頭頸部癌
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31 巻, 4 号
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推薦投稿
  • 折舘 伸彦, 水町 貴諭, 鈴木 章之, 本間 明宏, 古田 康, 福田 諭
    2005 年 31 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    カルシウム結合タンパク質であるS100A2の機能はまだ明らかでないが,気道上皮細胞の発癌モデル系で悪性化に伴いその発現が段階的に減少することが指摘されている。昨年,われわれはこの遺伝子が癌抑制遺伝子として機能している可能性を報告した(頭頸部癌30(4):651-656,2004)。すなわち,不死化ヒト気道上皮細胞1799にS100A2遺伝子に特異的なshort hairpin RNAを発現するベクターを導入することによりS100A2発現欠如細胞を樹立,その形質を検討した結果,寒天培地でコロニーを形成する能力をもつなど悪性細胞に特徴的な形質を示した。今回われわれはS100A2が癌抑制遺伝子産物として機能しているメカニズムを知ることを目的として,S100A2発現細胞と発現欠如細胞から抽出したRNAを用いてAffymetrix社GeneChipを用いたDNAマイクロアレイ法による網羅的遺伝子発現解析をおこない,S100A2発現細胞と発現欠如細胞との間で発現差異の見られる遺伝子を同定した。そのうちE-cadherinについてはタンパクレベルでの変化も確認した。
  • 原田 耕志, 吉田 秀夫, 佐藤 光信
    2005 年 31 巻 4 号 p. 487-492
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    近年,TS-1の口腔扁平上皮癌に対する有効性が多施設にて確認されているが,TS-1が発現する抗腫瘍効果の詳細なメカニズムについては未だ不明な点も多い。そこでヒト口腔扁平上皮癌細胞(B88)に対するTS-1の血管新生抑制効果への影響につき検討した。B88細胞をヌードマウス背部皮下に移植した後,TS-1(10mg/kg/日,週5日)を8週間連日経口投与すると,0.5%HPMC投与群(コントロール群)と比較して,2週目以降有意な抗腫瘍効果が認められた。この際,免疫組織染色法にて残存腫瘍におけるThrombospondin-1(TSP-1)発現の増強とVascular endothelial growth factor(VEGF)の発現減弱,さらに腫瘍組織における微小血管密度の減少を認めた。なお実験期間中,TS-1投与群とコントロール群との間に有意な体重変化は認められなかった。以上より,TS-1は,TSP-1発現の増強ならびにVEGFの発現減弱を介して血管新生を抑制し,抗腫瘍効果を発現している可能性が示唆された。
  • 中城 公一, 礒兼 真由美, 原 慎吾, 合田 啓之, 新谷 悟, 浜川 裕之
    2005 年 31 巻 4 号 p. 493-497
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    口腔癌の診断および治療を行う上で,特異度および鋭敏度ともに優れた腫瘍マーカーは存在しない。本研究では腫瘍マーカーの個別化とその有用性を評価した。対象は口腔扁平上皮癌T1症例と唾液腺癌T2症例で,術前に血液よりtotalRNAを抽出し,ヒト全遺伝子型マイクロアレイ解析を行った。比較対照として健常者血液を用いた。口腔扁平上皮癌症例では対照と比較して3倍以上の発現亢進を認めた遺伝子を197種類,唾液腺癌症例では152種類同定した。これら遺伝子の中より最も発現亢進が認められた遺伝子を各症例の個別腫瘍マーカーとした。術後,画像検査にて再発および転移が認められないことを確認したのち,再び血液RNAを用いて術前と同様の解析を行った。その結果,個別腫瘍マーカーは著明に低下しており,正常化していた。以上の結果より,腫瘍マーカーの個別化が技術的に可能で,癌細胞存在診断において有用となる可能性が示唆された。
  • 亀井 譲, 高田 徹, 八木 俊路朗, 藤本 保志, 斉藤 清, 高橋 正克, 鳥居 修平
    2005 年 31 巻 4 号 p. 498-502
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    頭蓋底の再建では,頭蓋と鼻腔との確実な閉鎖が求められる。通常は遊離腹直筋皮弁などの遊離皮弁にて再建することが多い。しかし中頭蓋底のように奥深く複雑な欠損を死腔なく充填することは難しい。われわれは,中頭蓋底再建に遊離大網移植を行い有用であったので報告する。最近の5年間にわれわれの施設で行った中頭蓋底再建は8例で,側頭窩下腫瘍が3例,外耳道腫瘍が2例,上顎癌の頭蓋底侵潤が1例,副咽頭間隙腫瘍が1例,斜台腫瘍が1例であった。再建に用いたのは大網が5例,腹直筋が3例であった。大網移植を行った5例のうち1例で髄液瘻を認めたが,保存的に治癒した。腹直筋皮弁にて再建した3例のうち2例において感染し,1例は保存的に治癒したが,1例では遊離大網移植を行うことで治癒した。大網は,volumeの調節がしやすく,柔軟性があるため,狭い部分にも充填しやすく,複雑な欠損となる中頭蓋底の再建に有用であると考えられた。
