頭頸部癌
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31 巻, 1 号
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第28回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム4
中咽頭癌の治療戦略
  • ―原発巣制御に対する動注化学療法の役割―
    鹿野 真人, 渡邉 睦, 松井 隆道, 野本 幸男, 松塚 崇, 鈴木 政博, 大森 孝一
    2005 年 31 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    1989年から2003年までに手術を主体とした治療が行われた中咽頭扁平上皮癌26例を対象とした。症例を術前に動注化学療法を未施行の症例群(非動注群)11例と施行した症例群(動注群)15例とに分け,治療成績,特に原発巣制御率を比較検討した。原発制御率は非動注群では45.5%,動注群は86.7%であった。IV期の症例に限ると非動注群40.0%,動注群77.8%であった。非動注群の原発巣再発6例中5例は切除深部マージン(副咽頭間隙,中咽頭と上内深頸の間),上方マージン(上咽頭断端,咽後リンパ節)であった。一方,動注群再発2例は喉頭側断端での再発であり,深部,上方マージンの再発はなく原発巣再発が減少した。動注化学療法は原発巣再発の減少に寄与する有効な治療法となる可能性が示唆された。
口腔
  • 狩野 岳史, 砂川 元
    2005 年 31 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    舌扁平上皮癌29例を対象として,原発巣の超音波所見(US所見)と臨床病理学的所見の関連を検討した。US所見と病理組織学的所見との関係では,USの境界が不明瞭な症例や形態が楔型の症例に癌細胞の浸潤性が強いものが多く認められた。組織学的深達度とUSによる深達度の関連では,有意な相関関係が認められた(P<0.001)。USによる深達度が4mm以上の症例に頸部転移が認められた。以上のことから,舌扁平上皮癌における原発巣のUS所見は,腫瘍と宿主間の境界の状態を反映し,深部の切除範囲の設定や,頸部郭清術の選択に際し有用な情報を提供するものと考えられた。
  • 和田 健, 中谷 現, 根来 健二, 平石 幸裕, 藤田 茂之
    2005 年 31 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    高齢で下顎歯肉癌を持つ患者に,原発巣軟組織病変の切除と歯槽部皮質骨のみの骨切除からなる下顎骨温存手術を試みた。本手術は,画像上(パノラマX線写真,CT)で浸潤型吸収像を認めず,ネオアジュバント化学療法に十分に反応した場合に適応した。この概念に沿った手術が4症例に応用されたが,全症例で順調に経過し,良好なQOLを保持していた。
  • 別府 武, 三谷 弘樹, 川端 一嘉, 吉本 世一, 米川 博之, 三浦 弘規, 福島 啓文, 佐々木 徹, 多田 雄一郎, 蝦原 康宏, ...
    2005 年 31 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    1985年から1999年までに当科で根治治療を行った上歯肉,硬口蓋原発扁平上皮癌51例を対象として原発巣制御の治療成績を検討した。この時期における全体の原発巣制御率は70.6%であったが,治療法別では,手術のみ73.3%,根治照射71.4%,術前照射+手術68%,T分類別ではT1:85.7%,T2:60%,T3:77.8%,T4:80%,術式別では上顎部切69.2%,上顎全摘80%であった。腫瘍の存在部位と原発巣制御の関係をみてみると,口腔前方に腫瘍が存在する場合,制御は良好であったが,後側方や正中に存在する場合で制御が不良であり,再発部位として側頭下窩深部や翼口蓋窩への再発が比較的多く認められた。このような例では救済手術が不可能で,直接的な死因となることが多いため,手術手技上,後方側方への深い浸潤がある例では,できるだけ良好な視野が得られるようなアプローチを充分計画することが大切と思われた。
  • 北川 善政, 佐野 和生, 小笠原 利行, 中村 美喜子
