頭頸部癌
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34 巻, 1 号
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第31回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム
高齢者・合併症をもつ進行癌症例の治療
  • ―手術症例―
    藤井 隆, 吉野 邦俊, 上村 裕和, 栗田 智之, 鈴木 基之, 毛利 武士, 島田 貴信
    2008 年 34 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    2002~2006年の75歳以上の頭頸部進行癌(stage III・IV)根治切除手術症例50例を対象に治療上の問題点について検討した。合併症の頻度は,高血圧36%,心疾患20%,脳・中枢神経疾患14%,呼吸器疾患16%,糖尿病12%であり,約半数は術前に他科へのコンサルトが行なわれていた。術前performance statusは,PS0 26例,PS1 12例,PS2 12例であり,PS3・4の症例はみられなかった。手術侵襲は,再建症例30例(遊離皮弁20,遊離空腸9,有茎皮弁1)を含むように若年者同様であった。術後合併症や譫妄の頻度は約2割と高くはないが,手術侵襲とのあきらかな相関はみられず術前からの予想は困難であった。高齢者でも理解力良好でPSが0~2であれば,進行癌に対する通常の根治手術は可能である。
下咽頭癌の治療法の選択―手術か放射線・化学療法か―
  • 福島 啓文, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 米川 博之, 別府 武, 佐々木 徹, 新橋 渉, 酒井 昭博, 塚原 清彰, 吉田 ...
    2008 年 34 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    1999年から2003年までの5年間に癌研有明病院頭頸科で治療した下咽頭扁平上皮癌295例を検討し,治療成績の現状と,当科で行っているQOL向上の工夫について紹介した。
    295例中,根治治療を行ったのは245例(83%)であり,5年死因特異的生存率はStage I:100% II:88.8% III:80.8% IVa:53.8% IVb:28.6%であった。Stage IIIまでは満足いく結果であったが,全症例の67%を占めるStage IVの予後が不良であり,主な非制御部位は遠隔転移38%と頸部25%であった。予後向上のために当科では術後治療として病理学転移が4個以上の症例は術後放射線治療と化学療法(CDDP,5-FUもしくはTS-1)を中心として行っている。
    QOL向上の工夫は,喉頭摘出後の音声再建としてボイスプロステーシス(PROBOX2®)を用いた二期的シャント形成を積極的に行い,良好な結果を得ている。
パネルディスカッション
同時重複癌症例の頭頸部癌と他臓器癌との治療方針
  • 志賀 清人, 小林 俊光
    2008 年 34 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    当科にて2002年から2006年の5年間に診断・治療した頭頸部癌一次治療例のうち多重癌の頻度が高い口腔,喉頭,中・下咽頭癌症例387例について,同時性重複癌の診断・治療法について検討した。口腔癌121例中多重癌症例は23例(19%)であり,同時性3例,異時性19例(うち3重癌1例),同時性・異時性1例(3重癌1例)であった。喉頭癌130例中多重癌症例は27例(21%)であり,同時性5例,異時性20例(3重癌1例),同時性・異時性2例(3重癌1例,5重癌1例)であった。中咽頭癌50例中多重癌症例は19例(38%)であり,同時性6例,異時性12例(3重癌2例,4重癌1例),同時性・異時性1例(3重癌1例)であった。下咽頭癌86例中多重癌症例は44例(51%)であり,同時性21例(3重癌5例),異時性19例(3重癌4例),同時性・異時性4例(3重癌3例,4重癌1例)であった。他癌としては食道癌が最多で,胃癌がこれに続き,上部消化管の精査で重複癌の70~80%が検出されると考えられる。口腔癌では頭頸部癌の重複が多く,下咽頭癌と喉頭癌症例では頭頸部癌の重複は稀であった。また多重癌症例の予後は多重癌のない症例に比べ有意に不良の傾向を示した。同時性重複癌の治療は,頭頸部癌と他癌の部位,進行度によってその治療方針(手術なのか放射線治療なのか),治療の順序を考慮する必要があり,当科における治療方針について報告する。