  • 元村 尚嗣, 原田 輝一, 若見 暁樹, 大橋 菜都子, 村岡 道徳, 井口 広義, 楠木 誠, 山根 英雄
    2005 年 31 巻 4 号 p. 503-510
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    上顎は鼻腔や口腔と隣接し,かつ顔面の輪郭を構成する非常に重要な部分である。腫瘍切除後の再建においては機能面のみならず,整容面に対しても最大限の配慮が必要である。
    現在われわれの上顎癌切除後の再建の基本方針は,1)遊離腹直筋皮弁を用いて,眼窩部,鼻腔外側,口蓋部の再建を行う。2)硬性再建については,皮下脂肪の少ない患者では肋軟骨付き遊離腹直筋皮弁で,多い患者では人工骨による再建を行う。3)義眼床に関しては,術後1年程で移植組織の萎縮が落ち着いた段階で行う。
    機能的な工夫として二期的再建の場合に,頬部裏面に再生した粘膜をhinge flapとして鼻腔のliningとしている。これにより,鼻腔外側を皮膚で再建することによる不快な合併症に悩まされることはなくなった。
    整容的な面においては,義眼床形成例では動的再建を追加することにより,外眼角部に自然な皺が形成され,より自然な笑顔が得られている。
  • 有泉 陽介, 西嶌 渡, 鈴木 政美, 神山 亮介, 萩野 幸治, 出雲 俊之
    2005 年 31 巻 4 号 p. 511-516
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫は鼻副鼻腔悪性腫瘍の1-2%を占めるに過ぎない稀な疾患である。手術療法,放射線療法,化学療法,免疫療法を併用した集学的治療が試みられているが治療成績は満足できるものとは言えない。1975年から2003年の28年間に埼玉県立がんセンター頭頸部外科で一次治療を行った鼻副鼻腔悪性黒色腫14例の臨床経過,治療,予後について報告した。Kaplan-Meier法による全体の2年生存率は46.2%,5年生存率は23.1%であった。病変が小さいものにはlateral rhinotomyによる手術療法が有効であったが,病変が大きいものや鼻中隔に主病変が存在するものには不十分であり,頭蓋底手術や放射線治療など他の治療法を組み合わせる必要があると思われた。
  • 長谷川 正午, 小村 健, 原田 浩之, 島本 裕彰, 吉田 文彦, 植草 優, 戸川 貴史
    2005 年 31 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,口腔癌N0症例 24例において99mTcフチン酸を用いたRI法によるセンチネルリンパ節(SN)の同定と,それら同定したリンパ節および頸部郭清リンパ節標本での転移検索により,SNの概念が成立するか否かを明らかにすべく臨床的検討を行った。SNへの転移の有無,および郭清標本中のnon-SNへの転移の有無はHE染色,サイトケラチン免疫染色ならびにCK17 RT-PCRを用いて検索した。24症例すべてにおいてSNの同定が可能(同定率100%)であった。リンパ節転移はHE,免疫染色では7例で認め,RT-PCRでは8例が陽性であった。転移リンパ節はいずれもSNであり,non-SNには転移は認めず,また現在まで1例を除き頸部再発は認められていないことより,口腔癌においてもSNの概念が成立することが強く示唆された。
  • 木村 幸紀, 柳澤 昭夫, 山本 智理子, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 米川 博之, 岡野 友宏
    2005 年 31 巻 4 号 p. 523-529
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    stage I舌扁平上皮癌における健側頸部リンパ節後発転移を分析するため,初回治療で舌部分切除した64例の筋層浸潤例をレビューした。22例に頸部リンパ節後発転移を生じ,これらのうち7例(32%)に健側頸部転移がみられ,4例は両側同時性であった。遅発性健側後発転移の3例は術後2ヶ月弱~31ヶ月にみられた。健側転移部位は,顎下,上・中内深頸リンパ節であった。健側転移例の5年原病生存率は,同時性が50%,遅発性転移は67%であった。舌下面が原発の3例中2例に健側転移を生じた。患側転移多発性(3個以上)の5例中2例に健側転移した。オトガイ下リンパ節転移した4例中3例に健側転移があった。原発巣の大きさと深さは健側転移に重要ではなかったが,筋層の角化が不全か非角化型の原発巣は健側転移と関連が深いように思われた。これらの因子から健側転移が予知されるstage I舌扁平上皮癌には厳重な経過観察を要することが示唆された。