    2005 年 31 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌の治療においては,生存率の向上のみならず器官温存も患者のQOLの面から重要な課題である。放射線化学療法後に適切な手術法を決定するには正確な治療効果判定が不可欠である。本論文では,器官温存の観点から術前療法ならびにFDG-PET診断の役割について検討した。口腔扁平上皮癌35例に対して放射線併用動注化学療法(THP-ADM,5-FU,CBDCA)を行い,FDG-PETで評価した。全例,治療前後にPET検査を施行し,臨床的,組織学的治療効果と比較した。FDG集積値はstandardized uptake value(SUV)を用いて定量した。本療法により奏効率100%(CR率71%,pathological CR rate 83%)の結果が得られた。治療前pre-SUVは治療後に有意に減少した(p<0.01)。pre-SUV 7.0以上の群では25例中6例に治療後腫瘍細胞の残存がみられた。一方,pre-SUVが7.0より小さい腫瘍では10例全例治療は奏功し,腫瘍細胞はみられなかった。post-SUVが4以上では治療した13例中6例にviable cellの残存がみられ,post-SUVが4より小さい腫瘍では22例中全例腫瘍の残存はみられなかった。pre-SUVから治療効果の予測が,post-SUVから残存腫瘍の有無についての予測が可能であったことから,FDG-PET診断により手術の回避(10例)あるいは縮小手術(19例)が可能になった。5年以内に局所再発はみられず3年生存率は86%であった。FDG-PETはQOLの向上につながる極めて有用な診断法と考えられた。
  • 三原 眞理子, 新谷 悟, 李 春男, Sebastian Klosek, 真野 隆充, 上山 吉哉, 浜川 裕之
    2005 年 31 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は細胞周期制御に重要な役割を果たしており,口腔癌を始め多くの癌でその異常が報告されている。CDK特異的阻害剤であるFlavopiridolはCDK1/2/4/7活性を特異的に阻害し,アポトーシスを誘導して口腔癌細胞株の増殖を抑制する。今回我々は,口腔癌細胞株における放射線とFlavopiridolの併用効果について検討した。Flavopiridolと放射線照射(4Gy)の併用により,口腔癌細胞株における増殖抑制効果は増強した。口腔癌細胞株をヌードマウスに移植したxenograftの検討においても,Flavopiridolと放射線照射の併用は相乗的な抗腫瘍効果を示した。以上の結果より,口腔癌に対する新たな治療戦略として有用である可能性が示唆された。
  • ―彎曲カテーテルとPUカテーテルを用いた方法―
    藤内 祝, 不破 信和, 光藤 健司, 古谷 和久, 福井 敬文, 山本 憲幸, 西口 浩明, 上田 実
    2005 年 31 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌に対して浅側頭動脈よりの先端が屈曲しているカテーテルとPUカテーテルを用いた,新しい超選択的動注法を開発した。屈曲カテーテルは先端の形状により5種類あり,術前の血管造影撮影よりカテーテルを選択する。屈曲カテーテルの挿入方法は術中イメージ下で浅側頭動脈より逆行性にガイドワイヤーを用いて腫瘍の栄養血管に挿入する。屈曲カテーテルの挿入が不安定な場合はPUカテーテルを使う。挿入方法は屈曲カテーテルの中にガイドワイヤーを挿入し,ワイヤーを腫瘍の栄養血管まで挿入する。ガイドワイヤーをそのままにして屈曲カテーテルを抜去,ガイドワイヤーに添ってPUカテーテルを腫瘍栄養血管まで挿入する。
咽頭・中下咽頭
  • 中谷 宏章, 池永 弘之, 福島 慶, 山河 和博, 中平 光彦, 楯 敬蔵, 竹田 泰三
    2005 年 31 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    T3以上の局所進行癌において,1999年までの旧治療47例と2002年以降の超選択的動注化学療法施行12例で治療成績を比較検討した。旧治療群では27例に原発巣の手術が行われ,全例に再建術を用いた広範切除が行われていた。残る20例には放射線を主体とした治療が行われていた。動注群では外照射と平行して,CDDPを1回量100mg/m2で1~2週に1回投与した。旧治療群の原病5年生存率はT3非手術例が33.3%,T3手術例が62.2%,T4非手術例が25.4%,T4手術例が48.6%であり,無病5年生存率はT3非手術例が20%,T3手術例が27.2%,T4非手術例が20%,T4手術例が31.3%であった。動注群における原発部位の治療効果はCR率91.3%,奏効率100%で,1例が腫瘍死,2例で再発がみられたが,再発例にはsalvage手術を行い,現在11例が非担癌生存している。