基礎
  • 太田 一郎, 家根 旦有, 細井 裕司
    2008 年 34 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    Zinc-finger型転写因子Snailは,E-カドヘリンなどの細胞間接着分子の発現を抑制することにより,癌細胞が浸潤・転移能を獲得した際に認められる上皮―間葉移行:Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT)を誘導することが明らかにされている。また,E-カドヘリンの細胞内結合タンパク質であるβ-カテニンは,細胞外の分泌タンパク質であるWntが細胞に作用するとユビキチン化されず安定化し,核内に移行して転写因子であるTCFを活性化することが知られている。Wntシグナルは癌細胞において活性化されEMTを誘導すると考えられているが,WntシグナルとSnailとの相互作用については明らかにされていない。そこで今回われわれは,癌細胞におけるWntシグナルとSnailとの関連について検討した。その結果,癌細胞においてWntシグナルはSnailを核移行させ活性化し,さらにSnailの活性化を介してEMTを誘導し癌細胞の浸潤を促進させることを明らかにした。Wntシグナルはβ-カテニンおよびSnailの両者を安定・活性化させることでEMTを誘導し,癌の浸潤・転移を促進すると考えられる。
上顎
  • 去川 俊二, 須永 中, 宇田 宏一, 倉地 功, 山口 亜佐子, 西野 宏, 菅原 康志
    2008 年 34 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    上方上顎亜全摘出術は,眼窩底,上顎の前内外側壁の欠損を生じ,眼球偏位,複視,鼻翼基部と上口唇の上後方への偏位,頬部の陥凹をもたらす。本欠損に対する遊離橈骨付前腕皮弁とチタン・メッシュ・プレートを用いた即時再建術式を報告する。採取組織は,採取部の一期縫縮が可能な細長い皮弁と,採骨部の骨折予防を考慮した薄い骨弁で挙上する。皮弁は,血管茎を被覆するための皮島と,口腔前庭鼻瘻の閉鎖のための皮島とに分割する。骨弁は,naso-maxillary buttress部と,眼窩下縁部に分割する。眼窩底はチタン・メッシュ・プレートで再建し,上顎洞内に露出したままにしておく。
    本術式のコンセプトで2症例に再建術を施行し,外鼻と口唇の変形はなく,満足のいく結果が得られた。
    本術式は,再建後の頬部が若干平坦になるという問題が残る。しかし,術式としては,容易で,信頼性があり,侵襲も少なく,良好な方法と思われた。
喉頭
  • ―植皮術の積極的利用―
    土屋 沙緒, 櫻庭 実, 宮本 慎平, 林 隆一
    2008 年 34 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出術後の合併症として咽頭皮膚瘻の発生は15~35%とされ,比較的高い確率で生じる。この際大血管周囲の感染とそれに続く出血が起きれば患者にとって致命的であり,未然の適切で早急な処置が必要となる。従来我々は咽頭粘膜の欠損が小さく,一期縫縮が可能な場合には大胸筋皮弁の筋体を頸部の死腔の充填に用い,皮島を頸部の皮膚欠損部に縫合する方法をとってきた。大胸筋の豊富な血流により良好な感染のコントロールが得られるのが長所であったが,大胸筋皮弁の下垂により気管孔が狭小化し,永続的なカニューレの挿入を余儀なくされた症例を数例経験した。同時に頸部としては皮弁がVolume過多となり,整容的な問題も認められた。そこで,積極的に大胸筋皮弁の皮島を切除し,植皮に置き換える工夫を8例におこなった。この方法で手術を行った症例では,皮弁の下垂が見られず,筋体が萎縮するとともに,より頸部らしい自然な形態となった。メッシュ植皮とすれば皮島自体の大きさも従来法よりも小さくてすみ,皮弁採取部の閉創も容易である。皮島への穿通枝を含める必要がないため,乳頭を切除する必要もなく,胸部の整容面でも優れていた。
中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 松井 隆道, 野本 幸男, 松塚 崇, 鹿野 真人, 渡邉 睦, 大森 孝一