  • 鵜澤 成一, 山根 正之, 山城 正司, 石井 純一, 道 泰之, 石川 均, 岩城 博, 天笠 光雄
    2005 年 31 巻 4 号 p. 530-535
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    過去15年間に当科で舌扁平上皮癌と診断され,舌部分切除術を施行し,原発巣が制御された192例を対象に検討を行った。後発頸部リンパ節転移は30例(15.6%)に生じていた。30例中救済しえた症例は18例(60%)であり,5例(17%)が頸部非制御,7例(23%)が遠隔転移により死の転帰をとった。原発巣の組織学的分化度では,低分化型の症例において16例中11例(68.8%)と高頻度に後発転移が生じていた。また,30例中22例(73%)に被膜外浸潤が認められ,そのうち11例(50%)が頸部非制御あるいは遠隔転移により死亡していた。また,頸部非制御例5例中4例(80%)が上内深頸領域に生じていた。後発転移が生じた症例は早期発見し,頸部郭清術により制御することはもちろん重要ではあるが,原発巣および頸部が制御しえても遠隔転移が生じる症例も多く,今後遠隔転移の予防的治療についても積極的に考慮すべきであると考えられる。
  • 朝蔭 孝宏, 岸本 誠司, 斉川 雅久, 林 隆一, 川端 一嘉, 菅澤 正, 林崎 勝武, 吉積 隆, 丹生 健一, 白根 誠, 中谷 宏 ...
    2005 年 31 巻 4 号 p. 536-540
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    舌癌に対する頸部郭清術の適応,術式は施設により異なり標準化が望まれている。今回多施設において共通のプロトコールに則り,舌癌の治療を施行し推奨すべき頸部郭清術の適応および術式において検討した。その結果,T1N0症例およびearlyT2N0症例には予防的頸部郭清術を施行しない,lateT2N0症例およびT3N0症例にはlevel I~IIIの予防的頸部郭清術を施行する,anyTN1症例に対してはlevel I~IIIの頸部郭清術を施行する,anyTN2a症例に対してはlevel I~IVの頸部郭清術を施行する,anyTN2b以上の症例に対してはlevel I~IVの頸部郭清術を施行する,といった治療が現時点での推奨される舌癌の頸部の取り扱いという結論に至った。今後さらに症例を増やしプロトコールの妥当性を検証し,T2N0症例の線引きを明確にしていく予定である。
  • 久保田 彰, 古川 まどか, 花村 英明, 山下 浩介, 杉山 正人
    2005 年 31 巻 4 号 p. 541-547
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    下咽頭扁平上皮癌に対する化学放射線同時併用療法を検討した。対象は男性が30例,女性が2例,年齢の中央値は61歳(41-71歳)であった。亜部位は梨状陥凹が28例,輪状後部が4例であった。StageはIIIが8例,IVが24例で,根治切除可能が26例,根治切除不能が6例であった。同時重複癌は3例の食道癌を認めた。化学療法は5-FUとCisplatinを2コースの同時併用とした。Grade 3以上の毒性は粘膜炎が50%,嘔吐が6.3%,白血球減少が12.5%であった。29例,90.6%で治療を完遂した。奏効率はCRが9例,28.1%,PRが22例,71.9%であった。2年生存率は67%で,2年progression free survival率は54%であった。2年喉頭温存率は10/17例,58.8%と良好であった。再発形式は局所・頸部リンパ節の9例,遠隔転移の1例であった。化学放射線同時併用療法は下咽頭癌の臓器温存率と生存率を向上し,QOLの低下を回避しながら生存期間を延長することが示唆された。
  • 田中 信三, 安里 亮, 岸本 正直, 岩井 浩治, 田村 芳寛, 玉木 久信, 伊藤 壽一
    2005 年 31 巻 4 号 p. 548-552
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    最近5年間に当科で初治療を行った下咽頭癌49例のうち食道癌との重複例16例について検討した。食道癌治療後に下咽頭癌が見つかった9例中6例は当院で経過観察されており,そのほとんどは早期癌で発見され喉頭保存治療が可能であった。3年累積生存率は62%で,死亡例5例中3例が食道癌死であった。下咽頭癌による死亡例はなかった。生存者11例中,発声機能が喪失したもの7例,気管カニューレ装着中1例,重篤な嚥下障害が残ったもの6例であった。予後には食道癌の治療が最も関与し,両癌の治療で嚥下障害が増大する傾向が示された。
  • 別府 武, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 米川 博之, 福島 啓文, 佐々木 徹, 新橋 渉, 酒井 昭博, 松山 洋, 荘司 ...