  • 硲田 猛真, 野坂 彩, 山本 祐子, 福原 隆宏, 片岡 英幸, 北野 博也
    2005 年 31 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    CPT-11/TXT/5FU or TS-1が著効した症例を経験したので報告する。症例は68歳男性。初回治療は喉頭癌T2N0M0,扁平上皮癌にて放射線療法70Gyを施行し,CRを得た。約1年後に局所再発を認めた。本人が手術,治療を拒否されたため経過観察となったが,3ヶ月後に肺転移,気道狭窄を来した。呼吸困難が出現し,化学療法に同意された。TS-1/CDGPを投与したが,2クール目にCDGPでアナフィラキシーを来した。腫瘍が増大し,気管切開施行後にCPT-11/TXT/5FU or TS-1を6クール施行した。腫瘍は著明に縮小し,1クール後には気管カニューレを抜去でき,2クール目途中からは外来で化学療法を施行した。経過中,grade 3の白血球減少,貧血,grade 1の嘔気を認めた。5ヶ月経過した現在,CTにて瘢痕組織様の陰影を認めるが,陰影の増大はなく,喉頭ファイバー上も腫瘍を認めていない。
  • 田中 藤信, 崎浜 教之, 風間 恭輔, 高橋 晴雄
    2005 年 31 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    1994年1月から2004年3月の約10年間に当科で入院加療を行った下咽頭扁平上皮癌74例について検討した。各主治医により治療法を選択されていた1994年1月から2000年5月までの43例をA群,早期手術を主とした治療を行った2000年6月以降の31例をB群とした。この治療方針の変更が治療成績にどのように影響したかについて検討を行った。両群間に年齢,性別,発生亜部位,病期分類による差は認めなかった。原発巣に対する手術はA群で62.8%,B群で83.9%であった。統計学的に有意差を認めなかったがA群全体の3年生存率は43.8%,B群全体の3年生存率は70.5%とB群の生存率が高い傾向があった。Stage IIIの症例ではA群の3年生存率は41.7%,B群の3年生存率は85.7%と大きな差を認めた。今後,化学放射線治療等の機能温存療法との治療成績の比較の参考となると考える。
  • 竹村 栄毅, 飯田 正樹, 小林 斉, 勝野 雅弘, 浅野 理恵, 久保田 勇人, 門倉 義幸, 三邉 武幸
    2005 年 31 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    平成元年から16年1月までの喉頭癌新鮮例153例のうちStage III & IV 56症例を対象に,我々が行っている化学放射線療法の各年代における治療内容,治療成績,喉頭温存率について検証した。化学療法の内容は,CP療法(平成元年~6年),CF療法(平成6年~12年),S-1+Nedaplatin療法(SN療法)(平成13年以降),と変化してきたが,Stage III & IV喉頭癌に対する,CR率はCP療法38.4%,CF療法31%と低かった。一方,SN療法は奏効率100%,CR率90%であった。喉頭温存率はそれぞれCP療法46%,CF療法44%であったのに対し,SN療法は90%と高かった。これまでの化学放射線療法では進行喉頭癌に対してなかなか喉頭温存できていなかった。しかし,現在行なっているSN療法では奏効率,CR率,喉頭温存率,いずれにおいても有意に改善を示し,今後に期待できる結果であった。
頸部リンパ節
  • 厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「頭頸部がんのリンパ節転移に対する標準的治療法の確立に関する研究」班
    長谷川 泰久, 斉川 雅久, 林崎 勝武, 菅澤 正, 岸本 誠司, 中島 格, 西條 茂, 川端 一嘉, 吉積 隆, 西嶌 渡, 大山 和 ...
