頭頸部癌に対する化学療法として最近は従来のCisplatinと5-fluorouracil(5-FU)にDocetaxel(TXT)を加えた3剤の併用療法(TPF)の高い奏功率が報告されるようになった。われわれは2001年より未治療の(上,中,下)咽頭癌の進行例,手術拒否例などに3剤の併用療法(TPF)を行ってきた。局所がcomplete responseになり,引き続いて放射線治療を行った場合,残存した頸部リンパ節にはリンパ節郭清術を行うことにした。今回,それらTPF併用療法を行った症例の治療効果と下咽頭癌の場合には喉頭温存の可能性について検討した。
投与メニューはCisplatin 10~30mg day 2~5, 5-FU 500~1000mg day 2~5, Docetaxel 80mg day 1で1クールないし2クール行った。対象は上咽頭癌5例,中咽頭癌11例,下咽頭癌12例で,病期II期6例,III期5例,IV期17例であった。頸部郭清術は10例に行った。最短経過1年7ヶ月,最長6年4ヶ月の時点で非担癌生存19例,担癌生存1例,現病死6例,他病死2例である。局所に関してCR率は上咽頭癌,中咽頭癌,下咽頭癌ともに40%台であり,CR + partial response(PR)率は90~100%であった。一方,頸部リンパ節に関してCR率は下咽頭癌以外では低く,CR + PR率も低かった。上咽頭癌ではT4例でも奏功を示していた。中咽頭癌ではIV期がほとんどで手術拒否例が多かったが,T3以上では奏功例は少なかった。下咽頭癌では12例中6例は喉頭温存のまま経過している。TPFによる化学療法の効果とその限界について文献的考察も加えた。
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