    2005 年 31 巻 4 号 p. 553-559
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    1979年11月から2000年2月までに当科で根治手術を施行した原発性顎下腺癌,舌下腺癌新鮮例33例を対象として治療成績ならびに臨床像について検討した。33例の内訳は腺様嚢胞癌16例,腺癌7例,粘表皮癌6例,その他4例であった。TNM分類,病期分類ではT1:2例,T2:14例,T3:15例,T4:2例,N0:25例,N(+):8例,I期:13例,II期:11例,III期:1例,IV期:8例であった。全症例の原発巣制御率は5年で75.5%,10年で61.8%,疾患特異的累積生存率は5年で52.2%,10年では47.5%であった。原発巣制御では充分な安全域を取った一塊切除を行うことが重要であると考えられた。一方,生存率に強く影響を与える因子として頸部リンパ節転移の有無があげられた。また,再発例の治療では遠隔転移に対する制御が重要と考えられた。
  • 朝倉 光司, 本間 朝, 山崎 徳和
    2005 年 31 巻 4 号 p. 560-564
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    副神経切除の後遺症であるshoulder syndromeは頸部郭清術後患者のQOLを大きく低下させるものである。平成11年から16年までの間に市立室蘭総合病院にて全頸部郭清術を施行した43例を対象として,肩関節機能を評価した。自覚症状,他覚所見,肩関節外転角度のいずれにおいても副神経温存群(25例)では切除非再建群(11例)に比して有意に良好であった。副神経再吻合・神経移植群(4例)では温存群と同等の機能回復が得られた。副神経の中枢断端での吻合が困難であった3症例に対して,頸神経と副神経の間の神経移植を試みたところ,比較的良好な結果が得られた。
  • 西元 謙吾, 林 多聞, 吉福 孝介, 福岩 達哉, 松根 彰志, 黒野 祐一
    2005 年 31 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌における進行癌症例に対して,転移リンパ節の臨床所見から内頸静脈を合併切除する根治的頸部郭清術を必要とすることも少なくない。しかし,術前に内頸静脈に浸潤があると判断されても,術後の病理組織学的検査では明らかな浸潤が認められないこともある。また,遊離皮弁による局所再建のために吻合血管を残す目的で内頸静脈の温存が必要となってくる場合,その是非が問題となる。さらに予後の面から,病理学的に腫瘍組織が内頸静脈内に露出していたりすると遠隔転移が多くなることが予想される。今回,我々は,内頸静脈を合併切除し根治的頸部郭清術を施行した症例について,病理学的に検査し,その後の経過も検討した。その結果,根治的頸部郭清術を施行する必要がある症例では,病理学的に内頸静脈に腫瘍の浸潤がなくても頸部再発率は高かった。遠隔転移については,病理学的に内頸静脈に直接浸潤があった症例が起こしやすい傾向にあった。術前の画像診断で内頸静脈への浸潤を判定するのは困難であったが,癒着がある症例では,内頸静脈静脈周囲に節外性に腫瘍細胞が存在するものとして治療する必要があると考えられた。
  • ―上気道閉塞,脳梗塞,消化管出血,肺梗塞について―
    門田 英輝, 木股 敬裕, 櫻庭 実, 石田 勝大, 林 隆一, 山崎 光男, 門田 伸也, 宮崎 眞和, 大山 和一郎, 海老原 敏
    2005 年 31 巻 4 号 p. 570-575
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    1980年6月から2003年12月まで国立がんセンター東病院並びに中央病院形成外科・頭頸部外科で頭頸部再建手術を行った2426例中,48症例(2.1%)において49回,術後に重篤な全身合併症を経験した。うち上気道閉塞の11例,脳梗塞の8例,消化管出血の5例,肺梗塞の2例についてその原因と対策を検討した。上気道閉塞症例ではさまざまな原因が認められたが,切除範囲や年齢,performance statusに応じて気管切開を行う必要性が再認識させられた。脳梗塞症例ではコントロール困難な高血圧既往患者が多く,血圧の低下を最小限に抑える術中・術後管理が必要と考えられた。消化管出血症例では再手術によるストレスが誘因となった可能性が示唆された。頻度は低いが肺梗塞もあり,肥満症例等には抗凝固剤の予防投与が必要と思われた。