    2005 年 31 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術は頭頸部がんの外科治療の基本術式といえる。米国では2002年に頭頸部外科の関連学会が中心となって頸部リンパ節の分類と頸部郭清術の名称に関する新提案がなされた。本邦では系統的かつ統一性のある定義づけが行われておらず,治療法の比較検証のための術式の記載法の統一のみならず個別的治療からも頸部郭清術の系統的分類と命名法が必要とされる。隣接臓器との整合性と欧米の分類との互換性を図り,新たなる系統的分類と呼称を提唱した。頸部リンパ節の分類としては,基本的に日本癌治療学会リンパ節規約を用いて3つの基本領域とその他の領域に分類し,さらに基本領域に小分割として亜区域を設けた。術式は郭清範囲により全頸部郭清術と選択的頸部郭清術の名称を用いて分類した。術式の簡略表記法は郭清された領域と切除された非リンパ組織の2つの要素を略字で表記した。
  • ―とくに舌癌におけるSN検出部位と転移陽性リンパ節との関連―
    新谷 悟, 中城 公一, 日野 聡史, 寺門 永顕, 浜川 裕之
    2005 年 31 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌N0症例おける微小転移の検出に,センチネルリンパ節(SN)生検が試みられている。われわれは,RI法と色素法によるSN同定と,準連続切片および定量化PCR法による術中診断を応用したSN生検の有用性を報告してきた。今回,口腔癌におけるセンチネルリンパ節生検の臨床応用について検討した。口腔癌N0症例におけるSN生検の転移診断の結果,陽性率は35%で,精度は95%であった。舌癌10例では,4例でSN生検によるリンパ節転移が同定された。この4例中3例で,転移陽性リンパ節はすべてSNとして同定されていた。SN生検で転移陰性と診断した1例で術後頸部リンパ節転移を認めた。今後,さらなる検討は必要であると考えるが,口腔癌においてSN生検のコンセプトは成立し,本手法が頸部郭清術の指標として臨床応用できると考えられた。
  • 中里 隆之, 新垣 晋, 北村 信隆, 船山 昭典, 齊藤 力
    2005 年 31 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮がん細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,OSC-19)におけるVEGF-familyの発現をリアルタイム定量PCR法を用いて定量し,さらにそのがん細胞をヌードマウスの舌へ移植してリンパ節転移,遠隔転移および腫瘍内微小血管密度(MVD)との関連性について検討を行った.その結果,VEGF-A,VEGF-Cの発現はHSC-2およびOSC-19で高値を示し,さらにこれらの細胞株においてリンパ節転移およびMVDが高値を示した。これらのことからVEGF-A,VEGF-Cの腫瘍組織における発現はがん細胞からの分泌を反映していると思われ,さらにリンパ節転移への関与も示唆された。腫瘍組織中のVEGF-A,VEGF-Cの発現を調べることで転移予測が可能となり,その後の治療法の選択を行う上で有用な情報となることが考えられた。
唾液腺
  • 佐武 利彦, 前川 二郎, 鮑 智伸, 岩瀬 わかな, 藤澤 美幸, 高橋 卓也, 木島 毅, 三上 太郎, 鳥飼 勝行
    2005 年 31 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍手術は,顔面神経の剥離と温存が手術の重要な部分を占めている。従来,耳下腺腫瘍手術の顔面神経へのアプローチ法については,本幹からの順行性アプローチ法が一般的であり,大多数の症例はこの方法で対処しうる。一方,末梢分枝からの逆行性アプローチ法は一般的ではないが,末梢分枝のうち側頭枝は耳下腺前縁で,しかも表層に位置している。手技に慣れると顔面神経の確認と剥離は容易で早いため,われわれは本法を多用している。側頭枝を指標とした逆行性アプローチ法により,順行性アプローチ法よりも手術時間の短縮が得られ,危惧された側頭枝領域の麻痺発生率も低く,全例一過性であった。また本法は耳下腺の腺体が厚い場合,腫瘍が本幹近くに存在する場合や,肥満患者の場合に特に有用であり,従来の順行性アプローチ法に比べても遜色のない方法と考えられた。今回,逆行性アプローチ法の手術手技と術後成績,術式の有用性について報告した。
