法令を用いて明らかにし,同時期に行われていた公民科や歴史科と比較することで,地理教育そのものの性格を明らかにしようとするものである。実業学校では,同じ中等教育に属する中学校・高等女学校と異なり,主に職業上必要とされた実業教育(職業教育)のための学科目である農業・工業・商業が重視され,地理科は必修学科目として扱われていなかった。一方,公民科は地理科よりも約20年も早く実業学校で必修化された。公民科が必修化された理由は,普通学科目の中でも公民科の教育内容が国家体制を支える上でとりわけ重要な意味を持っていたからであった。その後,地理科は歴史科とともに1937年に実業学校において必修化される。このことから1937年という年は日本の地理教育制度史において画期となる年と言えることがわかった。また,歴史教育や公民教育と比較することで,地理教育は戦時下においても客観性を重視しようとしていたことや,歴史教育との関係が深いことも明らかにできた。

研究ノート
  • 花木 宏直
    2022 年 74 巻 2 号 p. 133-154
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/19
    ジャーナル 認証あり

    本研究は近代沖縄における,土地整理事業以降の海外移民の送出の実態を再検討した。研究対象地域として,近代沖縄でも多数のブラジル移民を送出した羽地村仲尾次地区を選定し,聞き取りや「在伯日本移民歴史調査表」など移民個々人の動向が判明する資料を組み合わせ分析した。その結果,仲尾次地区では1903年の土地整理事業以降に出移民が増加し,近代を通じて多数の後継者や本家が海外を含む各地に移住していたことが確認された。そして,後継者は移住後に蓄財して帰郷し,出身地区の家産を相続する様子がみられた一方で,後継者の中には移住先にとどまり,子どもを教育目的で帰郷や残留させ,将来の移住先での世代交代に備える事例がみいだされた。さらに,本家が移住した場合についても,出身地区の血縁関係者が家産を継承するだけでなく,移住先に位牌を移動し,出身地区より遠隔的に行事を行う事例がみとめられた。本研究を通じて,近代沖縄では移民送出に伴い,出身地区の血縁関係を越境的に拡大させた様子が明らかになった。

  • 中島 芽理
    2022 年 74 巻 2 号 p. 155-177
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/19
    ジャーナル 認証あり

    本稿では1960~70年代の大阪府の釜ヶ崎を事例として,東京都の山谷の事例も交えながら,アルコール依存症の様々な回復システムが生産される過程を「癒しの景観」という概念を用いて明らかにする。日本では近代以降,男性中心の飲酒慣行が形成されてきた。そのため,アルコール依存症も男性特有の疾病とみなされてきた。医療機関と日本の家父長制的な飲酒慣行に即して発足した自助グループである断酒会によって,まず治療の対象とされたのは,家族のある依存症者であった。単身アルコール依存症者は,既存のシステムに包摂されることによって,かえって排除の対象となった。それは,単身男性労働者に特化した地域として構築された寄せ場において,「問題」として前景化した。山谷では,断酒会や医療機関の無力が新たな主体を生じさせ,AA(Alcoholics Anonymous)という組織が展開した。釜ヶ崎では医師が軸となって断酒会や行政,民間福祉団体に対して働きかけが行われ,単身アルコール依存症者の回復が目指された。これにより,断酒会の方法を唯一のものとする「大阪方式」が確立された。このように,アルコール依存症の「癒しの景観」は偶有的な過程においてつくられるものであり,それぞれの地域における主体の布置によって異なるものとなった。

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