  • 中川 雅裕, 飯田 拓也, 福島 千尋, 舘 一史, 鬼塚 哲郎, 海老原 充, 上野 尚雄, 飯田 善幸, 瀧澤 義徳, 石木 寛人
    2005 年 31 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    術後せん妄は頭頸部再建手術でよく認められる問題である。われわれはマイクロ手術において運動制限を早期に解除し日常生活動作(ADL)の早期改善を図っている。術後安静度とせん妄発生率の関係を調べた。対象は2002年9月から2004年12月の間にマイクロサージャリーを用いた頭頸部再建手術を行った患者102名(男性79名,女性23名)年齢43歳~87歳(平均63.4歳)。術後は一晩ICUで鎮静下呼吸管理を行い,初期(2002年9月~2003年9月)はICU管理2日,ベッド上安静5日間としたが,徐々に早期に安静度を解除し最終的(2004年10月~)にICU管理1日,ベッド上安静,頸部安静はなしとした。
    運動制限を解除し早期にADLの改善を図ることにより術後せん妄患の発生率が低下し,インシデントの数も低下した。
  • 加藤 逸郎, 小野 公二, 大前 政利, 神田 哲聡, 藤田 祐生, 大林 茂樹, 中澤 光博, 丸橋 晃, 今堀 良夫, 切畑 光統, 由 ...
    2005 年 31 巻 4 号 p. 581-586
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy: BNCT)は,10Bを予め腫瘍に集積させ,中性子線照射で発生する粒子線を利用して腫瘍選択的に破壊する治療法である。我々はこの治療法を再発頭頸部悪性腫瘍患者に対し,2001年より世界に先駆けて開始した。対象は扁平上皮癌6例,唾液腺癌3例,肉腫2例の計11例であった。その結果,腫瘍縮小率は,CR:2例,90%以上:5例,73%,54%,PD:1例,NE:1例で,奏功率82%。QOL改善は,潰瘍消失と皮膚再生,PSの改善による仕事復帰,疼痛・開口障害・呼吸苦の改善,生存期間延長などであった。11例中7例(4例:遠隔)に転移を認めた進展例だったが,治療後の生存期間は,1-38ヶ月で平均8.5ヶ月,生存率は36%(4例生存中)であった。副作用は,口内炎,全身倦怠感,脱毛などで軽度だった。進展再発頭頸部悪性腫瘍に対しBNCTを実施し,その有効性を確認した。
  • 山下 拓, 新田 清一, 大石 直樹, 斉藤 秀行
    2005 年 31 巻 4 号 p. 587-592
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    近年医療界ではクリニカルパスの導入が急速に進んでいるが,頭頸部癌診療においては,病態や経過の多様性から導入が十分ではない。しかし,診断治療の過程を細分化してそれぞれに対するクリニカルパスを作成することで,頭頸部癌のような多様性をもつ疾患でもその導入が容易になる。本稿では,当科で使用している診療過程を細分化したパスの一例である入院化学療法のクリニカルパスを報告した。形式は観察項目組み込み型日めくり式とし,入院期間のうち2週間のみに適用するクリニカルパスとした。化学療法クリニカルパスの導入により,質の低下のない業務の効率化,インフォームドコンセントの充実,リスクマネージメントの強化,チーム医療の推進などにおいて有益であったと考えられた。
一般投稿
  • 明石 健, 牛尾 宗貴, 中尾 一成, 朝蔭 孝宏, 菅澤 正
    2005 年 31 巻 4 号 p. 593-597
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    組織学的に良性の所見を示しながら胸骨転移をきたした耳下腺多形腺腫の1例を報告し,若干の文献的考察を加えて転移の機序につき検討する。患者は41歳の女性で1992年2月に耳下腺腫瘍に対して手術を受け,再発に対して2002年2月に耳下腺全摘術を施行された。組織学的診断はいずれも良性の多形腺腫であった。2003年8月,胸部痛にて整形外科受診し胸骨腫瘍と診断され,2003年11月に手術施行された。組織学的診断はやはり多形腺腫で悪性所見は認めず,以前の標本とほぼ一致する所見であった。現在も外来にて経過観察行っており再発を認めていない。