  • ―新潟県頭頸部悪性腫瘍登録14年間の集計より―
    森田 由香, 佐藤 克郎, 花澤 秀行, 渡辺 順, 佐藤 雄一郎, 川名 正博, 五十嵐 文雄, 長谷川 聡, 大倉 隆弘, 高橋 姿
    2005 年 31 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    1986年から1999年の14年間で,新潟県頭頸部悪性腫瘍登録委員会に登録された大唾液腺癌症例154例を臨床的に検討した。5年生存率は全体で60.4%,耳下腺癌64.7%,顎下腺癌38.1%,病期別ではstage I:86.5%,stage II:89.4%,stage III:50.0%,stage IV:24.5%であった。頸部リンパ節転移有無別の5年生存率は,耳下腺では転移陽性例で29.3%,陰性例で79.0%,顎下腺ではそれぞれ14.3%,55.7%であった。統計学的にはIV期症例がI~III期症例に比べ,またIII,IV期症例がI,II期症例に比べ有意に予後不良であった。また初診時頸部リンパ節転移陽性症例は陰性症例に比べ,そして遠隔転移陽性症例は陰性症例に比べて有意に予後不良であった。今回はretrospectiveな多施設間調査であったため,治療方法別の予後検討は不可能であったが,今後はこれを含めたprospectiveな検討が必要と思われた。
再建
  • 袴田 桂, 大和谷 崇, 佐々木 豊, 武林 悟, 峯田 周幸
    2005 年 31 巻 1 号 p. 100-106
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌の咽喉頭摘出後の音声再建に遊離回盲部移植(川原原法)による音声再建を8例に行った。手術の実際を術中写真を交えて紹介する。また,症例の年齢は平均62.1歳,再建時には消化管吻合を行った後,血管吻合に移るが,トノメーターを用いた術後移植腸管モニタリングを併用した。現在のところ再建の順序はグラフトの生着率に大きな影響はなかった。8例中5例が発声可能で,3例は訓練中である。おもな術後合併症は,吻合血管のトラブルが1例,術後食道吻合不全が3例,気管孔のトラブルが4例であった。誤嚥や移植腸管壊死などの合併症は無かった。嚥下機能,発声機能,誤嚥防止は,ほぼ満足のいく結果を得られており,患者のQOLの改善に役立っていると考えられた。
  • 酒井 直彦, 中山 明仁, 小林 伸行, 橋本 信子, 竹田 昌彦, 安田 吉宏, 岡本 牧人, 内沼 栄樹
    2005 年 31 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    頸部食道の再建材料は,大別すると消化管を利用した胃管や遊離空腸移植と,皮膚を利用した大胸筋皮弁,D-P皮弁,前腕皮弁が代表的である。現在では遊離空腸移植が食道再建の主流となったといえる。空腸移植は皮弁を用いた再建食道に比べ,瘻孔や縫合不全が少なく,術後早期より経口摂取が可能であることが長所である。その反面,蠕動運動による通過障害や咽頭側口径差による吻合の工夫を要することが短所と思われる。われわれも,これまでに逆L字型やロー型腸管モデルによる食道再建を行ってきたが,食道造影時においてkinkingやpoolingおよび蠕動運動による通過障害が原因と思われる嚥下障害や逆流現象に難渋する経験をした。そこで,漏斗型形状が通過性に最も優れていると考えて,咽頭喉頭頸部食道切除後に漏斗型空腸モデルによる食道再建と再建後の嚥下機能の評価を行い良好な結果を得たので報告する。
  • 矢澤 真樹, 横山 純吉, 高山 治