    2008 年 34 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    中咽頭癌の治療において我々は平成11年より手術における切除断端からの再発を減少させる目的でシスプラチンを主とした動注療法を導入している。これまで中咽頭扁平上皮癌33例に対して超選択的動注化学療法を施行した。動注はセルジンガー法を用いてシスプラチン80~100mg/m2を週1回動注し,中和剤としてチオ硫酸ナトリウムを動注後に経静脈的に投与した。原発巣制御率は81.8%(27/33例)であった。全症例の5年累積生存率は69.1%であった。部位別では前壁型(10例)では72%,側壁型(23例)では70.1%と差を認めなかった。これまでの治療成績から術後の機能障害が問題となる前壁型の場合,基本的に手術は行なわず動注化学療法と放射線療法の併用での治療方針に変更された。中咽頭癌における超選択的動注療法は腫瘍の存在部位により動注する血管を適切に選択することが重要である。
  • 宮原 裕
    2008 年 34 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌に対する化学療法として最近は従来のCisplatinと5-fluorouracil(5-FU)にDocetaxel(TXT)を加えた3剤の併用療法(TPF)の高い奏功率が報告されるようになった。われわれは2001年より未治療の(上,中,下)咽頭癌の進行例,手術拒否例などに3剤の併用療法(TPF)を行ってきた。局所がcomplete responseになり,引き続いて放射線治療を行った場合,残存した頸部リンパ節にはリンパ節郭清術を行うことにした。今回,それらTPF併用療法を行った症例の治療効果と下咽頭癌の場合には喉頭温存の可能性について検討した。
    投与メニューはCisplatin 10~30mg day 2~5, 5-FU 500~1000mg day 2~5, Docetaxel 80mg day 1で1クールないし2クール行った。対象は上咽頭癌5例,中咽頭癌11例,下咽頭癌12例で,病期II期6例,III期5例,IV期17例であった。頸部郭清術は10例に行った。最短経過1年7ヶ月,最長6年4ヶ月の時点で非担癌生存19例,担癌生存1例,現病死6例,他病死2例である。局所に関してCR率は上咽頭癌,中咽頭癌,下咽頭癌ともに40%台であり,CR + partial response(PR)率は90~100%であった。一方,頸部リンパ節に関してCR率は下咽頭癌以外では低く,CR + PR率も低かった。上咽頭癌ではT4例でも奏功を示していた。中咽頭癌ではIV期がほとんどで手術拒否例が多かったが,T3以上では奏功例は少なかった。下咽頭癌では12例中6例は喉頭温存のまま経過している。TPFによる化学療法の効果とその限界について文献的考察も加えた。
  • 竹村 博一, 林 隆一, 山崎 光男, 宮崎 眞和, 鵜久森 徹, 大幸 宏幸, 篠崎 剛, 櫻庭 実, 矢野 智之, 河島 光彦, 全田 ...
    2008 年 34 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    (目的)下咽頭・頸部食道癌に対する化学放射線療法後の救済手術の安全性及び効果について検討する。
    (対象)1997年~2006年の10年間に,国立がんセンター東病院において下咽頭・頸部食道癌に対する放射線15例(RT)/化学放射線19例(CRT)治療後の原発巣の遺残,再発に対して施行した救済下咽頭喉頭全摘術(以下 Salvage TPLE)34 症例を対象とした。
    (結果)救済手術後合併症を32.4%に認めたが,RT群とCRT群で合併症の発生頻度に有意差は認めなかった。再発形式は術後リンパ節再発が最も多く55.6%(10/18)に認めた。CRT後術前N0症例に対する系統郭清なし群の頸部制御率は84.7%であった。観察期間中央値484日におけるCRT後の術後生存期間中央値は392日であった。
    (結論)CRT後の症例では,症例の選択や術式の工夫を行う事で安全に実施可能であり,生存期間の延長が期待できる。
  • 佐藤 輝幸, 本田 耕平, ウォン ウェンホウ, 鈴木 真輔, 齊藤 隆志, 柴田 豊, 花田 巨志, 福井 奈緒子, 川嵜 洋平, 石川 ...