    症例は,41歳女性。1992年,他院にて左耳下腺腫瘍(多形腺腫)に対して左耳下腺浅葉切除術施行された。以後経過観察されていたが,2002年1月,左耳下腺内に多発性の再発認め当科紹介受診となった。同年2月,左耳下腺全摘術(顔面神経温存)施行した。病理組織検査の結果は多形腺腫であった。2003年8月,前胸部の疼痛が出現したため近医受診し,画像検査にて胸骨の腫瘍が疑われた。当院整形外科紹介受診,生検施行され,多形腺腫と診断された。2003年11月,当院呼吸器外科にて胸骨柄切除術施行された。永久標本上でも悪性を示唆する所見は認められなかった。現在外来にて経過観察中であり,再発等認めていない。
  • 吉田 佳織
    2005 年 31 巻 4 号 p. 598-603
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    本研究ではシスプラチンによるアポトーシス誘導機構において,ATMの活性化がIKK-αの核内蓄積に重要な役割を果たしていることを見出したので報告する。U2OS細胞にシスプラチン処理しアポトーシスを誘導すると,ATMのリン酸化に伴う核内IKK-αの蛋白レベルでの安定化が観察された。ATMのインヒビターの一つであるワートマニン処理によりシスプラチンによる核内IKK-αの安定化が抑制されたことから,IKK-αの安定化にATMの活性が必要であることが示唆された。また,ユビキチン化の実験から,IKK-αの安定化は,そのユビキチン化のレベルの低下に起因するものと考えられた。さらに,IKK-α-/-MEFでは野生型MEFよりシスプラチンに対する感受性が減少した。これらの実験結果より,ATMによるIKK-αの活性化がシスプラチンによるアポトーシス誘導機構に重要な役割を担っていると考えられた。
  • 玉置 盛浩, 大儀 和彦, 今井 裕一郎, 舘林 茂, 中橋 一裕, 川上 正良, 青木 久美子, 山本 一彦, 桐田 忠昭
    2005 年 31 巻 4 号 p. 604-610
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    上顎腫瘍の後方進展症例に対する上顎全摘出術は,顎動脈や下顎神経が複雑に錯綜している翼口蓋窩や側頭下窩を切開する必要があるため,出血により手術操作が困難となる。
    また,頭頸部領域における超選択的動脈塞栓術は,血管腫の治療や顔面多発骨折または末期口腔癌の止血法として有用であると多数報告されているが上顎全摘出術における報告は少ない1-3)。今回われわれは,術前に超選択的動脈塞栓術を行い,比較的少量の出血で上顎全摘出術を施行した3例を経験したので報告する。
  • 清野 由輩, 中山 明仁, 鈴木 立俊, 橋本 晋一郎, 横堀 学, 竹田 昌彦, 宮本 俊輔, 長田 真由美, 八尾 和雄, 岡本 牧人
    2005 年 31 巻 4 号 p. 611-618
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
    喉頭亜全摘術SCL-CHEP,SCL-CHEPは,自然気道を保ったまま音声,言語機能を保つことを目的とした手術である。
    我々が1997年に本術式を導入してから,2005年1月まで24例行った。手技が安定し,術後経過も一定化してきた反面,多くの因子が入院期間や合併症等に影響を及ぼすことが分かった。
    我々は,これらの因子を整理して,確実にさらに効率的に周術期管理を行う目的で,クリニカルパスを作成した。入院期間を喉頭亜全摘術を行う前期と嚥下リハビリテーションを行う後期に分けて,前期についてパスを作成した。我々は,創部の状態,安静度,検査歴,起動管理,栄養管理について検証し,前期のパスを作成した。パスは全体で入院期間を20-28日とみなした。
    今後バリアンスを抽出し,パスを修正していく必要があると思われた。
    医師,看護師,言語聴覚士などの多職種が密接に連携できる意味でもパスは有用と思われた。
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