    2005 年 31 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    頸部は頭部と体幹を結ぶ部位という特殊性から,機能と美容の両面から再建に求められる要求は高く,しばしば再建法の選択に苦慮する。広範囲にわたる後頸部軟部組織欠損においては,これまで再建手段として僧帽筋皮弁の他に広背筋皮弁,肩甲皮弁など様々な有茎皮弁が用いられてきた。今回我々は再発を繰り返しNeurofibromaの悪性転化した後頸部のMalignant perineural nerve sheath tumor(MPNST)の根治切除後の症例に対し,bilobed僧帽筋皮弁による再建を経験した。bilobed僧帽筋皮弁による後頸部再建は,他の遊離皮弁と比較しての手術時間短縮だけでなく,術後の日常生活をおくる上で大切な頸部の機能面としての可動性及び露出部における美容面でのcolor match,texture match,contour等において,有用な再建方法であると考えられた。
その他
  • 鬼塚 哲郎, 海老原 充, 鵜久森 徹, 岡村 純, 中川 雅裕, 大田 洋二郎, 西村 哲夫, 鎌田 実, 村山 重行, 小野澤 祐輔
    2005 年 31 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    当院では2002年9月開院以来,医師への情報の一極集中を避け,すべての職種の専門性を活かすべく患者にアプローチできるような独自のチーム医療に病院全体で取り組んできた。それは1.チームメンバーは対等でヒエラルキーのない構成の多職種チーム(Interdisciplinary Team)である。2.チームは患者のニーズと臨床的な課題をめぐって組織され機能する。ただしこの体制で業務が円滑に行われるためには,3.患者情報を同時に複数の職種が閲覧,記録でき,かつ多職種間に情報を確実,簡便に配信できる電子カルテの配備が不可欠である。
  • 長谷川 正俊, 齋藤 淳一, 松田 真里子, 鈴木 義行, 石川 仁, 桜井 英幸, 中山 優子, 新部 英男, 中野 隆史
    2005 年 31 巻 1 号 p. 124-129
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    群馬大学附属病院で1972年から2002年に放射線治療または経過観察を行なった頭頸部初発indolent lymphomaの53例(MALT 30例,Follicular 23例)について,病期,初発部位,治療法,予後を検討した。照射例51例中,MALTは,I期26例,II期0例,III期0例,IV期2例,Follicularは,I期11例,II期8例,III期4例,IV期0例で,MALTでは30Gy,Follicularでは40Gyを原則として照射をおこなった。MALTの5年,10年累積生存率は100%で,再燃を4例に認めたがいずれも制御できていた。Follicularの5年,10年累積生存率は70%,52%(I期では100%,85%)であった。なお,化学療法の有用性は明らかでなかった。本研究から限局期のIndolent lymphomaは放射線治療後,長期生存または根治が可能であることが再確認された。
  • 安里 亮, 田中 信三, 池田 晴人, 玉木 久信, 平塚 康之, 野崎 和彦, 片岡 一哉, 沢辺 一馬, 伊藤 壽一
    2005 年 31 巻 1 号 p. 130-134
    発行日: 2005/04/15
    公開日: 2008/01/23
    ジャーナル フリー
    1997年4月から2004年3月までに当科において手術を施行した頭蓋底進展の悪性腫瘍症例は14例である(前・中頭蓋底8例,側頭骨4例,頸椎~斜台2例)。このうちen-bloc切除を行なえた症例は11例であった。手術時間および出血量は側頭骨手術が前・中頭蓋底の約2倍であった。局所再発は不完全切除例3例で認められ,完全切除例では局所の再発はなかった。死亡例3例中2例は遠隔転移ないしリンパ節転移再発による原病死で,1例は術後ARDSによる呼吸不全で死亡した。合併症は前・中頭蓋底ではなかったが側頭骨症例で全例が皮下髄液漏,2例で髄膜炎を認め,1例がARDSにより死亡した。手術成績の向上のためには,術前に転移の有無を見極めることと完全切除が極めて重要であり,側頭骨手術の術式の洗練と術後管理の徹底が必要である。
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