人文地理
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論説
  • 熊野 貴文
    2018 年 70 巻 2 号 p. 193-214
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,大阪大都市圏の郊外外圏に位置する奈良県桜井市を対象に,1980年代後半以降の新設住宅の立地と土地利用変化を分析し,その要因について考察した。桜井市では,人口増加と地価高水準の局面にあった1980年代後半~1990年代前半に比べて,人口減少と地価下落の局面にある1990年代後半以降の時期の方が,新設住宅の離心化と中心市街地での低・未利用地化が進行し,都市構造は低密度化している。その要因として,以下の点を指摘することができる。大都市圏の地価動向を反映して郊外外圏の住宅供給の構成が戸建住宅中心に変化したこと,郊外間通勤の増加と関連して鉄道などの公共交通機関よりも自家用車を前提とした生活行動が成立していること,土地需給の空間的ミスマッチが発生していること,土地所有者の高齢化やバブル経済崩壊を背景に周辺部で土地の売却や賃貸アパート建設がみられたこと,そして,中心市街地の土地所有者が投資リスクの低い土地活用として駐車場経営を選択したことである。以上の知見は,郊外外圏の都市構造の変化が,郊外都市内の土地利用条件に加えて,郊外化の終焉や多核化といった大都市圏の構造変化の影響を受けていることを示す。

研究ノート
  • 森川 洋
    2018 年 70 巻 2 号 p. 215-232
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル 認証あり

    7指標を用いて活動的都市と衰退市町村を分類し,人口規模との関係や地理的分布について考察した。4指標以上において下位1/5(20%)に含まれる衰退市町村はすべて人口3万人未満の市町村であり,消滅可能性都市や過疎関係市町村に指定された都市はあるが,縮小都市(人口激減都市)は存在しない。4指標以上において上位20%に含まれる活動的都市は,大都市とその周辺や地方の中心都市に多く,地方の中小都市には少ない。活動的都市は沖縄本島を除くと三大都市圏に集積するが,活力の乏しい大阪市周辺では集積が比較的少ない。福岡市や仙台市の周辺でも活動的都市が多いが,札幌市の周辺には少ない。秋田県,和歌山県,高知県などでは県内に活動的都市が皆無で,地域的都市システムが全体的に活力を失いつつあるようにみえる。

  • 長尾 悠里
    2018 年 70 巻 2 号 p. 233-251
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル 認証あり

    少子化傾向にあるなか,学校統合が課題となっている。学校は教育を施す機能だけでなく,校区住民に活動場所や交流の機会を与える機能や,校区の象徴としての機能を持つ。そのため,学校統合によって校区社会に大きな影響が及ぶと指摘されている。しかし,その中でも学校の持つ象徴性に関する分析はこれまで十分になされていない。そこで本稿では,公立学校が立地しない地域である埼玉県秩父市大滝地区において,学校の持つ機能に着目して小学校の消失過程を分析し,学校統合に関する従来の研究枠組みを再考した。その結果,大滝地区では人口減少や産業不振,ダム建設に伴う校区への諦めから,将来性の欠如した校区で小学校統合に反対しても仕方がないという考えが生じ,小学校統合が消極的に支持されたことが判明した。加えて,小学校統合に伴い校区内の子どもや若年層の存在を感じられる場所が消失し,将来性の欠如が可視化され,諦めが強まる可能性があることも明らかとなった。ここから,小学校の存否と校区の将来性の認識との間には密接な関連があることが示唆され,小学校は校区の「将来性の」象徴としての機能を持つと考えられる。そして,校区の将来性の認識の有無によって,学校統合に関する住民間の対立構造が変化し得ることが指摘できる。

  • 上杉 昌也, 矢野 桂司
    2018 年 70 巻 2 号 p. 253-271
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,都市内での教育水準の空間的不均衡とジオデモグラフィクスに基づく居住者特性との関係を明らかにし,近隣地区における社会経済的要因の影響を除いた教育水準の学校間格差について評価するものである。対象地域として社会経済的な居住分化が比較的明瞭で,2013年から「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の学校別の結果が公表されている大阪市を選んだ。全国学力テストの平均正答率を教育水準とみなすと,都市の空間構造に対応した教育水準の不均衡が存在し,近隣スケールにおいてもジオデモグラフィクスに基づく社会地区類型と通学先の学校の教育水準には一定の関係が見出された。また社会地区類型間で教育水準格差が存在することも示唆され,社会地区類型の差異により学校間の教育水準の変動の約半分が説明された。そのため学校の教育水準の評価においてはその学校の置かれた地域条件を考慮することが不可欠であるといえる。さらに,実際の学力テストに基づいて計測される教育水準からこの地域条件の影響を取り除いた実質的な学校効果は,教育水準が高い学校ほど大きいことも明らかになった。これらの知見は,ジオデモグラフィクスが地域間や社会集団間の教育格差を明らかにするだけでなく,空間的公正の観点からそれらの格差解消に向けた政策ターゲットの特定においても有用であることを示すものであるといえる。

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