    2008 年 34 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    1991年からの10年間において,5年間追跡可能であった下咽頭癌71例を検討した。原発巣に対する咽喉頭手術群(喉頭部分切除例,下咽頭部分切除例も含む)と化学療法併用根治放射線療法施行群(頸部郭清術施行症例も含む)について実測疾患特異的5年生存率を比較検討した。手術施行群56例の疾患特異的5年生存率は54.0%,stage I・IIでは62.5%(8例),stage III・IVでは52.4%(48例)であった。化学療法併用放射線療法群15例の疾患特異的5年生存率は42.7%,stage I・IIは算出不能(2例),stage III・IVは45.5%(13例)であった。
    手術施行群と化学療法併用放射線療法群における疾患特異的5年生存率の比較では手術施行群の方が11.3%高かった。stage III・IVのみの比較では手術施行群の方が6.9%上回っていた。
    機能温存と根治治療にむけて多方面からの集学的治療が今後ますます必要になるであろう。
  • 佐々木 徹, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 米川 博之, 別府 武, 福島 啓文, 新橋 渉, 酒井 昭博, 塚原 清彰, 吉田 ...
    2008 年 34 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    1985年から2004年までの20年間に癌研病院で根治手術を施行した頸部食道扁平上皮癌84例について治療成績を検討した。
    5年粗生存率は,ステージII:50.3%,ステージIII:34.2%,ステージIVa:32.7%であった。ステージIII以上が77.4%を占めており,頸部食道癌が予後不良の要因であると考えられた。予後向上のために消化器内科医および頭頸部外科医が積極的に境界領域の診察を行い,早期発見の努力をする必要であると考えられた。
    予後因子としてリンパ節転移が大きな影響を与えており,原発巣の因子は予後との相関を認めなかった。また各リンパ節群の転移率の検討から,下咽頭浸潤のない症例ではNo.103の郭清を省略できると考えられた。No.105転移症例はなく,上縦隔の郭清は頸部からの操作のみで十分郭清できると考えられた。
唾液腺
  • ―MRIと核医学検査を中心にした術前診断フローチャート―
    三橋 敏雄, 晝間 清, 留守 卓也, 渡部 涼子, 堅田 浩司
    2008 年 34 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    平成15年1月から平成19年12月までの5年間に当科で治療(原則手術)を施行した耳下腺腫瘍100例のうち,良性は82.0%,悪性は18.0%であった。良性では多形腺腫(54.9%),ワルチン腫瘍(30.5%)と,これらで良性の約85%を占めた。悪性の組織型は多彩であった。耳下腺腫瘍全体でみても,悪性を1グループとして加えるとこれら3グループで88%を占めた。さらに基底細胞腺腫を加えて96%とし,臨床所見などをふまえた上で画像診断を中心にして,術前(病理組織)診断フローチャートを作成した。画像診断ではMRI(造影)と核医学検査(特に99mTcO4)が有用であった。67Ga-citrateは有用とは言えなかった。手術適応に迷う症例や腫瘍摘出後の再建法選択などで準備を要するものについては,さらに超音波ガイド下のFNAや,どうしても必要な場合に限り,手術前2週間以内の針生検を加え診断をさらに絞っている。
頸部
  • 鬼塚 哲郎, 海老原 充, 飯田 善幸, 上條 朋之, 浅野 理恵, 石木 寛人, 田沼 明
    2008 年 34 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    副神経を保存した保存的頸部郭清術においても,鉤などの術中操作により術直後はその多くに副神経麻痺が生じている。今回は副神経支配の僧帽筋が最も関与する上肢自動外転角度を計測し,僧帽筋麻痺の程度,回復過程を評価した。副神経を保存した保存的頸部郭清術10例を術後2ヶ月以内でみると,上肢外転角度100度未満の重度の僧帽筋麻痺4例,100~150度未満の中等度の麻痺3例,150度以上のほぼ麻痺のない3例であり,様々な程度の僧帽筋麻痺に分かれた。これは術中の副神経の牽引操作や電気メスなどの影響によって,副神経損傷の程度にばらつきが生じるためと考えられた。術後6ヶ月前後では,全例150度以上に上肢外転角度は改善した。副神経を保存した頸部郭清術においても,一過性の副神経麻痺を来たしている可能性が高く,僧帽筋麻痺による肩関節,肩甲帯の癒着性関節包炎を避けるために,副神経障害の程度に応じたリハビリテーションが必要である。
臨床(その他)
  • 寺田 友紀, 佐伯 暢生, 藤 久仁親, 宇和 伸浩, 佐川 公介, 阪上 雅史
    2008 年 34 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域内における多重扁平上皮癌症例を検討した。1986年から2003年の間に兵庫医科大学耳鼻咽喉科で治療を行った上咽頭,鼻・副鼻腔を除く頭頸部領域扁平上皮癌は827例(舌126例,口腔59例,中咽頭122例,下咽頭174例,喉頭346例)であった。そのうち,同領域内に多重癌をきたした38例(4.6%)を対象とした。
    第1癌の原発部位は下咽頭が42.1%と最多で,頭頸部領域の多重癌発生率も9.2%と最も高かった。ブリンクマン指数601以上のヘビースモーカーは全体の62.2%,31g/日以上のアルコール多量摂取者は全体の86.5%を占めた。47.4%に頭頸部領域以外の重複癌も認められ,その77.8%が食道であった。7例が第1癌の治療の影響で第2癌以降の治療が何らかの形で制限された。異時性多重癌の予後は比較的良く,非担癌生存62.5%,原病死20.8%であった。
    異時性多重癌の約40%が第1癌治療後5年以上経過してから見付かっており,そのほとんどが定期診察ではなく自覚症状の出現で発見されている。多重癌を早期発見するには,患者側の多重癌の認識を高める努力や,喫煙量,飲酒量の多いハイリスク者を選び出し緻密な経過観察を行うなどの工夫が必要である。
  • 田村 芳寛, 平野 滋, 安里 亮, 田中 信三, 伊藤 壽一
    2008 年 34 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    2000年4月から2005年3月にかけて当科において一次治療を予定した頭頸部扁平上皮癌症例234例のうち70歳以上の高齢者症例について検討を行った。高齢者例は82例で男性69例・女性13例であった。喉頭癌(35例)と下咽頭癌(17例)が多く,早期例の多い喉頭癌以外では進行例が多い傾向にあった。合併症・既往症では他の悪性腫瘍,高血圧,糖尿病や心・脳血管障害が多かった。82例のうち19例で予定していた治療内容を縮小していた。中咽頭癌T3,T4症例では5例中3例が治療後の経口摂取不可となり更に5例中3例が中咽頭癌,1例が食道癌で死亡しており経過不良な傾向にあった。しかし,下咽頭癌・喉頭癌・口腔癌ではT3,T4症例でも積極的な手術によって原発巣の制御は良好で術後の経口摂取も可能であり,高齢者でも進行例では手術治療を積極的に考慮すべきだと思われた。
  • 秋定 健, 原田 保, 今井 茂樹, 業天 真之, 平岡 崇
    2008 年 34 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2008/05/14
    ジャーナル フリー
    Docetaxelの超選択的動注化学放射線療法を施行した頭頸部癌で,機能温存度を摂食・嚥下を中心に検討した。下咽頭癌の喉頭温存率は96.2%で,5年喉頭温存率は32.1%であった。喉頭癌の喉頭温存率は71.4%で,5年喉頭温存率は70.7%であった。VFは12例に対して行い,改善:2例,不変:3例・やや悪化:5例,悪化:2例であった。VE施行例では喉頭蓋谷残留を認めるのみで良好な嚥下状態を示した。気管切開術施行は,下咽頭癌26例中3例(11.5%),喉頭癌14例中2例(14.3%),口腔・中咽頭癌34例中2例(5.9%)であった。PEG造設例は中咽頭癌1例,下咽頭癌3例のみで,経口摂取はほとんどの症例で可能であった。本療法における摂食・嚥下機能はCDDPを使用した海外の報告と比べ良好であった。
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